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ヴォールカ
―とある裏路地―
「んで、なに?新人研修してるってわけ?」
「そ。黒霧事務所、期待の新人フィクサー様、ユンフくんだよ」
「階級は8級だけどね、捨て犬のネームドを倒している実力者なんだ」
「そいつは結構なことで。俺の依頼は新人教育向けの依頼じゃねェんだぞサミー」
「ガンパウダー工房所長、ヴォールカだ。期待の新人フィクサー様」
話が勝手に進んでいく。
オープンテラスの喫茶店、その端の空間。
小さな木製テーブルを3人で囲む。
ヴォールカと名乗った男は、決して友好的ではない。
しかし、敵対心も感じさせない絶妙な面倒さを引き出した表情で、俺に名刺を差し出した。
受け取ろうとは思ったが、差し出された名刺は、すぐテーブルの上に落とされた。
「ユンフです。よろしくお願いいたします」
「サミーの前だからってかしこまる必要ねェよ。別に態度でやっぱり依頼しませんなんてことしねェって」
「おっとー、聞き捨てならないね。うちのユンフくんは大変イイ子なんだよ。この誠実な態度も黒霧事務所の居心地を表しているんだよね」
「よく自分の事務所をそこまでベタ褒め出来んなお前は。いや結構結構」
「だが今回の依頼はサミー、お前宛てになる」
「依頼書は確認したか?捨て犬の反感買ったらしいな」
「工房宛てに、黒霧事務所に対する武具支援停止をわざわざ書面で送ってきやがった」
「あの肉体言語でしか上下を示せない刺青野郎共がだ」
自身の名刺を置いたその上に、張り手のような破裂音を鳴らして書面を叩きつける。
何が書いてあるかはいまいち読み取れはしなかったが、サミーさんは「珍しいね」とだけ呟いた。
「ただの脅しだ。センクもウーフィも出る幕じゃねェのは確かなんだがな……」
「にいさん、新人の内に一つ教えておこうか」
「あまり目立ちすぎると、イカれた野郎は金だと思って追い回してくる」
「黒霧事務所は大変だぜこれから。俺としてもお得意様には苦難が訪れてほしくねェんだわ」
なるほど……。
以前の不始末がここにきて黒霧事務所に跳ね返ってきたようだ。
「あくまできっかけだよ。原因はあたしらが捨て犬の情報を流したのがいけなかったんだからね」
「……話を戻すか。依頼書に書いたとおり、俺は黒霧事務所との提携を根絶しねェ」
「その間、ガンパウダー工房の営業時間外における護衛任務を頼みたい」
「護衛対処はうちの従業員……つっても1人だけどな」
「アンタらの所長さんにも了承済み。お前にマージン行くようにだけこの場を設けさせてもらった」
義理堅いのだろうか。
都市にきて少し時間が経った。
それ故に、都市に生きる人間の本質は理解してきた。
自分本位であり、夢がない。生きることに執着せず、あらゆるものを切り捨てる。
冷酷な人ばかりの世界だと思っていた。
だが、今依頼を通してきたこの男が異なった。
俺を介抱してくださったサミーさんと、同じ気配を感じる。
「ねね、ユンフくん。あたしの仕事ではあるけど、君にも任せていいかな」
「理由を聞いても?」
「君の『思い出』のためだよ」
今は理解出来なかった。
だが、意味のないことを言う人ではない。
「結局それかよ……結構結構……そんじゃあま!」
「よろしくな、ユンフさん」
―幕間―
「ユンフくんの扱っている武器、随分と精巧なものだよね」
「どんな装備なのかな」
事務所の入り口、これから仕事に赴こうとする彼を、横から止めた。
俺の腰に提げている思い出を、先輩が見つめる。
「『クロニクルソード』アトリちゃんと一緒に考えて作った剣です」
「リバーベル街道産地素材を扱って、鍛造しました」
「いつも昔の話を聞くと、君はその同郷の子。旅人の名前が出るね」
「その子が、俺の『今』を導いてくれたので」
「妬いちゃうな。でもそれだけ想ってくれる人がいるのは、その子も悪い気はしないんじゃないかな」
特に返答もせず、横から覗き込むサミーさんを追い抜くように足早に入口から裏路地を歩く。
時刻は正午を過ぎたあたり。夜の心配は必要ないが、任務を一早く終わらせたかった。
―黒霧事務所―
「護衛対象の保護完了――上出来だね」
依頼者からの証明書を含めた報告書。この手の書面は今まで経験がなかった。
作るのに手間取ったが、サミーさんの手助けもあり、ツヴァイ協会には正式に依頼完了報告が出来そうだと安堵の声が聞こえる。
「ユンフくん、相手は捨て犬の中でも、それなりに名前の売れた人だったんだよ」
「安いとはいえ、適正が高くて大量に入った刺青。強化加工を重ねたアクセサリーも大量に巻いている一員。9級フィクサーが相手出来る人物じゃないんだよね」
「素手で一撃ぃ?冗談じゃなかったら怖いなぁ」
「命を奪ったわけではありませんが」
「加減したってことでしょ。それも、君は何の身体強化もしていない状況で」
「お金をかけた分だけ、体は強くなれる。君はまだ1眼(アン)も支払われていないはずだよね」
「どうだいユンフくん。どうせ断るだろうけど、強化施術を受けてみるってのはどうだい」
俺から言うことはだいぶ絞られた。
彼女が既に、俺を分析した上での提案だったから。
追及したいのは、俺が断る理由の方だろう。
「いつか帰った時、その時のままでアトリちゃんを迎えたいのです」
「あの時の俺のままで」
答えになっているかはわからない。
だが、彼女の変わらぬ笑顔がその回答に繋がった気がした。
「都市で生きていくには、本当に不器用だよ」
「でも、この都市の誰よりも、君は綺麗な人だね」
【ハナ協会:8級昇進通達書】
捨て犬と強化施術
―とある裏路地―
殺生に抵抗はない。
ティパの村に居た時からそうだったが、罪悪感に苛まれる機会はなかった。
事務所の目的であれ、都市の生き方であれ、自身の感情を含めた疑問を浮かべる必要はない。
ただ、俺の『思い出』を見つけることが出来るのであれば――
「それで?テメーはツヴァイんところの犬ってところか」
この粗雑な強化施術(刺青)を全身に装備した人間を退ける事に、疑問はない。
目の前にいるスキンヘッドのゴロツキは、「捨て犬」と呼ばれる組織の一員。
組織の序列としては、親指から下位に存在する悪い組織とだけ、サミーさんから教わった。
「ウォルターの野郎は部下の躾を放棄してやがる。妙な取引で躍らせようっていう魂胆が見え見えじゃねぇか」
悪い組織、という端的なことしか仕入れてはいないが、あまり関係ない。
コイツは裏路地の住民の命を脅かした。
事が起こる前に、ツヴァイ協会を通して黒霧事務所に護衛依頼の通達が来た。
サミーさんが依頼を受諾し、俺にチケットを割り振った。
この事実があるだけで俺はただ体を動かし、任務を遂行する。
都市で生きていく上で、思い出を探していく上で
「だが気に入ったぜあんちゃん、一切強化施術受けてねぇのな。しかも見たこともねぇ工房の武器一丁だけ」
「その身ひとつで『あなたの盾』を自称できんのか?はぁぁぁん!?できるわけねぇよな」
「上納出来る内臓が足んねぇってねずみ共は騒いでだっけ。てめぇでチャラにしてやんぜ」
最善であることを祈って。
――――
9級フィクサー就任から幾日。
舞い込んでくる下級依頼を、彼は淡々とこなす。
遺体を含めた人探し、怪我がないうちに見つけるペット。
そしてその最中に往来する――
「大人しく内蔵を差し出せ!痛くしないでやるからよ!」
都市という現実。
ユンフが今いる裏路地は、都市における無法地帯のようなもの。
想像は容易いことではあったが、サミーの説明通り、ここには多量のゴロツキが存在する。
なればこそ、身を護ることは当然必要である。
「記憶を奪う怪物を知っているか」
そしてその出会いの分だけ、彼は言葉にする。
「俺の思い出を探している」
――――
「黒霧事務所だけじゃないけど、うちのフィクサー狙った不良や組織って結構いるんだよね」
「お手柄だよ、ユンフくん。でも嬉しそうじゃないね」
「期待はしていませんでしたが、何一つとして情報を聞き出せなかったので」
「記憶を奪う怪物だっけ。いろんな仕事に着手できるようになれば、きっと辿り着くよ」
「代表の意向だからね。8級になったら、違う仕事も出来るよ」
「君がどれだけ偉くなっても、あたしが色々補佐してあげる。頑張ろうね」
この最初の事務所は、
都市に転移した彼にとって、
どれだけ幸運で、
どれだけ苦痛になっただろうか。
――――Gray Traveller――――
黒霧事務所
構成員は10名、所在は12区裏路地。
依頼は「なんでも」受けるのだが、
主要取引は大雑把に言えば「護衛」である。
「ツヴァイ協会」から伝達された護衛対象を守り抜くのが基本的な仕事となる。
裏路地には多種多様な組織があり、悪さをするゴロツキが集う。
命を護る、クリーンな仕事をこの事務所は担っている。
彼女の説明は、淡々としたものであり、黒霧事務所の方向性が「単純」であることを示唆していた。
表情を一切変えず、それでも感情を抑えるわけでもなく、ただ親身に彼へと言葉を告げ続けた。
「ユンフくんにやってもらいたい仕事、実はもう決まってるんだよね。でも今日じゃないよ」
「まだ護衛任務を任すことはできないけど、ネコちゃん探しをしてもらうからね」
「もー、最初だけだからさ。そんな不満そうな顔しないで。ささー、パーティの準備をしようよ」
彼女はソファの肘掛に挟まった無駄紙を摘まみあげる。
表面には契約書であった印字がされていたが、薄汚れており破棄予定であることがわかる。
硝子細工の、膝ほどのテーブル上に裏面になるように貼り付ける。表情を一切崩さず、彼女は胸ポケットから取り出した万年筆で地図を書き上げた。
「大体都市の地図はこう。渦巻くように区画されている『巣』があり、それぞれの巣には『翼』と呼ばれる特異点を持つ企業。そして『裏路地』と呼ばれる危険区域が存在しているよ」
「別に人が住めないってわけじゃないんだけどね。巣は『頭』によって守られているから安全ってだけだね」
「この25区分の巣を囲っている範囲が『都市』その外側は『外郭』だね。人が住んでいるっていうけど、どうしてるんだろうね」
「怪物がうじゃうじゃいるところだっていうし、外郭で生きている人は都市に入りたがっているんだって」
「でも、君が欲しい情報は今は外郭より都市、あたし達の今後の方なんじゃないかな」
――怪物。
彼はある程度の目星をつけていた。その怪物と呼ばれるものは、自身の『思い出』を奪い去ったものを差すものではない。しかし、酷似しているものであると。
今すぐにでもその類似性を確認したかったが、自身が置かれている現状を把握していないわけではない。
外郭に向かうには、サミーも知らない多くの難関が存在するだろう。裏路地を介す必要も出てくる。
人脈もない今、あの夜を再び過ごすのは得策ではない。
「ありがとう。外郭の事はいずれ自分で見てみます」
「ん……いいね、先輩の言うことはちゃあんと聞くものだよ」
「ま、急にこんな説明されてもよくわかんないよね。お茶でも飲もうよ」
まだ聞きたいことがある。
彼が言葉にせずとも、流れ出る雰囲気はあったようだ。
サミーは再び息を漏らし、ソファに背を預けきった。
「事務所について聞きたいって顔してるね。いいよいいよ。それぐらいなら君にとって休憩の範疇なんだろうね」
「でもさ、先輩がお茶しようっていうんだよ。少しは先輩を立てようって思ってくれてもいいんじゃないかな」
「申し訳ない、ですが――」
「ごめんごめん。大丈夫大丈夫。ちょっと意地悪したくなっただけ。ちゃんと説明してあげるからね」
「受かったかい?」
――ありふれたオフィスのロビー
何一つとして特徴のない、情報量の乏しさだけが充満する冴えない場所、ある双眸に色彩豊かな雰囲気を持つ人間が入り込んできた。
「おかげさまで」
黒髪に覆われた目元から、黄色い瞳が特徴的に輝く男が、張りのない怠惰な声色を宙に吐き出す。
澄んだ灰色の長髪を後ろで結び、ゆらゆらと揺らす女性。常に半開きの目と、妖艶にもうっすらと上げた口角の女は、その見えない声色を碧眼で追いかけてから、クスリと笑った。
「それは良かった。あたしの見立ては合ってたってことだね」
「代表も喜んでくれるよ。ユンフくんのフィクサー就任、加えて黒霧事務所配属。祝勝会しようよ」
彼女は悪戯に笑みを浮かべ、男の名を宙に交える。
「サミーさん、俺は貴方の言うフィクサーってやつになれたんです。仕事あるならください」
「ユンフくん。新入社員ってのはね、初日は早帰りするものなんだよ」
「初っ端からフルタイムで働くことなんてないの。今日はお祝いしようよ」
半ば諦めてはいたが、半ば、本日中に情報収集に取り組みたい。
彼は焦っていた。この世界に来てから、僅か3日。されど3日経ったのだ。
同郷の仲、アトリという少女の記憶がこの世界で失い、その情報を模索する。悠長に時間をかけていられないという焦りが、周囲の空間に漂流していた。
サミーはそんな彼を見て、優しさを込めてため息をついた。
「とりあえず代表が戻ってくるまでさ、あたしと一緒にこの都市についてお喋りしようよ」
「……わかりました……」
大きな肩を竦めて、諦める。フィクサー用のソファにお互い腰を下ろし、互いに向かい合い、瞳を入れ合った。
「ユンフくん、都市――この世界に来て、3日目かな」
「改めて確認するけど、君は異世界人なんだってね。都市で生きてそれなりに経つけど、私も、私の知り合いも、そんな人には会ったことないね」
「まぁでもここは都市だからね。そんなこと普通に起きてもおかしくないよね」
「『都市』とは、この世界全体を差すものなんでしょうか」
「世間一般で見たら、きっとそうなんだろうね」
「世界の外には『外郭』があるんだ。私は詳しくないよ」
「そっちの方には行きたくないかな。話聞いてる感じ、死んじゃいそうだからね」
ヘザー「お前達は!援護と保身に、"削り"に徹しろ!! こいつは私が最前列で!!正面から!!殴り倒してやる!!!」
(鉄巨神への攻撃に成功したことを確認してから、後方の隊員達へと振り返って叫ぶ。その後、再びティネルへと向き直り、その姿を見据え)
ヘザー「――――恥知らずにも寝返り、私の兵団に手を上げやがったその口で!!白々しく正義、正義と!!」
ガッ……―――グ ワ ッ ッ !!!
(四脚のうち一本の鉄脚が、鉄巨神の外装を握り潰す勢いで掴み……掴んだ場所を支店に、勢い良くヘザーの身体を持ち上げて放し、背面のブースター目掛けて跳躍。一気に二対のブースターの間まで移動し……)
ヘザー「挙句に余所見をしやがって!!この私だけを!!見ていろ!!恥知らずがァ!!!」
(二本の鉄脚を振り上げる。それぞれの鉄脚が正面からヘザーの盾となりつつ閃光弾の雨を受け、抉られ、傷付きながらも……動作に一切の支障は無く、リング型ブースターへと鉄槌の様な振り下ろしが放たれる!)
ゼフィリーヌ「――――――――…………」
ゼフィリーヌ「―――――」
身体が動かない。視界が歪む。耳鳴りが酷くて、外の音が何も聞こえない。
感覚だけは、微かに残っている。だがそれも、血液が、魔力が、生命が……私の身体から流れ落ち、喪われて行く事を知らせているだけだろう。
考える。何をするべきか、何が出来るか。
眼前の敵は、まだ生きているかもしれない。斃さなくてはならないのに。
新世界から久しぶりに帰ってきたのだ、皆に会わないと行けないのに。
母様の容体は悪くなっていないだろうか。
いつも忙しい兄様と義姉様は、調子を崩してはいないだろうか。
ジャクリーヌは、今日も元気だろうか。以前教えた事は、今は出来るようになっているだろうか。
兵頭とは仲良くやっているだろうか。兄様とは、義姉様とは。
友人が出来たと言っていた。どんな人たちなんだろう、悪い人達で無いだろうか。
話を聞きたいのに、色々な事を教えなくてはならないのに。
そうだ、動かなくては。立たなくては。
母様と父様から貰った、丈夫な体と沢山の魔力が私にはある。
そう、もう一度身体を起こして、足を動かして、まずは立ち上がらなくては。
そうして………………
ゼフィリーヌの身体が僅かに震え、ほんの少しだけ左足が上がる。
それが、最後の動作だった。
左足はそのまま動力を喪って地面へと落下し、割れた顔面から微かに放たれていた空気の入出音が消える。
傷だらけの抜け殻と静寂だけが、そこには残っていた。
ティネル【レギュレロイド】「 ッ゛ ウ゛ ! ! ? (―――― メ ッ ギ ャ ア ァ ァ ァ ア ア ア ン ッ ! ! ! )(腰部に刻まれた深く鋭い一閃の痕。鮮血のように残骸が噴き出し、夜空の中へ盛大に飛散した。コア内部では甚大なダメージ被害に伴う警音が姦しく鳴り響いていた)」
ティネル【レギュレロイド】「これほどの火力を残していたとは…侮っていたわけではないが、いよいよ私も追い詰められたものだ…ッ…!だが…ッ、ここで屈する程、軟な正義ではないッ!!!( キ ュ オ ン ッ ―――― ズ ガ ン 、 ズ ガ ン 、 ズ ガ ン ズ ガ ァ ァ ァ ア ア ア ン ッ ! ! ! ! )(レギュレロイド背面に備わった二対のリング型ブースター。それが青白く発光したと思えば蝶羽を彷彿とさせる鮮やかな閃光群となって全方位へと拡散。滑らかな軌道を描きながら、ヘザーを筆頭に対峙するレギュレイターたちへと豪雨の如く閃光が襲来する)」
ガレア【アクエリアス】「…ハーッ……ハー…ッ゛……ァ……――――――(打破すべき相手が完全にノックアウトされていく様を眼に捉え、それが彼女の最後だと悟ると―――――)」
ガレア「 パ キ ャ ァ ア ア ン … ッ … ! (罅だらけの装甲がついに限界を迎え、盛大に破裂。その内側より、傷だらけ、血だらけの満身創痍な姿が曝け出される。赤熱を帯びたかのように血の匂いが混じった湯気が噴き出される中、激しい痙攣を帯びる全身を前のめりにがくん、と傾かせる。その最中で、青年は――――)」
ガレア「………もう…誰にも笑わせはしねぇ…… これが、俺の……生き様だ…ァ………――――――――(―――――不敵に口角を上げていた)」
ガレア「 ド シ ャ ア ァ ア … ッ … … ! ! (ゼフィリーヌとは対を成すように、前のめりだった態勢からうつ伏せに倒れ込む。浅い呼吸はやがて虫の息のようにか細くなり、やがて―――――――)」
ガレア「――――――――――――――――」
.
これで俺は…またひとつ、"高み"へと登り詰めた
.
どうだ……今なら、お前を見下してやれるぞ…ライン・オーレット……
.
……だから…テメェはまだ"こっち"へ来るんじゃねェぞ……
.
テメェと同じステージに立つのは……死んでも御免だからな……―――――
.
.
.
.
.
カ ラ ン … ―――― パ キ ャ ァ ン ッ (青年の手から転がり落ちた懐中時計… それが、大地の上で粉々に砕け散ったのだった――――)
某国某所、政府管轄研究所内で女研究員が死んだ。
突然のことで現場は騒然。
彼女の近くにいた少年マシェリはその場にへたりこむようにして、女研究員の死体を見ていた。
彼がなにかしたのかと疑うものはいない。
彼は異能に目覚めていない落ちこぼれだから。
ゆえに事故として片づけられた。
誰もことの真相、くわえてマシェリの異能を知らずに。
これがマシェリにとって初の婦女暴行殺人の経験だった。
マシェリは個室に閉じ込められ、ことがおさまるまでひとりにさせられた。
(すっごく……やわらかくて気持ちよかったな)
今から1ヶ月前。
実験や検査に嫌気がさして逃げ出したが道に迷ってしまう。
とにかく隠れなければととある部屋に入り込んだ
『こ、ここだ!』
マシェリはロッカーの中へ入り込む。今思えば気がつくべきだった。
ズラリとならんだロッカーと中央の長椅子に壁際には清潔な白の洗面台。
ここが研究職員の女子更衣室だったということを。
しばらくすると、2、3人ほどの若くて美人な女研究員が入ってきた。
極限の緊張のなか、ロッカーの中から様子をうかがう。
すると彼女らは駄弁りながら着替えをはじめた。
白と灰色の世界に、彩りが生まれはじめる。
女研究員たちは着替えに、マシェリは唾を飲み込む。
全員下着姿になり始める。
白衣でもみればわかるものだったが、それは顕著にみてとれた。
鮮やかな色のブラジャーとショーツを露わにした時にマシェリの理性のタガが外れていく。
艶やかな色彩と興奮で頭の中がチカチカする。
さっきまでの緊張は消え失せ、完全にみいってしまっていた。
『子供のひとりが逃げ出したんだって』
『えー大事じゃん』
『ま。私たちは部署が違うし』
『てか、今日下着気合いいれすぎじゃない?』
『また彼氏相手?お盛んね~』
『やめてよも~』
そんな会話を聴きながらマシェリは揺れる胸を凝視していた。
白衣の下にはこれほどに魅力的なものだったのかと彼は感動する。
(触りたい……揉みたい……あの中に入りたい)
性欲を通してこれまでにない生きていることへの喜びが心拍数の上昇と呼吸の乱れで理解できた。
彼女らが去ったあとマシェリはフラフラとロッカーから出る。
今日ほど神に感謝をした日はない。
耐えに耐え続けた自分に、大いなる恵みをもたらしたのだから。
そして、彼はここで自覚することになる。
おぞましい力の目覚めの兆候を。
ヨハネ「…………この攻撃ではあの総団長は砕けない‥ならば、せめて………(ヘザーの様子を見て)」
平安名すみれ「……団長に迫り来る攻撃を、全て迎撃する!(触手を構え)
ヘザー「はぁっははぁ!!この私と!!『執行四脚』の『 UpG. Ver.Ⅱ 』ならァ!!その大層なブリキ人形も形無しの様ね!!」
ヘザー「(足を潰した!直立する人型の形をしている以上、足を一本失えば自重を支えられずに斃れてい……っ!) ガッ……ハ……ッ!?」
(高笑いと共に崩れ始める鉄巨神を視界に収め、追撃を加えようと構え直す。)
(しかし、その瞬間……負傷による物か、『 UpG. Ver.Ⅱ 』の反動か。或いは、その両方か)
(口から塊と見紛う程の大量の濁った血を吐き出し、全身が硬直する)
ヘザー「ぐっ、ぶっ……ははっ、驚かせてくれますね、ラタリア博士…!あんな言い方をするのだから、さぞや酷い負荷を受けるのだと身構えていましたが……この程度とは…!」
(明らかに致命的な量の吐血。しかし、平然とした表情で両手を『執行四脚』の根本へと添え)
ヘザー「……待ってなさい、この人形を潰した後は……その身体だ……!!」
(四脚の内の二本がバーナーの様に魔力の炎を噴出させ、空中で更に推進力を得る。その勢いを乗せ、残りの二本を鉄巨神の腰部目掛けて再び横薙ぎに振り回し、更に対敵の身体を破壊しに掛かる)
ゼフィリーヌ「(肉が潰れる音と、空気が吐き出される音……だけではない。確かに声帯から発された"声"が聞こえた。つまり……まだ、生きて……っ!!)――――ッ!やはりか、こいつ…まだ………!!」
(現在の身体の状態でも、頭部を砕く事は……最低でも、完全に意識を奪い去る事は出来ると想定していた。しかし、想定を超えたガレアの"意地"による肘打ちでの反撃が首へと炸裂し、衝撃で大きくよろめき、体勢が崩れる)
ゼフィリーヌ「――――カ……ッ……!?」
(完全に想定外の一撃で体が麻痺し、薄れゆく意識の中……それでもガレアの姿を認め、防御態勢を取ろうとする、が……)
ゼフィリーヌ「……しまっ……はは、っ……ガ、バッ……!」
――――ゴ ッ シ ャ ア ァ ァ ! !
(反射的に振り上げた左手は、とうに肘から先が失われている。故に、ガレアの一撃を防ぐ事は当然叶わずに拳が顔面の中心部へと突き刺さり、その勢いで後頭部から派手に後方へと吹き飛ばされ)
(踏ん張る事も、受け身を取る事も出来ず……仰向けに倒れた)
メトロ「 ヒ ッ゛ ッ゛ ッ゛ (状況把握する間もなく装甲車の窓を塗りたくるように覆った衛兵たちの血肉。そのグロテスクな光景を前に一気に血の気が引き―――)―――――― ァ (絶命するかのように首が項垂れ、気絶してしまった――――)」
ティネル【レギュレロイド】「―――――――!(疾い…ッ……!)(先程とはまるで異をなすその速度に、あろうことか唖然として反応が遅れてしまう) ッ ッ ッ ッ ッ ッ ゥ ウ … … ! ! ? ( メ ギ ャ ア ア ァ ァ ア ア ア ア ン ッ ! ! ! )(そして、思わぬ事態が発生する。今の今まで何者の攻撃も一切受け付けなかったレギュレロイドが激しく振動し、次の瞬間には右脚の付け根から残骸が大きく飛散。痛烈な痛手を受け、鉄巨神の直立が大きく崩れた)」
ティネル【レギュレロイド】「(ここまでの飛躍を得たか…侮りがたいものだ…ッ…!!)ぐゥ……ッ……!!(鉄巨神とのリンクはいまだ健在。コア内部で腰を低くすることで鉄巨神の崩れかける態勢、その反動を和らげようと試みる。だが、付け根からは未だに軋むような音を立てて――それこそ人間でいうところの骨が砕けるようなもの――少しずつ崩落の兆しを見せていた)」
ガレア【アクエリアス】「んなァ―――――!?(咄嗟の挙動から一瞬で持ち上げられた一連の行動を瞬時に把握できず呆気にとられたところに―――)―――― ガ ァ フ ゥ ァ゛ … ッ゛ … … ! ! ( ブ パ ァ゛ … ッ゛ … ! ! )(脳天から大地へ真っ逆さまに叩きつけられ、激しく吐血する。頭蓋が半壊する程に大きな軋みを上げた。脳みそはもはや潰れてもおかしくはないその一撃を受けて一瞬だが意識が飛びかけた)」
.
ああ……クソ……こんな時に……―――――――
.
.
「学業も経験も頗る高い。だが、それに見合うだけの実績が乏しい。本番に弱いタイプなのだろうか。」
「……ッ………」
「件のテロ事件に挑んだというあの青年…だったか…。成績としてはあまり芳しいものではないが、あれだけの行動力は現代社会においては求められるものだ。君も精進したまえ、ガレア。」
「…………」
.
.
「な、なんだよお前…っ……?」
「俺はお前を認めない…!ライン・オーレット…!」
「いつかテメェを越えてやる。俺の前を行くというのなら、俺はその二歩先に君臨してやる…!」
「底辺野郎に出し抜かれるほど、俺は落ちぶれていねえからな…ッ!!」
.
.
――――― そのムカつくツラ引っぺがすまで、俺ァ…諦めねえからな……
.
.
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ガレア【アクエリアス】「―――――― ン な ァ ッ ! ! ! (激昂の如き叫びを張り上げて、失意の果てに覚醒を迎える。相対するゼフィリーヌがそうであるように、装甲を纏う自身もまた人としての肉体意地に限界点を達していた。それでも己が矜持のために確固たる信念を駆り立てる。何物をも凌駕するための、圧倒的な地震の存在意義の鼓舞を――――)」
ガレア【アクエリアス】「 ヌ゛ ギ ェ゛ ァ゛ ァ゛ ア゛ ア゛ ア゛ ッ゛ ! ! ! ! (逆さまにめり込んだ状態から繰り出す不意の肘打ちをゼフィリーヌの首筋に炸裂させ、拘束を無理矢理解いた)ズ ザ ザ ァ … ッ … … ―――― テメェ゛も゛ッ゛…あの野郎も゛…ッ゛……!!越えね゛えと……越えて…越えて……ェ゛……!!」
ガレア【アクエリアス】「 俺 の 強 さ を 示 す ん だ ァ゛ ァ゛ ア゛ ッ゛ ! ! ! ! ( ギ ュ ル ル ル ル ル ゥ ッ ! ! ! ! )(跳ね上がるように態勢を整え直すと、激転する両足のエネルギーリングが地盤を抉り削り、猛速で彼女へ肉薄する。そして―――――)―――― ド ッ゛ グ ゥ゛ ォ゛ オ゛ ン゛ ッ゛ ! ! ! ! ! (勢い殺さぬ助走をつけた、全身全霊のストレートを、ゼフィリーヌの顔面へと――その拳をめり込ませる程に――叩き込むのだった)」
ヨールダン「な………っ…………?(ゼレオロイド……いや、違う………?)目標が護衛兵のバカ共を狙ってくれてるが……ヒヨッコ!!一旦離れろ!味方かもしれんが……動きが滅茶苦茶だ!危険すぎる…!」
(護衛兵達の肉片を浴びながらもそれ自体は意に介さずその場で立ち上がり、メトロの装甲車の方向へと駆け寄りながら声を掛け)
ヨールダン「地下壕への攻撃は……止められた形になるのか……?ヨールダンは、連中が……無事だと良いが……」
ゼフィリーヌ「(彼も恐らくは、自爆で私と刺し違えようとするだろう。だが、逃走の可能性も捨て切れない……今の私に、彼を追うことは出来ないだろうから)」
(踏み込んで来るガレアにも文字通り"動じる事は無く"至極単純な力勝負でその身体の動きを止め続け)
ゼフィリーヌ「(ならば、どうするか?生半な攻撃では、仕留めることは難しいが……私の身体も限界が近い。故に困難であっても尚、確実に彼に致命傷を与えた上で何らかの形で離脱する必要がある。ならばどうするか……)いいや、戯言ではないさ。SUMOUというのは神に捧ぐ神事であり、同時に誇りと礼節を以て立ち合うものだ。私は愛する人のため、彼女にまた会う為……全力を以て君を倒すことを、神の前で改めて示すまでだよ」
(深く息を吸い込んだ直後、さらに鮮血を撒き散らしながら両腕だったものを引き抜き、一瞬で姿勢を低く――――地面に頭が付く程まで屈み込み、ガレアの両足の間に頭を入れ、両腕だったものでその両足を抱える様に持ち)
ゼフィリーヌ「一瞬で、君の半身を砕く……残骸は、捨て去ってしまえば良い……!!」
(ガレアの身体を持ち上げ、"居反り"……プロレスにおけるバックドロップの様に自らの身体を跳ね上げると共に後方へ反らす。その身体能力が故に、まともに動作が完了すれば稲妻の様な速度でガレアの身体は頭部から地面に叩き付けられ、更にゼフィリーヌの放つ魔力が追い打ちの形で襲い掛かるであろう事は、容易に悟ることが出来るだろう)
ヘザー「精々この一瞬だけ、余裕ぶった面を晒しているがいいわ、ティネル!!その高潔を気取った仮面をォ!この私が……叩き割ってやる!!」
(巨大化した四本の脚全てが猛烈に地面を殴り付け、その勢いで鉄巨神の方向へと、砕けた地面の破片と轟音と共に弾丸の如き速さで"跳ぶ")
ヘザー「―――っはっ……ははぁ!!流石は第二の強化、まるで出力が違う!!今の執行四脚ならァ!!」
(激しい出血による過剰なアドレナリンの放出、更には鎮痛剤の副作用で極度の興奮状態にある中で、気付かぬ内に鼻や目元から血を垂らし、浮かれた様に笑いながら叫ぶ。しかし、その目とガジェットはティネルを正確に捉えており……)
ヘザー「魔力なら有り余ってる!!好きに喰らって、暴れろォ!!!」
(四脚がヘザーから魔力を吸い上げ、それを燃料にして紫色の"炎"を帯びる。同時に突進の勢いを乗せ、鉄巨神の脚の付け根を潰そうと、四本のうち二本を薙ぐ様に振り回す!)
アリエルΔ「111000111000001110101100111000111000001010100100111000111000001010101011111000111000000110010101111000111000001010010011111000111000000010000010111001001011101110001010111001011000101010101001111000111000000110010001111000111000000110101011111010001010000110001100111000111000000110001111111000111000000110101101
アエリエルΔ「 ガ ォ ン ッッ (突然自らを抱きしめるように腕を交差させ蹲る。 背のスラスターが一斉に展開し、露出した水晶が緑白色の
光を灯したかと思えば……) キュ オ ッ (立ち上る黒煙を空間ごと無数に両断しきる光線を放つ)
第0護衛兵(フレーム2)「 ? (上空から弾幕を張り"焦土作戦"を以てアリエルを殲滅しようとしていた兵士達のバイタルが途絶える。最後に残っていた人としての意識の欠片が、無意識に自らを確かめるようにして手を見る。 最初は指、そして腕と"ズレ"が生じ……)
第 /0 /護衛 /兵 「 (血と肉の雨が降り注いだ)
第0護衛兵「退けば殺れる…… 退けば――――くそッ!!(犠牲、死、名誉。恐怖が狂気に置き換わり、危機感は自らを奮い立たせる生存本能となって死地へ飛び込む。彼らには生存のために戦うという連帯感があった。 巨人を全方位から蜂の巣にできるよう、ワイヤーガンを駆使し、一斉攻撃のタイミングを見計らうが……)
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アリエルΔ「 キ ン (右ブロウを振り、立体移動に用いるワイヤーガンを腕に絡め取って芋づる式に第0護衛兵を捕まえる。左ブロウも同様に振るい、瞬く間に自分を方位していた"羽虫"を二手で捉え)
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アエリエルΔ「 ヒュ オ フォ ン フォ ン ガッ フォ ン ゴ ッ フォ ン (複数の人形が塊になって出来上がった水ヨーヨーを、完全な円を描いて振り回す。道中、それが周囲の建造物やら何やらにぶつかり、中の液体が散らかった気がしたが"お祭り"ではよくあることだ。気に留める必要はない) パッ (手を離し投げ捨てればいいだけ)
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ただの にく かい「 ゴンッ ビ チッ (メトロの駆るデカメロンのメインカメラが赤一色で染まる。 名窯しがたい形状のそれらは眼球が"複数"あり、歯があり、腕が五本ある。それだけの物体だった)
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―――――――第10のみんなか、レイカさんか。 勝つか、逃げるか。 生きるか、死ぬか。
私に突きつけられた選択は、一つ守り、一つ取りこぼすものばかりだった。
でもそれは、世界という現実が突きつける残酷でリアリティがあるだけの嘘だ。
"全部選べばいい"、何も失わない。その代わり、選んだもの以外を捨てればいいだけなんだ。
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赤が咲く。
赤が咲く。
触れた場所が咲いて、赤が咲く
花火みたいに散っては染め上げていく、とてもきれい
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ロナ『 大丈夫だよおかあさん。 もう私、ちゃんと選べるよ 』
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ロナ『 ………。(――――地平が見えない空、反射する水面の鏡面世界。アリエルのコックピットに居るはずの少女は、閉鎖空間と対局の場所に佇んでいた。) ………。………(両腕を広げ、さざ波を立てて吹きすさぶ風を胸いっぱいに浴び心地よさそうに目を閉じる。 雑音は聞こえない、どこまでも意識は清く澄み渡っていて、思考は鮮明だった。)』
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ロナ『(目を開く。風に流されてきたのか、灰色に濁っていて、それでいて鉄のような質感の花の蕾が水面を漂ってくる。初めは一つ、しかしそれを認識した途端、自分を囲うようにして幾つもの蕾が存在する。それはどんなに灰色で、くすんでいて、焼け焦げていても"命"なのだと実感できた。)―――― うん、もう大丈夫。 』
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ロナ『 ぐッ (水面へ向かって屈んで腕を伸ばす。蕾を、詰み……) 』
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アリエルΔ「 しゃ っ (……取る。 周囲を飛び交う第0護衛兵を、飛び交う羽虫を掴むようにして。 初めは包むように、そして指の感触でそれが"対象"と認識するや……) ブ ――――
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ロナ『 ――――― ち ッ (手に取った蕾は赤く花開いてどこまでも澄み渡る地上の青空に赤い色彩を滲ませる。蜜が跳ねて頬を掠めた。それを指で拭うと、ふと向こうを見る) レイカさん、みんな。今助けに行くからねっ! (手を振る。相手もまた笑顔で手を振り返した。そこに至るまでの灰色の蕾には棘が生えていて、とても邪魔だった)』
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ロナ『 バシャッ (今度は手繰り寄せるようにして水面を動かし、浮いた蕾が自分の腕の中に集まってくる。それを抱き寄せると) ――』
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灰色の蕾『 グババババ バベデグベ ダグ ――――――
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第0護衛兵「 ―――――すけてッ!!助けてッ!!ゆる、許してくれッ!!嫌だ!嫌だ!!死にたくない!!!!父さん!!!!か"あ " ギ ギ (巨人の手の中で自らの頭蓋が軋む音を聞いた。思考に異物が混ざる感触が恐怖を駆り立てる、それが脳髄に破片が混ざる感触とは幸い知ることなく、潰れ――― ― ― ・ ・ ・ )
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. ┣¨ グ オ ッ
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――――――本部に隣接する高層建造物が"内部"から爆ぜ、烈火の塔が暗夜を引き裂く。
絶えず火花を散らし鉛の人骨が植物のように足から頭蓋まで成長し、それを白く血の通わない肉が、鉄の表皮が生成され覆う。
炎で照らされた表皮の色が定着し、紅蓮に染め上げられた「火の巨人」が顕現す。
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BGM:Happy Birthday to You
アリエルΔ「 ■■■■■■■■--0-01----01010■■■■0101-----!!!
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眼に翡翠の炎を揺らめかせ、大気中の塵が発火しては散る程の蒸気を吐き空へ咆哮する。その荒ぶる巨人は、骨格こそ人のそれだが、 レギュレイターが知る"鉄機兵アリエル"とは似ても似つかない異形へ変貌していた。 龍の如き頭部、肋が筋肉を貫通し外部から形を成したような胴体、以前はなかった蛇腹式に連なる尾。 その有り様は―――――
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ナガタ「 ぐァ" ……ッ ……!!??(熱風に煽られ木の葉のように飛ばされる。地下への攻撃は当然失敗。咄嗟にワイヤーガンを倒壊した建造物の鉄筋に巻き付け、突然出現した異形から遠ざかろうとする)――――!? なん、だ……帝国の新兵器……ゼレオロイド、か……!?
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第0護衛兵「ァ……ァ ぅ、ァ うァ ァ ……!(ナガタと轡を並べていた「今も尚正気」の兵の眼から光が奪われる。 狼狽し、蜘蛛の子を散らすようにして撤退を初めた彼らの眼からすれば、町内に潜伏していたゼレオロイドが出現し明確に"敵"として出現したようにしか見えない。それだけで戦意を失うには充分だった)
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第0護衛兵(フレーム2)「 ――ヴ― ヴ ヴヴヴ…… (AGESと交戦していた複数人が一斉にAGESから間合いを離す。 優先順位が変わったのか、或いは彼らを統率するプログラムに"何か"が介入したのか、踵を返し一斉にアリエルへ向かっていく。さながら、光に吸い寄せられる蝿のように)
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9S「なッ゛――――― (団長の警鐘が耳に入る間もなく、全身を覆うように装着していた飛行ユニットが―――)―――― バ ギ ャ゛ ア゛ ァ゛ … ッ゛ … … ! ! ! (――― 一瞬で"分解"されてしまい、瞬く間に残骸と化した部品と共にその身が解き放たれる。スローモーション化した世界の中で対処できないまま、成す術もなくマールーシャに吸い寄せられるように前のめりとなり――――ついに、その"凶刃"に手繰り寄せられてしまった)」
アレックス・ディノ「溶かす!?(となるとあのカートリッジは「塗装」か!)9S!!(部下が突っ込んだのを見て自らも駆け出す。傷の深い彼だけに接近戦をさせるわけにはいかない)」
マールーシャ「(二方向、カートリッジの交換は間に合わない)(冷静に状況を俯瞰する。高速で隙を貫く刺突、まず躱せない。次にアレックスの追撃が来る。以上の状況から素早く自らの行動を規定する)」
マールーシャ「チィッ(マールーシャの左目を刺突が掠める。血は舞わない。掠めた左目を瞑りながら)」
アレックス・ディノ「─── ギ ュ オ(距離を詰める。到達まで瞬きする間の刹那も掛からない。左目を瞑る敵が見える、右目は確かにこちらを睨んでいるが、手は止められない。追撃、その脇腹に向けてビームサーベルを)」
マールーシャ「(睨視する、瞬間にも満たぬ速度で接近する機影を。狙っているのは接近戦。なるべくカートリッジを使って戦いたいものだが、「塗装」では対応できない)」
マールーシャ「あ り が と う(その思考を待っていた。)」
アレックス・ディノ「!?(右手に保持していたはずのサーベルが、右手の一部装甲ごとひとりでに砕ける。いや、砕けるなどという無作為なものではない。これは、一瞬にして武器を「分解」する……)(”あれは「塗装」のカートリッジじゃない”)9S!!離れ……!!」
マールーシャ「遅いよ(そのまま、鎌を9Sに引っ掛ける)」
9S【飛行ユニット】「うぐぁぁああああ…ッ゛……!!(ズガァンッ、ボギャアァンッ…!!)(弾ける閃光によって飛行ユニットが大損害を受け、次々と装甲や武装が残骸となって剥がれ落ちていく。その中で本体である自分自身もいくつか被弾してしまい、煙を吹かす飛行ユニットを低空座標まで落としていく)」
9S【飛行ユニット】「く…ッ……!まだ、だ…ッ……!(ジャキィン…ッ!!)(辛うじて健在な右腕のブレード、その部位を帯電させると―――)―――ッハァァアア!!(マールーシャがカートリッジを切り替えた"直後"、その一瞬の隙を突け習うかのように爆発的なブーストダッシュを切ってブレードによる刺突を勢い良く突き出した)」
ズ ド ド ド ド ド ォ ッ ! ! !
(液体の如く弾けた爆炎の中から光線が飛び出し、アレックスと9Sに襲い掛かる)
アレックス・ディノ「!?(飛来する無数の光弾を前に、反応できなかった数発を受ける。すぐさま立て直し残りを斬り飛ばし)」
マールーシャ「“閃滅”(シュプリンガ)。これで『10』、『9』、『8』だ(後述で攻撃手段を述べる。炎が流れ、地面に吸い込まれて消える。そうして見えた地面の中から、まるで液体から這い上がってくるようにコートを焦がしたマールーシャが出現)」
マールーシャ「使い慣れて来た。そして君は余裕がなくなって来たね。そこの彼の数字も」
アレックス・ディノ「……どうかな。そっちもようやく傷が見えて来たぞ」
マールーシャ「単なる汚れさ。この程度で図に乗ると脚を掬われるが、いいのかね(再びカートリッジを入れ替える)動き回られると不便だな。次は足を溶かそう」
ガレア【アクエリアス】「 なんだと…ッ゛…!?(勢いを乗せた怒涛の進撃を、"受け止められた"。だが、ここで退くわけにはいくまいとバーニアの噴射の勢いを殺さず、尚も点火状態を維持して圧倒せんとするが―――)―――知らねえな、これから散りゆく野郎に戯言などッ!!!(ゼフィリーヌの笑みとは対照的に憤るような叫びをあげる。たとえ両腕が抑えられていようが、一歩、また一歩と動かせる足を踏み鳴らしていく)」
9S【飛行ユニット】「なッ…!?追撃が、全く効いていない…!(続けて何度もレールガンを放つも、まるで受け流されていくマールーシャの身体を前に狼狽する)」
「────まぁ、とても素敵な香りですね。普段はあまりコーヒーを頂くことがないので楽しみです」
彼女────姫路結莉と名乗った少女は柔らかく微笑んだ。
雨で冷えたであろう体を案じ、僕は彼女にコーヒーを淹れることにした。どうせ店仕舞いをしていたところだ、商売っ気は無しで良いだろう。
飲み慣れていない彼女でも飲みやすいよう豆を選び、ブレンドして挽いていく。
────しかし、姫路か。そう聞いて第一に思い浮かぶのは……玄田財閥、天嶺院グループに並ぶ東部の財界を統べる大企業グループのひとつ、姫路コンツェルンだ。
古くから金融業や不動産業を営み歴史と共に発展してきた質実剛健な玄田と天嶺院に比べると、製造業で近年一気に成り上がった姫路は華やかで豪奢なイメージのあるグループではある。
まさかご令嬢か?身なりは明らかに良いし、所作も上品だ。
そういえば聞いたことがある……姫路の白い髪の女。姫路家の隆盛に併せるようにして稀に生まれるようになったと言われる白い髪の女性。姫路家に幸運を運ぶとか、なんとか。
おとぎ話の類だと思っていたけど、まさか本当に目にする機会があるとは……。
ドリッパーに湯を注ぎ、抽出が終わるまでの間にふと、気になった。常に閉じられた目に、手に持ったステッキ。彼女が盲目であることは殆ど間違いないだろうが……
コーヒーを提供したとして、問題なく飲めるのだろうか?こちらから何かサポートをした方が良いのだろうか?ラテ・アートは無意味か?
抽出を終え、店内にはキャラメルにも似た甘みを帯びたコロンビアブレンド特有の香りが立ち込める。
いや、考えるのは一旦止そう。僕だってこの店でお金を頂いてドリンクを提供している……つまりプロだ。プロならプロらしく、できることを、全て。
泡立てたミルクをコーヒーに勢いよく注ぎ、泡がカップに盛り上がってきたタイミングでミルクを反対方向へゆっくりと流していく────
『お待たせしました、こちらカプチーノ・ハートでございます。お口に合うと良いのですが────』
こちらの逡巡を汲み取ったように、彼女はくすくす笑う。
「まぁ、カプチーノ・ハート……お名前からして、ハート形のラテアートが施されているのですね?えぇ、とても可愛らしいです」
彼女は指で、空にハート形をすいすいと描いて見せる。
「目の見えない私にも、他の人と変わらない仕事をしてくださるのですね。手間も余計にかかるでしょうに……その御心、嬉しく思います」
そう言って彼女は目を開く。白い瞳を軽く揺らめかせ、やや覚束ない動きでそっとカップのハンドルを掴む。どうやら、まったく見えないというわけではないらしい。
緊張しながら、彼女がコーヒーを口に運ぶのを見守る。真っ白な彼女と白いカップ、その中に満たされる黒い液体は、不思議と美しく調和しているように見えた。
「────美味しいです、とても。飲み慣れていないので、貴方の技術的な面での評価はできませんが……心が満たされるような気分です。貴方の心遣いを感じる、良い一杯かと」
彼女はにこりと微笑む。安堵と歓喜が同時に押し寄せ、思わず溜息として出てしまう。それを聞いて彼女はくすくすと笑った。
「楽しい御方。お声からしても、随分とお若いご様子ですね。よろしければ────貴方のお顔に、触れさせていただけませんか?」
突飛な提案にぎょっとする。もしかして、からかわれているのか?
「盲 の私にとって、手で触れて得た情報は目の代わり。貴方をもっと知りたいのです。よろしいですか?」
微笑み首を傾げる彼女の様子に、こちらをからかったり何かを企む様子もない。気恥ずかしいが、カウンターから出て彼女の横の椅子に座り、眼鏡を外して腕が届くように顔を寄せる。
「では、失礼いたします」
彼女が目を開き、こちらを見つめる。整った顔立ちが、長い睫毛が、コーヒーの残り香すら遠ざかる彼女の香りが、ゆっくりと近づく白魚のような指先が、僕を激しく緊張させる。
彼女の指が、僕の頬に触れる。思わずびくりと体が跳ねる。温かな、柔らかい手の感触が僕の頬を包んでいく。
視線の合わない彼女の瞳が、興味深いものを見るようにまじまじと僕を捉える。恐らく意図せず開いてしまっている小さな口が可愛らしい。
鼻に触れ、形を確かめるような手つきで、上に。目の周りをそっとなぞり、額へ。髪の毛にも軽く触れ、頬に戻り、口元に……。
これほどまでに美しい彼女に、至近距離で、顔に触れられる……嬉しいとか恥ずかしいとか、それ以上になんというか、生きた心地がしなかった。
「はい、失礼しました。ごめんなさい、恥ずかしかったですか?徐々に体温が上がっていましたよ」
手を放し、そう言って彼女は笑う。
「やはりお若いのですね、16歳ほどでしょうか。髪は癖があるのですね?それと、自信の無さそうな表情をしていらっしゃいました。自己評価の低い方なのですね」
面白そうに、手で触れてわかったことを彼女はつらつらと話してみせる。しかしまぁ、顔の造形について何か言われなくて良かった。
これで彼女に辛辣な言葉をかけられようものなら(彼女の性格としてそんなことはあり得ないのだろうが)、自死すら選択肢に入りそうだ。
~♪
突然、スマホの着信音が鳴り響く。彼女は身に着けていたポシェットからスマホを取り出し、耳に当てる。
「────はい。 えぇ、そうなんです……あら、そうですか。ご苦労様です、それでは今から向かいます。────いえ、結構。それくらいは自分で出来ます。では……」
通話を切り、彼女はこちらに向き直る。
「失礼しました。どうやら迎えの者が来たようです。ここを出た路地の先に車を停めているようなので、そちらへ向かいます。本日はご迷惑をおかけしました」
深々と頭を下げる彼女。僕は慌てて頭を上げるように言う。どうせ暇な時間だ、それを素敵な思い出にさせてもらったようなものだ。良ければまたいつでも来て欲しいと告げる。
「では、また機会があればぜひ。ごきげんよう」
去り際に微笑みを残し、彼女は杖を突きながら店から出て行った────
彼女の微笑みが、彼女に触れられた感触が、しばらく頭から離れないでいたのだった。
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これが黒羽蒼葉と姫路結莉の初めての出会い。
無垢なる心を持つがゆえにどこまでも黒く染まっていく少年と、光無き世界に産まれたがゆえにどこまでも穢れを知らぬ、白百合 のごとき少女の出会いであった。
ラーヴァ「(比丘尼の話を聞き)ふふ、そう心配せずともきっと上手くやっているだろうさ。弟子を思うその気持ちは分からんでもないがね。弟子の仕事か……叶うなら、もう荷を下ろして年相応に学校にでも通ってほしいのだが……聞かないだろうな」
ラーヴァ「(ムラクモの話を聞き)私もまさにその方法で弟子に体作りをさせたが、そうか……栄養学……ふむ、今時はそういう観点もあるのか…」
ラーヴァ「ふふっ……さてね(ヴェルサスの言葉にあえて多くを返さず、口元を緩めながら手元のビールをあおる)…………。(ヴェルサス、とんでもないペースで酒を……私も負けていられない……)グビグビ」
ラーヴァ「皆さんの弟子の話か……確かにとても興味深いな。是非とも聞かせてほしい、こう見えて物語には目がなくてね。もちろんウチのも自慢させてもらうとも(全員の顔を見回し、少し砕けた友好的な表情を浮かべながらジョッキを掲げる)」
ゼフィリーヌ「—————仕留めた……いや、これは………っ!もう一人の強化…!そういう事も出来るのか…っ!!(また、読み違えた……私が、彼らを…っ!)」
(————完全なる、誤算。キコの最期の一撃を予測していたが故に、ガレアへの対応が遅れ……容易に彼の接近を許す形となり)
ゼフィリーヌ「ぐあ……っ―!!が―――あっ―――――ッ!!!」
(常軌を逸した防御力、そしてまともな人間であれば疾うに事切れている筈の負傷……其れでも尚飄々とした表情で立って居たが……既に限界に近付いているのか、ガレアの斬撃を受ける度に鮮血を噴き出し、苦悶の叫びを上げ)
ゼフィリーヌ「(思考が纏まらない、集中する事が出来ない、身体の強化も、治療も、纏まらない……!だが、斃れる訳には行かない、私には、まだ……っ!)まだ……ァ…!」
(まさに、苦し紛れ。しかし、確かに、正確にガレアの両腕に向かって、自らの両腕を突き出し……ズタズタの右手、そして肘から先が消し飛んだ左手を"縦"に深々と切り裂かれながらも、彼のリングエネルギーの回転を強引に止め、更にはその動きすらも抑え)
ゼフィリーヌ「ガ……ア…ぐ、うっ………はは、ふふっ………君は、"SUMOU"は、好きかな……?」
(相撲で言う、"手四つ"の様にガレアの右腕を自らの右腕に、逆の左腕もまた自らの左腕に、深々と食い込ませて押し合う様な体制となり)
(既に死に体の身体。絶対の自信を誇っていたその顔は血反吐と負傷、そして泥で汚れ、苦痛を滲ませながらも、無理矢理に笑みを浮かべ)
アレックス・ディノ「効いて……いや、何だ!?火柱が液体に!?(さては”塹壕 ”!?こんな使い方が出来たのか!?)」
アレックス・ディノ「だが……!!(そこに文字通り潜伏しているマールーシャに向け、そのどろりと溶ける火を吹き飛ばし払うようにビーム砲を集中。炎がやはり粘性を持った液体の如く変形し、穴が開くように弾ける)」
そう囁くように告げると、いつもは私が立ち上がるまで見えていたおかあさんが先に腰を上げた。
焚き火と私を置き去りに、コートを翻して霧の向こうへ、暗闇の向こうへ消えてしまった
以降、私はおかあさんに会っていない
だから今日まで"選ばない"事を選んできた
それはきっと欲張りな事
"二択"を迫られた時、私は選ぶか捨てるかを決めないといけない
捨てる事を決めたらきっと引き返せない
でも、それがなに?
引き換えした事なんて今の今まで一度でもあったのかな
ああ、そっか。もう大丈夫だよお母さん だって私―――――――
.
.
.
◆
おかあさん「――――――――――選択しないという事は、望む全て以外の一切を切り捨て前に進むということだ
. 何度でも前に勧め、十、百、千、お前が選ばず進んだ数だけ理の屍が道標となる
. それが戦士というものだ。命でも、国でもない、お前を拒む世界を殺してでも歩み続けろ。お前の魂という炎が尽きるまで」
おかあさん「少し前、全ての暴力を否定しここを旅立った子供がいた
彼は暴漢から見ず知らずの親子を庇い、そして反撃を選ばず殺された
だが私はそれでもいいと考えた。いや……考えてはいないか
彼は選んだ、ただそれだけだ」
おかあさん「その後、全ての暴力を肯定し旅立った子供がいた
護るものもない、目指すものはない、あるのは渇望だけ
乾きは潤ったか? それは彼にしかわからないが……
彼の最後を見るに、あの笑い方は全てを肯定していた
悪逆の限りを尽くし、その報いを受け惨めに晒し者にされ死ぬにしても、
やはり彼は『しかたないことだ』と笑いながら逝った」
おかあさん「たった今だ。彼は正義を全うする為悪に堕ちると言ってここを出た
正しいと信じたことを死ぬまで成し遂げたなら、私が彼という悪を裁く。そう盟約を結んだ上で力を得てから
私は彼の行く末を知ってる、何度も"繰り返している"。きっとすぐ、私は彼に引導を渡す
それでもいいと、私は彼の在り方を肯定する」
おかあさん「ロナ、選ばないというならそれでいい。魂の在り方を強制することはない。 けれど"選ばない為"に"選ぶべき時"がきっとくる。それはすぐそこだ」
おかあさん「私はお前の魂の在り方、全てを肯定する」
―――――――選べなかった
――――――――手を汚すか、心情に従うか。選べるのは二択、けれど私はどちらも選べなかった
.
.
半年ぶりに丸太に腰掛けて前を向いた
ゆらゆら、ゆらゆらはためく火のカーテンの向こう
おかあさんは向かい側の丸太に腰掛けて、膝に肘を乗せ長い白い髪を垂らし腰掛けていた
.
.
.
ロナ「おかあさん、私選べないよ」
.
.
それが私の"選んだ"本音
.
.
叱られると思った、がっかりされると思った、きっと追い出されると思った
でもやっぱり、私は怖かった
ガスマスクの大人が"お父さん" "お母さん"を撃ったあの夜
ガスマスクの大人が真っ赤に染まって、おかあさんと出会ったあの夜
私は今でもあの日の全てが恐ろしい
.
.
.
おかあさん「 君は選んだ その全てを肯定する 」
ロナ「え?」
.
.
けれど返ってきた答えは不思議なほど"何もなかった"
怒りも、失望も、そしてそれ以外の一切でさえも、何もなかった
おかあさんは顔を上げ、灰色に赤の十字架が刻まれた瞳を真っ直ぐ向け初めて"対話"をした