「ギリガンさん! あれ! あれ何ですか!」 「何だ。浮標/ブイを見たことがないのか」 ゴールドスタイン商業艦隊は、今日も星の内海を征く。必要なものを必要な分だけ。そのポリシーある限り、彼らの商いに終わりはない。 そんな艦に、一人の少年。アトランティスより拾い上げた、好奇心旺盛な少年。きっと良い旅人になるだろうとギリガンが拾い上げたのだ。 彼がギリガンに問うたのは、その目線の先にあるもの。鋼で出来た、巨大な「棒」のようなもの。或いは、故郷にある星の塔に似ているかもしれない。あんなものがあるとは、彼は知らなかったのだ。 「本来ならば自分で調べろと言うところだが、アレのことをまともに知っているものはいない。という訳で特別にオレ様が解説してやろう」 本当ですか!とはしゃぐ少年を抑えながら、ギリガンは端的に告げる。 「アレもな、喪失帯……つまりはお前のアトランティスのような、『世界』の一つよ。誰が呼んだか知らぬが、エピタフと呼ばれている」 「エピタフ……?」 「墓碑銘、という意味だ。墓石のこと……だと言っても伝わらんか」 少し、懐かしむような顔を見せるも、すぐに引っ込める。その感傷は、今は不要なものだ。 「つまりは、墓だ。それも命の為の墓ではない。この艦のような、絡繰じかけの為の墓だ」 立て板に水を流すように、朗々と告げる。それは、喪失帯ならざる本来の世界の歴史。地に生まれ、数を増やし、文明を築き上げ、星の輝きに手を伸ばした、人類史の歩み。 遙かな天へ階を掛け、そして昇っていったもの達がいた。それを支えたのは、数え切れないほどの絡繰じかけ達。 「その骸を葬る為の墓こそが、あのエピタフ。そう言われている」 「絡繰じかけの、墓。でも、絡繰に命は」 「ないのかもしれぬ。しかし、あるのかもしれぬ。喪失帯には、実際に命を持つ絡繰は存在するぞ?」 「えっ!」 「フハハハハハ!! よく覚えておけ! このオレ様の言葉が本当かどうか、そのまま鵜呑みにしてはまだまだだ!! まずは自分で、得た情報を確かめてみることだな!!」 「えーっ、どっちなんですかぁ!?」 「知らん!! 自分で考えてみるがいい! フッハハハハハ!」 事象を知り、流動を以て価値を生じる。その眼は、ふくれっ面をした少年を、どこか面白そうな色を称えながら、じっと見つめていた。
きょう、きょう。ネムリドリが声を上げて飛んでいく。 アナトリアから来たという「キシ」様は、その姿を物珍しそうに眺めている。 「なあ、船長さん。あの鳥、眠ってないか?」 「そう見えるだけさ。ネムリドリは、あれで起きてるんだよ」 「羽撃きもしてないが……」 「風に乗ってるのさ。俺達の乗ってる風舟と一緒だよ」 「ははーあ。アトランティスには変な生き物がいるもんだなあ」 呑気な顔で眺めているが、彼は、繁殖期のネムリドリが風舟を襲うくらい凶暴だということを知らないのだ。それを知っていれば、あんな気の抜けた顔はできまい。 それでも、実際に危機となれば頼りになる。ずっと前に、爺様達が『大蛇』をやっつけた時も、彼らが助けてくれたのだ。今度も、助けてくれるだろう。 「それで? 目的地の区画まではまだなのかい。地元の狩人がどうのこうのできないくらい増えてるんだろう、そのハネウシとやらは」 「トビウシだよ。ああ、もう少しさ。今日は風の機嫌がいいからな」 遠く、星の塔を見る。今日もあの塔は、世界を静かに見守ってくれている。空は青く、太陽の日差しは柔らかい。例えいつか滅ぶのだとしても、この一瞬の暖かさは、きっと価値のあるものだ。 「……今日も、世界にアトラスの恵みは満ちている」 風舟が、翼をはためかせた。
「南無妙法蓮華経……南無妙法蓮華経……」 タービンの轟音。歯車の作動音。からから、ころころ、なんだかよくわからないものが、あちらこちらへ動く音。 いつものように稼働するこの要塞の中で、いつものように、作業に従事する労働者達の、呪いのような言葉が響き渡る。 ショウダイ。極東の……黄色い猿などが有難がる聖句もどき。ブッディズムの何とかいう牧師だか神父だかが唱えたらしいが、一体そんなものを唱えて何になる。 誰もがそう思ってはいるはずなのだ。だが、それでも、縋るものがない。私達の信仰は、私達の祈りは、粉微塵に打ち砕かれた。 神は我らを救ってくださらない。機械仕掛けの怪物は、世界を焼き滅ぼし切るまで、動き続ける。それくらいの事は、嫌でも理解させられている。 あの東洋人は、文句をつけることはない。我々があちらを厭うように、あちらも我々を厭う。しかし、信仰をすることを拒むことはない。 その態度は、慈悲なのか、諦観か。あの東洋人がこの世界に溶け込むことを拒絶する以上、推測でしかない。それでも、救いではあるのだ。
「南無妙法蓮華経……南無妙法蓮華経……」 今日も私達は、意味もわからぬ言葉に縋り続ける。いつか、この惨劇が幕を下ろし、せめて安らかな死を迎えることができるように。
「……此処が地獄だと言うなら、貴方の言う通りになっているわね。ミスター・ハルゼー」
回答ありがとうございます。 原則的には歴代の当主だけがハウスマンの存在を知る、というわけですね。 確かに、家自体がかつて滅びた魔導一族で根源到達のために用いられた大礼装との事実が詳らかにされれば魔術協会の介入は避けられないでしょうし最悪の場合では封印指定という名目でハウスマンが接収される可能性もあります。 ミオソティスはダフォディルの魔術を受け継いでいない分家ですから、こじつけ染みた難癖の十や二十降りかかるのは想像に難くありません。仰るとおりハウスマンの存在はミオソティスの内部でも秘匿されて然るべきなのでしょう。
アイザックはハウスマンの存在を知らないと思う 色々あって衰退したダフォディル家が残した最後の遺産を万が一にも他の魔術師に知られないよう、「当主になれば自ずとわかる」とだけ後継者に伝え、記憶の継承で初めてわかるようにして情報を隠してるんじゃないかな
ところで。継承以前のアイザックとハウスマンの関係は如何しましょう? 当主になって存在を識ったのか、或いは継承以前からも知己だったのか いずれにせよハウスマンは過去のアイザックを現代の三姉妹同様に見守りよく見知っていたはずですが、認識が相互的なのか、一方的なのかは大切だと思います
お姉ちゃんは一族の宿命というか在り方というかは受け入れてるだろうからお父さんに対しても父親としての認識(家族愛)から当主としての認識(尊敬や畏怖?)に変わってきてる……かなぁ ただ自分が後を本当に継げるのかな…?っていう不安は常にあるから両親(母がワニなのを知っているかは未定かな?)にはちょっとよそよそしい感じになってしまったりなんだりはしていそう 妹も出来がいい子たちばっかりだから余計にプレッシャーが累積するから、お姉ちゃん家族の中では基本的に家との会話が一番肩身狭くないかもとか今考えた
末女は魔眼で過去覗くのでお父さんが対策取ってないと覗けるけど、たぶん魔術師としてはガチ勢っぽいし記憶を扱う魔術師が記憶に対する対策を取ってないわけがないから通常は無理だろうなぁ。 魔眼持ってるってことは家族に知れ渡ってるだろうし……。覗けても軽い記憶かなぁ。 出力自体は魔術より末妹の魔眼のが上だろうけど対策があれば完全でなくとも防げるだろうし…。 逆に末女は回路は多分結構あっても刻印がなくて能力は魔眼によるパワーが大きいからお父さんに覗かれる場合になにか出来るかどうか。 そこから考えると他人の過去は魔眼で覗けるのに唯一覗けないお父さんのことは、優しくて好きだけど心の奥では記憶覗けないし信用できないかもと思ってるかもしれないな末女は…。 もしGルートに入ったときにどうやって倒せば良いんだ…!
そういえば家族のみんなはお父さんのことどう思ってるんだろう 末女は過去のお父さん知らないだろうけど他は過去と現在のお父さん評価が違うだろうし
初代が魔眼持ちだし、ミオソティス家の中には魔眼保持者が他にもいたんだろう もしかしたら肉体変化で魔眼も再現しようと考えてたかもしれない
初代の設定はぼんやりとしか考えてなかったけど末女が初代と同じ性別で魔眼持ちというの良い… 容姿もそっくりだったらお父さんが「あの頃の私にそっくりだ」とか言いそう
娘達はそれぞれ方向性の違う完成形に成長しているんだ… お母さん凄い
記憶だけ引き継いでるからちょっとややこしいミオソティスの設定 自分の記憶を失って『歴代様』だけの記憶を引き継ぐじゃなくて、自分の記憶も保持しつつ『歴代様』の記憶も持っているから余計ややこしくなってる
こういうのって普通は初代がずっと人格乗っ取ってるってのが多いけどミオソティス家は 「記憶『だけ』は初代から受け継がれてるけど魂や起源などは当人依存、初代とは全くの別」ってややこしい設定なので 初代とそこから長い年月を受け継いで変質してきた人格と記憶を区別するために『歴代様』って呼称が生まれたりしてましたね。 今のお父さんは刻印と記憶引き継いでるので当代の『歴代様』でもあるってことに。
ああ、あと与太話でワニお母さんが神性持ちみたいな凄い母体だから 長女:ダフォディル家(肉体変化系魔術師路線)の完成形 次女:人間の完成形(魔術を必要としないから完全に回路がなくて身体能力や頭脳が超人) 末女:ミオソティス家(記憶操作系魔術師路線)の完成形 なんじゃね?この家族やばくね?とかそんな話があったような。
>・プロシージャラル・メモリー お父さんつよっ… 突然相手がバランス崩してどうやって歩けばいいんだ!?って困惑しているところに解説するシーンが見える。 あとメティスのとこで「起動」が「軌道」になってますね。
そういえばこの間与太話で「最終的な候補である長女が女性だから初代も女性では?」「初代は刻印や回路が育ってないので魔術師として能力は低かったが、魔眼持ちだったのでは?」みたいな話があったけどどう思います? ついでに末女も刻印受け継いでないけど感情操作などが出来るのは初代に似ている魔眼持ちだからって方向性になりました。
そして未だに末妹の名前が決まらない… 今現在メモ帳に有るのはミリーファミュータ・ミオソティス Family(家族)+Mutable(可変)という安易さ……響きがいい名前になりたい。
お父さんのプロフィールtxt https://www.dropbox.com/s/9g30h5s5vv6phae/お父さん.txt?dl=0 こんな感じでどうだろうか
月の聖杯戦争をやりたいですぞー!!
ルールは上に書いてあるのと同じで。追加ルールでバトルの仕様変更や実績が解放されました。
5月16日頃、18時以降(20時ぐらい?)~参加人数によって変動(参加者4人で想定4~5時間前後での終了) 募集人数4~8人(参加人数が多い場合は翌日にまたがって開催となる場合があります)
参加希望者はこの掲示板でレスしてください。 サーヴァントのシートとマスターのシートは当日公開、またはこの掲示板で作成相談してもらっても構いません。
継承コワイ! お疲れ様です
ようやく考えをある程度まとめれた気がする… 色々考えた結果お父さんは多分廃人になる
ミオソティス家の魔術刻印には初代当主から脈々と続く記憶が保存されている。 当主になるということは刻印と共にこの記憶も同時に引き継がれる。 しかし人格とは記憶の積み重ねで大部分が構成される為、魔術刻印を受け継いだ人間は本来の人格を塗りつぶされ、ほぼ別人格の人間になる。 魔術刻印を受け継いだ者は、それまでの記憶を魔術刻印に吸収され自動的に保存される。 言い換えると全ての記憶が肉体に残っておらず、魔術刻印にのみ記憶が存在している。 そのため魔術刻印を次代の当主などに渡し、魔術刻印が肉体に存在しない状態になった場合、記憶が存在しない抜け殻が生まれる。 それまで生きてきた自分の思い出、知識といった全ての記憶を失う為、継承を終わらせた歴代の当主全員が廃人同然の状態になっている。 なお抜け殻となった肉体はほとんどの場合、継承を済ませた新当主が魔術礼装などの素材として使用されている。 アイザックに刻印を渡した先代当主も廃人になり、その後肉体のほとんどが素材になった。
ミオソティス家の始まりは、今は存在しない魔術師であるダフォディル一族を支援していた分家の一族。 ミオソティスの魔術刻印は元々ダフォディル一族の刻印から株分けされた物。 主にダフォディル一族に何かあったときようのスペア兼「宿木館」への材料としての死体提供も行う。 この時「宿木館」へ組み込まれる際にできるだけ多くの知識を忘れず記憶しやすいようにと魔術を開発。 これこそがミオソティス家が扱う記憶術の始まりであり、分家である彼らが家名をミオソティスへと変えたタイミングだった。 ダフォディル一族が根源へ辿り着く為に様々な支援をしてきた彼らであったが、ダフォディル一族最後の魔術師「終わりの当主」が命を落としダフォディル一族は根源への到達に失敗。 この時支援する立場であった彼らは、ダフォディル一族の願いである根源到達の願いを受け継ぎ、ダフォディル一族は表舞台から姿を消した。
/ありがとうございましたー /お疲れ様です!
/お疲れ様でした! /私も寝ようと思うので、この辺でお開きにしましょう。ありがとうございました!
/お疲れ様でした!
>> 148 「あー……一応誤解ないように言うけど、好きで集めてる訳じゃないからね!? 先祖代々続けられてきたからやめるのやめられないだけ……迷惑な話だよね。 こっちは見たくもない死に様を見せつけられ続けるし、行きたくもない修羅場に放り込まれるし……!」
でも、と彼女は続ける
「だからこそ、死がなくなったこの世界には感謝してる。もう見ないでいい悲劇は生まれないんだから」 「魔術師から足を洗えたことのほうがでかいんじゃないか?」 「そ、そうだけど!あ、でも死には詳しいよ? いろいろ語り合おっか!」
>> 150 そう話そうとして、刀根の言葉が少し刺さった。 不本意とはいえ、最終的に死の蒐集という道を選んだのは彼女だ。 その結果、最悪の災厄を逃したのも、また──────
「ご、ごめんね…怖がらせるつもりは無かったんだけど」
彼女はその責任を負うつもりでいる。だからこそ世界中を渡り歩く。 故に
「まぁ大丈夫よ! もしそいつら…ルナティクスっていうらしいけど、いたらすぐ連絡して! 秒で駆けつけるから! 私とビーシュマが! 一網打尽にしてやるから! だから、ええ、安心して安眠なさい!お姉さんが常についていると思いなさい! 寝不足はお肌に敵だからね!」
故に彼女は胸を張り己を鼓舞する。本来ならば背負わなくても良い業を彼女は背負う。 何故か。それが彼女の決めた道だからだ。己の道は曲げず、違わず、進み続ける。 不本意でも自分が選んだ道の責任は果たす。故に彼女は宣言する
「私に任せなさい!いつでも守ってあげるから!」
/すいません一足先に離脱します!お疲れ様でした!楽しかったです!
>> 147 ……正直に言ってしまえば。理解不能、というのが、感想だった。 彼女は魔術世界について詳しい訳ではない。高慢ちきで、冷酷で、わけのわからない存在。魔術師などそういうものであろう、というのが彼女の認識である。 従って、相手がその魔術師であった事実、そしてその命題について言えば、厭悪すら抱いた。 死に際を集めるなど、何たる悪趣味か。それが故に妙な犯罪者が生まれ、剰え徒党を組んで地元にいるかもしれないとは。何たる大迷惑な女であろう――――。 しかし、その後に続けた言葉で、その印象は砕かれた。己の魔術師としての活動によって生じた「かもしれない」問題を、わざわざ解決に来る。彼女の知る魔術師とは、あまりにもかけ離れた価値観。 その言葉に嘘がない、と判断できる程度には、彼女の眼差しは真剣であり、それは自身の認識と著しい齟齬を起こしており、
「……そんな傍迷惑なんが近くにおるとか、怖ぁて寝られんやないか」
……だから、彼女は理解を放棄した。 その代わり、本当にそうなのだろう、と、信じてみることにした。
「……取り敢えず、人の集まるところに案内だけしたる。その後は……どうなるかわからんけど」 「聞いてしもたしな。まあ、手伝うたるわ」
わざわざ面倒を背負い込んだ。きっと、自分のサーヴァントは笑うだろう。組の大工達には迷惑をかけることになるかもしれない。 ただ、見過ごすという選択肢を取るくらいなら、そちらの方がよい。目に見えたバカデカいリスクの回避は、組織の長として当然だ。何より、彼女が追跡に費やしてきた年月と決意には、敬意を払うべきだ。 己が宮大工としての技術的血脈を継ぐ以上、それに対する敬意だけは覆してはならない。 歴史、そして想い。それだけは。
>> 148 だからこそ、尾名の言葉には、何となく得心がいった。
「……朽ち果てて、何ものうなっても、本来の形がのうなっても。覚えられとる限り、それは在る」
例えば、最早掻き消えてしまった、嘗ての梅田の姿。年柄年中工事が繰り返され、生きているように蠢いていた、建造物と人の群れ。 それは、現実からは失われた景色だ。だが、それはまだ自分の中にある。 懐古し、共感する者は次第に少なくなる。されど、それが続く限り、「梅田」ならざる梅田は消え去ることはない。
「ややこい話は得意やないけど、アンタの言うこと、中々おもろいな。行き道で、ゆっくり聞かしてもろても構わへんか?」
歩き始めながら、刀根は少し笑った。自分らしくはないかもしれないが、たまにはそういうことがあってもいいだろう。
/了解です!
>> 146 知識の牙城である大学だが、彼らは普遍的な知を探求する組織であり、彼もまたその例に漏れない。 基本的には「都市に潜む闇」のような問題には不干渉であり、興味を持たない者が殆どだ。それ故に「知り得ないものは知らない」。 外部から提供された旧梅田地下街の地図などはアーカイブとして存在するが、組織として法を犯す場所では基本的にない。それ故に彼は、彼女が機密の管理者である事、その迷宮が機密の場所である事実の双方を知り得なかったのである。
「戦争では見栄えは悪いだろうがね。今後ともよろしく」
>> 147 『死に際の思いだと?とんだマッドサイエンティストだな』
「…何やら、とんでもない話に片足を突っ込んでしまった様だね」
少女の口から語られた事情は、通常の人生を歩んできたと言える彼らにとっては常軌を逸した会話に聞こえるものだった。
『どうする。協力するのか?』
「もちろん。恩人だからね。…って、ここはもう駅前か」 「まあ、案内はさせてもらうよ。ゆっくり話そうじゃないか。死については、僕も平素から考えている命題だ」
着いてきてくれと言う具合に、彼は歩き出す。
「死と言うのは、肉体が滅んだ時には限らないさ。本当の死は…それが、忘れられた時に訪れるものだからね」
>> 145 「あららサーヴァントかぁー。ごめんなさいねぇお姉ちゃん勘違いしちゃって、飴ちゃんあげるわね?」
謝罪をしながら名残惜しそうに手を放してシュレディンガーを開放するエメリア。 尾名の自己紹介を聞いて、彼女自身も己の名を告げる。
「私はエメリア、エメリア・フィーネ・グランツェール。イギリスから日本までやってきました! こっちのでっかいのはその通り、ビーシュマ。良いサーヴァントかー、私もそう思ってる!」
薄い胸を張りながら、尾名の言葉にどこか誇らしげに彼女は言った。
「駅かー、確かに人が集まる場所って言ったらこれ以上は無いわよね。 "あいつら"もそういう所にいそうだし、うん。案内してもらおうっかな」
>> 146 「んー、まぁいっか。周囲にいたらいたでその時だし」 「お前なぁ……。いつもそうやって行き当たりばったりで痛い目を見るだろうに」
まぁまぁ、と眉をしかめるビーシュマを宥めながら少女は説明を開始する。
「お姉さんね、こう見えて長生きしてる身なんだけど、昔は色んな場所行ってたの。 人が死ぬとき、どんな思いで死ぬのかって集める命題だったから、そのためにね。 ……その時、たった1人だけ逃した、すっごいやばい奴がいて、そいつが今徒党を組んでるって言うの」
少し寂しそうに、少女は空を見ながら話す。その胸に秘めるは、 その歩みの中で死んでいった人々への追悼か、あるいはその"奴"を逃がした事への、自責の念か。
「凶悪犯罪を起こしてるらしいから、こりゃ逃がした私の責任!? って思ってね。 だから私が直接ふんじばってやろうって話し! 人死になんてもう滅多に起こらなくなったから、 命題も守らなくていいしね! 代わりに魔術師は廃業したけど! 後悔してないよ!」
からからと、あっけらかんとした態度で笑いながら少女は続けた。
「だって、もう後悔しながら死んでいく人は、いないって事だからね」
/ごめん時間的に次がラストかも
>> 145 「謎の迷宮……な? そらまた、災難やな」
相手には聞こえないように、少し鼻を鳴らす。自分の正体を知っていて、この往来でその件について宣っているのならば、少々「対応」を考えねばならなかったが……どうやらその気配はない。 単純に、ワープの事故で到達してしまったということだろう。密かに準備していた《令呪》によるカレンへの通報を中断する。 基本的に、あの迷宮の存在は厳秘だ。噂程度ならばいい。カレンが適当に、廃棄街領域で対応するだろう。あの迷宮への到達法を知らないままに動く程度の者は、彼処へ入るべきではないのだ。 ともあれ、到達していた、という事実自体が問題である。後々、報告をする必要はあるだろう。
「ま、今度テレビで見たら応援したるわ。えーと……ドゥオイメイ、でええんかな」
>> 142 ……さて。もう一組、ヨソモンであるでっかいのとちっちゃいの。
「ほー。アンタ、見ただけで分かるんか。流石にサーヴァントやな」 「マハーバーラタか。確か、インドの物語やったっけ? 知り合いが言うとったわ」
尾名の言葉を聞きつつ、彼女は二人に胡乱な眼を向ける。
「……あたしは元々梅田の出身やから、助けてくれた礼もあるし、案内くらいしたるけど。ある連中って何やの?」
>> 141 「すまないね…滅多に起こらないんだが…」 「通天閣の屋上だの、謎の迷宮だのによく迷い込むんだ。今回はまだましな方さ。怪我がなくてよかった」
眼鏡を直しながら、気さくな様子の女性に弁明する。
『コイツの難解な説明で理解するか。さてはもう知っているのか?』
「何度もTVに映されているじゃないか。今更だよ」
『私は目立つのが嫌いなんだ。反対したぞ』
「良いじゃないか…おっと、悪いね」
彼はサーヴァントと思しき男の腕から離れ、茶色のコートから埃を払って立ち上がった。
>> 142 『やめろ、撫でるな。私は人間だ…』
そうは言いつつも心地よさから体を預けるシュレーディンガーを尻目に、改めて、自らを間一髪で救い出した恩人に向き直る。
「私は尾名畦(ドゥオイメイ・ロウ)。天王寺の大学で教授をしている。…さて、キミは…」
じっと、眼前の巨大なサーヴァントを見据える。 筋骨隆々で天を衝くような肉体、おそらくは神代の英霊に属するだろう。 顔付きや鼻だち、服装などをまじまじと眺めると、彼は改めて男の顔を見た。
「『マハーバーラタ』の英霊かな。それもかなり強者の戦士のようだ。」 「なるほど、ビーシュマか。それなら納得だ。良いサーヴァントに巡り会えたものだね、キミ」
どこか貫禄を見いだせる少女を見て言う。自己紹介によって判明する形となったが、外見の情報のみでかなり近いところまでは迫ったのではないだろうか。 これは彼の独自の力だった。知識からある程度の真名推察を行う技能。芸としては、彼が自信を持っている方の分野であった。
「助けてもらったお礼だ、それぐらいならお安い御用さ。もっとも僕はこの辺の土地勘がなくてね…駅のあたりぐらいしか、ピンとこないな。悪いね」
/ごめーん! 放つオーラとかに置き換えてください! 急いで打ったせいか…
/刀根棟梁は今スーツ姿ですぞー!
>> 140 「グァハハハハハ! 良いって事よォ! 助けろと言ったのはマスターだからな! 礼はこっちのちっこいのに言いな!」 「えー? それにしてはアーちゃんもノリノリで助けに行ってなかった~? って、あれ? ありがとうが2つ?」
助けた1人と1匹を見ながらエメリアが疑問符を浮かべる。 助けた人影は1人だったのに、明らかに声が2つ聞こえたからだ。 そして百四十(ry年生きた彼女は、その長年生きた勘から、その声が猫から放たれたものだと気付いた。
「えー? 何この子使い魔ー!? 可愛いー!」
命の危機……とまではいかないが、けがを救った事など忘れて、エメリアはシュレディンガーの頭を撫でまわす。 その様子は少女が猫をかわいがるというより、老人が猫と戯れる様を連想とさせる仕草であった。
>> 141 「さて……お前も危なかったな。ケガは無いか?」
マスターが猫に夢中になっている最中、ビーシュマは刀根に声をかける。 その服装から、ただものではないとビーシュマも悟ったらしく、興味深そうに刀根を眺めていた。
「その服装を見るに…お前さんは職人か何かかい? 筋肉のつきようを見るに、女にしちゃあ随分と鍛えているように見えるな」
グァハハハハハ……と笑いながら、ビーシュマは続ける。
「名前は何ていう? 俺ぁビーシュマ。この猫と戯れているちっこいのがマスターのエメリアってぇんだ。 俺らはこの辺に来て日が浅い。"ある連中"も探している。良けりゃあこの辺で人が集まりそうな場所を教えてもらえやせんか?」
>> 139 >> 140 風。せめて頭だけは守らなければ、と咄嗟に構えた腕にも、また体にも、何の負担もかからない。 ゆっくりと構えを解いて見やれば、見知らぬ女と大男。そして大男に抱えられた梅田軍の男……と、抱えられたネコ。
「……助かったァーッ!」
どうやら、そういうことらしい。いくら“聖杯”が命を守るとは言っても、痛いものは痛いし、死ぬ時は死ぬ。ひとまず、そういうことはなくなったようであった。 梅田軍の男……ああそうだ、確か尾名畦とか言ったか。彼はそういえば、サーヴァントであるネコの力を借りてワープができるのだとか。謝罪の言葉を聞く限り、ワープ中の事故ということか。
「まあ、あたしは別に無事やったし、構へんよ。次は気ィつけよ」 「……んで、そっちの……アンタら、でっかいのとちっちゃいの。助けてくれた……んやな。取り敢えず、おおきにな」
平生の顔見知り故、ややぶっきらぼうではあったが、彼女もまた、自らを助けてくれたと思わしき二人に対し、謝辞を述べる。相手がヨソモンだろうが、小さい子供を前に眉根を寄せるほど狭量ではないのだ。
>> 138 「(マズい、人か…!)」
5m地点から地上に落下するまで概ね1秒。ちょうど真下に地上を歩く人が存在する事を確認するのはそう難しい事ではない。 それを避けるとなれば話は別だ。
『(因果系統樹上に回避ルートが無い…!避けられないか…)』
彼等自身の行動によってはもはや、地上の不運な女性の頭上への落下は防ぎようもないことを察知した彼等は、せめてその身をよじる事程度しか出来なかった。…だが。
>> 139 「!?」
晴天の霹靂のごとくに、彼らの肉体ごと攫っていく”何か”を、感覚として感じた。 ふわりとした、一種心臓に悪い浮遊感が襲うと共に、何の負傷もなく確固とした”地面”を感じた彼ら。 次に確認したのは、彼らを抱えていると思われる、あまりに浮世離れした強面の男だった。
『……やれやれ。助かったようだな……』
「……そのようだ。」
数秒かけて現状を理解すると、彼は地上の女性と、彼らを救った男たちの両方に声をかける。
「すまない。お騒がせしたね……。たまに起こる”事故”だよ。量子状態で移動していると外界の確認が疎かになってね……」
『私からも謝罪しよう。ともあれ助かった…』
人語を発する猫とともに謝罪する。しかし彼らはらこれでこの場が収まるとは思えない予感を感じてもいた。
そんなモザイク都市梅田の喧騒の中、一人の少女が歩む。
「いやぁ、久々に甘い物食べると若返った気分だわー。おねえさん満腹」 「グァハハハハハ! 若返った気分と言うがそう思う時点で歳を隠せてないなぁマスターよぉ!」
小学校半ば頃の身長の少女の隣を、追従するように大男が歩みながら呵々大笑する。 少女の名はエメリア・フィーネ・グランツェール。俗に『"嵐を呼ぶ女(ミス・アンタッチャブル)"』と呼ばれる、少し魔術に精通した者ならば名を知るほどに有名な魔術師。 あくまで高名ではなく、有名。その二つ名が示す通り、彼女が往く先々には必ずと言っていいほどに、嵐が吹き荒れると名高い女だ。
……こう見えて年寄り臭い言動をするが、命が惜しければ彼女に年齢の話題は避けることが良いだろう。
そしてその隣を歩むは、エメリアのサーヴァントである"剛健"のアーチャー。 名をビーシュマと言い、インド神話最大の叙事詩マハーバーラタにて、最強と言われる男である。
彼らは、いや正確に言えばエメリアは、ある男を探し出すために世界中を渡り歩いている。 生まれのロンドンからはるばる彼方の極東・日本まで、"ソレ"が存在するというか細い糸のような可能性を辿って、ここまで来た。 どんな噂でも、どんな小さな言の葉でも、"ソレ"がいると思われるならば即座に駆け付ける。 だが、彼女のその旅路が安寧なものであったか、と問われればその答えはNoとなる。
何故なら彼女は『"嵐を呼ぶ女(ミス・アンタッチャブル)"』。安寧な旅など、彼女の運命が許すはずがない。
「んぇぇ!? 上空に突然人が!? ダイナミックバンジー!?」 「戯けェ! こりゃ魔術か宝具だろうよ! マスター! "お前が探してる連中"の仲間かァ!?」 「んーわかんない! とりあえずキャッチして助けよ! 全速力!」 「おし来たァ!」
突如として空中に出現した人影を、けがをさせまいと駆け寄る大男と、その肩に乗った少女。 2人は人ごみをかき分けて駆け抜ける。自由落下する人影を、救助することは出来るのか────
刀根音子は、大工の棟梁である。梅田が「梅田」となる前から大阪の地に根付いている、日本最古の企業“金剛組”の技術的後継者、“奈落組”を引っ張る頭である。 大阪三都に存在するおよそ全ての古式建造物、或いは魔術的建造物の修繕維持を担うが故、カレンシリーズや寺社仏閣の管理者との打ち合わせをするか、現地に赴き現場の指揮を取るか、その2つに1つが彼女の日常であり、今日は前者に取り組んでいた。
「ったく。魔術師がなんぼ偉いか知らんけど、あたしらは便利な小間使いとちゃうで……」
「梅田」の主要なエリアを接続する高速連絡鉄道線。人々の雑踏と共に、スーツ姿で其処から降りる。現場で働く方が性に合っている彼女にとって、自分達何でもない一般人を見下す魔術師という人種との対話は、気難しい一般人を相手にするより遥かに面倒かつ危険な仕事であった。 ろくに体を動かしている訳でもないのに、そう錯誤する程の疲労感が抜けない。自分の肩を揉みながら、脳裏で未だ無機質に此方を睨める依頼主を追い出す。もしも自身のサーヴァントたるあの将軍様を連れていなければ、どうなっていたことか。叶うならば、ああいう手合いからの仕事は断りたいところだが……。 ぼつぼつと、ささやかな呪いの言葉すら吐きながら、彼女は駅前の通りを歩いていた。
「……ん?」
ふと、妙な音を聞く。モノが突然現れたような。 下を見れば、奇妙な影。上には構造物すらないはずなのに。 そして、見上げてみれば、
「――――何でやねん!??」
思わず突っ込む。其処にいるのは、テレビでよく見る顔。梅田の都市軍所属の、ネコといつも一緒の男。 何故だか、その男が上空に。訳のわからないまま叫び、そして硬直する。 あ、と思う間もなく、その影は落ちてきた。
「当たるッ――――!?」
よりにもよって、将軍様は先に帰っている。このままでは、自分が潰されてしまう――――。
遅ればせましたが投げました どうぞ〜
モザイク市、梅田。 旧大阪に存在する二大モザイク市の一つであり、多くの他都市と接続する交通の要衝。 今まさに繁栄を謳歌するこの街を、茶のコートをまとった男が一人歩いていた。
「ここはいつ来ても賑やかだね、シュレーディンガー」
彼の肩に乗る、白衣を着て、眼鏡をかけた猫を優しく撫でながら声をかける。 猫はその呼びかけに対し、人語をもって返答した。
『私は喧騒は好きでは無い。用事が済んだら早く帰るぞ』
「偶には観光も良いものだよ。記憶は文面の情報には限らないさ」
『もう良いだろ。研究に戻りたい…』
「そうだね。そこまで言うなら、そろそろ帰ろうか。”漏斗”をよろしく」
『…帰る時は私頼りか。オマエこそ偶には交通機関で移動しろ、まったく…』
そう言いつつも、シュレーディンガーと呼ばれた猫は前方の何も無い空間を凝視する。 瞬間、格子状の”漏斗”のような門が開き、彼らを迎え入れる。
「じゃ、行こうか」
『時間等曲率漏斗』を通り量子状態へと変換された彼等は、漏斗直線上で自在に実体化し、結果的な瞬間移動を行う事ができる。 普段通りの行動により、元の居場所に戻るはずだった、が…
「!」
まれに、慣れた彼等でもこのような”事故”を起こす。 実体化箇所を誤り、想定と異なる場所に移動してしまう… 今回のその場所は、経験上”悪い”座標であった。
「これは…!」
『上空か…マズいな』
地上5m程度。このまま落ちても死にはしないが、それなりに怪我は負うだろう。何より問題なのは、自由落下地点に人がいないかどうか… 漏斗の再展開の時間はない。彼等は重力加速度を全身をもって感じながら、それを祈るしかなかった。
是非にも参加させていただきたく
本日20:00頃に梅田舞台でロール投げます 誰でもどうぞ
追伸:「墟人(タイタン)」は便宜上に近い名称ですので後に変更する可能性があります
「ギリガンさん! あれ! あれ何ですか!」
「何だ。浮標/ブイを見たことがないのか」
ゴールドスタイン商業艦隊は、今日も星の内海を征く。必要なものを必要な分だけ。そのポリシーある限り、彼らの商いに終わりはない。
そんな艦に、一人の少年。アトランティスより拾い上げた、好奇心旺盛な少年。きっと良い旅人になるだろうとギリガンが拾い上げたのだ。
彼がギリガンに問うたのは、その目線の先にあるもの。鋼で出来た、巨大な「棒」のようなもの。或いは、故郷にある星の塔に似ているかもしれない。あんなものがあるとは、彼は知らなかったのだ。
「本来ならば自分で調べろと言うところだが、アレのことをまともに知っているものはいない。という訳で特別にオレ様が解説してやろう」
本当ですか!とはしゃぐ少年を抑えながら、ギリガンは端的に告げる。
「アレもな、喪失帯……つまりはお前のアトランティスのような、『世界』の一つよ。誰が呼んだか知らぬが、エピタフと呼ばれている」
「エピタフ……?」
「墓碑銘、という意味だ。墓石のこと……だと言っても伝わらんか」
少し、懐かしむような顔を見せるも、すぐに引っ込める。その感傷は、今は不要なものだ。
「つまりは、墓だ。それも命の為の墓ではない。この艦のような、絡繰じかけの為の墓だ」
立て板に水を流すように、朗々と告げる。それは、喪失帯ならざる本来の世界の歴史。地に生まれ、数を増やし、文明を築き上げ、星の輝きに手を伸ばした、人類史の歩み。
遙かな天へ階を掛け、そして昇っていったもの達がいた。それを支えたのは、数え切れないほどの絡繰じかけ達。
「その骸を葬る為の墓こそが、あのエピタフ。そう言われている」
「絡繰じかけの、墓。でも、絡繰に命は」
「ないのかもしれぬ。しかし、あるのかもしれぬ。喪失帯には、実際に命を持つ絡繰は存在するぞ?」
「えっ!」
「フハハハハハ!! よく覚えておけ! このオレ様の言葉が本当かどうか、そのまま鵜呑みにしてはまだまだだ!! まずは自分で、得た情報を確かめてみることだな!!」
「えーっ、どっちなんですかぁ!?」
「知らん!! 自分で考えてみるがいい! フッハハハハハ!」
事象を知り、流動を以て価値を生じる。その眼は、ふくれっ面をした少年を、どこか面白そうな色を称えながら、じっと見つめていた。
きょう、きょう。ネムリドリが声を上げて飛んでいく。
アナトリアから来たという「キシ」様は、その姿を物珍しそうに眺めている。
「なあ、船長さん。あの鳥、眠ってないか?」
「そう見えるだけさ。ネムリドリは、あれで起きてるんだよ」
「羽撃きもしてないが……」
「風に乗ってるのさ。俺達の乗ってる風舟と一緒だよ」
「ははーあ。アトランティスには変な生き物がいるもんだなあ」
呑気な顔で眺めているが、彼は、繁殖期のネムリドリが風舟を襲うくらい凶暴だということを知らないのだ。それを知っていれば、あんな気の抜けた顔はできまい。
それでも、実際に危機となれば頼りになる。ずっと前に、爺様達が『大蛇』をやっつけた時も、彼らが助けてくれたのだ。今度も、助けてくれるだろう。
「それで? 目的地の区画まではまだなのかい。地元の狩人がどうのこうのできないくらい増えてるんだろう、そのハネウシとやらは」
「トビウシだよ。ああ、もう少しさ。今日は風の機嫌がいいからな」
遠く、星の塔を見る。今日もあの塔は、世界を静かに見守ってくれている。空は青く、太陽の日差しは柔らかい。例えいつか滅ぶのだとしても、この一瞬の暖かさは、きっと価値のあるものだ。
「……今日も、世界にアトラスの恵みは満ちている」
風舟が、翼をはためかせた。
「南無妙法蓮華経……南無妙法蓮華経……」
タービンの轟音。歯車の作動音。からから、ころころ、なんだかよくわからないものが、あちらこちらへ動く音。
いつものように稼働するこの要塞の中で、いつものように、作業に従事する労働者達の、呪いのような言葉が響き渡る。
ショウダイ。極東の……黄色い猿などが有難がる聖句もどき。ブッディズムの何とかいう牧師だか神父だかが唱えたらしいが、一体そんなものを唱えて何になる。
誰もがそう思ってはいるはずなのだ。だが、それでも、縋るものがない。私達の信仰は、私達の祈りは、粉微塵に打ち砕かれた。
神は我らを救ってくださらない。機械仕掛けの怪物は、世界を焼き滅ぼし切るまで、動き続ける。それくらいの事は、嫌でも理解させられている。
あの東洋人は、文句をつけることはない。我々があちらを厭うように、あちらも我々を厭う。しかし、信仰をすることを拒むことはない。
その態度は、慈悲なのか、諦観か。あの東洋人がこの世界に溶け込むことを拒絶する以上、推測でしかない。それでも、救いではあるのだ。
「南無妙法蓮華経……南無妙法蓮華経……」
今日も私達は、意味もわからぬ言葉に縋り続ける。いつか、この惨劇が幕を下ろし、せめて安らかな死を迎えることができるように。
「……此処が地獄だと言うなら、貴方の言う通りになっているわね。ミスター・ハルゼー」
回答ありがとうございます。
原則的には歴代の当主だけがハウスマンの存在を知る、というわけですね。
確かに、家自体がかつて滅びた魔導一族で根源到達のために用いられた大礼装との事実が詳らかにされれば魔術協会の介入は避けられないでしょうし最悪の場合では封印指定という名目でハウスマンが接収される可能性もあります。
ミオソティスはダフォディルの魔術を受け継いでいない分家ですから、こじつけ染みた難癖の十や二十降りかかるのは想像に難くありません。仰るとおりハウスマンの存在はミオソティスの内部でも秘匿されて然るべきなのでしょう。
アイザックはハウスマンの存在を知らないと思う
色々あって衰退したダフォディル家が残した最後の遺産を万が一にも他の魔術師に知られないよう、「当主になれば自ずとわかる」とだけ後継者に伝え、記憶の継承で初めてわかるようにして情報を隠してるんじゃないかな
ところで。継承以前のアイザックとハウスマンの関係は如何しましょう?
当主になって存在を識ったのか、或いは継承以前からも知己だったのか
いずれにせよハウスマンは過去のアイザックを現代の三姉妹同様に見守りよく見知っていたはずですが、認識が相互的なのか、一方的なのかは大切だと思います
お姉ちゃんは一族の宿命というか在り方というかは受け入れてるだろうからお父さんに対しても父親としての認識(家族愛)から当主としての認識(尊敬や畏怖?)に変わってきてる……かなぁ
ただ自分が後を本当に継げるのかな…?っていう不安は常にあるから両親(母がワニなのを知っているかは未定かな?)にはちょっとよそよそしい感じになってしまったりなんだりはしていそう
妹も出来がいい子たちばっかりだから余計にプレッシャーが累積するから、お姉ちゃん家族の中では基本的に家との会話が一番肩身狭くないかもとか今考えた
末女は魔眼で過去覗くのでお父さんが対策取ってないと覗けるけど、たぶん魔術師としてはガチ勢っぽいし記憶を扱う魔術師が記憶に対する対策を取ってないわけがないから通常は無理だろうなぁ。
魔眼持ってるってことは家族に知れ渡ってるだろうし……。覗けても軽い記憶かなぁ。
出力自体は魔術より末妹の魔眼のが上だろうけど対策があれば完全でなくとも防げるだろうし…。
逆に末女は回路は多分結構あっても刻印がなくて能力は魔眼によるパワーが大きいからお父さんに覗かれる場合になにか出来るかどうか。
そこから考えると他人の過去は魔眼で覗けるのに唯一覗けないお父さんのことは、優しくて好きだけど心の奥では記憶覗けないし信用できないかもと思ってるかもしれないな末女は…。
もしGルートに入ったときにどうやって倒せば良いんだ…!
そういえば家族のみんなはお父さんのことどう思ってるんだろう
末女は過去のお父さん知らないだろうけど他は過去と現在のお父さん評価が違うだろうし
初代が魔眼持ちだし、ミオソティス家の中には魔眼保持者が他にもいたんだろう
もしかしたら肉体変化で魔眼も再現しようと考えてたかもしれない
初代の設定はぼんやりとしか考えてなかったけど末女が初代と同じ性別で魔眼持ちというの良い…
容姿もそっくりだったらお父さんが「あの頃の私にそっくりだ」とか言いそう
娘達はそれぞれ方向性の違う完成形に成長しているんだ…
お母さん凄い
記憶だけ引き継いでるからちょっとややこしいミオソティスの設定
自分の記憶を失って『歴代様』だけの記憶を引き継ぐじゃなくて、自分の記憶も保持しつつ『歴代様』の記憶も持っているから余計ややこしくなってる
こういうのって普通は初代がずっと人格乗っ取ってるってのが多いけどミオソティス家は
「記憶『だけ』は初代から受け継がれてるけど魂や起源などは当人依存、初代とは全くの別」ってややこしい設定なので
初代とそこから長い年月を受け継いで変質してきた人格と記憶を区別するために『歴代様』って呼称が生まれたりしてましたね。
今のお父さんは刻印と記憶引き継いでるので当代の『歴代様』でもあるってことに。
ああ、あと与太話でワニお母さんが神性持ちみたいな凄い母体だから
長女:ダフォディル家(肉体変化系魔術師路線)の完成形
次女:人間の完成形(魔術を必要としないから完全に回路がなくて身体能力や頭脳が超人)
末女:ミオソティス家(記憶操作系魔術師路線)の完成形
なんじゃね?この家族やばくね?とかそんな話があったような。
>・プロシージャラル・メモリー
お父さんつよっ…
突然相手がバランス崩してどうやって歩けばいいんだ!?って困惑しているところに解説するシーンが見える。
あとメティスのとこで「起動」が「軌道」になってますね。
そういえばこの間与太話で「最終的な候補である長女が女性だから初代も女性では?」「初代は刻印や回路が育ってないので魔術師として能力は低かったが、魔眼持ちだったのでは?」みたいな話があったけどどう思います?
ついでに末女も刻印受け継いでないけど感情操作などが出来るのは初代に似ている魔眼持ちだからって方向性になりました。
そして未だに末妹の名前が決まらない…
今現在メモ帳に有るのはミリーファミュータ・ミオソティス
Family(家族)+Mutable(可変)という安易さ……響きがいい名前になりたい。
お父さんのプロフィールtxt
https://www.dropbox.com/s/9g30h5s5vv6phae/お父さん.txt?dl=0
こんな感じでどうだろうか
月の聖杯戦争をやりたいですぞー!!
ルールは上に書いてあるのと同じで。追加ルールでバトルの仕様変更や実績が解放されました。
5月16日頃、18時以降(20時ぐらい?)~参加人数によって変動(参加者4人で想定4~5時間前後での終了)
募集人数4~8人(参加人数が多い場合は翌日にまたがって開催となる場合があります)
参加希望者はこの掲示板でレスしてください。
サーヴァントのシートとマスターのシートは当日公開、またはこの掲示板で作成相談してもらっても構いません。
継承コワイ!
お疲れ様です
ようやく考えをある程度まとめれた気がする…
色々考えた結果お父さんは多分廃人になる
ミオソティス家の魔術刻印には初代当主から脈々と続く記憶が保存されている。
当主になるということは刻印と共にこの記憶も同時に引き継がれる。
しかし人格とは記憶の積み重ねで大部分が構成される為、魔術刻印を受け継いだ人間は本来の人格を塗りつぶされ、ほぼ別人格の人間になる。
魔術刻印を受け継いだ者は、それまでの記憶を魔術刻印に吸収され自動的に保存される。
言い換えると全ての記憶が肉体に残っておらず、魔術刻印にのみ記憶が存在している。
そのため魔術刻印を次代の当主などに渡し、魔術刻印が肉体に存在しない状態になった場合、記憶が存在しない抜け殻が生まれる。
それまで生きてきた自分の思い出、知識といった全ての記憶を失う為、継承を終わらせた歴代の当主全員が廃人同然の状態になっている。
なお抜け殻となった肉体はほとんどの場合、継承を済ませた新当主が魔術礼装などの素材として使用されている。
アイザックに刻印を渡した先代当主も廃人になり、その後肉体のほとんどが素材になった。
ミオソティス家の始まりは、今は存在しない魔術師であるダフォディル一族を支援していた分家の一族。
ミオソティスの魔術刻印は元々ダフォディル一族の刻印から株分けされた物。
主にダフォディル一族に何かあったときようのスペア兼「宿木館」への材料としての死体提供も行う。
この時「宿木館」へ組み込まれる際にできるだけ多くの知識を忘れず記憶しやすいようにと魔術を開発。
これこそがミオソティス家が扱う記憶術の始まりであり、分家である彼らが家名をミオソティスへと変えたタイミングだった。
ダフォディル一族が根源へ辿り着く為に様々な支援をしてきた彼らであったが、ダフォディル一族最後の魔術師「終わりの当主」が命を落としダフォディル一族は根源への到達に失敗。
この時支援する立場であった彼らは、ダフォディル一族の願いである根源到達の願いを受け継ぎ、ダフォディル一族は表舞台から姿を消した。
/ありがとうございましたー
/お疲れ様です!
/お疲れ様でした!
/私も寝ようと思うので、この辺でお開きにしましょう。ありがとうございました!
/お疲れ様でした!
>> 148
「あー……一応誤解ないように言うけど、好きで集めてる訳じゃないからね!?
先祖代々続けられてきたからやめるのやめられないだけ……迷惑な話だよね。
こっちは見たくもない死に様を見せつけられ続けるし、行きたくもない修羅場に放り込まれるし……!」
でも、と彼女は続ける
「だからこそ、死がなくなったこの世界には感謝してる。もう見ないでいい悲劇は生まれないんだから」
「魔術師から足を洗えたことのほうがでかいんじゃないか?」
「そ、そうだけど!あ、でも死には詳しいよ? いろいろ語り合おっか!」
>> 150
そう話そうとして、刀根の言葉が少し刺さった。
不本意とはいえ、最終的に死の蒐集という道を選んだのは彼女だ。
その結果、最悪の災厄を逃したのも、また──────
「ご、ごめんね…怖がらせるつもりは無かったんだけど」
彼女はその責任を負うつもりでいる。だからこそ世界中を渡り歩く。
故に
「まぁ大丈夫よ! もしそいつら…ルナティクスっていうらしいけど、いたらすぐ連絡して!
秒で駆けつけるから! 私とビーシュマが! 一網打尽にしてやるから!
だから、ええ、安心して安眠なさい!お姉さんが常についていると思いなさい!
寝不足はお肌に敵だからね!」
故に彼女は胸を張り己を鼓舞する。本来ならば背負わなくても良い業を彼女は背負う。
何故か。それが彼女の決めた道だからだ。己の道は曲げず、違わず、進み続ける。
不本意でも自分が選んだ道の責任は果たす。故に彼女は宣言する
「私に任せなさい!いつでも守ってあげるから!」
/すいません一足先に離脱します!お疲れ様でした!楽しかったです!
>> 147
……正直に言ってしまえば。理解不能、というのが、感想だった。
彼女は魔術世界について詳しい訳ではない。高慢ちきで、冷酷で、わけのわからない存在。魔術師などそういうものであろう、というのが彼女の認識である。
従って、相手がその魔術師であった事実、そしてその命題について言えば、厭悪すら抱いた。
死に際を集めるなど、何たる悪趣味か。それが故に妙な犯罪者が生まれ、剰え徒党を組んで地元にいるかもしれないとは。何たる大迷惑な女であろう――――。
しかし、その後に続けた言葉で、その印象は砕かれた。己の魔術師としての活動によって生じた「かもしれない」問題を、わざわざ解決に来る。彼女の知る魔術師とは、あまりにもかけ離れた価値観。
その言葉に嘘がない、と判断できる程度には、彼女の眼差しは真剣であり、それは自身の認識と著しい齟齬を起こしており、
「……そんな傍迷惑なんが近くにおるとか、怖ぁて寝られんやないか」
……だから、彼女は理解を放棄した。
その代わり、本当にそうなのだろう、と、信じてみることにした。
「……取り敢えず、人の集まるところに案内だけしたる。その後は……どうなるかわからんけど」
「聞いてしもたしな。まあ、手伝うたるわ」
わざわざ面倒を背負い込んだ。きっと、自分のサーヴァントは笑うだろう。組の大工達には迷惑をかけることになるかもしれない。
ただ、見過ごすという選択肢を取るくらいなら、そちらの方がよい。目に見えたバカデカいリスクの回避は、組織の長として当然だ。何より、彼女が追跡に費やしてきた年月と決意には、敬意を払うべきだ。
己が宮大工としての技術的血脈を継ぐ以上、それに対する敬意だけは覆してはならない。
歴史、そして想い。それだけは。
>> 148
だからこそ、尾名の言葉には、何となく得心がいった。
「……朽ち果てて、何ものうなっても、本来の形がのうなっても。覚えられとる限り、それは在る」
例えば、最早掻き消えてしまった、嘗ての梅田の姿。年柄年中工事が繰り返され、生きているように蠢いていた、建造物と人の群れ。
それは、現実からは失われた景色だ。だが、それはまだ自分の中にある。
懐古し、共感する者は次第に少なくなる。されど、それが続く限り、「梅田」ならざる梅田は消え去ることはない。
「ややこい話は得意やないけど、アンタの言うこと、中々おもろいな。行き道で、ゆっくり聞かしてもろても構わへんか?」
歩き始めながら、刀根は少し笑った。自分らしくはないかもしれないが、たまにはそういうことがあってもいいだろう。
/了解です!
>> 146
知識の牙城である大学だが、彼らは普遍的な知を探求する組織であり、彼もまたその例に漏れない。
基本的には「都市に潜む闇」のような問題には不干渉であり、興味を持たない者が殆どだ。それ故に「知り得ないものは知らない」。
外部から提供された旧梅田地下街の地図などはアーカイブとして存在するが、組織として法を犯す場所では基本的にない。それ故に彼は、彼女が機密の管理者である事、その迷宮が機密の場所である事実の双方を知り得なかったのである。
「戦争では見栄えは悪いだろうがね。今後ともよろしく」
>> 147
『死に際の思いだと?とんだマッドサイエンティストだな』
「…何やら、とんでもない話に片足を突っ込んでしまった様だね」
少女の口から語られた事情は、通常の人生を歩んできたと言える彼らにとっては常軌を逸した会話に聞こえるものだった。
『どうする。協力するのか?』
「もちろん。恩人だからね。…って、ここはもう駅前か」
「まあ、案内はさせてもらうよ。ゆっくり話そうじゃないか。死については、僕も平素から考えている命題だ」
着いてきてくれと言う具合に、彼は歩き出す。
「死と言うのは、肉体が滅んだ時には限らないさ。本当の死は…それが、忘れられた時に訪れるものだからね」
>> 145
「あららサーヴァントかぁー。ごめんなさいねぇお姉ちゃん勘違いしちゃって、飴ちゃんあげるわね?」
謝罪をしながら名残惜しそうに手を放してシュレディンガーを開放するエメリア。
尾名の自己紹介を聞いて、彼女自身も己の名を告げる。
「私はエメリア、エメリア・フィーネ・グランツェール。イギリスから日本までやってきました!
こっちのでっかいのはその通り、ビーシュマ。良いサーヴァントかー、私もそう思ってる!」
薄い胸を張りながら、尾名の言葉にどこか誇らしげに彼女は言った。
「駅かー、確かに人が集まる場所って言ったらこれ以上は無いわよね。
"あいつら"もそういう所にいそうだし、うん。案内してもらおうっかな」
>> 146
「んー、まぁいっか。周囲にいたらいたでその時だし」
「お前なぁ……。いつもそうやって行き当たりばったりで痛い目を見るだろうに」
まぁまぁ、と眉をしかめるビーシュマを宥めながら少女は説明を開始する。
「お姉さんね、こう見えて長生きしてる身なんだけど、昔は色んな場所行ってたの。
人が死ぬとき、どんな思いで死ぬのかって集める命題だったから、そのためにね。
……その時、たった1人だけ逃した、すっごいやばい奴がいて、そいつが今徒党を組んでるって言うの」
少し寂しそうに、少女は空を見ながら話す。その胸に秘めるは、
その歩みの中で死んでいった人々への追悼か、あるいはその"奴"を逃がした事への、自責の念か。
「凶悪犯罪を起こしてるらしいから、こりゃ逃がした私の責任!? って思ってね。
だから私が直接ふんじばってやろうって話し! 人死になんてもう滅多に起こらなくなったから、
命題も守らなくていいしね! 代わりに魔術師は廃業したけど! 後悔してないよ!」
からからと、あっけらかんとした態度で笑いながら少女は続けた。
「だって、もう後悔しながら死んでいく人は、いないって事だからね」
/ごめん時間的に次がラストかも
>> 145
「謎の迷宮……な? そらまた、災難やな」
相手には聞こえないように、少し鼻を鳴らす。自分の正体を知っていて、この往来でその件について宣っているのならば、少々「対応」を考えねばならなかったが……どうやらその気配はない。
単純に、ワープの事故で到達してしまったということだろう。密かに準備していた《令呪》によるカレンへの通報を中断する。
基本的に、あの迷宮の存在は厳秘だ。噂程度ならばいい。カレンが適当に、廃棄街領域で対応するだろう。あの迷宮への到達法を知らないままに動く程度の者は、彼処へ入るべきではないのだ。
ともあれ、到達していた、という事実自体が問題である。後々、報告をする必要はあるだろう。
「ま、今度テレビで見たら応援したるわ。えーと……ドゥオイメイ、でええんかな」
>> 142
……さて。もう一組、ヨソモンであるでっかいのとちっちゃいの。
「ほー。アンタ、見ただけで分かるんか。流石にサーヴァントやな」
「マハーバーラタか。確か、インドの物語やったっけ? 知り合いが言うとったわ」
尾名の言葉を聞きつつ、彼女は二人に胡乱な眼を向ける。
「……あたしは元々梅田の出身やから、助けてくれた礼もあるし、案内くらいしたるけど。ある連中って何やの?」
>> 141
「すまないね…滅多に起こらないんだが…」
「通天閣の屋上だの、謎の迷宮だのによく迷い込むんだ。今回はまだましな方さ。怪我がなくてよかった」
眼鏡を直しながら、気さくな様子の女性に弁明する。
『コイツの難解な説明で理解するか。さてはもう知っているのか?』
「何度もTVに映されているじゃないか。今更だよ」
『私は目立つのが嫌いなんだ。反対したぞ』
「良いじゃないか…おっと、悪いね」
彼はサーヴァントと思しき男の腕から離れ、茶色のコートから埃を払って立ち上がった。
>> 142
『やめろ、撫でるな。私は人間だ…』
そうは言いつつも心地よさから体を預けるシュレーディンガーを尻目に、改めて、自らを間一髪で救い出した恩人に向き直る。
「私は尾名畦 。天王寺の大学で教授をしている。…さて、キミは…」
じっと、眼前の巨大なサーヴァントを見据える。
筋骨隆々で天を衝くような肉体、おそらくは神代の英霊に属するだろう。
顔付きや鼻だち、服装などをまじまじと眺めると、彼は改めて男の顔を見た。
「『マハーバーラタ』の英霊かな。それもかなり強者の戦士のようだ。」
「なるほど、ビーシュマか。それなら納得だ。良いサーヴァントに巡り会えたものだね、キミ」
どこか貫禄を見いだせる少女を見て言う。自己紹介によって判明する形となったが、外見の情報のみでかなり近いところまでは迫ったのではないだろうか。
これは彼の独自の力だった。知識からある程度の真名推察を行う技能。芸としては、彼が自信を持っている方の分野であった。
「助けてもらったお礼だ、それぐらいならお安い御用さ。もっとも僕はこの辺の土地勘がなくてね…駅のあたりぐらいしか、ピンとこないな。悪いね」
/ごめーん! 放つオーラとかに置き換えてください! 急いで打ったせいか…
/刀根棟梁は今スーツ姿ですぞー!
>> 140
「グァハハハハハ! 良いって事よォ! 助けろと言ったのはマスターだからな! 礼はこっちのちっこいのに言いな!」
「えー? それにしてはアーちゃんもノリノリで助けに行ってなかった~? って、あれ? ありがとうが2つ?」
助けた1人と1匹を見ながらエメリアが疑問符を浮かべる。
助けた人影は1人だったのに、明らかに声が2つ聞こえたからだ。
そして百四十(ry年生きた彼女は、その長年生きた勘から、その声が猫から放たれたものだと気付いた。
「えー? 何この子使い魔ー!? 可愛いー!」
命の危機……とまではいかないが、けがを救った事など忘れて、エメリアはシュレディンガーの頭を撫でまわす。
その様子は少女が猫をかわいがるというより、老人が猫と戯れる様を連想とさせる仕草であった。
>> 141
「さて……お前も危なかったな。ケガは無いか?」
マスターが猫に夢中になっている最中、ビーシュマは刀根に声をかける。
その服装から、ただものではないとビーシュマも悟ったらしく、興味深そうに刀根を眺めていた。
「その服装を見るに…お前さんは職人か何かかい? 筋肉のつきようを見るに、女にしちゃあ随分と鍛えているように見えるな」
グァハハハハハ……と笑いながら、ビーシュマは続ける。
「名前は何ていう? 俺ぁビーシュマ。この猫と戯れているちっこいのがマスターのエメリアってぇんだ。
俺らはこの辺に来て日が浅い。"ある連中"も探している。良けりゃあこの辺で人が集まりそうな場所を教えてもらえやせんか?」
>> 139
>> 140
風。せめて頭だけは守らなければ、と咄嗟に構えた腕にも、また体にも、何の負担もかからない。
ゆっくりと構えを解いて見やれば、見知らぬ女と大男。そして大男に抱えられた梅田軍の男……と、抱えられたネコ。
「……助かったァーッ!」
どうやら、そういうことらしい。いくら“聖杯”が命を守るとは言っても、痛いものは痛いし、死ぬ時は死ぬ。ひとまず、そういうことはなくなったようであった。
梅田軍の男……ああそうだ、確か尾名畦とか言ったか。彼はそういえば、サーヴァントであるネコの力を借りてワープができるのだとか。謝罪の言葉を聞く限り、ワープ中の事故ということか。
「まあ、あたしは別に無事やったし、構へんよ。次は気ィつけよ」
「……んで、そっちの……アンタら、でっかいのとちっちゃいの。助けてくれた……んやな。取り敢えず、おおきにな」
平生の顔見知り故、ややぶっきらぼうではあったが、彼女もまた、自らを助けてくれたと思わしき二人に対し、謝辞を述べる。相手がヨソモンだろうが、小さい子供を前に眉根を寄せるほど狭量ではないのだ。
>> 138
「(マズい、人か…!)」
5m地点から地上に落下するまで概ね1秒。ちょうど真下に地上を歩く人が存在する事を確認するのはそう難しい事ではない。
それを避けるとなれば話は別だ。
『(因果系統樹上に回避ルートが無い…!避けられないか…)』
彼等自身の行動によってはもはや、地上の不運な女性の頭上への落下は防ぎようもないことを察知した彼等は、せめてその身をよじる事程度しか出来なかった。…だが。
>> 139
「!?」
晴天の霹靂のごとくに、彼らの肉体ごと攫っていく”何か”を、感覚として感じた。
ふわりとした、一種心臓に悪い浮遊感が襲うと共に、何の負傷もなく確固とした”地面”を感じた彼ら。
次に確認したのは、彼らを抱えていると思われる、あまりに浮世離れした強面の男だった。
『……やれやれ。助かったようだな……』
「……そのようだ。」
数秒かけて現状を理解すると、彼は地上の女性と、彼らを救った男たちの両方に声をかける。
「すまない。お騒がせしたね……。たまに起こる”事故”だよ。量子状態で移動していると外界の確認が疎かになってね……」
『私からも謝罪しよう。ともあれ助かった…』
人語を発する猫とともに謝罪する。しかし彼らはらこれでこの場が収まるとは思えない予感を感じてもいた。
そんなモザイク都市梅田の喧騒の中、一人の少女が歩む。
「いやぁ、久々に甘い物食べると若返った気分だわー。おねえさん満腹」
「グァハハハハハ! 若返った気分と言うがそう思う時点で歳を隠せてないなぁマスターよぉ!」
小学校半ば頃の身長の少女の隣を、追従するように大男が歩みながら呵々大笑する。
少女の名はエメリア・フィーネ・グランツェール。俗に『"嵐を呼ぶ女(ミス・アンタッチャブル)"』と呼ばれる、少し魔術に精通した者ならば名を知るほどに有名な魔術師。
あくまで高名ではなく、有名。その二つ名が示す通り、彼女が往く先々には必ずと言っていいほどに、嵐が吹き荒れると名高い女だ。
……こう見えて年寄り臭い言動をするが、命が惜しければ彼女に年齢の話題は避けることが良いだろう。
そしてその隣を歩むは、エメリアのサーヴァントである"剛健"のアーチャー。
名をビーシュマと言い、インド神話最大の叙事詩マハーバーラタにて、最強と言われる男である。
彼らは、いや正確に言えばエメリアは、ある男を探し出すために世界中を渡り歩いている。
生まれのロンドンからはるばる彼方の極東・日本まで、"ソレ"が存在するというか細い糸のような可能性を辿って、ここまで来た。
どんな噂でも、どんな小さな言の葉でも、"ソレ"がいると思われるならば即座に駆け付ける。
だが、彼女のその旅路が安寧なものであったか、と問われればその答えはNoとなる。
何故なら彼女は『"嵐を呼ぶ女(ミス・アンタッチャブル)"』。安寧な旅など、彼女の運命が許すはずがない。
「んぇぇ!? 上空に突然人が!? ダイナミックバンジー!?」
「戯けェ! こりゃ魔術か宝具だろうよ! マスター! "お前が探してる連中"の仲間かァ!?」
「んーわかんない! とりあえずキャッチして助けよ! 全速力!」
「おし来たァ!」
突如として空中に出現した人影を、けがをさせまいと駆け寄る大男と、その肩に乗った少女。
2人は人ごみをかき分けて駆け抜ける。自由落下する人影を、救助することは出来るのか────
刀根音子は、大工の棟梁である。梅田が「梅田」となる前から大阪の地に根付いている、日本最古の企業“金剛組”の技術的後継者、“奈落組”を引っ張る頭である。
大阪三都に存在するおよそ全ての古式建造物、或いは魔術的建造物の修繕維持を担うが故、カレンシリーズや寺社仏閣の管理者との打ち合わせをするか、現地に赴き現場の指揮を取るか、その2つに1つが彼女の日常であり、今日は前者に取り組んでいた。
「ったく。魔術師がなんぼ偉いか知らんけど、あたしらは便利な小間使いとちゃうで……」
「梅田」の主要なエリアを接続する高速連絡鉄道線。人々の雑踏と共に、スーツ姿で其処から降りる。現場で働く方が性に合っている彼女にとって、自分達何でもない一般人を見下す魔術師という人種との対話は、気難しい一般人を相手にするより遥かに面倒かつ危険な仕事であった。
ろくに体を動かしている訳でもないのに、そう錯誤する程の疲労感が抜けない。自分の肩を揉みながら、脳裏で未だ無機質に此方を睨める依頼主を追い出す。もしも自身のサーヴァントたるあの将軍様を連れていなければ、どうなっていたことか。叶うならば、ああいう手合いからの仕事は断りたいところだが……。
ぼつぼつと、ささやかな呪いの言葉すら吐きながら、彼女は駅前の通りを歩いていた。
「……ん?」
ふと、妙な音を聞く。モノが突然現れたような。
下を見れば、奇妙な影。上には構造物すらないはずなのに。
そして、見上げてみれば、
「――――何でやねん!??」
思わず突っ込む。其処にいるのは、テレビでよく見る顔。梅田の都市軍所属の、ネコといつも一緒の男。
何故だか、その男が上空に。訳のわからないまま叫び、そして硬直する。
あ、と思う間もなく、その影は落ちてきた。
「当たるッ――――!?」
よりにもよって、将軍様は先に帰っている。このままでは、自分が潰されてしまう――――。
遅ればせましたが投げました
どうぞ〜
モザイク市、梅田。
旧大阪に存在する二大モザイク市の一つであり、多くの他都市と接続する交通の要衝。
今まさに繁栄を謳歌するこの街を、茶のコートをまとった男が一人歩いていた。
「ここはいつ来ても賑やかだね、シュレーディンガー」
彼の肩に乗る、白衣を着て、眼鏡をかけた猫を優しく撫でながら声をかける。
猫はその呼びかけに対し、人語をもって返答した。
『私は喧騒は好きでは無い。用事が済んだら早く帰るぞ』
「偶には観光も良いものだよ。記憶は文面の情報には限らないさ」
『もう良いだろ。研究に戻りたい…』
「そうだね。そこまで言うなら、そろそろ帰ろうか。”漏斗”をよろしく」
『…帰る時は私頼りか。オマエこそ偶には交通機関で移動しろ、まったく…』
そう言いつつも、シュレーディンガーと呼ばれた猫は前方の何も無い空間を凝視する。
瞬間、格子状の”漏斗”のような門が開き、彼らを迎え入れる。
「じゃ、行こうか」
『時間等曲率漏斗』を通り量子状態へと変換された彼等は、漏斗直線上で自在に実体化し、結果的な瞬間移動を行う事ができる。
普段通りの行動により、元の居場所に戻るはずだった、が…
「!」
まれに、慣れた彼等でもこのような”事故”を起こす。
実体化箇所を誤り、想定と異なる場所に移動してしまう…
今回のその場所は、経験上”悪い”座標であった。
「これは…!」
『上空か…マズいな』
地上5m程度。このまま落ちても死にはしないが、それなりに怪我は負うだろう。何より問題なのは、自由落下地点に人がいないかどうか…
漏斗の再展開の時間はない。彼等は重力加速度を全身をもって感じながら、それを祈るしかなかった。
是非にも参加させていただきたく
本日20:00頃に梅田舞台でロール投げます
誰でもどうぞ
追伸:「墟人(タイタン)」は便宜上に近い名称ですので後に変更する可能性があります