skogenさん
とても勉強になるスレで、いろいろと気付かされることが多く、感謝してます。
その上でちょっと問題点の指摘を。(例のごとく、理屈っぽいです ^^;)
「感性工学」という学問があります。人の感性を物理的な特性で説明する学問です。
例えば、自転車の「乗り心地」。
これは感性の部分と物理的な部分があります。例えば、振動や回転抵抗で説明できるなら物理的。ホイールの共振音も含めて心地良さを感じているなら感性工学で考えた方が良い。
「重い」という表現は人の感覚表現ですから、感性的な話かも知れません。そちらは「感性工学」になります。「重さ」が重量や回転抵抗だったら、それは感性では無く簡単な物理です。感覚量であった「重さ」を物理的に説明し、誰にでも扱える量に引きずり下ろすのが科学の役割の一つです。
自転車は工芸品では無く、科学技術を基盤とした工業製品です。
工芸品は少数・特定の個人を相手にしますが、工業製品は不特定多数の消費者を相手にします。
工芸品の良さは「量」で説明することは難しいですが、工業製品は「量」で説明できます。工業製品である自転車そのものの特性は定量化が可能で、設計者も定量的に考え、定量的に作り上げられます。
心療内科と呼ばれる医療分野があります。「気のせい」で済まされていた症状を医学的に扱います。やや違いますが工業製品分野の「感性工学」は「気のせい」にされていた心地良さや心地悪さを物理的に説明しようとします。
身体的不調があるのに「気のせい」と言われても、体の不調は治りません。ユーザにとって、「それは気のせいですよ」で済まされたらたまったもんじゃありません。乗る側の感性や身体的特性に問題がある、という対応で済ませるのは工業製品の世界では傲慢な態度と言えます。それが「筋トレして下さい」という対応。
kagi.comさんは長距離を走られているので、その結果はとても大事だと思ってます。十分に信頼に足る結果だろうと。ディープさんの経験値も極めて高く、言われていることはたぶん何らかの裏付けがあるんだろうと思います。その上で、なぜそう感じられたのか、客観的な手掛かりが欲しいというのが私の気持ちです。
でないと、このスレは読者の不安を煽っただけで終わりかねません(痛みは嘘を付きませんから、kagi.comさんの結果や感覚は疑ってません。気を悪くされないでくださいね)。ここを読んで「R8000は買わない方が良さそうだ」と考えた人が多数居ると思います。
そのように感じてしまうのは、私の基準では、特定の個人の事例を不特定多数に一般化する事に等しく、それは診断する側が「気のせい」と済ませるのが傲慢であることと大差ありません。(「個人の事例は不特定多数で成り立つ」と捉えることが正しければ、「特定少数の事例は一般には成り立たない」と冷遇するのも正しい)
私は人が行うモノづくりの経験や感覚を数値化する世界、つまり工業技術の世界から多くの事を学びました。達人と言われる人達の技術を誰にでも使えるようにする、そういう考えが根っこにあります。
技術(技能やノウハウなど)と理論(物理などの科学を説明する理屈)を私は分けて考えています。
技術はオープンにされないことが多く、理論はオープンにされる傾向があります。競争力を維持するためにも、人を育てるためにも技術のある部分はオープンにされませんが、共通資産となる理論はオープンにした方が良い、というのが私の考え。
理論は誰でも使うことができますが、理論を生み出す肝心の能力は人の脳の中にあるため、最も重要な部分は真似ることができません。なので、理論の本質は真似されることが無く、オープンにする事が多い。
理論は検証可能なパーツで作り上げられた体系ですから、公開されなければ理論では無い、と言う事もできます。「理論を出し惜しまない」というのはそういう意味です。そして、「理論で何でも説明できる」と考えている訳ではありません。