自転車道場

ロードバイクの進化の歴史 / 50

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ディープインパクト 2024/09/16 (月) 14:36:16 修正

自転車と女たちの世紀(革命は車輪に乗って)
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500ページ近くある本。自転車の歴史と人権、民主主義、6日間レース、ツールドフランス、ジロデイタリアと女性の関係、知らないことばっかり、自転車が人類の歴史を変えたのがよくわかる。
 たとえばヒットラーは自転車嫌いでドイツ国内で自転車を禁止し占領地でも反自転車法を作り自転車を禁止、市民はレジスタンスに自転車を使い抵抗した。燃料が不足してくると占領地で自転車を没収しオランダでは国内にあった400万台の自転車のうち200万台を没収(パクり)1945年の連合軍オランダ解放の時、ドイツ兵はオランダの自転車をパクってドイツ本国へ逃げた。その恨みは戦後何十年も続き、ワールドカップでオランダがドイツと対戦した時、「我々の自転車を返せ!」とドイツチームに罵声を浴びせた。
 自転車は占領地の飢饉を防ぐ役割も担っていた。ドイツが自転車を没収したため食料を調達できなくなった市民は飢饉になり1943年44年にオランダでは大飢饉が発生。

 第2の性を書いたボーヴォワールはドイツ軍占領下のパリで生きるために自転車の乗り方を覚え自転車を使ってドイツ軍にレジスタンスをした。1940年から自転車に乗り出したボーヴォワールは自転車を自由へのマシンと呼び、占領下のパリで生き抜くための足として使った。

 自転車は1867年にパリでペダルを前輪につけただるま型自転車が作られ、ペニーファージング車として流行した。当時木や鉄のリムそのままで走ったり、ゴムの塊のタイヤしかなく乗り心地は最悪、しかし自転車レースは盛んに開催されだるま型自転車は普及した。この時代、女性たちはコルセットとヴィクトリア調ロングドレス(地面を引きずり歩く)で、その服装ではとても自転車に乗れない。女性が自転車に乗るのは「子どもが産めなくなる」「あばずれ」とレッテルを貼られ法律で禁止された(今のアフガニスタンやイスラムの国のように)女性たちはズボンやブルマで乗った。
 女らしさとは家庭で閉じこもり家族の面倒を見ること、自転車に乗る女性の絵は「手におえないあばずれ女」を象徴していた。ニュージーランドの女性参政権論者ケイドシェパードは1893年に世界初の普通選挙制をニュージーランドに作った、その時ニュージー初の女性サイクリングクラブも設立した。
 19世紀後半から20世紀中頃の自動車が普及するまでは自転車が富裕層の足として使われ各地にサイクリングクラブが設立された。クラブ会員になるのは名誉で今のライオンズクラブのような組織だった。しかし女性は締め出されメンバーは男性に限るクラブばかりだった。そこで女性たちは女性だけのサイクリングクラブを立ち上げた。女性が自転車に乗るのは様々な男尊女卑の習慣、歴史との戦いであり並大抵ではない、現在ツールドフランスもジロデイタリアも女性は参加できない規則がある。昔6日間レースで男性より圧倒的に強い女性選手がいた、当時の男性最速プロ選手より速くレースではぶっちぎりだった。しかし歴史ある自転車レースには女性だからと出場できなかった。そこで正式ではなくオブザーバーとしてゲスト参加し驚異的な成績を残した。
 ジロデイタリアにも長い歴史の中で一人だけ女性が参加し完走している、この女性は正式招待された選手。これは戦時中で男性選手が徴兵され少なくなったという特殊要因があったけど出場させてみると「女性は過酷なロードレースは走れないや男性より劣る」という先入観はすべて吹き飛び互角に勝負した。

 世界を回れ!
 2012年12月イタリア人女性サイクリスト ジュリアナ・バーニングが152日間世界一周のギネス記録を打ち立てた。彼女の世界一周も女性だからとスポンサーがなく途中で何度もあきらめかけ、最後はクラウドファンディングで支援されゴールを達成した。
 しかし驚くべきはそれより100年以上前の1894年に世界一周をしたアニーという女性がいたこと。当時の自転車は20kg以上あり今より部品も悪かった。アニーの挑戦は女性が自転車で世界一周できるかという賭が発端とされている、19世紀終わりは世界一周ブームで気球による80日間世界一周や様々な物を使った世界一周チャレンジが行われた。アニーは日本の横浜にも来ている。
 
「女性はひとりで旅行はできない、危ない、やめとけ」今でも自転車旅行を女性が一人ですると言えば必ず言われる。僕が日本一周した時に会った女性ソロサイクリストは真っ黒に日焼けし、外観は小僧で、実際に話するまで絶対女性だとはわからなかった。髪を長くすると引っ張られたり、自動車にあおられたりするので短く切ってると言ってた。

 この本を読むと女性が自転車に乗るというのは「社会の常識との戦いなんだ」とリアルにわかる。僕も小学生の時に競輪の服を着て走ってると罵声を浴びせられたり、自動車に幅寄せされたり、店に寄ると「出て行け」と言われたり、競輪は恨まれてるんだなあと思うことがあった。昔は競走用自転車は競輪選手しか乗っていなかった。ピストで走る=競輪選手、小学生でも関係ない。僕の場合は記念競輪の上下ウェアで走ってたのでプロと思われてもおかしくない。そういう経験もあるので女性が自転車乗るだけで「あばずれ」と言われたり差別されたりした時の怒りは少しわかる。世の中にはクソみたいなしきたりを強制し弱者を踏みつける奴がいる。自転車乗る女性は最大の被害者。

 ツールドフランスの優勝賞金は2億から5億、それに対して女性版ツールの優勝賞金は20万から100万円、ロードの世界は男女格差が100倍位ある。ツールは最も保守的な男尊女卑運営をしている。それに対してMTB競技は男女の格差がなく賞金は同じだそうです。(MTBの世界はよく知らない)競輪も男女の賞金格差はあるけどツールほどひどくない、自転車競技で女性が獲得できる賞金で言えば一番いい方じゃないかなと思う。(競輪は結構民主的??)

 世界で女性が自転車に乗る国は民主国家で人権が守られている国、日本の女性の地位は世界120番ですから・・「民主度を見るには街で女性が自転車乗ってるかどうかを見ればいい」また暇な時に読んで見て。

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