skogenさん
いまって完組ホイールの過渡期なのかな?エントリーグレードの次の選択が難しいですね。
という訳で、そういう悩める人の悩みを深めるキリシウムエリートUSTに関するレポートです。
USTチューブレスの印象はとても良いです。以下長いので、簡単にまとめると、走行感は軽い、乗り心地は良い、登りは楽、平地は普通、USTの装着は楽。
◎キシエリUSTってワイドリム?
リム幅(フロント 外幅) は実測で20.7mmです。いくつか比べてみると、RS21は21mm、RS010は21.4mm、レーシングゼロは22.8mm、オープンプロ 15cは20mmですから、キシエリUSTはワイドリムと言っても、リムが細いことが分かります。乗った感じでもリム・タイヤが軽いです(メーカーの公表値では405g)。
テクニカルマニュアルから仕様上のリム外幅を抜き出しておきます。
Ksylium Elite S 15c 2015: 19.4mm Ksylium Elite 17c 2016: 21.5mm Ksylium Elite UST 17c 2017: 20mm 15cから17cになりやや太くなったのが、USTになってリム幅が細くなったことが分かります。強度を保って細くする(リムウォールを薄くする)のは難しいでしょうから、良くやったなと感じます。
それにしても、メーカーによる設計思想の違いが如実に現れていますね。
◎振れはある
吊るしの状態でセンターずれ、振れはどちらも0.5mm以内でしたが、0.1mmという事は無いです。この値段の完組みホイールとしてはやや大きめだと思います。振れ取りを自分でしないなら、信頼できるショップで購入した方が良いです。
◎玉押し調整は楽
Mavicのベアリングは深溝玉軸受(普通のベアリング)です。使われているのがNSK 6802だとすると、このベアリングは20kgfのアキシアル荷重(ハブ軸方向の荷重)に対して12μm変位し、横荷重に耐えます。そのため玉当たり調整が可能です。QRM+という仕組みで、クイックレバーを締めた状態で調整できます。玉当たり調整が甘いと、直進性が落ちます。これはカップアンドコーン式のハブと同じです。
振れ取り、玉押し調整用工具は付属しています。
◎回転時間は?
60秒です。これは接触式のシールドベアリングだから。実走行ではハブは硬く精度良く回り、回転が悪い感触はありません。60秒で止まる場合、リム・タイヤが軽いキシリウムUSTのロスは0.2W程度です。
◎ラチェット音は問題なし
大きめですが、爆音で気になるほどではありません。1700kmぐらい走ってますが、1500kmあたりからやや音が大きくなってきました。
◎Yksion Pro USTタイヤ
タイヤ重量は前後とも254gでした。ルビノプロ3 25cやコルサ G+ 25cとほぼ同じ重量です。タイヤに記載されている空気圧は5-7barで、推奨値は6barです。USTタイヤはクリンチャーと同じ様に手で装着できます。高圧にしなくてもビードは上がります。ワイドリムホイールは外周部が重いと言われますが、チューブが不要で、リムも軽いUSTホイールはその心配は無さそうです。
◎シーラント
シーラント無しでもすぐに空気が抜けることはありませんが、USTを買った理由の一つはチューブレスの耐パンク性なので、付属のシーラントを20g入れました(規定では30g)。これで空気圧の減りはブチルゴムチューブと同じぐらいになりました。
なお、キシエリはリム・タイヤともに空気圧は7barが上限です。Webサイトには7.7barと説明されていますが、リム、タイヤともmax 7barと書かれています。
◎欠点も少々
タイヤの選択肢が少ない。また、セット販売されるタイヤYksion Proの売値は高いです。今後、USTチューブレスタイヤが他メーカーからも出てくる可能性があり、競争で価格が下がることに期待。摩耗はCorsa G+に比べてやや早い感じがします。 走行1700kmでリアタイヤはやや摩耗しているのが分かりますから、交換は5,000kmぐらいでしょうか。
◎キシリウムプロと悩む、かなり悩む
キシエリUSTの良い印象から考えて、ハイエンドアルミ Ksylium Pro USTは魅力的です。スポーク素材がアルミ、超ワイドフランジ、QRM auto、リムがさらに軽く頑丈。良いホイール一揃いで過ごし、ハイエンドアルミでしばらくホイールのことで悩まないために、Ksylium PRO USTという選択肢もありかなぁと思います。もっとも、キシリウムプロの上には、評判が良いカーボンホイール(コスミック プロ カーボン SL UST)があるので、物欲は止まないかもしれません。これぞ悪魔の価格システム(マーチンゲール法とも言います)。^^;
以下、手前勝手な走行感の比較。
Yksion Proは5.5-6.5 barで乗っています。5.7barだと乗り心地が良いですね。5.5barでも問題なく乗れます。リム打ちパンクの心配は無いので、もっと低くても大丈夫でしょう。仕様上の上限は7barです。私の体重(64kg)だと6.5barぐらいで十分に硬い転がりのタイヤになり、6bar付近がベストのようです。低圧で乗れるのでグリップはとても良いです。これ後述。
ルビノプロ3 23cを装着したRS21と比較すると、キシエリは乗った感じは当然ながら軽く,精度が高いのが分かります。RS21はずしりと重くて頑丈。そして乗り心地はキシエリの方が良いです。たぶんリムのせい。タイヤの差も大きい。ルビノプロ3はゴツゴツした乗り心地です。
レーゼロはさらにリムが硬く頑丈で、走ると硬く軽く頑丈な回転体が真っ直ぐ進んでいる感じ。剛性感ははるかに高いです。乗り心地もキシエリよりずっと硬いですが、不快では無いです。リム幅、リム重量、スポークの材質が効いているようです。
レーゼロには薄くしなやかなCorsa G+にR’air(7.2 bar)を入れてます。Corsa G+の乗り心地はとても良いのですが、USTチューブレスはさらに上です。Yksion Proの厚い感じのトレッドのせいか、チューブレスの特性なのか、低圧で乗れるせいか、モチモチしたゴムっぽさがあるのに転がり抵抗が低く、乗り心地が良い。
平地のコーナリングはキシエリの方が楽です。空気圧に加えて、タイヤのトレッドの違いだと思います。レーゼロに装着しているCorsa G+ 25cはトレッドゴムを薄くすることで回転抵抗を小さくしてる感じで、その分、車体を倒しにくい(振動吸収性は良いのですが、コーナリング時は硬いタイヤという印象に変わります。コーナリング中はホイールの共振音も変わります)。イクシオンはトレッドゴムが柔らかく感じられ、倒してもタイヤのゴム感が直進時と変わらないのでコーナーを曲がりやすい。この差は大きいです。
しかし、下りはレーシングゼロの方がぐっと安定感があります(キシエリ PROが欲しくなる瞬間)。これはホイールの剛性の違いだと思います。あとタイヤ幅(実測でYksion Proは26.4mm、Corsa G+は27.2mm)とリム幅の差(レーゼロはキシエリより2mmも太い)。平地の高速巡航もレーシングゼロの方が速度を乗せ易く、維持し易いです。これはリム重量の違いでは無くホイール剛性の差だと思います。
一方で、登りはキシエリが楽です。リズムを取りながらケイデンスを上げて軽快に上れます。緩やかな登りの加速も楽です。リム・タイヤが軽いのが効いているのでしょう。トルクを掛けた時の加速感からイソパルス組の効果もあると感じます。