SSや怪文書、1レスSSなどを投下する用途のスレッドです。 アーカイブとしての保存や、絡み後の後日談などにお使いください。
不思議だ。 クエロさんには好意を持っている。優しいだけの人ではないけれどきちんと温かみを持った人だ。 いや、微妙なぎこちなさを鑑みると『持とうと努力している』というのが適切な感じがする。 ともあれ私へ気遣ってくれているのは確かで、それに対して感謝や憧れといった複雑な感情を持っているのも間違いない。 それでも、こうして竹刀を握って相対すると浮かんでくる気持ちはひとつだ。 ───倒す。目の前の相手を斬る。 たったひとつのことに純化していく感覚が気持ち良い。自分でも目が据わっていくのが分かる。 小さく、長く、深く、息を吐き出す。一緒に余分なものが抜けていく。鋭く研ぎ澄まされていく。 すごくいい感じだ。周囲の音が消えて、代わりに真っ赤な鉄を打つ音を幻に聞く。強い対戦相手を前にした時に自然と高まっていく己の集中を悟った。 教会の裏庭。目の前にはクエロさんがいる。私が貸した竹刀を握っている。 ぴたりと正眼に切っ先を置いたその構えに癖のようなものは感じられない。 無色透明。それは誰にでもできる構えだからこそ、易くは誰にもできない構え。人は構えひとつとっても癖が出る生き物だからだ。
力みもなく、だからリズムも読みにくい。仕掛けるタイミングが掴めない。 そういう時は相手の目を見ろと師範に教えられていた。覗き込む。深い虚のような、どこを見ているのか分からない瞳が出迎える。 竹刀を握っていなかったら、その目を見て怖いと思っていたかもしれない。 でも今は違う。剣の呼吸を聞いている。どうしてか、その目と見つめ合ってとても安心した。理由はすぐに思い当たった。 そうか。わざわざ私と同じところで付き合ってくれるのか。 構えに色はない。この人の剣のこの人らしさを知りたい。小手調べに踏み出した足を僅かに前へにじり寄せた。
「───」
途端、クエロさんの影が微かに淀む。小石のひとつやふたつ分、足の裏を滑らせて後ろに退いた。 ミリ単位の間合い調節。クエロさんは柔らかく膝を矯めてこちらを待ち構えている。 もう少し踏み込めるかと進ませかけた爪先が安全弁に引っかかったように止まった。 直感が走る。もう数ミリも踏み込めばクエロさんは待ちの姿勢から即座に攻めへ切り替えてくる。 間違いない。ここが私から攻め込める距離の分水嶺だ。そうと分かればいつまでも睨み合う必要はない。 相変わらず拍子は読めない。ならこちらから乱す………!
「えぁッッ」
空気を撓ませたのは裂帛の気合。 腹の底から弾けさせた叫び声と共に私は予兆なく肉薄した。 クエロさんの脳天めがけて拝み打ちを放り込む。必要最低限の力感で。 躱されれば更に踏み込む。受けられれば手元が上がって空いた首から下を攻める。 面打ちは剣道を始めれば最初に習う攻めであり、全ての基本となる一手。そして基本とは一番強いから基本なのだ。 対して、クエロさんは僅かに切っ先を揺らめかせた。 降り落ちる私の竹刀の横からまるでそっと指先で払い除けるように竹刀が添えられ、横にそらされる。 手元は上がらなかった。擦りあった竹刀が鍔のあたりでがちりと食い込んだ。踏み込んだ私と退かなかったクエロさんで竹刀を交わしあい、距離が密着した。 さっきまで間合いを挟んで見えていた目が至近距離にあった。その眼差しは先程と変わらずまるで揺らがない。 ぞろりと歯を尖らせた心が獰猛に笑う。その顔色を変えさせてやると。 首元へねじ込むようにして竹刀を斜めに押し込んだ。膂力だけではなく自分の体重全部を使って崩しに行く。 竹刀を絡めていたクエロさんが半歩下がる。リズムを読んでこちらも僅かに下がる。空間が開いた。瞬間、押した竹刀をそのまま降ろして面を取りに行く、と見せかける。 その切っ先を寸前で素早く引いた。すぐに最小限の矯めを作る。身体を開きながら素早く胴を打ちに行った。 崩しからの引き面をフェイントにした引き胴。自信を持って打った技だったが、敵もさるもの。 まるで面打ちの打ち気の無さを分かっていたように私の横薙ぎの一閃が払いのけられる。けれどまだだ。攻めろっ! 宙に浮いたクエロさんの竹刀を振り払うように斬りつけて前に出ようとした、その時だった。 打ち払おうとした竹刀が幻のように私の竹刀をすり抜けた。予想外の出来事に頭の中でアラートが点滅する。 何が起きた?刹那の間に把握した。竹刀の重みに任せて切っ先を沈めたんだ。虚空を打った竹刀が死に体になる。 戻せばまだ間に合う!勘によって動作を途中で止めた分復帰も早かった。 表へ戻した竹刀が迎え撃ったのは、竹刀を肩へ担ぐように振りかぶったクエロさんの激烈な打ち込みだった。
「っ………!」
手が痺れる。そう思ってすぐに違和感に気づいた。“手が痺れる?” もう私は剣道において初心者ではない。竹刀を受け損ねたとしても手が痺れるようなことはない。そういうのは握り方の甘い間だけのことだ。 それがクエロさんの打ち込みはまるで鉄塊でも受け止めたかのようだった。 単純に力任せに叩き込まれたのではない。まったく正体が判別できないが、このたった一瞬で知らない身体の動かし方をされた。 竹刀を取り落としそうになるが、膝を割って後ろに倒れ込むようにたたらを踏み必死に堪える。 すぐ戻せ、すぐ構えろ。地面に足を縫い付けるようにして留まり、再び竹刀を握り直して構えた。 一瞬の攻防の中でこの人の剣気のようなものが微かに見えた。夜の帳で何もないように隠しているが、一枚捲ればそこには剣呑な凶器がずらりと並んでいる。 今牙を剥いたのはその内のたった一本。そしてすぐにそれは仕舞われ、クエロさんは再び凪いだ湖面のような静かな正眼の構えに戻っていた。
「はッ、はッ、はッ………、はは、は………っ!」
一気に乱れた呼吸を整えようとするのだが、それよりもさきに笑いがこみ上げてしまった。 強い。知ってはいたけれど、分かってはいたけれど、この人は物凄く強い。私が出会ってきた人たちの中で一番強い! どきどきと胸が弾む。初恋のように気分が高揚する。心地よい絶望感に唇が弧を描く。 駄目だ。今の私ではどんな手を打っても勝てる気がしない。一番得意な剣道でさえ歯が立たない。道大会を優勝したくらいで少しは上達した気になっていた自分が馬鹿みたいだ。 道に果てがないことの証左を前にして、私は自分でもびっくりするほど心を踊らせていた。 と、隙なく構えを取っていたクエロさんがふと緩めて剣を降ろした。 ほんのりと首を傾げながら微笑む。水面に張った薄氷を割るような、くっきりとした感触を覚えるあの笑みだった。
「素晴らしいですね。センスだけなら私よりも上です。あなたは剣に愛されている」 「そ、そうですか?でも今だって完全に押し込まれちゃって………」 「ですが剣を落とさなかった。並々ならぬことです。私とは積んだ時間の差があるだけ。あなたは良い剣士になれます」
はっきりとそう言われると面映ゆい。つい頬が紅潮してしまう。 何を褒められるよりも剣の腕を褒められるのが一番嬉しい。どんなことよりも心血を注いでいればこそだ。 クエロさんに稽古をお願いしてみてよかった。たぶん私は今、普通に全国大会に出場していたのとは違う種の濃密な経験値を稼いでいる。 強くなりたい。もっと、もっと。いろいろ理由はあった気がしたが全部忘れた。ただ、強くなりたい。 この人が修練でもって丹念に一本ずつ磨き上げただろう技のひとつひとつを手にとって、見て、自分のものにしたい。 もっと知りたい。もっと触れたい。この人のことを。この人の強さを。この人の心を。もっと。もっと。 クエロさんが構え直す。応じて私も降ろしていた竹刀の切っ先を再び眼前に備えた。 剣の向こうでクエロさんが微笑んでいる。それがどこか楽しげだったのは気のせいだろうか。分からない。
「もう少し続けましょうか。私も少し気が乗ってきました」 「はいっ!」
そして始まる間合いの調節。今度は影がついてくるように気配のない足取りで踏み込んできたクエロさんの袈裟斬りを必死で身を捩りながら回避しなければならなかった。 軽く数手、と言っていた打ち合いは気がつけば1時間以上経っていた。 終わってみれば私は全身汗だくだったのにクエロさんは冷や汗ひとつかいていなかったのが癪ではあったかな。
甘い期待感みたいなものは一瞬で吹き飛んでいった。 真ん中高めに浮いた半速球は見事にバックスクリーンまで一直線にかっ飛んでいった。かっきーんと。
「なんですかこれは!」 「なにって、私の部屋ですけれども………?」 「ぐちゃぐちゃだー!」
私の背後にいるクエロさんがさも不思議そうに返事をするのが逆に不思議でならない。 クエロさんの私室は端的に言って無秩序によって支配されていた。 部屋にはこれといって個人を象徴するような装飾はない。 まあ、クエロさんはこの聖杯戦争に合わせてやってきたピンチヒッターという話だからそれはそんなものだろう。 しかしある意味で実にこの部屋に住む個人らしい彩りになっていた。 下着や肌着、箪笥の上に放りっぱなし。洗って干したままなのだろう。畳んですらいない。 修道服も右に同じ。広げられて椅子に引っ掛けられているせいでどうにか皺になっていないのが奇跡だった。 本は床に積まれている。というか、そのうちの数冊は床に散らばってさえいる。 極めつけは、こちらにやってきた時のものであろうトランクケースが開けっ放しで転がっていた。 中にはまだ取り出されていない物や取り出されたのにそのままぽいっとトランクケースに放られた物が山を作っている。 まだ洗濯物やゴミが床に散乱していないのがマシだ。そんなひどい有様だった。
「クエロさん! 片付けようとか思わないんですかこれ!」 「ほわぁ………?」
ほわぁじゃないです。そんなぽかんとした顔をしても駄目です。 どうも彼女に会ってからきちんとしたところしか見てこなかったせいでクエロさんに対して完璧な人という印象が私の中にあった。 そんな像がガラガラと音を立てて崩れていく。こうして思い返してみると確かに予兆はあった。 洗濯物の籠に昨日の洗濯物が入れっぱなしになっていたりとか。干したものが夜になっても仕舞われてなかったりとか。 食事に関してはいつも美味しいものを作るのですっかり騙されていた。
「仮に私がこんなふうにしているところをお母さんに見られたら………見られたら………怖いですよ!」 「怖いんですか」
そうです。怖いのです。 思わず身の毛がよだつ。ここにきて母の顔が鮮明に思い出された。 母は全く怒った顔を浮かべない人だったが、同時に怒りん坊だ。母が怒った時の恐ろしさは父の比ではない。 私が部屋をこんなふうにしているのが見つかった暁には「こちらに来なさい梓希さん」と呼ばれてお説教が始まってしまう。 そうして淡々と諭されることのまぁ怖いことと言ったら。ちなみに父にも似た感じで怒る。あのいかめしい父がそんな母の前では尻尾を丸めている。 それを思い返しているだけで私はいてもたってもいられなくなった。駄目だ。我慢できない。
「クエロさん! 片付けをしますけれどいいですね!?」 「え?はぁ、まぁ、はぁい」
クエロさんがぼんやりと頷くのに合わせて部屋に突入する。ちなみに駄目だと言われても説き伏せて実行していた。 修道服はクローゼットへ。本を本棚の空いたところに詰め込み、下着類を箪笥に収納していく。 下着はどれもレースがあしらわれた大人っぽいデザインだった。先程までの私ならちょっとドキドキしながら手に取っただろうが、今の整理整頓の鬼となった私には通用しない。 箪笥の上で小山になっているそれらを解体した後はトランクケースだ。 ちょこまかと動き回る私を見ているだけだったクエロさんの腕を引っ張ってトランクケースの前に座らせた。
「荷解き! しましょう!」 「えー………でもぉー………別にこのままでも大丈夫じゃないですか~………?」 「よくありません! ちゃんと整理しないといざという時にどこにあったか分からなくなっちゃいますよ!」
そうですかねー、そうかもしれませんけどー、と曖昧なことを言うクエロさん。 分かってしまった。すぐ気付けなかった自分の愚かさに私は歯噛みした。 この人は自分ではちゃんとしているつもりだけれど本当は全然そんなことなくて、周りから見たらお世話が必要な人なんだ………!
「なんですかこの瓶、ケースの隅に入ってましたけど」 「あー、それ応急処置用の薬瓶ですね~。というかそんなところにあったんですね~」 「ほらやっぱり!」
このトランクケースのどこに入っていたんだと思わせる量の物品の仕分けに結局小一時間は費やすことになってしまったのだった。
本件は調査中の事件被害者の身元情報です(画像はご家族の許可を得て添付)。
名前:鈴華志保(スズカ シホ) 性別:女性 不明当時の年齢:11歳 不明当時の学年:小学5年生 身長:142cm
警視庁ホームページ『行方不明者詳細情報』より (該当者発見により、現在は非公開。ご協力ありがとうございました)
薄暗い部屋の中で、少女は目を覚ます。もがくが、動けない。両手両脚はロープできつく縛り付けられている。見回すも窓はない。露出した肌にビニールシートが触れる。冷たい。見知らぬ地下室の床に転がされている。
「え...?ここ...どこ...?」
混乱、困惑。激しい頭痛を堪え、何があったのかを思い返す。 放課後、合唱コンクールの練習に夢中になるあまり帰りが遅くなり、陽の落ちた道を一人歩いていると突然横に車が止まって
ドアが開き 引き摺り込まれ 濡れたハンカチで口を塞がれ 一瞬のうちに
「あっ...!」
そこまで思い出してやっと少女は「自分が誘拐された」という事実に辿り着いた。 此処は何処なのか、なぜ犯人は自分を誘拐したのか、分からないことだらけの状況に不安と恐怖だけが降り積もる。
(こわいよ...これからどうなるの...?おとうさん...)
そう思った矢先、ドアが開く音、次いで何者かが階段を降りてくる音が地下に響く。 自分を誘拐した犯人がやって来たのだ。
(やだ...やだっ!こないで...こないでっ!!)
暴れもがいても拘束は弛まない。逃げ出し、叫び出したくも目に涙を浮かべ震える事しかできずに、犯人が姿を現す。
「おや...もう起きていたのですか。あー、落ち着いてください。暴れると縄が肌に食い込みますから」
少女の前に現れたのは黒い眼鏡を掛けた、自分の父親とそう変わらぬ年齢に見える何処にでも居そうな中年男性であった。 残虐で血も涙もない誘拐犯を想像して怯えていた少女は、イメージの違いにぽかんとした表情を浮かべることしか出来ない。
「あ、あの...おじさんがわたしを誘拐した人ですか?」 「誘拐?あぁ、んー..... はい。おじさんがあなたを誘拐した人ですよ。ところで、あなたのお名前は?」 「.....鈴華志保です」 「志保さんですか...いい名前ですね。それに、声がいいですねぇ.....好きですよその声、音楽の授業とかでいつも褒められてるでしょう?きっと」
誘拐犯とその被害者の会話とは思えない、のんびりとした雑談が繰り広げられる中、ややリラックスしてしまった志保は核心に迫る質問を投げかける。
「...あの、おじさんはどうして私を誘拐したんですか?わたしの家はお金持ちじゃないですよ?」 「何故誘拐したか、ですか?あぁ理由は大事ですからねぇ...まず髪がいい。短めでよく纏まった綺麗な茶髪、いいですねぇ好みです。声も良い、鈴を鳴らした様な声というのは志保さんの様な声を言うのでしょうねぇ、実に美しく、可愛らしい」 「えっ...えっ...あ、ありがとうございます...?」
自分を攫った理由を聞いたのに、帰ってきた答えは自分を褒め称える言葉ばかり。危機感の薄い志保はストレートな賞賛に相手が誘拐犯である事も忘れ、照れてしまう。
「実に可愛らしくて...とても、とても...無茶苦茶に引き裂きたくなる」
そう言うや否や、誘拐犯は隠し持っていた研ぎ澄まされたナイフを志保の喉に突き立てた。
「あぐっ!?ぎ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
喉に走る激痛。絶叫が溢れ出し、響き渡る。身を捩らせ意味不明な叫び声を上げるたびに、振動に併せて突き刺さったナイフがまるで生きているかの様にびくびくと動き震える。 意外にも出血量は少ない。声帯と頸動脈を避けてナイフを刺したからだ。首を壊す時は注意しないと直ぐに死ぬという殺人鬼の経験による、精密な一撃。
「あぁ...ははは、いい声ですよぉ志保さぁん!!」
本性を表した怪物は下腹部を曝け出し、いきり勃った性器を露出させ、それを悶え苦しむ少女の股に...挿入しない。 怪物は少女の儚く小さな胸にのし掛かるとナイフを引き抜き、傷口に指を突っ込むと"丁度いいサイズ"まで無理矢理広げる。 そして
「あが...かひゅ...んぅ!?あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い゛だ゛い゛い゛だ゛い゛い゛だ゛い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
志保の喉の傷を性器に見立て、陵辱行為を開始した。友達から羨ましがられ、いつも両親に褒められた美声の源泉に付けられた痛々しい傷口を無遠慮に怪物の怒張がぐちゃぐちゃと蹂躙していく。 声にならない声を捻り出し、目を見開いて涙を流すのもまるで気にせず、寧ろ声帯の震えは更なる快楽を齎し、涙は潤滑液となり、猛り狂う怪物は喉に腰を打ち付けまくり、どくどくと精を零した。
「ぎぃ...がひゅ...ごほっ、げほっ...」
志保の口から泡立った大量のピンク色の液体が吐き出される。血液と唾液と精液の混合物だ。
「ふぅ...いやはや本当に綺麗な声だ...きっと志保さんは将来有名な歌手にでもなれたんでしょうねぇ...」
怪物は、笑う。喜びだけに満ちた顔で、笑う。 悍ましき宴は一晩中続き、後には四肢を引き裂かれ、喉を粉砕された物言わぬ屍体だけが残った。
「このヘンタイ!外しなさいよこのベルト!!このバカ!クズ!」 「えぇ...嫌ですよ...外したらあなた逃げちゃうじゃないですか」
金属製の台に大の字で寝かされ、手脚をベルト状の手枷で拘束された幼い少女が、誘拐犯を睨み付けながら甲高い声で喚き、暴れ散らす。当然、そんな事で拘束は弛みはしない。
「くぅぅ...バカにして!アンタみたいな冴えないヘンタイ誘拐犯なんてすぐ警察に見つかって捕まるに決まってるわ!」 「そうですかね?これでも手際の良さと証拠の隠滅には自信があるのですが...さて、と」 「っ!!何する気!?触らないで!触らないでよ!!」
誘拐犯が「何かをしでかす」事を感じ取った少女は柔らかな肢体をくねらせ、儚げな抵抗を行う。 ───それが怪物の糧とは知らず。
「あー、安心してください。"まだ"触りませんから...まずは下拵えをする必要がありますからねぇ。あー、そういえばランドセルにピアノの楽譜がありましたが、あなた...えー...最近の子は珍しい名前してるんですねぇ...るみなさん?弾けるんですか?」 「ちょっと!ルミのランドセル勝手に漁らないでよ!!弾けるからなに!?」 「もう弾けませんよ」
そういうと、拘束されて無防備な白く、繊細な、柔らかな少女の指先に 巨大な肉叩きが振り下ろされた。
「ぎ、ああああああああっ!!い゛だ゛い゛!!指が!!ルミの指が!!」
本来、食肉の繊維を引き裂き柔らかく食べやすくするためのギザギザとした打面は一撃で指の骨を砕き、赤紫色の内出血を引き起こす。
「なんで!?やだっ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!ゆるしてっ!!やめてっ!!」
突然な激痛に指と共に生意気な心まで打ち砕かれた少女な泣き叫びながら懇願する。
「やめませんが...んー、何故謝るんですか?謝る必要なんてあなたには無いですよ?だって、私は何の罪もない、可愛くて滅茶苦茶にしたいあなたを、殺す為に攫ってきたんですよ?あなたは何も悪くない。だから、どうか謝らないでください」 「は...?なに、言ってるの...?」
怪物に懇願は届かず、少女に怪物の常識は理解できず。 悍ましき行為は続行される。
「じゃあ続けますねー、取り敢えず指全部砕きましょうか」 「待って!!やだやだやだやめてやめ───ぎっ!?」
まるで食肉を調理するかのような手際の良さで少女の指が叩き潰されていく。 親指、人差し指、中指、薬指、小指が順番通りに、リズミカルに、テンポ良く使い物にならなくされていく。 かつて白と黒の鍵盤の上を優雅に踊っていた両手の指は、赤黒く腫れ、肉が裂け、血が滲み、骨が砕かれ、永遠に踊る事をやめた。
「うぅ...ぐすっ...ゆ、ゆび...ゆびが...あぁ...」
激痛、絶望、恐怖に染め上げられ涙を零す。 小生意気で気の強かった少女はもう既に死んだのだ。 だが、まだ殺し足りない。これだけでは、怪物の渇きと飢えは満たされない。
「ふぅ...いたた、これは明日筋肉痛待ったなしですね...さて次は...胸行ってみましょうか」 「ひっ!!う...あ...」
可愛らしいゴシックロリータ風の服を乱暴に剥ぎ取られ、芽生えかけの乳房が露わになる。 乳房に肉叩きが振り下ろされる。
「かひゅっ.....あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛」
白く滑らかな乳房が赤色に染め上げられる。 何度も、何度も、何度も、肉叩きは振り下ろされ胸肉をぐしゅぐしゅに叩き潰して行く。
「おっと...胸部は叩きすぎてはいけない。長く楽しめませんから...そろそろ脚に移りましょう。胸と顔は、最期の楽しみですから...」
「あぐっ!ぐふっ!ぎぃ!」 脚が潰れた。
「あ゛ぐ゛!゛ぐ゛ぅ゛!゛ぎ゛ぃ゛!゛や゛め゛!゛い゛だ゛い゛!゛」 性器が潰れた。
「が゛、ぐ゛ひ゛ゅ゛」 顔が潰れた。
「...........」 潰れた。
201█年 █月█日 警視庁 ███司法警察官 本職は、201█年 █月█日 ██検察庁 ██検察官の指揮により、下記のとおり変死者又は変死の疑いのある死体の検視をした。
・死者の身元情報
氏名:藤乃原流美奈(フジノハラ ルミナ) 年齢:12歳 性別:女性 身長:151cm 体重:22kg
・検視時の死体の状況 全身に化膿した打撲痕と裂傷、重度の臓器損傷及び主要臓器の摘出跡、両眼球の破裂、脊髄・頭蓋・骨盤含む全身の骨折、精液及び膣液等の混合液の付着、重度のストレスによる脳萎縮の兆候
ああ…本当に来て下さったんですね。 まさか二度も、私の嗜好を受け入れてくれる方に出会えるだなんて…💛 …「一度目があったのか」、ですか? 申し訳ありません。私は、初めてでは無いのです。 ですがご安心ください。今は貴方だけの私、この身も心も全て貴方に尽くします。ええ…身も、心も。 それでは、さあ、二人きりの晩餐を始めましょう。 まずは、される側になりたいのですね?では…少し痛みますから、これを噛み締めてください。 私の、手です。 舌を噛み切って終わってしまっては、いけませんからね…💛 では、失礼して……ふぅ💛どうですか、感じますか? ずぶずぶ、と…💛ざくざく、と…💛貴方の傷一つ無いお腹に、ナイフが沈んでいきますよ…💛 そして、この辺りで…くぱぁ…💛ああ…綺麗な腸をしていますね💛とても、いいですね…💛 ぷにぷに…くにゅくにゅ…優しく握られると気持ちいいですよね…💛 あぁ…💛そんなに強く噛むと…💛いけません…💛初めてなのですから、もっと楽しめるように、我慢しないと…💛 ふぅ…💛ふぅ……💛どうでしたか…とても新鮮で、甘美な感覚を味わえましたか…💛 ああ、良かった…💛それでは、今度は…貴方の番、ですね…💛 えぇ…💛どうぞ、遠慮なく…💛鍵を挿すように、突き入れて…💛扉をこじ開ける、割り開いて…💛 貴方の手で…💛私の全てを、暴いてください…💛
私は今、クラゲに囲まれている。 仄暗い水槽の中に浮かび光を受けて漂う透明な命の群れは、静謐な宇宙に輝く星々を彷彿とさせる。 世俗から隔絶されたような静かな空間、足音一つなく、しかし無数の命が拍動する空間に私は紛れ込んでいる。
ここは大阪市港区に存在する日本最大規模の水族館『海遊館』。 大阪遠征が決まった際にどうしても行きたいと考えていた、大阪を代表する観光地の一つだ。 あまり公言したことはないが……私は水族館が好きだ。この薄暗く静かで、穏やかな光に包まれた空間が好きだ。 元々訪れる予定は立てていたがこのような事態となってしまい、諦めざるを得ないものと思っていたが……。 昨日の晩に何気なく「大阪には大きな水族館があるらしい」と話題に出したところ、返ってきたのは「では行ってみましょうか」という即答の言葉であった。
結果、貸し切り同然となった海遊館で私は4時間ほど時間を潰している。 2時間で館内を見て回り、残りの2時間は……このクラゲが揺蕩うエリアで消費した。
「それにしてもクラゲ専用のエリアなんて、不思議な区画ですねぇ」
私と一緒に一通り見て回った後、もう一度見て回りたいと言い探索に出掛けていたクエロさん。 その腕には大きなジンベエザメのぬいぐるみが抱えられていた。しかも二匹。どうやらオスとメスの“つがい”らしい。 水槽を眺めていた私の側に座り、抱えていた一匹のぬいぐるみが自分の膝の上に置かれた。 持っていて欲しい……ということだろうか。受け取ったジンベエザメを抱きしめるように抱え、再びクラゲに視線を戻す。
「日本だと結構一般的なんですよ。 北海道の水族館にも大きなものがありましたけど……ここはまた違った雰囲気で素敵です」
……それは私がまだ小学校に上がりたてだった頃。 両親に連れられて訪れた水族館で、壁一面の水槽に揺蕩うクラゲの虜となり数時間近く眺め続けていたことがあった。 結局その時は呆れたパパに抱えられて名残惜しくもその場を後にしたが、私は何時間でもこの景色を見ていられる。
何故私はこれほどまでにクラゲという生物に惹かれるのだろう。 彼らの在り方が私とは真逆だからだろうか。堅く、燃える火を以て心の平穏を成す私と水に浮かび揺蕩い続ける軟体生物。 絶対に自分が届かないものであるからこそ目を奪われる。己の人生と掛け離れたものであるからこそ興味深い。 この数日間も、これまでの人生から振り返ってみれば十分非日常的なものではあったが……それも言ってみれば日常と地続きのものだ。 非日常からも離れた独自の空間。外の世界とは全く異なる時間を彼らは過ごしている。その時間を、緩やかな流れを共有していたい。 ここで寝泊まりしたいな。なんなら、水槽に入ってずっと暮らしていたい。そんな突拍子もない妄想すら浮かび上がってくる。
そんな私の妄想を断ち切るように流れ出したのは、オルゴール調にアレンジされた「蛍の光」。
『当館は まもなく 閉館のお時間でございます。またのお越しを 心より お待ち申し上げております』
穏やかな女性の声に我に返り、ふと外を見てみると時刻は既に夕刻を過ぎていた。 もしこのまま館内に残り続けていたら……「水族館に泊まる」という、幼い頃から抱いていた夢を達成できるのでは。 そんな考えが脳裏を過ぎるも、今自分が置かれている状況を鑑み込み上げた欲望を振り払う。
「名残惜しいですが、暗くならない内に帰りましょうか」
「そうですねぇ、私も見てみたいものは見て回れたので満足です。 ジンベエザメの餌やりが見られなかったのは残念ですが……」
ジンベエザメ、気に入ったのかな。 上半身を覆い隠してしまえそうなほど大きなぬいぐるみを抱えながら、帰り際に悠々と泳ぐジンベエザメを眺める。
貸切状態の水族館というのも新鮮ではあったが、無人というのも少し寂しい。 クラゲの群れを見て心を癒やすことは出来たものの、この海遊館という水族館の魅力を全て味わえたわけではない。 やはりショーやアクティビティを始めとする賑わいもなくては……。
「……大阪が元通りになったら、また遊びに来ましょう!」
口を衝いて出た言葉は、励ましのようでもあり「もう一度一緒に出掛けたい」という本心から出たものでもあった。 この異変がいつ終わるのかはわからない。それでもこの戦いが終わって、大阪という街に平穏が訪れたなら……その時にはまた、この二人で。
「ところで……このジンベエザメちゃん、名前は何ていうんですか?」
二人でそれぞれ抱えている大きなジンベエザメのぬいぐるみ。 つがいである二匹、愛くるしい瞳のこの子はなんという名前なのだろう。
「名前ですか?……考えてませんでした。付けてあげたほうがいいんでしょうか?」
「えっ。えっと、その方が親しみが湧くというか呼びやすいというか……」
ぬいぐるみって、買った時に名前をつけてあげるものだと思ってた。 思いがけない返答に少し戸惑いながら言葉を返す。だって身近に触れ合うものだし、名前がないと呼んであげられないし。 もしかしてあんまり一般的じゃないのかな。急に込み上げてきた恥ずかしさを隠すように、抱えていたぬいぐるみを強く抱きしめる。
「なるほど、では……教会に着くまでの間に考えておきましょうか」
……クエロさんのネーミングセンス、凄く気になる。 ともあれ名前をつけて貰えるのは良かったねえ。心なしか嬉しそうな表情のジンベエザメを軽く撫でる。 私も何かお土産を買えばよかったかな……いや、帰る時に手荷物が増えてしまうとちょっと大変か。 とりあえず今は海遊館の余韻に浸りながら、ジンベエザメのやわらかさを堪能するとしよう。
他者との繋がりが希薄な現代社会。人間関係に行き詰まり、生きづらさを覚え行き場を喪った若者たちがたむろするこの複合商業ビル周辺は様々な犯罪の温床となっている。 売春、未成年の風俗勧誘、麻薬売買、暴行事件、暴力団の関与... それらに関連する事件に巻き込まれたと思わしき行方不明者も。
201█年 █月██日 普段からビル周辺を徘徊していたという石火矢燐渚(イシビヤ リオ)さん(14歳)は風俗街周辺の路地近くを徘徊しているのを友人に目撃されたのを最後に行方が分かっていません。 警察は暴力団関与の疑いも見て捜査を続けています。
「クソ...!解けない...解けない...ッ!!こんな格好で...ふざけやがって..!!」
黒いパーカーを羽織った少女が縄で拘束されている。両手は後ろで縛られ、両脚は大きく開かれた状態で固定され、白い下着が露わになっている。 その表情は攫われた恐怖心ではなく、屈辱的な姿勢で拘束された事に対する怒りと反骨心に満ちており、拘束を解こうと暴れもがくたびに赤く染められたツインテールが靡き揺れる。 手を出せば噛みつかれそうな、まさに不良少女というに相応しい娘であった。
「あぁー、暴れないでくれませんか?そもそもあなたの力では絶対に解けないようにきつく結んであるので、大人しくしていた方が楽ですよ?」 「テメェ...アタシを攫って何が目的だ!!売春か?臓器売買か?ちょっとでも触ったらぶっ殺す!!」
誘拐犯を睨み付け、牙を剥き出しにして威嚇する少女。檻に閉じ込められても獰猛さを失わない凶暴な小動物を彷彿とさせる愛らしさと粗暴さを醸し出す。
「ははは、まぁそんな怖い顔しないでください。私はヤクザではありませんし、売春にも臓器売買にもちっとも関わっていませんから。ほらよく見てください、ただのおじさんでしょう?」 「...確かにさえないオッサンにしか見えねぇが...じゃあなんでアタシを攫ったんだ?」 「可愛いあなたの身体を、滅茶苦茶にするためですよ」
そう言うと間髪入れずに少女の下着を剥ぎ取り、パーカーをナイフで斬り裂いて小さく膨らんだ胸元を露わにさせる。
「な...ッ!!何しやがる!!やめろ!触るな!触るんじゃねぇ!!」
少女が暴れ叫ぶのも気にもせず、怪物の魔手は少女の下腹部へと伸びていき、白く滑らかな肌をぺたぺたと触り始める。愛撫、というよりはまるで何かを探り伺うかのように...
「どこ触って...あぅ...ッ!!そんなとこ...触るんじゃ...くぅ...!!」
敏感な箇所を弄られ、淫らな吐息が漏れ出す。 顔は怒りと恥辱により赤く染まり、涙を浮かべながらそれでも怪物を睨み付ける。 粗方触り終わった後、怪物は納得した様な表情で 臍の下辺りの腹部に思い切りナイフを突き立てて引き裂いた。
「ぐ、ぎゃああああああ!!」
絶叫、鋭い痛みが走り悶え狂う肢体。 見事な一閃で切り開かれた腹部に、怪物は手を挿し入れ、こじ開け、"目当てのもの"を力任せに摘出する。
「が─── ぎ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!?い゛だ゛い゛!゛い゛だ゛い゛!゛が゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
ぶちぶちと音を立てながら"楕円形の二つの臓器と袋状の臓器"が引き摺り出される。
「あー、うん。やっぱり医学書に軽く目を通した程度では完摘は難しいですねぇ...すこし破けてしまいました。燐渚さぁん、見えますか?これ、あなたの卵巣と子宮」 「い゛だ゛い゛よ゛、゛い゛た゛...え?」
突然投げ掛けられた意味不明な言葉に、激痛に苦しみつつも一瞬、我に帰る。 卵巣?子宮?あの変な肉の塊が...? アタシの? 少女は自分の性機能が粉砕されたという悍ましき事実に気付き、狂乱する。
「あ、あああああ!!かえ、して...アタシのしきゅう...かえして...っ!!」 「返してあげますよ」
切り取られた卵巣と子宮をまた少女の腹の中に無理矢理捻じ込みつつ、怪物はもう誰も宿さなくなった腹の上にのしかかり、破れて潰れた子宮口に男性器を挿入し、腰を振り始める。
「うぐっ!?あがっ!?ぎぃぃ!!がぁぁ!!」
腰を動かすリズムに合わせて少女の口からくぐもった悲鳴が溢れ零れる。 それが怪物の悦びとなり、何も産み出す事のない不毛に満ちた残虐なまぐわいは加速する。 死んだ子宮に精が注がれる。 当然、孕む余地など無く。
「ぁ...ぁ...がひゅ...」
鮮血と絶望に濡れながら、少女は息絶えた。
4年 2組 21番 白露雪美(ハクロ ユキミ) 大好きなお父さんへ 私が感しゃを伝えたい相手は、私のお父さんです。 お父さんはやさしくて、思いやりのある人で、私ががんばった時はほめてくれて、私がだめなことをした時はやさしくしかってくれます。 私のお母さんが交通事こでなくなってしまって悲しくてどうすればいいかわからなくなっていた時も、お父さんは私をだきしめてせ中をさすりながら泣き止むまで「だいじょうぶ、だいじょうぶだから」と言ってくれました。 私も、お父さんみたいに自分がかなしい時でも、他の人のためにやさしくなれる人になって、お父さんにおん返ししたいです。
「あの...お願いします...おうちに帰してください...」 「あなたはもうおうちには帰れませんよ?」
雪を想わせる短髪と大きな赤いリボンのコントラストが可憐な幼い少女が、椅子に座った状態で縛り付けられている。 両腕は背もたれごと縄で巻かれ、両脚は椅子の脚に沿って固定されている。
「お父さんが待っているんです...!心配させたくないから、帰してください...ッ!」 「あなたも、お父さんも、何も心配する必要はないんですよ?」
父を心配させまいとする少女の健気な懇願を受け流し、怪物は今回の凶器を手に取る。
「雪美さぁん、これ、なんだかわかりますか?」 「え...?ガス、バーナーです。お父さんがお肉を焼く時に使ってました」 「正解です。これはお肉を焼く道具、ガスバーナーです。今からこれであなたを焼きます」
そう言うと怪物はバーナーの噴射口を少女の白い太ももに向け、調節ねじをいっぱいに捻り切り、着火ボタンをカチカチと鳴らし始める。
「っ!?な、なんで!?や、やめて!やめてくださいっ!!」 「あれ?おかしいですねぇ...新品の筈ですがなかなか付かない...あっ付いた」 「あああああ!あ゛つ゛い゛!゛あ゛つ゛い゛!゛とめて!!とめでください!!」
勢いよく噴き出る1500℃の青い炎が少女の柔らかな脚をグリルしていく。 少女は必死に身を捩り、肌が焼ける苦痛から逃れようと無駄な抵抗を続ける。 肉が焼ける香ばしい香りが周囲に漂い、白い脚はまず赤く焼け、次に水疱が生じ、最終的に乾き切った黒に変色する。
「あ、あぁ...あしが...あしが...なんで、なんでこんなことするんですか...?わた、しなにもわるいことしてな...」 「何故、ですか...あなたの白い肌と髪が綺麗だなーと思ったので、燃やしたくなりましたね、ははは。そういうわけで...次は髪です」
少女の疑問に人倫からかけ離れた答えで返すと、ガスバーナーの噴射口を少女のさらさらとした白髪へと向ける。
「おっと、これは邪魔ですね。解いておきましょう」 「っ!!そ、それはおとうさんがくれたリボンなんです...かえして...かえしてください...お願い...」 「あー、お父さんからのプレゼントでしたか...それは残念」
真っ赤なシルク製の高級リボンにガスバーナーの火を近づけるとじりじりと燃え、まるで溶ける様に消えていく。
「あ...あぁ...やだ、やめて...うぅ...ぐすっ...えぐっ...」 「あー、これシルク製リボンだったんですねぇ。全部黒い粉になってしまいましたよ」
黒い燃え滓を手から払い落とし、思い出したかの様に泣き噦る少女の髪をバーナーで焼き始める。
「あ゛あ゛あ゛あ゛か゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛あ゛つ゛い゛!゛や゛め゛て゛!゛わ゛た゛し゛の゛か゛み゛や゛か゛な゛い゛で゛!゛!゛」
髪と頭皮が焼かれ、チリチリという異音と亜硫酸ガス特有の刺激臭が焼き放たれる。 父親に優しく撫でられ、日頃から丁寧にケアしていた綺麗な髪の毛が瞬く間に焼け焦げて潤いを喪い、灰色の縮れ毛に不可逆変換されていく。
「ぐすん...うぅぅ...おかあさん...おとうさん...」
度重なる肉体的精神的苦痛に耐え切れず、もはや少女は啜り泣き、震える事しかできない。 その弱りきった様子のすべてが、怪物の糧であり、悦びであった。
「ははは、疲れてしまいましたか?大丈夫です。そろそろ終わりますから」
怪物は少女の臍をナイフでこじ開けつつ、ガスバーナーの噴射口を無理矢理押しこむ。
「ぐぎぃ!?」
そして、着火。
「ぎ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!゛!゛!゛!゛あ゛が゛ぅ゛!゛!゛あ゛つ゛い゛!゛!゛お゛な゛か゛あ゛つ゛い゛!゛!゛ぎ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛」
体内で噴き上がる灼熱の奔流が生命維持に不可欠な主要臓器群を焼き焦がし破壊していく。 内側から加熱される事により少女の腹部は膨らみ上がり、赤黒く変色していく。 臓物が焼かれる事による筆舌にし難き匂いと煙が、少女の中から立ち昇る。
「が...あが...お、どう、さ...あがぅ!ひゅ...」
椅子が倒れる。少女の最後の言葉は、焼け爛れた内臓を陵辱せんとする怪物に押し潰され、誰にも聴かれる事なく消えて逝った。
それは思いがけぬ出会いだった。 目の前に立ち塞がっていた複数人の“輩”の事ではなく、それらを掻き分けるように現れた女性のこと。 大きい。ひと目見て感じた印象は、その身長や服装も相まって「大人の女性である」というものだった。
彼女は私を一瞥すると、輩へ向けて「私のツレ」だと言い放つ。 思わず面を喰らってしまった。これが試合だったならキレイに一本を取られていただろう。 それほどまでに堂々と、微塵の“嘘”も感じさせずに言い放つ女性に対し、私は“無言”という態度で話を合わせた。 恐らく女性は輩に絡まれている私を見かね、助けに入ってくれたのだろう。 ともあれ人手が増えるのはありがたい。この状況をどう切り抜けようか、少し迷っていた所だったから。 ……竹刀を握り締める力を僅かに抜いて、標的を最も近くの輩へと絞る。
女性の長髪に一人の輩が食って掛かり、合わせて二人目の輩も飛びかかっていく。 その様子を尻目に私は狙いを定めていた輩に照準を絞る。向けられた視線に気がついたか、輩も少し遅れて構えを取った。 他二人と違い、この男はある程度理性的であるようだ。竹刀を持つ私に対し、間合いに入らぬよう距離を置く。 その上で手にしたナイフを懐に滑り込ませるタイミングを伺っている。成る程、これは“実戦”慣れしている。 関節の軋むような音が響く向こうとは異なり、此方には暫しの沈黙が流れる。 お互いに出方を伺い、様子を探る。恐らくは先んじたほうが負けるだろう……と、輩は感じているだろう。 だからこそ、その虚を突いた。文字通りに意識の合間を縫うような、“刀”という得物からは想定し難い瞬速の攻撃。 即ち…………中学年の剣道では禁じ手とされる「突き」である。
輩は当然「打ち」で来ると思っていたのだろう。竹刀を振るう隙を狙っていたのだろう、とも推測できる。 けれど「突き」に予備動作は無い。加えて間合いすら読みにくく、一歩踏み込むだけでその切っ先は相手の喉元に達する。 短く空気が漏れる音が響き、輩は後ろへと倒れ込む……そんな彼の襟首を掴み、女性はビンタを一つかまして“一本”とした。
────その戦いの中で、私は思いがけないものを見た。 それは一人目を倒し、二人目に相対した際の女性の動きである。 一人目の輩を打ち捌いた彼女の動きは、洗練されていて手慣れてはいたが常識の範囲内に収まる動きだった。 けれど二人目と打ち合った時……女性の動きが「加速」した。僅かな一瞬だが、その動きは人間のそれを凌駕していた。 彼女が名だたる格闘家であったとしても現実的とは思えない筋肉の動き、身体の敏捷性。 加えて「加速」の瞬間に零れた、形容し難い“気”の流れ。つまるところ……“魔術”なのではないか、と。
常人離れした戦いには経験があった。クエロさんのスタイルも“一般的”とは言い難いものだったから。 義肢は兎も角、クエロさんが扱うものは神秘的で穢れのない……“奇蹟”とでも言うべきものだ。 一方で今彼女が発動した魔術は、既知の“奇蹟”とはまた異なる雰囲気を孕んでいた。積み重ねられた理論に基づく“学術”……のような。 その僅かな気配の違いが私の興味を引き立てた。クエロさんとこの女性、同じ“魔術”でありながら何故雰囲気の違いがあるのだろうか。
「……すみません、黒野さん。もう一つだけお伺いしても良いでしょうか?」
彼女に助けられた後、軽く事情を説明して私が置かれている立場を理解してもらった。 大会のため大阪を訪れたが避難し遅れ、戦いに巻き込まれた末に監督役の協力を得て聖杯戦争の元凶を探っている……と。 事情を聞いて女性……黒野さんは納得したような表情を浮かべていた。
その会話の最後に、私は抱いていた疑問を投げ掛けることにする。 気軽に聞いていいものなのかはわからない。私のような「一般人」が知っていい情報なのかもわからない。 黒野さんのような「魔術師」にとっては不都合なものかもしれない……けど、それでも尋ねずにはいられなかった。 もし答えが聞けないならそれはそれでいい。今はとにかく、込み上げてしまった「興味」を解消してしまいたい。
「先程黒野さんが戦っていた時……一瞬だけ、動きが“速くなった”ように見えました。 あれは……伝え聞くところの「魔術」というものなのでしょうか」
……その問い掛けが後に自らの運命を大きく左右する切掛になろうとは、この時の私は知る由もなかった。
クエロさんとはまた異なる世界を生きる“魔術師”と出会った日。その世界の根底たる“魔術”に触れた日。 これは目まぐるしく移り変わる“聖杯大戦”の一端であり……私の人生に於ける大きな転機の一つである。
「私のツレになんか用?」 それは単なる気紛れだった。 大通りでチンピラ数人が亜麻色のティーンエイジャーの少女に因縁を付け、良からぬ事をしようとした場面に出会したのだ。 大阪に原爆なんて落ちていないと主張する噂の歴史家…その家に行く為、タクシーを拾おうとした時、偶々目についた。 放っておけば良いと達観する魔術師の自分を心の中で張り倒して口から飛び出たのが最初の言葉だ。 「あぁ? 姉ちゃんのツレぇ?じゃあ姉ちゃんが相手してくれんのか?」 当然のように此方に注意が向いた。件の少女は此方を見て、困惑している。 …まぁそうよね。誰ですか!?とか言わない分空気読んでくれてるわ。 良く見れば背負った竹刀に手を掛けている。チンピラ相手に一戦交えようとしていたようだ、度胸あるわね。 ふと、彼女の指を見ると中々の竹刀タコが無数にあった。友人であるリアを思い出す、彼女も剣タコが幾つも合ったっけ。 「相手する?冗談、チンピラ相手にする程安くないんだけど」 「このクソアマ!」 私の挑発に先頭の一人が激昂して殴りかかってくる。瞬時に思考と感覚を加速。うん、誉めに誉めて喧嘩慣れした素人ってとこね。
加速魔術を使うまでもない。身体強化のみでチンピラの拳を避け、その腕を掴み、捻り上げて間接を極める。 「ガァッ!」 下がった顎に向けて膝を一撃。白目を向いて倒れる。 「……ちっ!」 二人目はそれなりにやるようだ。ピーカーブースタイルで此方に相対する。相手にするにはちょっと面倒だ。 「…スタートアップ」 だから少しだけ加速する。本来であれば5小節必要な魔術だが、友人であるトゥモーイ・ディットィエルトの協力で一瞬の動きであれば1小節で行使できる。 鳩尾に拳を一発、顎に一発、ついでに額にデコピン一発だ。何があったかも分からずボクサー崩れは吹き飛ぶ。 三人目は……既に亜麻色の少女が竹刀で痛い目に合わせていたようだ。トドメに頬をビンタしておこう。 「クソっ!覚えておきやがれ!」 「うっさいばーか!一昨年来やがれってのよ!」 捨て台詞を吐いて逃げるチンピラに石と罵倒を投げる。良し、命中! 「あの……ありがとうございます!」 満足げに振り向くと亜麻色の髪の少女が深々と頭を下げていた。 「いいのよ、気にしないで。 困った時はなんとやらっていうでしょ。それともお節介だったかしら?」
「いえ!そんな事ありません!」 少女は私の少し意地の悪い言葉を慌ててぶんぶんと手と頭を振り否定する。 その様がとても可愛らしい。 「ふふふ、ごめんなさい、冗談よ」 私の微笑みを見て少女は胸をなでおろした。姪の未来と同じくらいの歳かしら。 「私は黒野逸花、フリージャーナリストよ。貴女は?」 「鴈鉄梓希です!」 元気が良い。そして言葉や仕草の端々から育ちの良さが分かる。決して厳戒体制にある大阪で何事か悪さをしようとしたり、忍び込むタイプでは無さそうだ。 「えっと、鴈鉄さん? 貴女はこの大阪でなにをしているの?」 「はい…実は話すと結構長くなりまして……」 それが私、魔術師黒野逸花と少女鴈鉄梓希のはじめての出会いだった。 この時は私と彼女、そしてクエロんの三人に他の子達も含めてあんな騒動に首を突っ込むことになるとは思いもしていなかったんだけどね
材料 ステーキ グレース・バッドのランプ肉 200g (10代前半の処女の女児のランプ肉でも代用可能) 塩、胡椒 適量 油 大さじ1/2
グレイビーソース 有塩バター 20g 薄力粉 大さじ1 赤ワイン 大さじ3 ワインビネガー 大さじ1 蜂蜜 大さじ1/2
1.まずは肉の下処理を行います。
「いやああああ!!!!はなして!!この変態!!ママに言いつけてやる!!」
泣き叫びながら階段を駆け降り逃げ出そうとする少女を鷲掴みにして捕らえる。 当然少女は抵抗し、肉付きの良い可憐な脚で蹴り、白く生え揃った歯で噛みつき、柔らかく小さな爪で食人鬼を攻撃する。
「あぁ...いいですね、いい...腹部を蹴り上げられる衝撃、生えかけの牙が肉に刺さる感覚、子猫の癇癪のような肌を引き裂く引っ掻き...ふぅ...なんとも、気持ちいい...!!」 「ひぃっ!!や、やだ...たすけ──かはっ!?」
少女の儚い抵抗は、異端なる精神構造を有する人型の怪物にとって快楽と身震いにしかならない。 あまりにも異様な反応に怯える少女の細い首を殺人鬼の両手が絞めあげる。
「あがぁ!があぁ!がああああ...!!」
宙に浮き、脚をばたつかせる少女の喉から苦しげな呻き声が溢れる。 目から涙が搾り出され、唾液が撒き散らされる。 その愛らしい今際の足掻きは怪物の嗜虐心に火を付けたのか、興奮のあまり全霊の力を持って少女の首を握り潰した。
「かひゅっ...かはぁ...っ」
最後の息が吐き出され、少女の身体からは力が抜け、手脚はだらんと垂れ下がる。 膀胱は弛緩し、毛も生えていない未成熟な股ぐらから尿が滴り落ちる。
「あぁ勿体ない勿体ない...これはコップに溜めておいて後でいただきましょう」
2.皮を剥ぎ、下処理をしたランプ肉のドリップを丁寧に拭き取り、全体に胡椒を振ってなじませた後130°ほどに熱したオーブンで網に乗せた状態で20〜30分ほど焼く。 裏返してさらに15〜25分焼く。
3.仕上げに肉に塩をよくなじませて、油を引いたフライパンで片面20秒ほど焼き、焼き色を付ける。 美味しそうな焼き色が付いたら肉を休ませて予熱で内部に火を通します。
4.肉を休ませている間にグレイビーソースを作りましょう。 先程肉を焼いたフライパンに有塩バターを溶かして薄力粉をふるい入れ、弱火で炒めます。 粉っぽさがなくなったら残りのソースの材料を全てフライパンに入れて加熱し、程よいとろみが付いたら出来上がりです💛
陽が落ち、夜の帷が下りる。暗き空には煌々と狂おしき満月が浮かび、窓から染み出す月明かりがテーブルに並べられた晩餐を照らし出す。 付け合わせのマッシュポテトと蒸した人蔘と共に乗せられた、グレイビーソースがたっぷりとかけられた分厚いステーキ。 怪物が席に付き、食前の祈りを捧げる。
「...父よ、あなたのいつくしみに感謝して、この食事をいただきます。 ここに用意されたものを祝福し、わたしたちの心と体を支える糧としてください。 わたしたちの主、イエス・キリストによって...アーメン」
研ぎ澄まされたナイフが肉を切り裂き、フォークが突き刺し口に運ぶ。程よく酸味の効いたグレイビーソースにより肉の味が引き立ち、ほのかに癖のある脂の味が口一杯に広がる。 ナイフとフォークがかつておしゃまな少女であった肉塊を引き裂き、怪物の胃袋に収めていく。 美味しい、美味しい、美味しい...💛 夢中になって頬張り、咀嚼し、口内に飛び散る少女の肉汁と血と絶叫を何度も、何度も脳内で反芻する。 皿にこびり付いた肉汁も余す事なく、パンで全て拭い取り最後の一滴まで味わい尽くし、そして。
「...ご馳走様でした💛」
今宵の月下の晩餐は終わりを告げた。
それはいつものように、教会で洗濯物を畳んでいるときの事だった。
クエロさんと共に生活するにあたって、洗濯や掃除などの家事は私が担当している。 非常時とはいえ曲がりなりにも住まわせてもらっている身だ、出来る限りのことはしておきたい。 その上、彼女の自室を目にしてしまった以上は“やらねばならない”のだ。
……修道服に自分の制服、クエロさんが気まぐれに着たメイド服。 初めて目にした時は動揺で直視できなかった下着の数々も、部屋での様子を見てからは理性で抑えられるようになった。 のだが。その下着の中に紛れ込んでいた一枚の“それ”を手にした瞬間、思考回路が真っ白になった。 布面積が控えめなランジェリー。妖しい黒のシルエットは比較的見慣れてきたが……そのシルエットには、妙な位置に“切れ込み”がある。
「…………え、なんでこんな位置に……」
初めは破れてしまっているのかとも疑った。 だがその裂け目に沿うように刺繍が施されており、三角形の丁度真ん中から頂点に達する切り口は意図的なものだと推測できた。 なら、何の理由で。その裂け目の位置に何が来るのかと、順序立てて推理を重ねた瞬間……その“意味”を理解仕掛け、再び脳裏が焼け付く。
でも理解したくない。なんで?なんで?意図がわからない。 だってこんなの、下着の“てい”を成してない。下着というものの目的が失われている。 ならばこの下着にはまた別の目的があるのだろう。ここが“開いて”いて、便利なことと言えば………………。 思考が止まる。その思考の先に待つ“想像”が、自分の良心を傷つけるものだという確信があったから。 つまりは。この下着を着用している姿を…………乱れに乱れた頭の中を正すように、私はキッチンへ走り冷水で顔を洗い流した。
考えるな。見なかったことにしよう。何を言われても、知らなかったと言っておこう。 無心で“それ”を畳む。この記憶は心の奥底の、もう思い返さないための記憶領域にしまっておこう。 淡々と手を動かして畳み終え、また別の下着で隠すようにし……これで一安心と息を吐いて残りの洗濯物を確認すると。
「─────っ」
なんで上のほうもあるの。
割れ目は二つ。その割れ目に位置する部位がなんなのかを、今の私は瞬時に理解できてしまった。 数秒前にしまっておいたはずの記憶領域から、“興味”と名を変えたそれが溢れ出す。
………………手にし、広げたそのランジェリーを自分の胸元に合わせるように持ってくる。 うん。ソウデスネ。私の想像と合致する位置にスリットがあって、この下着が如何に如何わしいものなのか確信できた。 服の上から合わせただけでも、心臓が口から飛び出てしまいそうなほどに心が乱れる。これを……いつ着けてたんだ、あの人! ピンク色に乱れた思考が段々と「どうしてこんなものがあるんですか」という叱責に変わっていくのを感じる。 けど……今の私が怒っても何の説得力もないだろう。それにこの顔の赤さはきっと、明日になるまでは引かなそうだし。
そうして結局私は“何も見なかったこと”にして洗濯物を畳み終えた。 とはいえ少しばかりは抗議したい。直接言葉にはせず、しかして「知っているよ」と知らせておきたい。 そんな思いの結果として、私は丁寧に畳んだその下着一色を衣装ケースの一番上に仕舞っておくことにする。
……そういえば同級生の男子が、母親に部屋を掃除された時「いかがわしい本」が机の上に置かれていたと嘆いていたけど。 そのお母さんの気持が少しだけ理解出来た気がした。そんな、少しだけ“大人になる”事の意味を知った一日であった。
わたし、ねこ。なまえはない。どこでうまれたかなんてちっともしらない。 ただ、しめったダンボールばこのなかであめにぬれてふるえていたことはおぼえている。 さむい。さむい。にゃあ。にゃあ。だれもへんじをしない。 ほかのみんなつめたくて、うごかなかった。かたかった。 おなかすいたのでごはんをさがしにいったらネズミがいたのでおいかけてつかまえた。 ずいぶんたくさんおいかけたのできずいたらじめんもつちからくろいいしになって、じひびき?なにかおおきいものがきて に゛ゃ゛っ゛
埃を被った廃屋には、痙攣し苦しげに血を吐き出す猫とそれに覆い被さる少年。
にゃ... に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
野良猫の腹に割れた窓ガラスの破片が突き立てられる。 猫の皮膚は柔らかいとはいえ、体毛で守られたソレを引き裂くのは簡単ではない。 込められる力は自然と強くなり、みちみちと皮膚が破け、血が滲み出す度に掠れた鳴き声が幽霊屋敷に響く。 手脚をバタつかせる野良猫の必死の抵抗も虚しく、腹は切り開かれ、温かな臓物が露わになるや否や、少年は壊れ消え行く小さな生命を前にいきり勃った性器を傷口に侵入させ、犯し始める。
に゛ゃ゛っ゛が゛ぁ゛っ゛に゛ゃ゛っ゛ふ゛ぎ゛ゃ゛
腰を打ち付ける度に呻き声があがり、悍ましくも滑稽なリズムで猫の内臓が凌辱されて行く。 そして
に゛ゃ゛ぁ゛っ゛が゛ぁ゛っ゛
腹に精液が零されるのと同時に、押し潰された猫は無残にも絶命した。 暫し快楽の余韻に浸った後、少年は猫の屍を深い草むらへ無造作に放り投げ、物足りなげな顔を浮かべながら幽霊屋敷を後にした。
「ね、ねえセイバー、本当に大丈夫なのよね」 「安心してくださいニレ。私の騎乗スキルはBランクです」 「可とも不可とも言えないわね」 「Bランクでも幻想種以下であればどんな動物も乗りこなせるのです」 「騎乗スキルって相乗りする相手までカバーしてなかったと思うけど…ちなみに牛に乗った経験って」 「ありませんね」 「不安になってきた…」 「大丈夫ですニレ。もともと動物と心を通わすのは得意です。人ではないので」 「…ねえセイバー。今調べてみたけど、水牛車って後ろの荷台に乗って運転するもので水牛に乗ったりはしないらしいって出てきたんだけど」 「さあ行きますよカレドヴルフ号。全速前進です」 「ねえ待ってこういう乗り物ってゆっくり景色を楽しむものであって速度を出すものじゃ待って待ちなさいお願い待ってセイバあああぁぁぁ───!?」
ある日曜日の昼、行幸六花は人払いの結界が張られた枢木邸の庭にいた。 六花は掌大の石にアルファベットのSに似た文字を刻むとこれで大丈夫かな?と何者かに話し掛ける。 屋敷の主である楡ではない。楡は何時ものように冷ややかに立花を一瞥していた。 『ああ、それで良い。 それがソウェル、火のルーンの一つだ』 六花の疑問に答えたのは楡の隣、その地面に突き刺さった槍…マジカルホワイトトパーズ、正確にはホワイトトパーズに 無幻泡影されたランサーだ。 「それで火が出せるようになるのか?」 いつの間に庭に出てきたのか、先ほどまでリビングにいた(楡に言わせれば勝手に占拠していた)萬谷桜楽は興味津々と言った様子で様子を見に来ていた。 「……火のルーンってアンザスやカノかと思ってたけど違うんだ」 『いや、枢木女史の知識は間違いではない。アンサズ、イングズ、ソウェル、カノ。全て発火のルーンとなり得る』 意外そうにぼそりと呟いた楡の言葉にランサーが答える。 「ランサー、その4つが全て火なの?」 ランサーの言葉に首を傾げたのはルーン魔術を教わっている最中の六花だった。
『太陽と勝利を意味するソウェル、松明を意味するカノは発火のルーンとしては初心者向けだ。 アンザスは知識のルーンで知らしめる事が真価だが、汎用性が高い。早い話知識とイメージ次第で発火だけでなく自在に事象を起こせる』 ランサーの言葉にへー…と頷六立花と桜楽。一方楡はその答えに不服そうだった。 「待って、そんな話聞いたことないんだけど」 『魔術とは学問であると同時に神秘と信仰だ。特に出来ることに幅があるルーン魔術に関しては、言ってしまえば出来ると強く思えば出来るし、最初から出来ないと思っていれば何も出来ない』 楡の言葉にランサーは淡々と答える。その答えを聞いても楡は不満そうだった。 「え!じゃあ私もルーン魔術使える?シャドウファイアー!って出来るの!?」 横から割って入ったのは桜楽だった。全身を使って炎を表現して前方に発射するようなモーションを取る。 『まぁ、出来ない事はないと思うが…君はルーン魔術抜きで多分近い内に炎を自在に操れるようになると思うぞ』 「マジで!やった! さっそく一緒に練習しよ!」 ランサーの言葉にガッツポーズをすると、桜楽は炎を出す練習をし始めた。
「ランサー、盛り上がってるところたまけど良いかしら?」 待たされた六花は少し不満そうに少し頬を膨らませ、ランサーをジト目で見る。 『ああ、すまんなお嬢ちゃん。 ルーンを刻んだ石を遠くに投げろ…燃え広がらないとこだぞ? 準備が出来たら魔力を込めて唱えろ、ソウェル!』 「……ソウェル!」 瞬間、ルーンを刻んだ石がパチパチと火花を立てると発火し、そして鎮火した。 「すっげー!」 「……出来た」 はしゃぐ桜楽とほっと肩を撫で下ろす六花。 『ちゃんと火が出たか、最初にしては上出来だ』 六花を誉めるランサー。その横にいた筈の楡はいつの間にか姿を消していた。 「……出来ると強く思えば出来る、か」 楡は一人リビングに戻っていた。片手には掌大の石。楡はナイフで石に何かを刻もうとして……止めた。 「今更ね……」 自嘲するように嗤う。そうだ、全ては今更だ 「あれ?くるくるねーちゃんいない?」 「くるるさんトイレでしょうか?」 「く゛ーる゛ーる゛ーき゛ーよ゛! 誰がくるくるだのくるるですって!!」 ガキどもの声に先ほどまでの自嘲をかなぐり捨てて楡は庭へと戻った。
『実際どうなんだ?』 クッキー缶に仕舞われたままのせいでやや声が反響する。机の上のランサーはそう問いかけた。 行儀悪く足を組んで紅茶を口にしていた楡が眉を上げる。ハルと六花はたまたま話に上がった枢木邸の書庫の見学に行っていた。 「どうって何がよ」 『見たところここに張られた結界はそこそこ古い。200年は経ってないが100年は経っている。 質も悪くない。特に20年ほど前に張られたものは俺の目から見てもなかなか見どころがあるくらいだ。俺の目からだぞ?』 念を押すランサーに楡は溜息を付いた。…確かに、ルーン魔術の太祖が言うならけちはつけられない。 「20年前か。お父様ね。そうでしょう。あの人はうちの家系の傑物だったから」 『お前も俺から見れば素質に比べて実力不相応に見えるがな』 「仕方ないじゃない」 紅茶の液面を見つめる楡の瞳が遠く霞んでいた。 「そのお父様が結論を出してしまったんだもの。『この家の魔術師には未来がない』って」 少しの間沈黙があった。やがてランサーが言った。 『お前たち現代の魔術師は在り方の定義を複雑にしすぎたな』 「あなたにそう言われたら何も返す言葉がないわね。私の皮肉も品切れよ」
「ふふっ、こんにちは。囚人番号9425番さん」
その"'部屋"には物々しい監獄には似つかわしくない、長い金髪をふわりと靡かせ黒と黄色のドレスを着こなした豊満な女性が待っていた。
「怖がらないでいいのよ?さぁ、おいで...抱きしめてあげるから...」
此方に手を広げ、優しく微笑みかける。 動くたびに揺れる、はち切れそうな乳房に目を奪われながらも近づくと、その柔らかな身体に抱擁され、温かな肉に包み込まれる。
「あらあら...甘えん坊さんですね♪ここでの生活は辛くて、苦しかったでしょう?でも、もうなにも悩まなくていいの。好きなだけわたしに甘えてくださいね?」
ぎゅっ、ぎゅっ。強く抱きしめられ、顔が双丘に深く沈み、甘く蕩けるような香りと、熱く湿った感触に思考能力が奪われていく。 天にも昇るような心地よさに溺れてしまい、微かに漂うオゾン臭にも、気付かない。
「オムツもちゃんと履けて偉いですね...♪よしよし、大丈夫。大丈夫よ...きっと良いところに行けるから...」
甘く囁かれながら頭を撫でられる度に信じられないような快感が全身を駆け巡り、脳髄を痺れさせる。 もはや手足に力は入らず、赤子のように母の胸に身を委ねることしかできない状況。 この柔らかな乳房に永遠に溺れていたい。 もっと甘やかされていたい。
そう思った矢先、耳障りなブザー音が"部屋"を満たす。
「時間です。さようなら囚人番号9425番さん」
瞬間、頭に湿り気を感じたかと思うや否や、押し潰されそうなほどに強い力で抱き締められる。 そして、瞬く間に超高圧電流が皮膚の初期抵抗を破壊し、血液と臓器が沸騰する。 血管は弾け、髪の毛が焼ける匂いが辺りに立ち込める。 現在稼働中のあらゆる電気椅子の威力をも上回る、古より続く"裁きの雷"の系譜を汲む英霊による2000ボルトオーバーの絶死の抱擁...母性持つ処刑器具の心(プログラム)に生じた疵(バグ)...「もう二度と、同じ処刑対象を二度抱き締めない(一度の抱擁で必ず殺す)」という慈愛(殺意)の発露。 その溢れんばかりの愛情(電圧)は、脆弱な人体が到底耐えられるものではなく... 罪人の灼熱に煮えたぎる眼球が最期に捉えた光景は、焼き焦げた骸を愛おしげに撫でる慈しみに満ちた母の微笑みだった。
[記録開始]
[00:01]:(カメラはテーブルに置かれたフルーツケーキとその上に立てられた10本のキャンドル、その向かい側で座る女児を映し出している)
[00:05]:声1:「パパ少し遅くなるって。ひなちゃん、準備いい?」 [00:07]:声2:「うん、大丈夫だよママ。お兄、電気消して」 [00:09]:声3:「はいはい」
[00:13]:(カメラがテーブルに置かれ、数秒後に電灯が消える)
[00:25]:(声1、声3の主が手拍子をしながら「ハッピー・バースデイ・トゥー・ユー」を歌う。カメラは蝋燭の薄明かりに照らされた、満面の笑みを浮かべた女児の表情を記録する)
[00:41]:(向かい側に座る女児が勢いよくキャンドルを吹き消す)
[00:42]:声1、声3「(拍手の音、同時に少しカメラがぶれる)、おめでとう!」
[00:47]:(声3の主が立ち上がり、電灯を点ける)
[00:55]:声2:「はやく食べたいよ。切って切って〜」 [00:59]:声3:「はいはい」
[01:21]:(声3の主がキャンドルを取り除き、ケーキを切り分け、女児の前に置く)
[01:25]:声2:「お兄、食べさせて」 [01:27]:声3:「えぇ?」 [01:31]:声2:「あーんしてくれないと食べない」 [01:34]:声3:「わかったわかった」
[01:41]:(カメラの手前から伸びた腕がフォークを掴み、ケーキを一口大に切って乗せて、女児の口へと運ぶ)
[01:45]:声1:「ひなちゃんはお兄ちゃん大好きねえ、おいしい?」 [01:49]:声2:「おいしい。お兄も、あーん」
[01:58]:(女児がテーブル越しに、ケーキの欠片を乗せたフォークをカメラの方向へと差し出す。一瞬、カメラは大きくぶれる)
[02:05]:声2:「おいしい?」 [02:07]:声3:「おいしいよ...ちゃんと口拭け」 [02:10]:声2:「ん」
[02:15]:(カメラの手前から伸びた腕がティッシュを使って女児の口に付着したクリームを丁寧に拭う。女児は満足げな笑顔を浮かべる)
[00:01]:(金属製のベッドに女児が寝かされている。手脚はベルト状の器具で固定されている) [00:09]:(ベッドの横に、眼鏡を掛けた中年の男性が現れる。女児は口を強く結んで恐怖に耐えているような表情を見せる)
[00:15]:男性:「こんにちは」 [00:17]:(女児は何も発さない) [00:20]:男性:「こんにちは」 [00:25]:男性:「こんにちは」 [00:30]:男性:「こんにちは」 [00:35]:男性:「こんにちは」 [00:40]:男性:「こんにちは」 [00:45]:男性:「こんにちは」 〜省略〜 [02:30]:男性:「こんにちは」 [02:35]:(女児は先程より不安げで涙ぐんだ表情を浮かべているが、何も発さない) [02:40]:(男性が首を傾げた後、徐に女児の右胸部に手を伸ばし、掴む) [02:42]:女児:「あっ、いや...っ」 [02:45]:(男性は胸部を掴んだ手に込める力を上げていく。万力のようにじわじわと女児の胸が潰されていく) [02:50]:女児:「いたっ、痛い!いたいいたいたいたいたいっ!!あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 [03:30]:男性:「ふぅ...」 [03:41]:女児:「ふぐっ...ひぐっ...いたい...うぐっ...」
[03:57]:(男性がポケットからナイフを取り出し、慣れた手付きで女児の服を引き裂き、脱がしていく。女児は激痛の余韻に苛まれ、抵抗する余力がない) [04:12]:(女児の胸部が露わとなる。膨らみかけの右の乳房にはっきりと五本指の形のあざが浮かび上がっている) [04:21]:(男性はそれを見て満足げに頷いた後、剥き出しの左胸に手を伸ばす)
[04:25]:女児:「やだ...やめて...っ!いやっ...」 [04:30]:(女児は必死に身を捩り抵抗するも効果はない。男性は女児の左胸を掴む。乳房に強い圧力が込められ、押し潰されていく) [04:45]:女児:「ぎぃっ!やめっ、あ、やっ、あ゛あ゛あ゛!!」 [05:02]:(左乳房が握り潰される。激しい内出血が乳房を赤く変色させる) 〜省略〜 [99:99]:女児:「(言語化不可能な呻き声と啜り泣く声)」 [99:99]:(女児の肉体は余す所なく"握り潰されている") [99:99]:男性:「ふぅ...」 [99:99]:(疲弊した肩と首を回し、伸ばす音) [99:99]:男性:「さて、と」 [99:99]:(男性はか細く息をする女児の首に両手を伸ばし、親指と手のひらを使い強く圧迫する) [99:99]:女児:「あぐ...んんっ!!」
[99:99]:(男性は首を絞める手に込める力を上げていく。万力のようにじわじわと女児の首が圧迫されていく) [99:99]:(時間が経つにつれて女児の顔は赤く染まり、涙が零れ落ちる)
[99:99]:女児:「がぁっ!んんん!がぁぁぁ!がひゅっ...」
[99:99]:(男性は女児の首に全体重を掛け、勢いよく圧し折る)
[99:99]:(何かを掻き回す水気のある音と何かが滴る水気のある音) [99:99]:男性:「はははは」 [99:99]:(悦びに満ちた声と水気のある音だけが響く)
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不思議だ。
クエロさんには好意を持っている。優しいだけの人ではないけれどきちんと温かみを持った人だ。
いや、微妙なぎこちなさを鑑みると『持とうと努力している』というのが適切な感じがする。
ともあれ私へ気遣ってくれているのは確かで、それに対して感謝や憧れといった複雑な感情を持っているのも間違いない。
それでも、こうして竹刀を握って相対すると浮かんでくる気持ちはひとつだ。
───倒す。目の前の相手を斬る。
たったひとつのことに純化していく感覚が気持ち良い。自分でも目が据わっていくのが分かる。
小さく、長く、深く、息を吐き出す。一緒に余分なものが抜けていく。鋭く研ぎ澄まされていく。
すごくいい感じだ。周囲の音が消えて、代わりに真っ赤な鉄を打つ音を幻に聞く。強い対戦相手を前にした時に自然と高まっていく己の集中を悟った。
教会の裏庭。目の前にはクエロさんがいる。私が貸した竹刀を握っている。
ぴたりと正眼に切っ先を置いたその構えに癖のようなものは感じられない。
無色透明。それは誰にでもできる構えだからこそ、易くは誰にもできない構え。人は構えひとつとっても癖が出る生き物だからだ。
力みもなく、だからリズムも読みにくい。仕掛けるタイミングが掴めない。
そういう時は相手の目を見ろと師範に教えられていた。覗き込む。深い虚のような、どこを見ているのか分からない瞳が出迎える。
竹刀を握っていなかったら、その目を見て怖いと思っていたかもしれない。
でも今は違う。剣の呼吸を聞いている。どうしてか、その目と見つめ合ってとても安心した。理由はすぐに思い当たった。
そうか。わざわざ私と同じところで付き合ってくれるのか。
構えに色はない。この人の剣のこの人らしさを知りたい。小手調べに踏み出した足を僅かに前へにじり寄せた。
「───」
途端、クエロさんの影が微かに淀む。小石のひとつやふたつ分、足の裏を滑らせて後ろに退いた。
ミリ単位の間合い調節。クエロさんは柔らかく膝を矯めてこちらを待ち構えている。
もう少し踏み込めるかと進ませかけた爪先が安全弁に引っかかったように止まった。
直感が走る。もう数ミリも踏み込めばクエロさんは待ちの姿勢から即座に攻めへ切り替えてくる。
間違いない。ここが私から攻め込める距離の分水嶺だ。そうと分かればいつまでも睨み合う必要はない。
相変わらず拍子は読めない。ならこちらから乱す………!
「えぁッッ」
空気を撓ませたのは裂帛の気合。
腹の底から弾けさせた叫び声と共に私は予兆なく肉薄した。
クエロさんの脳天めがけて拝み打ちを放り込む。必要最低限の力感で。
躱されれば更に踏み込む。受けられれば手元が上がって空いた首から下を攻める。
面打ちは剣道を始めれば最初に習う攻めであり、全ての基本となる一手。そして基本とは一番強いから基本なのだ。
対して、クエロさんは僅かに切っ先を揺らめかせた。
降り落ちる私の竹刀の横からまるでそっと指先で払い除けるように竹刀が添えられ、横にそらされる。
手元は上がらなかった。擦りあった竹刀が鍔のあたりでがちりと食い込んだ。踏み込んだ私と退かなかったクエロさんで竹刀を交わしあい、距離が密着した。
さっきまで間合いを挟んで見えていた目が至近距離にあった。その眼差しは先程と変わらずまるで揺らがない。
ぞろりと歯を尖らせた心が獰猛に笑う。その顔色を変えさせてやると。
首元へねじ込むようにして竹刀を斜めに押し込んだ。膂力だけではなく自分の体重全部を使って崩しに行く。
竹刀を絡めていたクエロさんが半歩下がる。リズムを読んでこちらも僅かに下がる。空間が開いた。瞬間、押した竹刀をそのまま降ろして面を取りに行く、と見せかける。
その切っ先を寸前で素早く引いた。すぐに最小限の矯めを作る。身体を開きながら素早く胴を打ちに行った。
崩しからの引き面をフェイントにした引き胴。自信を持って打った技だったが、敵もさるもの。
まるで面打ちの打ち気の無さを分かっていたように私の横薙ぎの一閃が払いのけられる。けれどまだだ。攻めろっ!
宙に浮いたクエロさんの竹刀を振り払うように斬りつけて前に出ようとした、その時だった。
打ち払おうとした竹刀が幻のように私の竹刀をすり抜けた。予想外の出来事に頭の中でアラートが点滅する。
何が起きた?刹那の間に把握した。竹刀の重みに任せて切っ先を沈めたんだ。虚空を打った竹刀が死に体になる。
戻せばまだ間に合う!勘によって動作を途中で止めた分復帰も早かった。
表へ戻した竹刀が迎え撃ったのは、竹刀を肩へ担ぐように振りかぶったクエロさんの激烈な打ち込みだった。
「っ………!」
手が痺れる。そう思ってすぐに違和感に気づいた。“手が痺れる?”
もう私は剣道において初心者ではない。竹刀を受け損ねたとしても手が痺れるようなことはない。そういうのは握り方の甘い間だけのことだ。
それがクエロさんの打ち込みはまるで鉄塊でも受け止めたかのようだった。
単純に力任せに叩き込まれたのではない。まったく正体が判別できないが、このたった一瞬で知らない身体の動かし方をされた。
竹刀を取り落としそうになるが、膝を割って後ろに倒れ込むようにたたらを踏み必死に堪える。
すぐ戻せ、すぐ構えろ。地面に足を縫い付けるようにして留まり、再び竹刀を握り直して構えた。
一瞬の攻防の中でこの人の剣気のようなものが微かに見えた。夜の帳で何もないように隠しているが、一枚捲ればそこには剣呑な凶器がずらりと並んでいる。
今牙を剥いたのはその内のたった一本。そしてすぐにそれは仕舞われ、クエロさんは再び凪いだ湖面のような静かな正眼の構えに戻っていた。
「はッ、はッ、はッ………、はは、は………っ!」
一気に乱れた呼吸を整えようとするのだが、それよりもさきに笑いがこみ上げてしまった。
強い。知ってはいたけれど、分かってはいたけれど、この人は物凄く強い。私が出会ってきた人たちの中で一番強い!
どきどきと胸が弾む。初恋のように気分が高揚する。心地よい絶望感に唇が弧を描く。
駄目だ。今の私ではどんな手を打っても勝てる気がしない。一番得意な剣道でさえ歯が立たない。道大会を優勝したくらいで少しは上達した気になっていた自分が馬鹿みたいだ。
道に果てがないことの証左を前にして、私は自分でもびっくりするほど心を踊らせていた。
と、隙なく構えを取っていたクエロさんがふと緩めて剣を降ろした。
ほんのりと首を傾げながら微笑む。水面に張った薄氷を割るような、くっきりとした感触を覚えるあの笑みだった。
「素晴らしいですね。センスだけなら私よりも上です。あなたは剣に愛されている」
「そ、そうですか?でも今だって完全に押し込まれちゃって………」
「ですが剣を落とさなかった。並々ならぬことです。私とは積んだ時間の差があるだけ。あなたは良い剣士になれます」
はっきりとそう言われると面映ゆい。つい頬が紅潮してしまう。
何を褒められるよりも剣の腕を褒められるのが一番嬉しい。どんなことよりも心血を注いでいればこそだ。
クエロさんに稽古をお願いしてみてよかった。たぶん私は今、普通に全国大会に出場していたのとは違う種の濃密な経験値を稼いでいる。
強くなりたい。もっと、もっと。いろいろ理由はあった気がしたが全部忘れた。ただ、強くなりたい。
この人が修練でもって丹念に一本ずつ磨き上げただろう技のひとつひとつを手にとって、見て、自分のものにしたい。
もっと知りたい。もっと触れたい。この人のことを。この人の強さを。この人の心を。もっと。もっと。
クエロさんが構え直す。応じて私も降ろしていた竹刀の切っ先を再び眼前に備えた。
剣の向こうでクエロさんが微笑んでいる。それがどこか楽しげだったのは気のせいだろうか。分からない。
「もう少し続けましょうか。私も少し気が乗ってきました」
「はいっ!」
そして始まる間合いの調節。今度は影がついてくるように気配のない足取りで踏み込んできたクエロさんの袈裟斬りを必死で身を捩りながら回避しなければならなかった。
軽く数手、と言っていた打ち合いは気がつけば1時間以上経っていた。
終わってみれば私は全身汗だくだったのにクエロさんは冷や汗ひとつかいていなかったのが癪ではあったかな。
甘い期待感みたいなものは一瞬で吹き飛んでいった。
真ん中高めに浮いた半速球は見事にバックスクリーンまで一直線にかっ飛んでいった。かっきーんと。
「なんですかこれは!」
「なにって、私の部屋ですけれども………?」
「ぐちゃぐちゃだー!」
私の背後にいるクエロさんがさも不思議そうに返事をするのが逆に不思議でならない。
クエロさんの私室は端的に言って無秩序によって支配されていた。
部屋にはこれといって個人を象徴するような装飾はない。
まあ、クエロさんはこの聖杯戦争に合わせてやってきたピンチヒッターという話だからそれはそんなものだろう。
しかしある意味で実にこの部屋に住む個人らしい彩りになっていた。
下着や肌着、箪笥の上に放りっぱなし。洗って干したままなのだろう。畳んですらいない。
修道服も右に同じ。広げられて椅子に引っ掛けられているせいでどうにか皺になっていないのが奇跡だった。
本は床に積まれている。というか、そのうちの数冊は床に散らばってさえいる。
極めつけは、こちらにやってきた時のものであろうトランクケースが開けっ放しで転がっていた。
中にはまだ取り出されていない物や取り出されたのにそのままぽいっとトランクケースに放られた物が山を作っている。
まだ洗濯物やゴミが床に散乱していないのがマシだ。そんなひどい有様だった。
「クエロさん! 片付けようとか思わないんですかこれ!」
「ほわぁ………?」
ほわぁじゃないです。そんなぽかんとした顔をしても駄目です。
どうも彼女に会ってからきちんとしたところしか見てこなかったせいでクエロさんに対して完璧な人という印象が私の中にあった。
そんな像がガラガラと音を立てて崩れていく。こうして思い返してみると確かに予兆はあった。
洗濯物の籠に昨日の洗濯物が入れっぱなしになっていたりとか。干したものが夜になっても仕舞われてなかったりとか。
食事に関してはいつも美味しいものを作るのですっかり騙されていた。
「仮に私がこんなふうにしているところをお母さんに見られたら………見られたら………怖いですよ!」
「怖いんですか」
そうです。怖いのです。
思わず身の毛がよだつ。ここにきて母の顔が鮮明に思い出された。
母は全く怒った顔を浮かべない人だったが、同時に怒りん坊だ。母が怒った時の恐ろしさは父の比ではない。
私が部屋をこんなふうにしているのが見つかった暁には「こちらに来なさい梓希さん」と呼ばれてお説教が始まってしまう。
そうして淡々と諭されることのまぁ怖いことと言ったら。ちなみに父にも似た感じで怒る。あのいかめしい父がそんな母の前では尻尾を丸めている。
それを思い返しているだけで私はいてもたってもいられなくなった。駄目だ。我慢できない。
「クエロさん! 片付けをしますけれどいいですね!?」
「え?はぁ、まぁ、はぁい」
クエロさんがぼんやりと頷くのに合わせて部屋に突入する。ちなみに駄目だと言われても説き伏せて実行していた。
修道服はクローゼットへ。本を本棚の空いたところに詰め込み、下着類を箪笥に収納していく。
下着はどれもレースがあしらわれた大人っぽいデザインだった。先程までの私ならちょっとドキドキしながら手に取っただろうが、今の整理整頓の鬼となった私には通用しない。
箪笥の上で小山になっているそれらを解体した後はトランクケースだ。
ちょこまかと動き回る私を見ているだけだったクエロさんの腕を引っ張ってトランクケースの前に座らせた。
「荷解き! しましょう!」
「えー………でもぉー………別にこのままでも大丈夫じゃないですか~………?」
「よくありません! ちゃんと整理しないといざという時にどこにあったか分からなくなっちゃいますよ!」
そうですかねー、そうかもしれませんけどー、と曖昧なことを言うクエロさん。
分かってしまった。すぐ気付けなかった自分の愚かさに私は歯噛みした。
この人は自分ではちゃんとしているつもりだけれど本当は全然そんなことなくて、周りから見たらお世話が必要な人なんだ………!
「なんですかこの瓶、ケースの隅に入ってましたけど」
「あー、それ応急処置用の薬瓶ですね~。というかそんなところにあったんですね~」
「ほらやっぱり!」
このトランクケースのどこに入っていたんだと思わせる量の物品の仕分けに結局小一時間は費やすことになってしまったのだった。
本件は調査中の事件被害者の身元情報です(画像はご家族の許可を得て添付)。
名前:鈴華志保(スズカ シホ)
性別:女性
不明当時の年齢:11歳
不明当時の学年:小学5年生
身長:142cm
警視庁ホームページ『行方不明者詳細情報』より
(該当者発見により、現在は非公開。ご協力ありがとうございました)
薄暗い部屋の中で、少女は目を覚ます。もがくが、動けない。両手両脚はロープできつく縛り付けられている。見回すも窓はない。露出した肌にビニールシートが触れる。冷たい。見知らぬ地下室の床に転がされている。
「え...?ここ...どこ...?」
混乱、困惑。激しい頭痛を堪え、何があったのかを思い返す。
放課後、合唱コンクールの練習に夢中になるあまり帰りが遅くなり、陽の落ちた道を一人歩いていると突然横に車が止まって
ドアが開き
引き摺り込まれ
濡れたハンカチで口を塞がれ
一瞬のうちに
「あっ...!」
そこまで思い出してやっと少女は「自分が誘拐された」という事実に辿り着いた。
此処は何処なのか、なぜ犯人は自分を誘拐したのか、分からないことだらけの状況に不安と恐怖だけが降り積もる。
(こわいよ...これからどうなるの...?おとうさん...)
そう思った矢先、ドアが開く音、次いで何者かが階段を降りてくる音が地下に響く。
自分を誘拐した犯人がやって来たのだ。
(やだ...やだっ!こないで...こないでっ!!)
暴れもがいても拘束は弛まない。逃げ出し、叫び出したくも目に涙を浮かべ震える事しかできずに、犯人が姿を現す。
「おや...もう起きていたのですか。あー、落ち着いてください。暴れると縄が肌に食い込みますから」
少女の前に現れたのは黒い眼鏡を掛けた、自分の父親とそう変わらぬ年齢に見える何処にでも居そうな中年男性であった。
残虐で血も涙もない誘拐犯を想像して怯えていた少女は、イメージの違いにぽかんとした表情を浮かべることしか出来ない。
「あ、あの...おじさんがわたしを誘拐した人ですか?」
「誘拐?あぁ、んー..... はい。おじさんがあなたを誘拐した人ですよ。ところで、あなたのお名前は?」
「.....鈴華志保です」
「志保さんですか...いい名前ですね。それに、声がいいですねぇ.....好きですよその声、音楽の授業とかでいつも褒められてるでしょう?きっと」
誘拐犯とその被害者の会話とは思えない、のんびりとした雑談が繰り広げられる中、ややリラックスしてしまった志保は核心に迫る質問を投げかける。
「...あの、おじさんはどうして私を誘拐したんですか?わたしの家はお金持ちじゃないですよ?」
「何故誘拐したか、ですか?あぁ理由は大事ですからねぇ...まず髪がいい。短めでよく纏まった綺麗な茶髪、いいですねぇ好みです。声も良い、鈴を鳴らした様な声というのは志保さんの様な声を言うのでしょうねぇ、実に美しく、可愛らしい」
「えっ...えっ...あ、ありがとうございます...?」
自分を攫った理由を聞いたのに、帰ってきた答えは自分を褒め称える言葉ばかり。危機感の薄い志保はストレートな賞賛に相手が誘拐犯である事も忘れ、照れてしまう。
「実に可愛らしくて...とても、とても...無茶苦茶に引き裂きたくなる」
そう言うや否や、誘拐犯は隠し持っていた研ぎ澄まされたナイフを志保の喉に突き立てた。
「あぐっ!?ぎ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
喉に走る激痛。絶叫が溢れ出し、響き渡る。身を捩らせ意味不明な叫び声を上げるたびに、振動に併せて突き刺さったナイフがまるで生きているかの様にびくびくと動き震える。
意外にも出血量は少ない。声帯と頸動脈を避けてナイフを刺したからだ。首を壊す時は注意しないと直ぐに死ぬという殺人鬼の経験による、精密な一撃。
「あぁ...ははは、いい声ですよぉ志保さぁん!!」
本性を表した怪物は下腹部を曝け出し、いきり勃った性器を露出させ、それを悶え苦しむ少女の股に...挿入しない。
怪物は少女の儚く小さな胸にのし掛かるとナイフを引き抜き、傷口に指を突っ込むと"丁度いいサイズ"まで無理矢理広げる。
そして
「あが...かひゅ...んぅ!?あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い゛だ゛い゛い゛だ゛い゛い゛だ゛い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
志保の喉の傷を性器に見立て、陵辱行為を開始した。友達から羨ましがられ、いつも両親に褒められた美声の源泉に付けられた痛々しい傷口を無遠慮に怪物の怒張がぐちゃぐちゃと蹂躙していく。
声にならない声を捻り出し、目を見開いて涙を流すのもまるで気にせず、寧ろ声帯の震えは更なる快楽を齎し、涙は潤滑液となり、猛り狂う怪物は喉に腰を打ち付けまくり、どくどくと精を零した。
「ぎぃ...がひゅ...ごほっ、げほっ...」
志保の口から泡立った大量のピンク色の液体が吐き出される。血液と唾液と精液の混合物だ。
「ふぅ...いやはや本当に綺麗な声だ...きっと志保さんは将来有名な歌手にでもなれたんでしょうねぇ...」
怪物は、笑う。喜びだけに満ちた顔で、笑う。
悍ましき宴は一晩中続き、後には四肢を引き裂かれ、喉を粉砕された物言わぬ屍体だけが残った。
「このヘンタイ!外しなさいよこのベルト!!このバカ!クズ!」
「えぇ...嫌ですよ...外したらあなた逃げちゃうじゃないですか」
金属製の台に大の字で寝かされ、手脚をベルト状の手枷で拘束された幼い少女が、誘拐犯を睨み付けながら甲高い声で喚き、暴れ散らす。当然、そんな事で拘束は弛みはしない。
「くぅぅ...バカにして!アンタみたいな冴えないヘンタイ誘拐犯なんてすぐ警察に見つかって捕まるに決まってるわ!」
「そうですかね?これでも手際の良さと証拠の隠滅には自信があるのですが...さて、と」
「っ!!何する気!?触らないで!触らないでよ!!」
誘拐犯が「何かをしでかす」事を感じ取った少女は柔らかな肢体をくねらせ、儚げな抵抗を行う。
───それが怪物の糧とは知らず。
「あー、安心してください。"まだ"触りませんから...まずは下拵えをする必要がありますからねぇ。あー、そういえばランドセルにピアノの楽譜がありましたが、あなた...えー...最近の子は珍しい名前してるんですねぇ...るみなさん?弾けるんですか?」
「ちょっと!ルミのランドセル勝手に漁らないでよ!!弾けるからなに!?」
「もう弾けませんよ」
そういうと、拘束されて無防備な白く、繊細な、柔らかな少女の指先に
巨大な肉叩きが振り下ろされた。
「ぎ、ああああああああっ!!い゛だ゛い゛!!指が!!ルミの指が!!」
本来、食肉の繊維を引き裂き柔らかく食べやすくするためのギザギザとした打面は一撃で指の骨を砕き、赤紫色の内出血を引き起こす。
「なんで!?やだっ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!ゆるしてっ!!やめてっ!!」
突然な激痛に指と共に生意気な心まで打ち砕かれた少女な泣き叫びながら懇願する。
「やめませんが...んー、何故謝るんですか?謝る必要なんてあなたには無いですよ?だって、私は何の罪もない、可愛くて滅茶苦茶にしたいあなたを、殺す為に攫ってきたんですよ?あなたは何も悪くない。だから、どうか謝らないでください」
「は...?なに、言ってるの...?」
怪物に懇願は届かず、少女に怪物の常識は理解できず。
悍ましき行為は続行される。
「じゃあ続けますねー、取り敢えず指全部砕きましょうか」
「待って!!やだやだやだやめてやめ───ぎっ!?」
まるで食肉を調理するかのような手際の良さで少女の指が叩き潰されていく。
親指、人差し指、中指、薬指、小指が順番通りに、リズミカルに、テンポ良く使い物にならなくされていく。
かつて白と黒の鍵盤の上を優雅に踊っていた両手の指は、赤黒く腫れ、肉が裂け、血が滲み、骨が砕かれ、永遠に踊る事をやめた。
「うぅ...ぐすっ...ゆ、ゆび...ゆびが...あぁ...」
激痛、絶望、恐怖に染め上げられ涙を零す。
小生意気で気の強かった少女はもう既に死んだのだ。
だが、まだ殺し足りない。これだけでは、怪物の渇きと飢えは満たされない。
「ふぅ...いたた、これは明日筋肉痛待ったなしですね...さて次は...胸行ってみましょうか」
「ひっ!!う...あ...」
可愛らしいゴシックロリータ風の服を乱暴に剥ぎ取られ、芽生えかけの乳房が露わになる。
乳房に肉叩きが振り下ろされる。
「かひゅっ.....あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛」
白く滑らかな乳房が赤色に染め上げられる。
何度も、何度も、何度も、肉叩きは振り下ろされ胸肉をぐしゅぐしゅに叩き潰して行く。
「おっと...胸部は叩きすぎてはいけない。長く楽しめませんから...そろそろ脚に移りましょう。胸と顔は、最期の楽しみですから...」
「あぐっ!ぐふっ!ぎぃ!」
脚が潰れた。
「あ゛ぐ゛!゛ぐ゛ぅ゛!゛ぎ゛ぃ゛!゛や゛め゛!゛い゛だ゛い゛!゛」
性器が潰れた。
「が゛、ぐ゛ひ゛ゅ゛」
顔が潰れた。
「...........」
潰れた。
201█年 █月█日
警視庁
███司法警察官
本職は、201█年 █月█日 ██検察庁 ██検察官の指揮により、下記のとおり変死者又は変死の疑いのある死体の検視をした。
・死者の身元情報
氏名:藤乃原流美奈(フジノハラ ルミナ)
年齢:12歳
性別:女性
身長:151cm
体重:22kg
・検視時の死体の状況
全身に化膿した打撲痕と裂傷、重度の臓器損傷及び主要臓器の摘出跡、両眼球の破裂、脊髄・頭蓋・骨盤含む全身の骨折、精液及び膣液等の混合液の付着、重度のストレスによる脳萎縮の兆候
ああ…本当に来て下さったんですね。
まさか二度も、私の嗜好を受け入れてくれる方に出会えるだなんて…💛
…「一度目があったのか」、ですか?
申し訳ありません。私は、初めてでは無いのです。
ですがご安心ください。今は貴方だけの私、この身も心も全て貴方に尽くします。ええ…身も、心も。
それでは、さあ、二人きりの晩餐を始めましょう。
まずは、される側になりたいのですね?では…少し痛みますから、これを噛み締めてください。
私の、手です。
舌を噛み切って終わってしまっては、いけませんからね…💛
では、失礼して……ふぅ💛どうですか、感じますか?
ずぶずぶ、と…💛ざくざく、と…💛貴方の傷一つ無いお腹に、ナイフが沈んでいきますよ…💛
そして、この辺りで…くぱぁ…💛ああ…綺麗な腸をしていますね💛とても、いいですね…💛
ぷにぷに…くにゅくにゅ…優しく握られると気持ちいいですよね…💛
あぁ…💛そんなに強く噛むと…💛いけません…💛初めてなのですから、もっと楽しめるように、我慢しないと…💛
ふぅ…💛ふぅ……💛どうでしたか…とても新鮮で、甘美な感覚を味わえましたか…💛
ああ、良かった…💛それでは、今度は…貴方の番、ですね…💛
えぇ…💛どうぞ、遠慮なく…💛鍵を挿すように、突き入れて…💛扉をこじ開ける、割り開いて…💛
貴方の手で…💛私の全てを、暴いてください…💛
私は今、クラゲに囲まれている。
仄暗い水槽の中に浮かび光を受けて漂う透明な命の群れは、静謐な宇宙に輝く星々を彷彿とさせる。
世俗から隔絶されたような静かな空間、足音一つなく、しかし無数の命が拍動する空間に私は紛れ込んでいる。
ここは大阪市港区に存在する日本最大規模の水族館『海遊館』。
大阪遠征が決まった際にどうしても行きたいと考えていた、大阪を代表する観光地の一つだ。
あまり公言したことはないが……私は水族館が好きだ。この薄暗く静かで、穏やかな光に包まれた空間が好きだ。
元々訪れる予定は立てていたがこのような事態となってしまい、諦めざるを得ないものと思っていたが……。
昨日の晩に何気なく「大阪には大きな水族館があるらしい」と話題に出したところ、返ってきたのは「では行ってみましょうか」という即答の言葉であった。
結果、貸し切り同然となった海遊館で私は4時間ほど時間を潰している。
2時間で館内を見て回り、残りの2時間は……このクラゲが揺蕩うエリアで消費した。
「それにしてもクラゲ専用のエリアなんて、不思議な区画ですねぇ」
私と一緒に一通り見て回った後、もう一度見て回りたいと言い探索に出掛けていたクエロさん。
その腕には大きなジンベエザメのぬいぐるみが抱えられていた。しかも二匹。どうやらオスとメスの“つがい”らしい。
水槽を眺めていた私の側に座り、抱えていた一匹のぬいぐるみが自分の膝の上に置かれた。
持っていて欲しい……ということだろうか。受け取ったジンベエザメを抱きしめるように抱え、再びクラゲに視線を戻す。
「日本だと結構一般的なんですよ。
北海道の水族館にも大きなものがありましたけど……ここはまた違った雰囲気で素敵です」
……それは私がまだ小学校に上がりたてだった頃。
両親に連れられて訪れた水族館で、壁一面の水槽に揺蕩うクラゲの虜となり数時間近く眺め続けていたことがあった。
結局その時は呆れたパパに抱えられて名残惜しくもその場を後にしたが、私は何時間でもこの景色を見ていられる。
何故私はこれほどまでにクラゲという生物に惹かれるのだろう。
彼らの在り方が私とは真逆だからだろうか。堅く、燃える火を以て心の平穏を成す私と水に浮かび揺蕩い続ける軟体生物。
絶対に自分が届かないものであるからこそ目を奪われる。己の人生と掛け離れたものであるからこそ興味深い。
この数日間も、これまでの人生から振り返ってみれば十分非日常的なものではあったが……それも言ってみれば日常と地続きのものだ。
非日常からも離れた独自の空間。外の世界とは全く異なる時間を彼らは過ごしている。その時間を、緩やかな流れを共有していたい。
ここで寝泊まりしたいな。なんなら、水槽に入ってずっと暮らしていたい。そんな突拍子もない妄想すら浮かび上がってくる。
そんな私の妄想を断ち切るように流れ出したのは、オルゴール調にアレンジされた「蛍の光」。
『当館は まもなく 閉館のお時間でございます。またのお越しを 心より お待ち申し上げております』
穏やかな女性の声に我に返り、ふと外を見てみると時刻は既に夕刻を過ぎていた。
もしこのまま館内に残り続けていたら……「水族館に泊まる」という、幼い頃から抱いていた夢を達成できるのでは。
そんな考えが脳裏を過ぎるも、今自分が置かれている状況を鑑み込み上げた欲望を振り払う。
「名残惜しいですが、暗くならない内に帰りましょうか」
「そうですねぇ、私も見てみたいものは見て回れたので満足です。
ジンベエザメの餌やりが見られなかったのは残念ですが……」
ジンベエザメ、気に入ったのかな。
上半身を覆い隠してしまえそうなほど大きなぬいぐるみを抱えながら、帰り際に悠々と泳ぐジンベエザメを眺める。
貸切状態の水族館というのも新鮮ではあったが、無人というのも少し寂しい。
クラゲの群れを見て心を癒やすことは出来たものの、この海遊館という水族館の魅力を全て味わえたわけではない。
やはりショーやアクティビティを始めとする賑わいもなくては……。
「……大阪が元通りになったら、また遊びに来ましょう!」
口を衝いて出た言葉は、励ましのようでもあり「もう一度一緒に出掛けたい」という本心から出たものでもあった。
この異変がいつ終わるのかはわからない。それでもこの戦いが終わって、大阪という街に平穏が訪れたなら……その時にはまた、この二人で。
「ところで……このジンベエザメちゃん、名前は何ていうんですか?」
二人でそれぞれ抱えている大きなジンベエザメのぬいぐるみ。
つがいである二匹、愛くるしい瞳のこの子はなんという名前なのだろう。
「名前ですか?……考えてませんでした。付けてあげたほうがいいんでしょうか?」
「えっ。えっと、その方が親しみが湧くというか呼びやすいというか……」
ぬいぐるみって、買った時に名前をつけてあげるものだと思ってた。
思いがけない返答に少し戸惑いながら言葉を返す。だって身近に触れ合うものだし、名前がないと呼んであげられないし。
もしかしてあんまり一般的じゃないのかな。急に込み上げてきた恥ずかしさを隠すように、抱えていたぬいぐるみを強く抱きしめる。
「なるほど、では……教会に着くまでの間に考えておきましょうか」
……クエロさんのネーミングセンス、凄く気になる。
ともあれ名前をつけて貰えるのは良かったねえ。心なしか嬉しそうな表情のジンベエザメを軽く撫でる。
私も何かお土産を買えばよかったかな……いや、帰る時に手荷物が増えてしまうとちょっと大変か。
とりあえず今は海遊館の余韻に浸りながら、ジンベエザメのやわらかさを堪能するとしよう。
他者との繋がりが希薄な現代社会。人間関係に行き詰まり、生きづらさを覚え行き場を喪った若者たちがたむろするこの複合商業ビル周辺は様々な犯罪の温床となっている。
売春、未成年の風俗勧誘、麻薬売買、暴行事件、暴力団の関与...
それらに関連する事件に巻き込まれたと思わしき行方不明者も。
201█年 █月██日
普段からビル周辺を徘徊していたという石火矢燐渚(イシビヤ リオ)さん(14歳)は風俗街周辺の路地近くを徘徊しているのを友人に目撃されたのを最後に行方が分かっていません。
警察は暴力団関与の疑いも見て捜査を続けています。
「クソ...!解けない...解けない...ッ!!こんな格好で...ふざけやがって..!!」
黒いパーカーを羽織った少女が縄で拘束されている。両手は後ろで縛られ、両脚は大きく開かれた状態で固定され、白い下着が露わになっている。
その表情は攫われた恐怖心ではなく、屈辱的な姿勢で拘束された事に対する怒りと反骨心に満ちており、拘束を解こうと暴れもがくたびに赤く染められたツインテールが靡き揺れる。
手を出せば噛みつかれそうな、まさに不良少女というに相応しい娘であった。
「あぁー、暴れないでくれませんか?そもそもあなたの力では絶対に解けないようにきつく結んであるので、大人しくしていた方が楽ですよ?」
「テメェ...アタシを攫って何が目的だ!!売春か?臓器売買か?ちょっとでも触ったらぶっ殺す!!」
誘拐犯を睨み付け、牙を剥き出しにして威嚇する少女。檻に閉じ込められても獰猛さを失わない凶暴な小動物を彷彿とさせる愛らしさと粗暴さを醸し出す。
「ははは、まぁそんな怖い顔しないでください。私はヤクザではありませんし、売春にも臓器売買にもちっとも関わっていませんから。ほらよく見てください、ただのおじさんでしょう?」
「...確かにさえないオッサンにしか見えねぇが...じゃあなんでアタシを攫ったんだ?」
「可愛いあなたの身体を、滅茶苦茶にするためですよ」
そう言うと間髪入れずに少女の下着を剥ぎ取り、パーカーをナイフで斬り裂いて小さく膨らんだ胸元を露わにさせる。
「な...ッ!!何しやがる!!やめろ!触るな!触るんじゃねぇ!!」
少女が暴れ叫ぶのも気にもせず、怪物の魔手は少女の下腹部へと伸びていき、白く滑らかな肌をぺたぺたと触り始める。愛撫、というよりはまるで何かを探り伺うかのように...
「どこ触って...あぅ...ッ!!そんなとこ...触るんじゃ...くぅ...!!」
敏感な箇所を弄られ、淫らな吐息が漏れ出す。
顔は怒りと恥辱により赤く染まり、涙を浮かべながらそれでも怪物を睨み付ける。
粗方触り終わった後、怪物は納得した様な表情で
臍の下辺りの腹部に思い切りナイフを突き立てて引き裂いた。
「ぐ、ぎゃああああああ!!」
絶叫、鋭い痛みが走り悶え狂う肢体。
見事な一閃で切り開かれた腹部に、怪物は手を挿し入れ、こじ開け、"目当てのもの"を力任せに摘出する。
「が─── ぎ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!?い゛だ゛い゛!゛い゛だ゛い゛!゛が゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
ぶちぶちと音を立てながら"楕円形の二つの臓器と袋状の臓器"が引き摺り出される。
「あー、うん。やっぱり医学書に軽く目を通した程度では完摘は難しいですねぇ...すこし破けてしまいました。燐渚さぁん、見えますか?これ、あなたの卵巣と子宮」
「い゛だ゛い゛よ゛、゛い゛た゛...え?」
突然投げ掛けられた意味不明な言葉に、激痛に苦しみつつも一瞬、我に帰る。
卵巣?子宮?あの変な肉の塊が...?
アタシの?
少女は自分の性機能が粉砕されたという悍ましき事実に気付き、狂乱する。
「あ、あああああ!!かえ、して...アタシのしきゅう...かえして...っ!!」
「返してあげますよ」
切り取られた卵巣と子宮をまた少女の腹の中に無理矢理捻じ込みつつ、怪物はもう誰も宿さなくなった腹の上にのしかかり、破れて潰れた子宮口に男性器を挿入し、腰を振り始める。
「うぐっ!?あがっ!?ぎぃぃ!!がぁぁ!!」
腰を動かすリズムに合わせて少女の口からくぐもった悲鳴が溢れ零れる。
それが怪物の悦びとなり、何も産み出す事のない不毛に満ちた残虐なまぐわいは加速する。
死んだ子宮に精が注がれる。
当然、孕む余地など無く。
「ぁ...ぁ...がひゅ...」
鮮血と絶望に濡れながら、少女は息絶えた。
4年 2組 21番 白露雪美(ハクロ ユキミ)
大好きなお父さんへ
私が感しゃを伝えたい相手は、私のお父さんです。
お父さんはやさしくて、思いやりのある人で、私ががんばった時はほめてくれて、私がだめなことをした時はやさしくしかってくれます。
私のお母さんが交通事こでなくなってしまって悲しくてどうすればいいかわからなくなっていた時も、お父さんは私をだきしめてせ中をさすりながら泣き止むまで「だいじょうぶ、だいじょうぶだから」と言ってくれました。
私も、お父さんみたいに自分がかなしい時でも、他の人のためにやさしくなれる人になって、お父さんにおん返ししたいです。
「あの...お願いします...おうちに帰してください...」
「あなたはもうおうちには帰れませんよ?」
雪を想わせる短髪と大きな赤いリボンのコントラストが可憐な幼い少女が、椅子に座った状態で縛り付けられている。
両腕は背もたれごと縄で巻かれ、両脚は椅子の脚に沿って固定されている。
「お父さんが待っているんです...!心配させたくないから、帰してください...ッ!」
「あなたも、お父さんも、何も心配する必要はないんですよ?」
父を心配させまいとする少女の健気な懇願を受け流し、怪物は今回の凶器を手に取る。
「雪美さぁん、これ、なんだかわかりますか?」
「え...?ガス、バーナーです。お父さんがお肉を焼く時に使ってました」
「正解です。これはお肉を焼く道具、ガスバーナーです。今からこれであなたを焼きます」
そう言うと怪物はバーナーの噴射口を少女の白い太ももに向け、調節ねじをいっぱいに捻り切り、着火ボタンをカチカチと鳴らし始める。
「っ!?な、なんで!?や、やめて!やめてくださいっ!!」
「あれ?おかしいですねぇ...新品の筈ですがなかなか付かない...あっ付いた」
「あああああ!あ゛つ゛い゛!゛あ゛つ゛い゛!゛とめて!!とめでください!!」
勢いよく噴き出る1500℃の青い炎が少女の柔らかな脚をグリルしていく。
少女は必死に身を捩り、肌が焼ける苦痛から逃れようと無駄な抵抗を続ける。
肉が焼ける香ばしい香りが周囲に漂い、白い脚はまず赤く焼け、次に水疱が生じ、最終的に乾き切った黒に変色する。
「あ、あぁ...あしが...あしが...なんで、なんでこんなことするんですか...?わた、しなにもわるいことしてな...」
「何故、ですか...あなたの白い肌と髪が綺麗だなーと思ったので、燃やしたくなりましたね、ははは。そういうわけで...次は髪です」
少女の疑問に人倫からかけ離れた答えで返すと、ガスバーナーの噴射口を少女のさらさらとした白髪へと向ける。
「おっと、これは邪魔ですね。解いておきましょう」
「っ!!そ、それはおとうさんがくれたリボンなんです...かえして...かえしてください...お願い...」
「あー、お父さんからのプレゼントでしたか...それは残念」
真っ赤なシルク製の高級リボンにガスバーナーの火を近づけるとじりじりと燃え、まるで溶ける様に消えていく。
「あ...あぁ...やだ、やめて...うぅ...ぐすっ...えぐっ...」
「あー、これシルク製リボンだったんですねぇ。全部黒い粉になってしまいましたよ」
黒い燃え滓を手から払い落とし、思い出したかの様に泣き噦る少女の髪をバーナーで焼き始める。
「あ゛あ゛あ゛あ゛か゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛あ゛つ゛い゛!゛や゛め゛て゛!゛わ゛た゛し゛の゛か゛み゛や゛か゛な゛い゛で゛!゛!゛」
髪と頭皮が焼かれ、チリチリという異音と亜硫酸ガス特有の刺激臭が焼き放たれる。
父親に優しく撫でられ、日頃から丁寧にケアしていた綺麗な髪の毛が瞬く間に焼け焦げて潤いを喪い、灰色の縮れ毛に不可逆変換されていく。
「ぐすん...うぅぅ...おかあさん...おとうさん...」
度重なる肉体的精神的苦痛に耐え切れず、もはや少女は啜り泣き、震える事しかできない。
その弱りきった様子のすべてが、怪物の糧であり、悦びであった。
「ははは、疲れてしまいましたか?大丈夫です。そろそろ終わりますから」
怪物は少女の臍をナイフでこじ開けつつ、ガスバーナーの噴射口を無理矢理押しこむ。
「ぐぎぃ!?」
そして、着火。
「ぎ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!゛!゛!゛!゛あ゛が゛ぅ゛!゛!゛あ゛つ゛い゛!゛!゛お゛な゛か゛あ゛つ゛い゛!゛!゛ぎ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛」
体内で噴き上がる灼熱の奔流が生命維持に不可欠な主要臓器群を焼き焦がし破壊していく。
内側から加熱される事により少女の腹部は膨らみ上がり、赤黒く変色していく。
臓物が焼かれる事による筆舌にし難き匂いと煙が、少女の中から立ち昇る。
「が...あが...お、どう、さ...あがぅ!ひゅ...」
椅子が倒れる。少女の最後の言葉は、焼け爛れた内臓を陵辱せんとする怪物に押し潰され、誰にも聴かれる事なく消えて逝った。
それは思いがけぬ出会いだった。
目の前に立ち塞がっていた複数人の“輩”の事ではなく、それらを掻き分けるように現れた女性のこと。
大きい。ひと目見て感じた印象は、その身長や服装も相まって「大人の女性である」というものだった。
彼女は私を一瞥すると、輩へ向けて「私のツレ」だと言い放つ。
思わず面を喰らってしまった。これが試合だったならキレイに一本を取られていただろう。
それほどまでに堂々と、微塵の“嘘”も感じさせずに言い放つ女性に対し、私は“無言”という態度で話を合わせた。
恐らく女性は輩に絡まれている私を見かね、助けに入ってくれたのだろう。
ともあれ人手が増えるのはありがたい。この状況をどう切り抜けようか、少し迷っていた所だったから。
……竹刀を握り締める力を僅かに抜いて、標的を最も近くの輩へと絞る。
女性の長髪に一人の輩が食って掛かり、合わせて二人目の輩も飛びかかっていく。
その様子を尻目に私は狙いを定めていた輩に照準を絞る。向けられた視線に気がついたか、輩も少し遅れて構えを取った。
他二人と違い、この男はある程度理性的であるようだ。竹刀を持つ私に対し、間合いに入らぬよう距離を置く。
その上で手にしたナイフを懐に滑り込ませるタイミングを伺っている。成る程、これは“実戦”慣れしている。
関節の軋むような音が響く向こうとは異なり、此方には暫しの沈黙が流れる。
お互いに出方を伺い、様子を探る。恐らくは先んじたほうが負けるだろう……と、輩は感じているだろう。
だからこそ、その虚を突いた。文字通りに意識の合間を縫うような、“刀”という得物からは想定し難い瞬速の攻撃。
即ち…………中学年の剣道では禁じ手とされる「突き」である。
輩は当然「打ち」で来ると思っていたのだろう。竹刀を振るう隙を狙っていたのだろう、とも推測できる。
けれど「突き」に予備動作は無い。加えて間合いすら読みにくく、一歩踏み込むだけでその切っ先は相手の喉元に達する。
短く空気が漏れる音が響き、輩は後ろへと倒れ込む……そんな彼の襟首を掴み、女性はビンタを一つかまして“一本”とした。
────その戦いの中で、私は思いがけないものを見た。
それは一人目を倒し、二人目に相対した際の女性の動きである。
一人目の輩を打ち捌いた彼女の動きは、洗練されていて手慣れてはいたが常識の範囲内に収まる動きだった。
けれど二人目と打ち合った時……女性の動きが「加速」した。僅かな一瞬だが、その動きは人間のそれを凌駕していた。
彼女が名だたる格闘家であったとしても現実的とは思えない筋肉の動き、身体の敏捷性。
加えて「加速」の瞬間に零れた、形容し難い“気”の流れ。つまるところ……“魔術”なのではないか、と。
常人離れした戦いには経験があった。クエロさんのスタイルも“一般的”とは言い難いものだったから。
義肢は兎も角、クエロさんが扱うものは神秘的で穢れのない……“奇蹟”とでも言うべきものだ。
一方で今彼女が発動した魔術は、既知の“奇蹟”とはまた異なる雰囲気を孕んでいた。積み重ねられた理論に基づく“学術”……のような。
その僅かな気配の違いが私の興味を引き立てた。クエロさんとこの女性、同じ“魔術”でありながら何故雰囲気の違いがあるのだろうか。
「……すみません、黒野さん。もう一つだけお伺いしても良いでしょうか?」
彼女に助けられた後、軽く事情を説明して私が置かれている立場を理解してもらった。
大会のため大阪を訪れたが避難し遅れ、戦いに巻き込まれた末に監督役の協力を得て聖杯戦争の元凶を探っている……と。
事情を聞いて女性……黒野さんは納得したような表情を浮かべていた。
その会話の最後に、私は抱いていた疑問を投げ掛けることにする。
気軽に聞いていいものなのかはわからない。私のような「一般人」が知っていい情報なのかもわからない。
黒野さんのような「魔術師」にとっては不都合なものかもしれない……けど、それでも尋ねずにはいられなかった。
もし答えが聞けないならそれはそれでいい。今はとにかく、込み上げてしまった「興味」を解消してしまいたい。
「先程黒野さんが戦っていた時……一瞬だけ、動きが“速くなった”ように見えました。
あれは……伝え聞くところの「魔術」というものなのでしょうか」
……その問い掛けが後に自らの運命を大きく左右する切掛になろうとは、この時の私は知る由もなかった。
クエロさんとはまた異なる世界を生きる“魔術師”と出会った日。その世界の根底たる“魔術”に触れた日。
これは目まぐるしく移り変わる“聖杯大戦”の一端であり……私の人生に於ける大きな転機の一つである。
「私のツレになんか用?」
それは単なる気紛れだった。
大通りでチンピラ数人が亜麻色のティーンエイジャーの少女に因縁を付け、良からぬ事をしようとした場面に出会したのだ。
大阪に原爆なんて落ちていないと主張する噂の歴史家…その家に行く為、タクシーを拾おうとした時、偶々目についた。
放っておけば良いと達観する魔術師の自分を心の中で張り倒して口から飛び出たのが最初の言葉だ。
「あぁ? 姉ちゃんのツレぇ?じゃあ姉ちゃんが相手してくれんのか?」
当然のように此方に注意が向いた。件の少女は此方を見て、困惑している。
…まぁそうよね。誰ですか!?とか言わない分空気読んでくれてるわ。
良く見れば背負った竹刀に手を掛けている。チンピラ相手に一戦交えようとしていたようだ、度胸あるわね。
ふと、彼女の指を見ると中々の竹刀タコが無数にあった。友人であるリアを思い出す、彼女も剣タコが幾つも合ったっけ。
「相手する?冗談、チンピラ相手にする程安くないんだけど」
「このクソアマ!」
私の挑発に先頭の一人が激昂して殴りかかってくる。瞬時に思考と感覚を加速。うん、誉めに誉めて喧嘩慣れした素人ってとこね。
加速魔術を使うまでもない。身体強化のみでチンピラの拳を避け、その腕を掴み、捻り上げて間接を極める。
「ガァッ!」
下がった顎に向けて膝を一撃。白目を向いて倒れる。
「……ちっ!」
二人目はそれなりにやるようだ。ピーカーブースタイルで此方に相対する。相手にするにはちょっと面倒だ。
「…スタートアップ」
だから少しだけ加速する。本来であれば5小節必要な魔術だが、友人であるトゥモーイ・ディットィエルトの協力で一瞬の動きであれば1小節で行使できる。
鳩尾に拳を一発、顎に一発、ついでに額にデコピン一発だ。何があったかも分からずボクサー崩れは吹き飛ぶ。
三人目は……既に亜麻色の少女が竹刀で痛い目に合わせていたようだ。トドメに頬をビンタしておこう。
「クソっ!覚えておきやがれ!」
「うっさいばーか!一昨年来やがれってのよ!」
捨て台詞を吐いて逃げるチンピラに石と罵倒を投げる。良し、命中!
「あの……ありがとうございます!」
満足げに振り向くと亜麻色の髪の少女が深々と頭を下げていた。
「いいのよ、気にしないで。 困った時はなんとやらっていうでしょ。それともお節介だったかしら?」
「いえ!そんな事ありません!」
少女は私の少し意地の悪い言葉を慌ててぶんぶんと手と頭を振り否定する。
その様がとても可愛らしい。
「ふふふ、ごめんなさい、冗談よ」
私の微笑みを見て少女は胸をなでおろした。姪の未来と同じくらいの歳かしら。
「私は黒野逸花、フリージャーナリストよ。貴女は?」
「鴈鉄梓希です!」
元気が良い。そして言葉や仕草の端々から育ちの良さが分かる。決して厳戒体制にある大阪で何事か悪さをしようとしたり、忍び込むタイプでは無さそうだ。
「えっと、鴈鉄さん? 貴女はこの大阪でなにをしているの?」
「はい…実は話すと結構長くなりまして……」
それが私、魔術師黒野逸花と少女鴈鉄梓希のはじめての出会いだった。
この時は私と彼女、そしてクエロんの三人に他の子達も含めてあんな騒動に首を突っ込むことになるとは思いもしていなかったんだけどね
材料
ステーキ
グレース・バッドのランプ肉 200g
(10代前半の処女の女児のランプ肉でも代用可能)
塩、胡椒 適量
油 大さじ1/2
グレイビーソース
有塩バター 20g
薄力粉 大さじ1
赤ワイン 大さじ3
ワインビネガー 大さじ1
蜂蜜 大さじ1/2
1.まずは肉の下処理を行います。
「いやああああ!!!!はなして!!この変態!!ママに言いつけてやる!!」
泣き叫びながら階段を駆け降り逃げ出そうとする少女を鷲掴みにして捕らえる。
当然少女は抵抗し、肉付きの良い可憐な脚で蹴り、白く生え揃った歯で噛みつき、柔らかく小さな爪で食人鬼を攻撃する。
「あぁ...いいですね、いい...腹部を蹴り上げられる衝撃、生えかけの牙が肉に刺さる感覚、子猫の癇癪のような肌を引き裂く引っ掻き...ふぅ...なんとも、気持ちいい...!!」
「ひぃっ!!や、やだ...たすけ──かはっ!?」
少女の儚い抵抗は、異端なる精神構造を有する人型の怪物にとって快楽と身震いにしかならない。
あまりにも異様な反応に怯える少女の細い首を殺人鬼の両手が絞めあげる。
「あがぁ!があぁ!がああああ...!!」
宙に浮き、脚をばたつかせる少女の喉から苦しげな呻き声が溢れる。
目から涙が搾り出され、唾液が撒き散らされる。
その愛らしい今際の足掻きは怪物の嗜虐心に火を付けたのか、興奮のあまり全霊の力を持って少女の首を握り潰した。
「かひゅっ...かはぁ...っ」
最後の息が吐き出され、少女の身体からは力が抜け、手脚はだらんと垂れ下がる。
膀胱は弛緩し、毛も生えていない未成熟な股ぐらから尿が滴り落ちる。
「あぁ勿体ない勿体ない...これはコップに溜めておいて後でいただきましょう」
2.皮を剥ぎ、下処理をしたランプ肉のドリップを丁寧に拭き取り、全体に胡椒を振ってなじませた後130°ほどに熱したオーブンで網に乗せた状態で20〜30分ほど焼く。
裏返してさらに15〜25分焼く。
3.仕上げに肉に塩をよくなじませて、油を引いたフライパンで片面20秒ほど焼き、焼き色を付ける。
美味しそうな焼き色が付いたら肉を休ませて予熱で内部に火を通します。
4.肉を休ませている間にグレイビーソースを作りましょう。
先程肉を焼いたフライパンに有塩バターを溶かして薄力粉をふるい入れ、弱火で炒めます。
粉っぽさがなくなったら残りのソースの材料を全てフライパンに入れて加熱し、程よいとろみが付いたら出来上がりです💛
陽が落ち、夜の帷が下りる。暗き空には煌々と狂おしき満月が浮かび、窓から染み出す月明かりがテーブルに並べられた晩餐を照らし出す。
付け合わせのマッシュポテトと蒸した人蔘と共に乗せられた、グレイビーソースがたっぷりとかけられた分厚いステーキ。
怪物が席に付き、食前の祈りを捧げる。
「...父よ、あなたのいつくしみに感謝して、この食事をいただきます。 ここに用意されたものを祝福し、わたしたちの心と体を支える糧としてください。 わたしたちの主、イエス・キリストによって...アーメン」
研ぎ澄まされたナイフが肉を切り裂き、フォークが突き刺し口に運ぶ。程よく酸味の効いたグレイビーソースにより肉の味が引き立ち、ほのかに癖のある脂の味が口一杯に広がる。
ナイフとフォークがかつておしゃまな少女であった肉塊を引き裂き、怪物の胃袋に収めていく。
美味しい、美味しい、美味しい...💛
夢中になって頬張り、咀嚼し、口内に飛び散る少女の肉汁と血と絶叫を何度も、何度も脳内で反芻する。
皿にこびり付いた肉汁も余す事なく、パンで全て拭い取り最後の一滴まで味わい尽くし、そして。
「...ご馳走様でした💛」
今宵の月下の晩餐は終わりを告げた。
それはいつものように、教会で洗濯物を畳んでいるときの事だった。
クエロさんと共に生活するにあたって、洗濯や掃除などの家事は私が担当している。
非常時とはいえ曲がりなりにも住まわせてもらっている身だ、出来る限りのことはしておきたい。
その上、彼女の自室を目にしてしまった以上は“やらねばならない”のだ。
……修道服に自分の制服、クエロさんが気まぐれに着たメイド服。
初めて目にした時は動揺で直視できなかった下着の数々も、部屋での様子を見てからは理性で抑えられるようになった。
のだが。その下着の中に紛れ込んでいた一枚の“それ”を手にした瞬間、思考回路が真っ白になった。
布面積が控えめなランジェリー。妖しい黒のシルエットは比較的見慣れてきたが……そのシルエットには、妙な位置に“切れ込み”がある。
「…………え、なんでこんな位置に……」
初めは破れてしまっているのかとも疑った。
だがその裂け目に沿うように刺繍が施されており、三角形の丁度真ん中から頂点に達する切り口は意図的なものだと推測できた。
なら、何の理由で。その裂け目の位置に何が来るのかと、順序立てて推理を重ねた瞬間……その“意味”を理解仕掛け、再び脳裏が焼け付く。
でも理解したくない。なんで?なんで?意図がわからない。
だってこんなの、下着の“てい”を成してない。下着というものの目的が失われている。
ならばこの下着にはまた別の目的があるのだろう。ここが“開いて”いて、便利なことと言えば………………。
思考が止まる。その思考の先に待つ“想像”が、自分の良心を傷つけるものだという確信があったから。
つまりは。この下着を着用している姿を…………乱れに乱れた頭の中を正すように、私はキッチンへ走り冷水で顔を洗い流した。
考えるな。見なかったことにしよう。何を言われても、知らなかったと言っておこう。
無心で“それ”を畳む。この記憶は心の奥底の、もう思い返さないための記憶領域にしまっておこう。
淡々と手を動かして畳み終え、また別の下着で隠すようにし……これで一安心と息を吐いて残りの洗濯物を確認すると。
「─────っ」
なんで上のほうもあるの。
割れ目は二つ。その割れ目に位置する部位がなんなのかを、今の私は瞬時に理解できてしまった。
数秒前にしまっておいたはずの記憶領域から、“興味”と名を変えたそれが溢れ出す。
………………手にし、広げたそのランジェリーを自分の胸元に合わせるように持ってくる。
うん。ソウデスネ。私の想像と合致する位置にスリットがあって、この下着が如何に如何わしいものなのか確信できた。
服の上から合わせただけでも、心臓が口から飛び出てしまいそうなほどに心が乱れる。これを……いつ着けてたんだ、あの人!
ピンク色に乱れた思考が段々と「どうしてこんなものがあるんですか」という叱責に変わっていくのを感じる。
けど……今の私が怒っても何の説得力もないだろう。それにこの顔の赤さはきっと、明日になるまでは引かなそうだし。
そうして結局私は“何も見なかったこと”にして洗濯物を畳み終えた。
とはいえ少しばかりは抗議したい。直接言葉にはせず、しかして「知っているよ」と知らせておきたい。
そんな思いの結果として、私は丁寧に畳んだその下着一色を衣装ケースの一番上に仕舞っておくことにする。
……そういえば同級生の男子が、母親に部屋を掃除された時「いかがわしい本」が机の上に置かれていたと嘆いていたけど。
そのお母さんの気持が少しだけ理解出来た気がした。そんな、少しだけ“大人になる”事の意味を知った一日であった。
わたし、ねこ。なまえはない。どこでうまれたかなんてちっともしらない。
ただ、しめったダンボールばこのなかであめにぬれてふるえていたことはおぼえている。
さむい。さむい。にゃあ。にゃあ。だれもへんじをしない。
ほかのみんなつめたくて、うごかなかった。かたかった。
おなかすいたのでごはんをさがしにいったらネズミがいたのでおいかけてつかまえた。
ずいぶんたくさんおいかけたのできずいたらじめんもつちからくろいいしになって、じひびき?なにかおおきいものがきて
に゛ゃ゛っ゛
埃を被った廃屋には、痙攣し苦しげに血を吐き出す猫とそれに覆い被さる少年。
にゃ... に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
野良猫の腹に割れた窓ガラスの破片が突き立てられる。
猫の皮膚は柔らかいとはいえ、体毛で守られたソレを引き裂くのは簡単ではない。
込められる力は自然と強くなり、みちみちと皮膚が破け、血が滲み出す度に掠れた鳴き声が幽霊屋敷に響く。
手脚をバタつかせる野良猫の必死の抵抗も虚しく、腹は切り開かれ、温かな臓物が露わになるや否や、少年は壊れ消え行く小さな生命を前にいきり勃った性器を傷口に侵入させ、犯し始める。
に゛ゃ゛っ゛が゛ぁ゛っ゛に゛ゃ゛っ゛ふ゛ぎ゛ゃ゛
腰を打ち付ける度に呻き声があがり、悍ましくも滑稽なリズムで猫の内臓が凌辱されて行く。
そして
に゛ゃ゛ぁ゛っ゛が゛ぁ゛っ゛
腹に精液が零されるのと同時に、押し潰された猫は無残にも絶命した。
暫し快楽の余韻に浸った後、少年は猫の屍を深い草むらへ無造作に放り投げ、物足りなげな顔を浮かべながら幽霊屋敷を後にした。
「ね、ねえセイバー、本当に大丈夫なのよね」
「安心してくださいニレ。私の騎乗スキルはBランクです」
「可とも不可とも言えないわね」
「Bランクでも幻想種以下であればどんな動物も乗りこなせるのです」
「騎乗スキルって相乗りする相手までカバーしてなかったと思うけど…ちなみに牛に乗った経験って」
「ありませんね」
「不安になってきた…」
「大丈夫ですニレ。もともと動物と心を通わすのは得意です。人ではないので」
「…ねえセイバー。今調べてみたけど、水牛車って後ろの荷台に乗って運転するもので水牛に乗ったりはしないらしいって出てきたんだけど」
「さあ行きますよカレドヴルフ号。全速前進です」
「ねえ待ってこういう乗り物ってゆっくり景色を楽しむものであって速度を出すものじゃ待って待ちなさいお願い待ってセイバあああぁぁぁ───!?」
ある日曜日の昼、行幸六花は人払いの結界が張られた枢木邸の庭にいた。
六花は掌大の石にアルファベットのSに似た文字を刻むとこれで大丈夫かな?と何者かに話し掛ける。
屋敷の主である楡ではない。楡は何時ものように冷ややかに立花を一瞥していた。
『ああ、それで良い。 それがソウェル、火のルーンの一つだ』
六花の疑問に答えたのは楡の隣、その地面に突き刺さった槍…マジカルホワイトトパーズ、正確にはホワイトトパーズに
無幻泡影されたランサーだ。
「それで火が出せるようになるのか?」
いつの間に庭に出てきたのか、先ほどまでリビングにいた(楡に言わせれば勝手に占拠していた)萬谷桜楽は興味津々と言った様子で様子を見に来ていた。
「……火のルーンってアンザスやカノかと思ってたけど違うんだ」
『いや、枢木女史の知識は間違いではない。アンサズ、イングズ、ソウェル、カノ。全て発火のルーンとなり得る』
意外そうにぼそりと呟いた楡の言葉にランサーが答える。
「ランサー、その4つが全て火なの?」
ランサーの言葉に首を傾げたのはルーン魔術を教わっている最中の六花だった。
『太陽と勝利を意味するソウェル、松明を意味するカノは発火のルーンとしては初心者向けだ。 アンザスは知識のルーンで知らしめる事が真価だが、汎用性が高い。早い話知識とイメージ次第で発火だけでなく自在に事象を起こせる』
ランサーの言葉にへー…と頷六立花と桜楽。一方楡はその答えに不服そうだった。
「待って、そんな話聞いたことないんだけど」
『魔術とは学問であると同時に神秘と信仰だ。特に出来ることに幅があるルーン魔術に関しては、言ってしまえば出来ると強く思えば出来るし、最初から出来ないと思っていれば何も出来ない』
楡の言葉にランサーは淡々と答える。その答えを聞いても楡は不満そうだった。
「え!じゃあ私もルーン魔術使える?シャドウファイアー!って出来るの!?」
横から割って入ったのは桜楽だった。全身を使って炎を表現して前方に発射するようなモーションを取る。
『まぁ、出来ない事はないと思うが…君はルーン魔術抜きで多分近い内に炎を自在に操れるようになると思うぞ』
「マジで!やった! さっそく一緒に練習しよ!」
ランサーの言葉にガッツポーズをすると、桜楽は炎を出す練習をし始めた。
「ランサー、盛り上がってるところたまけど良いかしら?」
待たされた六花は少し不満そうに少し頬を膨らませ、ランサーをジト目で見る。
『ああ、すまんなお嬢ちゃん。 ルーンを刻んだ石を遠くに投げろ…燃え広がらないとこだぞ? 準備が出来たら魔力を込めて唱えろ、ソウェル!』
「……ソウェル!」
瞬間、ルーンを刻んだ石がパチパチと火花を立てると発火し、そして鎮火した。
「すっげー!」
「……出来た」
はしゃぐ桜楽とほっと肩を撫で下ろす六花。
『ちゃんと火が出たか、最初にしては上出来だ』
六花を誉めるランサー。その横にいた筈の楡はいつの間にか姿を消していた。
「……出来ると強く思えば出来る、か」
楡は一人リビングに戻っていた。片手には掌大の石。楡はナイフで石に何かを刻もうとして……止めた。
「今更ね……」
自嘲するように嗤う。そうだ、全ては今更だ
「あれ?くるくるねーちゃんいない?」
「くるるさんトイレでしょうか?」
「く゛ーる゛ーる゛ーき゛ーよ゛! 誰がくるくるだのくるるですって!!」
ガキどもの声に先ほどまでの自嘲をかなぐり捨てて楡は庭へと戻った。
『実際どうなんだ?』
クッキー缶に仕舞われたままのせいでやや声が反響する。机の上のランサーはそう問いかけた。
行儀悪く足を組んで紅茶を口にしていた楡が眉を上げる。ハルと六花はたまたま話に上がった枢木邸の書庫の見学に行っていた。
「どうって何がよ」
『見たところここに張られた結界はそこそこ古い。200年は経ってないが100年は経っている。
質も悪くない。特に20年ほど前に張られたものは俺の目から見てもなかなか見どころがあるくらいだ。俺の目からだぞ?』
念を押すランサーに楡は溜息を付いた。…確かに、ルーン魔術の太祖が言うならけちはつけられない。
「20年前か。お父様ね。そうでしょう。あの人はうちの家系の傑物だったから」
『お前も俺から見れば素質に比べて実力不相応に見えるがな』
「仕方ないじゃない」
紅茶の液面を見つめる楡の瞳が遠く霞んでいた。
「そのお父様が結論を出してしまったんだもの。『この家の魔術師には未来がない』って」
少しの間沈黙があった。やがてランサーが言った。
『お前たち現代の魔術師は在り方の定義を複雑にしすぎたな』
「あなたにそう言われたら何も返す言葉がないわね。私の皮肉も品切れよ」
「ふふっ、こんにちは。囚人番号9425番さん」
その"'部屋"には物々しい監獄には似つかわしくない、長い金髪をふわりと靡かせ黒と黄色のドレスを着こなした豊満な女性が待っていた。
「怖がらないでいいのよ?さぁ、おいで...抱きしめてあげるから...」
此方に手を広げ、優しく微笑みかける。
動くたびに揺れる、はち切れそうな乳房に目を奪われながらも近づくと、その柔らかな身体に抱擁され、温かな肉に包み込まれる。
「あらあら...甘えん坊さんですね♪ここでの生活は辛くて、苦しかったでしょう?でも、もうなにも悩まなくていいの。好きなだけわたしに甘えてくださいね?」
ぎゅっ、ぎゅっ。強く抱きしめられ、顔が双丘に深く沈み、甘く蕩けるような香りと、熱く湿った感触に思考能力が奪われていく。
天にも昇るような心地よさに溺れてしまい、微かに漂うオゾン臭にも、気付かない。
「オムツもちゃんと履けて偉いですね...♪よしよし、大丈夫。大丈夫よ...きっと良いところに行けるから...」
甘く囁かれながら頭を撫でられる度に信じられないような快感が全身を駆け巡り、脳髄を痺れさせる。
もはや手足に力は入らず、赤子のように母の胸に身を委ねることしかできない状況。
この柔らかな乳房に永遠に溺れていたい。
もっと甘やかされていたい。
そう思った矢先、耳障りなブザー音が"部屋"を満たす。
「時間です。さようなら囚人番号9425番さん」
瞬間、頭に湿り気を感じたかと思うや否や、押し潰されそうなほどに強い力で抱き締められる。心 に生じた疵 ...「もう二度と、同じ処刑対象を二度抱き締めない 」という慈愛 の発露。愛情 は、脆弱な人体が到底耐えられるものではなく...
そして、瞬く間に超高圧電流が皮膚の初期抵抗を破壊し、血液と臓器が沸騰する。
血管は弾け、髪の毛が焼ける匂いが辺りに立ち込める。
現在稼働中のあらゆる電気椅子の威力をも上回る、古より続く"裁きの雷"の系譜を汲む英霊による2000ボルトオーバーの絶死の抱擁...母性持つ処刑器具の
その溢れんばかりの
罪人の灼熱に煮えたぎる眼球が最期に捉えた光景は、焼き焦げた骸を愛おしげに撫でる慈しみに満ちた母の微笑みだった。
[記録開始]
[00:01]:(カメラはテーブルに置かれたフルーツケーキとその上に立てられた10本のキャンドル、その向かい側で座る女児を映し出している)
[00:05]:声1:「パパ少し遅くなるって。ひなちゃん、準備いい?」
[00:07]:声2:「うん、大丈夫だよママ。お兄、電気消して」
[00:09]:声3:「はいはい」
[00:13]:(カメラがテーブルに置かれ、数秒後に電灯が消える)
[00:25]:(声1、声3の主が手拍子をしながら「ハッピー・バースデイ・トゥー・ユー」を歌う。カメラは蝋燭の薄明かりに照らされた、満面の笑みを浮かべた女児の表情を記録する)
[00:41]:(向かい側に座る女児が勢いよくキャンドルを吹き消す)
[00:42]:声1、声3「(拍手の音、同時に少しカメラがぶれる)、おめでとう!」
[00:47]:(声3の主が立ち上がり、電灯を点ける)
[00:55]:声2:「はやく食べたいよ。切って切って〜」
[00:59]:声3:「はいはい」
[01:21]:(声3の主がキャンドルを取り除き、ケーキを切り分け、女児の前に置く)
[01:25]:声2:「お兄、食べさせて」
[01:27]:声3:「えぇ?」
[01:31]:声2:「あーんしてくれないと食べない」
[01:34]:声3:「わかったわかった」
[01:41]:(カメラの手前から伸びた腕がフォークを掴み、ケーキを一口大に切って乗せて、女児の口へと運ぶ)
[01:45]:声1:「ひなちゃんはお兄ちゃん大好きねえ、おいしい?」
[01:49]:声2:「おいしい。お兄も、あーん」
[01:58]:(女児がテーブル越しに、ケーキの欠片を乗せたフォークをカメラの方向へと差し出す。一瞬、カメラは大きくぶれる)
[02:05]:声2:「おいしい?」
[02:07]:声3:「おいしいよ...ちゃんと口拭け」
[02:10]:声2:「ん」
[02:15]:(カメラの手前から伸びた腕がティッシュを使って女児の口に付着したクリームを丁寧に拭う。女児は満足げな笑顔を浮かべる)
[00:01]:(金属製のベッドに女児が寝かされている。手脚はベルト状の器具で固定されている)
[00:09]:(ベッドの横に、眼鏡を掛けた中年の男性が現れる。女児は口を強く結んで恐怖に耐えているような表情を見せる)
[00:15]:男性:「こんにちは」
[00:17]:(女児は何も発さない)
[00:20]:男性:「こんにちは」
[00:25]:男性:「こんにちは」
[00:30]:男性:「こんにちは」
[00:35]:男性:「こんにちは」
[00:40]:男性:「こんにちは」
[00:45]:男性:「こんにちは」
〜省略〜
[02:30]:男性:「こんにちは」
[02:35]:(女児は先程より不安げで涙ぐんだ表情を浮かべているが、何も発さない)
[02:40]:(男性が首を傾げた後、徐に女児の右胸部に手を伸ばし、掴む)
[02:42]:女児:「あっ、いや...っ」
[02:45]:(男性は胸部を掴んだ手に込める力を上げていく。万力のようにじわじわと女児の胸が潰されていく)
[02:50]:女児:「いたっ、痛い!いたいいたいたいたいたいっ!!あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
[03:30]:男性:「ふぅ...」
[03:41]:女児:「ふぐっ...ひぐっ...いたい...うぐっ...」
[03:57]:(男性がポケットからナイフを取り出し、慣れた手付きで女児の服を引き裂き、脱がしていく。女児は激痛の余韻に苛まれ、抵抗する余力がない)
[04:12]:(女児の胸部が露わとなる。膨らみかけの右の乳房にはっきりと五本指の形のあざが浮かび上がっている)
[04:21]:(男性はそれを見て満足げに頷いた後、剥き出しの左胸に手を伸ばす)
[04:25]:女児:「やだ...やめて...っ!いやっ...」
[04:30]:(女児は必死に身を捩り抵抗するも効果はない。男性は女児の左胸を掴む。乳房に強い圧力が込められ、押し潰されていく)
[04:45]:女児:「ぎぃっ!やめっ、あ、やっ、あ゛あ゛あ゛!!」
[05:02]:(左乳房が握り潰される。激しい内出血が乳房を赤く変色させる)
〜省略〜
[99:99]:女児:「(言語化不可能な呻き声と啜り泣く声)」
[99:99]:(女児の肉体は余す所なく"握り潰されている")
[99:99]:男性:「ふぅ...」
[99:99]:(疲弊した肩と首を回し、伸ばす音)
[99:99]:男性:「さて、と」
[99:99]:(男性はか細く息をする女児の首に両手を伸ばし、親指と手のひらを使い強く圧迫する)
[99:99]:女児:「あぐ...んんっ!!」
[99:99]:(男性は首を絞める手に込める力を上げていく。万力のようにじわじわと女児の首が圧迫されていく)
[99:99]:(時間が経つにつれて女児の顔は赤く染まり、涙が零れ落ちる)
[99:99]:女児:「がぁっ!んんん!がぁぁぁ!がひゅっ...」
[99:99]:(男性は女児の首に全体重を掛け、勢いよく圧し折る)
[99:99]:(何かを掻き回す水気のある音と何かが滴る水気のある音)
[99:99]:男性:「はははは」
[99:99]:(悦びに満ちた声と水気のある音だけが響く)