工具を見ればスキルがわかる。腕が上がってくると、いい工具と悪い工具が見分けられる。50年つきあうと若い頃には見えなかっった工具の寿命も見えてくる。そんな話をいろいろ書いてみます。みなさんも工具について書きたいことがあればどうぞ。
第1回 定規の話
僕は定規はシンワを使っています。精度と頑丈さを考えるとシンワしかない。
(木工編)30cmの差し金と5m巻き尺があれば99%の測定ができます。シンワの巻き尺は両面印刷されていて表は横書き、裏は縦書き数字。巻き尺は頭が壊れやすいけどシンワの頭はピン3本止めで頑丈百均や3流品はここがピン1本止めで弱い。数字印刷も経年劣化しない。またバネの戻りもねじれもなく新品状態を長期間保持。差し金もシンワの鉄は曲がりに強い。3流品はすぐ曲がる。測定時は値段の高い段付きのより、安い平面の方が扱いやすい。強度は段付きの方が少しだけ強いけど、どちらも強い力をかけると曲がるのは同じ。
(裁縫クロス編)裁縫とクロスはカッティングに定規を使う、なので60cmと50cmの直線定規を使う。差し金も使うけど30cmだと短いので45cmのを使う。カッターはもちろんオルファ30度刃、45度刃に比較して切れ味が抜群で切れ残しが出にくい、力もそれほどいらない。布や紙など薄い素材は30度でないと切れないので裁縫とクロスカッティングの最重要ツール
(金工編)木工は1mm単位だけど金属加工は0.1mm単位、なので定規では誤差大きく使えないのでノギスを使う。ノギスはデジタルなど、いろいろ販売されているけど50年前はアナログしかなかった。ノギスといえばミツトヨ他のメーカーのは使ったことないし今後も使う気がない。
自転車整備にはノギスは必須アイテム。ケーブル、シートピラー、ハンドルの直径やフレームチューブ、ベアリングなどサイズがわからなければ整備できない部品が沢山ある。日本製は表記サイズと実測は同じなんだけど中国製はまるで違うことも多く、スポークやニップルの太さなど1度実測してからでないと怖くて使えない部品もある。その時はノギスがないと測れません。
シンワの定規もノギスも頑丈で何十年も使えます、50年使ってきて工具の寿命は人間の寿命より長いと思えてきた。カンナやノミなど江戸時代の工具でもバリバリに使える、若い時には気づかなかったけど工具は一生つきあう相棒、だから少しくらいの値段差がある位なら「良い物買った方が絶対正解」
昭和のホーザン振り取り台やチェーンカッターなど、その時買ってなければ2度と買えない名工具もあります。人間の歴史は常に進化しているのではなく「退化」して悪い物しか買えない時代(21世紀?)もあるので、新しければいいって物ではないです。つづく
ミツトモ。
巻き尺(コンベックス)の話
巻き尺の測定は、先端の爪を引っ掛けて測る方法と、押し当てて測る方法があります。爪を引っ掛けて測る場合と押し当てて測る場合では、爪の厚さ分だけ測定結果がズレます。そこで、このズレを補正するために、あえて爪の厚さ分動くように製造されています。この補正の機能を「0点補正移動爪」と言います。
爪を引っ掛けて測る場合、爪の「内側」が0点になります。
爪を押し当てて測る場合、爪の「外側」が0点になります。
動く部分は壊れる!
巻き尺で一番壊れるのがこの爪部分。ここを頑丈に作っているものは一流品です(百均のは爪がすぐ折れる)僕はシンワの定規を使っていますがシンワの巻き尺は爪を止めるピンが3本ありねじれに強い。
この巻き尺の移動爪を理解していないと正確な測定はできません。引っかけて計測しても引っ張らないと1mmの誤差が出ます。押しつける時もしっかり押さえないと誤差が出る。
巻き尺で測る時は爪が動くと頭に叩き込んで正確に計測してください。精度を求める時は巻き尺は使わない方がいいです。
モンキーレンチ
ダイヤルを回すと動き、どんなサイズのナットでもつかめるレンチ。ナットをなめるので正規の工具はメガネレンチだけど複数のメガネレンチを持ち運ぶのが大変な時やインチ、ミリネジが混合する時、とりあえずこれ1本あれば何とかなる。
僕が使った中で最高品質はTOPのモンキー、50年前に買ったものが一度もメンテせず今でもスルスル動きピタッと締まる。自転車のBB右ワンを開閉したり洗濯機のネジをこれで回してきた。中学生の時に買ったけど当時新聞配達夕刊1ヶ月のバイト代が5000円だったけど、このモンキーも5000円だった。日本橋の道具屋街に買いに行き40mm開くのがこれしかなく「高い」と思いながら買った。50年たってもスルスル動く最高品質のモンキーを最初に買ってた、今から思うと安い買い物だった。
モンキーは可動部分にミシン油を差しメンテする。3流品は固着するので時々メンテ必要。また締め切った時に口がピタッと閉じ頭がそろうのが一流品。ピタッと閉じない物や頭が段違いのや動かすとガタガタ遊びのあるものはダメ。工具は一生物なので買う時はいいもの選んで買いましょう。ゴミ工具と一生つきあうなんて不幸、いい工具は幸せを運んでくる・・ウキウキ。
ぼくのお気に入りの超軽量モンキーレンチも、確認してみたらTOP製でした(上段)
モンキレンチ(HX)
https://www.toptools.co.jp/products/monkeywrench_hx/
これは全長100mm重量(実測)49gと超小型軽量ながら15mm開き、ペダルレンチのサイズまでカバーします。ぼくはかなり昔から「15mm開く小さなモンキー」を、携帯工具用として欲しいと思っていて、かなり昔から探していたのですが、見つかりませんでした。そして、つい数年前にモノタロウで見つけてようやく手にする事が出来ました。Youtubeの製品紹介動画が4年前にアップされていたので、おそらくその頃に新発売されたのだと思います。TOP製モンキーは小さくても確かに品質良いですね!今年の夏のキャンプにも持って行きました。
下段のは、ロブテックス製です。
ハイブリッドモンキレンチ UM
https://www.lobtex.co.jp/products/tabid/140/pdid/UM/catid/10/Default.aspx
こちらは全長150mm重量(実測)87gで24mm開きます。これも触った感じ、品質はなかなか良いと思います。これも小型軽量に惹かれてつい買ってしまったのですが、これも色々活用しようと思います。
高枝切りバサミを研ぐ
切れないと高枝切りバサミがきた。研ぐには分解するしかないなあ、バラシちゃえ。バネが入ってるので戻す時大変そう。刃は小さい両刃、一度も研いでないので刃が立ってない。まず400番ダイヤで20分返りが出るまで研ぐ、一度も研いでない刃は荒研ぎに時間がかかる。刃が立ったのでダイヤ1000番で面を慣らす、さらにキング人工砥石で整える、これで十分切れるけど最後に棟梁にもらった6000仕上げ砥石で鏡面出るまで仕上げ、刃を確認するため少し触れたら指の皮が切れた。刃に触れたら血だらけなりそう。研ぎ終了。
ここからが大変だった。バネを押さえて元通りの位置に戻しながらネジを締める。直接刃を押さえれば簡単なんだけど、指が切れるので触れられない。うーん「どうやってバネ戻す??」連立方程式解く感じ・・ワクワク。ひらめいた、やったぁネジ通った。締め込んでいくと刃が定位置に戻っていく。完成した!
近くの枝を試し切りしてもらう。「何これ、切れすぎ」ほんと。高枝切りバサミ研ぎは初めての経験、しかし研いだ刃をバネ押さえて元に戻すの大変だった。コツつかんだので次回やる時はバッチリできる。ミッションクリア!