【月の瞳を持つけもの】
~7話 白日~
11月15日
タイリク
「面倒を掛けたね」
博士
「なんてことはないのです。 我々も早く読みたかったのです」
助手
「来月もおかわりを待っているのですよ。 我々は『ホラー探偵ギロギロ』のファンなので」
サーバル
「あれ?今日は3冊もある」
かばん
「ホントだ。
先月号と今月号と・・・」
タイリク
「特別読み切り『月の瞳を持つけもの』だよ。
みんなを喜ばせるために私が出来ることと言えば、これくらいだからね・・・」
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#10月28日 新月(回想)
―ろっじー
タイリク
「ちょっといいかな?」
アリツ
「あら? どうしたんですか? 深刻な顔をなさって」
タイリク
「折り入って相談があるんだが・・・」
アリツ
「お役に立てるかどうかは分かりませんが、お聞きしますよ」
タイリク
「今、パークを騒がせている『月の瞳を持つけもの』
実は私なんだよ」
アリツ
「・・・」
タイリク
「ちょっといいかな?」
タイリクは左目を押さえながらフロントを訪れていた。
アリツ
「目をどうかされましたんですか?」
タイリク
「ヒリヒリして涙が止まらないんだよ」
アリツ
「ドライアイでしょうか? 根を詰め過ぎなんじゃないですか?」
タイリク
「私もそう思ってね。
気晴らしに散歩にでも行こうかと思うんだが、さすがにコレではね・・・」
アリツ
「危ないですもんね。 ごそごそ…
ではコレを・・・」
タイリク
「眼帯・・・?」
アリツ
「以前 私が、ものもらいを患った時にクスシヘビさんがくれたもので、
サンドスターが練り込まれてあるそうです。
まだ効果は残っていると思いますので・・・
あ、ちゃんと洗ってありますよ?」
タイリク
「ありがとう。 助かるよ」
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その後 散歩に出掛けた私は、たまたまセルリアンに襲われていたドールくんを助けた。
気分転換をしたからなのか、戦闘による昂揚感からなのか、
抑えられないほどの創作意欲に突き動かされた私は、ドールに身分を明かす間も惜しんで
ろっじに取って返すと執筆活動に勤 いそ しんだ。
翌日としょかんに製本を頼みに行くと、彼女たちが『謎のフレンズ?』の話をしていた。
タイリク隊のことは知っていたし、私のことだと分かったが、何も言わずにおいた。
なぜならフレンズの噂も75日。
そのうち立ち消えになると思ったし、なにより照れ臭かったからだ。
しかし話は それで終わらなかった。
その次の満月の晩も私は散歩に出た。
するとニューギニアハイランドワイルドドッグくんが襲われそうになっていたので助けた。
返しそびれた眼帯で正体を隠して・・・
そして同じように、黙って立ち去った。
それは、いつの間にか すっかり創作のルーティーンになってしまっていた。
その次も、その次の満月の晩も・・・
どうやら彼らは、早々に私の正体に気付いていたらしい。
考えてみれば当然だ。
嗅覚や聴覚の鋭いイヌ科フレンズだからな。
それを公 おおやけ にしなかったのは、私と「秘密の共有」が出来るのが嬉しかったのだろう。
仲間内だけで『月の瞳を持つけもの』と呼称し、私との密 ひそ かな関わりを楽しんでいたようだ。
しかし、それも公然の秘密という訳にはいかなくなり、
ハンターチームや博士たちの知る所となってしまった。
私がリカオンを助けてしまったからだ・・・
#10月31日(回想)
―さばんなちほー サーかば邸―
ともえ
「ーで、肝心の相談の件なんですけど。
実は、タイリク隊の子たちは『月の瞳を持つけもの』の正体を知っていて・・・
かばん
「うん、うん。 やっぱり。
僕もそうじゃないかと・・・
タイリクオオカミさんだよね」
ともえ
「やっぱり分かってたんだ」
かばん
「確証は無かったけどね」
タイリク隊には、掟というか約束事が1つあって、
タイリクオオカミさんに積極的な接触は控えることになってるんです。
だけど、その遠くから見守っていただけの憧れの存在に助けてもらった、
ーていうことで、ドールちゃんが黙ってられなくて思わず話題にしたんです。
その次のニューギニアハイランドワイルドドッグちゃんの時は偶然だったんですが、
元タイリクシスターズだった名残なのか
イタリアオオカミちゃんはタイリクさんへの思い入れが強くて。
わざとセルリアンの多い晩に出歩いて、そして助けられたんです。
それをタイリク隊の集会で自慢げに報告して。
『月の瞳を持つけもの』というのは彼女が名付け親なんです。
そしたら同じようにアードウルフちゃんが・・・
その時はスゴく盛り上がったらしいんですけど、やっぱりマズいよねってことになって
自制しようってことになったんですけど。
でもイエイヌちゃんは普段あたしと旅に出てるので、その辺の事情は知らなくて。
タイリク隊で報告したら、やっぱり盛り上がっちゃって。
それが博士たちの耳に入っちゃったらしいんですよね。
ーで、とうとうハンターチームが調査に乗り出すことになったんです。
でも、リカオンさんもタイリク先生だって気付いて、捕まえなかったんですね。
その後、報告に来ました。
捕獲作戦が決行されることになったこと。
だけど捕まえたくないので証言は ぼやかして欲しいって。
かばん
「ああ、#あの時の・・・」
ともえ
「タイリク隊の皆さんは、
迷惑を掛けることになってしまって申し訳ないって反省してました。
もし『月の瞳を持つけもの』が博士たちに捕まるようなことになったら・・・」
かばん
「大丈夫。
『月の瞳を持つけもの』さんは悪いことをしたわけじゃないんだし。
タイリク隊の皆さんにも気にしないように言っておいてあげてくれる?
きっとタイリクさんも、きっとそう言うと思うから」
ともえ
「はい! ありがとうございます」
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#11月7日(回想)
―ハンターチームー
ヒグマ
「なんだ? 改まって相談したいことって」
リカオン
「今まで黙ってて すみませんでした。
『月の瞳を持つけもの』の正体はタイリクオオカミさんなんです」
ヒグマ
「なんだと!?」
リカオン
「本当に申し訳ありません。
でもこれ以上、先生を追い詰めたくないんです」
キンシコウ
「ヒグマさん」
ヒグマ
「・・・ いや、よく正直に話してくれた。
そうだよな。 お前もイヌ科だもんな、正体に気付かないわけがない」
キンシコウ
「でも、どうします?
博士たちは大々的な捕獲作戦を計画しているそうですが…」
ヒグマ
「さっき依頼があった。 ハンターチームも参加しろ、と」
リカオン
「何ともならないんでしょうか?」
ヒグマ
「う~む。 下手に動くと博士たちの面子も潰しかねんしなぁ…」
キンシコウ
「博士たちを立てながら、ですか…
一か八かですが、コレを使ってみますか?
あとは成り行き任せになりますが・・・」
ヒグマ
「?
それは この間のハロウィンの時のケルベロス?」
リカオン
「コレを着てタイリク先生のフリをしろっていうんですか?
さすがにバレるんじゃ…」
ヒグマ
「その時は自業自得だろ」 くく…
リカオン
「うぅ…」
キンシコウ
「出来るだけフォローしますから」 ふふ…
リカオン
「もしかして これって罰げぇむ…?」
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再び10月28日 新月
―ろっじー
タイリク
「・・・なのに彼らは、私を庇って『月の瞳を持つけもの』の正体を隠し通そうとしている。
私は真実を白日の下に晒すべきではないだろうか?」
アリツ
「私が思うに、先生は今までどおりでいいんじゃないでしょうか」
タイリク
「!?
皆に甘えて、私『だけ』好きなことをしていろ、と?」
アリツ
「それは少し違うと思います。
皆さんにとっては、先生の『好き』を守ることが
自分の『たーのしー』に繋がっているだけなのだと思いますよ。
でしたら、皆さんの想いに報いるために先生がするべきことは・・・」
タイリク
「!」
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11月12日 -ろっじー
かばん
「大丈夫ですか?」
ムーライトハウンドタイリクオオカミ「まったく… このサマだよ。
やっぱりキミも私の正体には気付いていたんだな」
かばん
「どうしてそう思うんですか?」
タイリク
「だから #あの時、キミは『月の瞳を持つけもの』をムーライトハウンドと名付けたんだろう?」
かばん
「さすがですね」
タイリク
「その言葉は そっくり返すよ。
・・・まあ、それはいい。
少し私の告白、いや懺悔に付き合ってくれるかい?」
私が『月の瞳を持つけもの』になったのは偶然だ。
最初は気分転換でしかなかった。
イヌ科フレンズを助けたのも、元オオカミ連盟のリーダーとしての名残が、そうさせたのかもしれない。
しかし、そんなことは些細なことだ。
私はいつしか満月の晩を心待ちにするようになっていた。
月に魅入られたから?
闘争本能に身を任せられるから?
変身願望を満たせるから?
ダークヒーローとして崇められるから?
タイリク
「厨二病じゃないか、と笑ってくれていい。
ーというか、どうしてキミたちは
こんな自分勝手な私のために そこまでしてくれるんだ?」
かばん
「 #月はフレンズを狂わせることもあるそうなので病気だなんて思いませんよ。
#ナミチーさんも満月の晩は、ハイになるそうですから」
???
「その通りジャよ。 そう悪いことばかりジャないのジャ」
タイリク
「!?」
かばん
「どなたですか?」
アリツ
「クスシヘビさんが来てくれましたよ」
タイリク
「どうして?」
「儂は怪我したフレンズを察知するのに長けておるのジャ。
ホレ!」
ステッキを翳 すと、みるみる傷口が塞がっていく。
かばん
「すごいですね」
クスシヘビ
「ジャが痛みは残るでな。
しばらくは安静にして、無理はせぬように」
かばん
「そうなんですね」
クスシヘビ
「サンドスターも そこまで万能ではないということジャ」
かばん
「でしたらフェイクとして腕に包帯を巻いてもらえませんか?」
クスシヘビ弄 するのが好きなフレンズなんジャのう。
「うぬらは小細工を
ホレ、これでいいかの?」
かばん
「ありがとうございます」
クスシヘビ
「あと、さっきの話ジャが、#月光浴には気持ちを穏やかにする効果もあるということジャ。
このステッキにはサンドスターが練り込まれておるのジャが、
#ムーンストーンの成分も含まれておるのかもしれんのう。
とにかく儂は、その力を治療に利用させてもらっておる、というわけジャ」
かばん
「もしかすると原作の月、ムーンストーン、サンドスターには何か関連があるのでしょうか?」
クスシヘビ
「そうかもしれんが、儂としては11/14の『いい医師の日』に間に合って良かったのジャ。
ジャあのwww」
かばん
「マイペースなフレンズさんでしたね…」
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タイリク
「・・・」
アリツ
「どうしました?
まさか具合でも・・・」
タイリク
「いや、カッコ悪いな、と思ってね。
博士たちに迷惑を掛け、キミたちにも迷惑を掛け、私だけが こんなに守られて・・・」
かばん
「それを言うなら、『僕も勝手』です。
『タイリクオオカミさんの好き』を楽しみにしている1人として、
それを失いたくなくて、こうしているんですから。
博士たちは『フレンズの皆さんの好き』を守るために。
他の皆さんは『タイリクオオカミさん』を守るために動いているのに・・・」
アリツ
「実は私も・・・
アミメキリンさんもそうだと思いますよ」
タイリク
「アリツさんが言っていたのは、そういうことか・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そこへ・・・
サーバル
「かばんちゃん!?」
アミメ
「先生!」
続いて博士たちも部屋に飛び込んでくる。
博士「!? 2人だけですか?」
助手「ムーンライトハウンドは?」
アミメ
「先生! 怪我をされたんですか!?」
タイリク
(そう言えば、捕獲作戦でのアリバイが崩れた私に誰も気付かない・・・
ーなんてことが、果たしてあり得るのだろうか…?)
~to be continued~
【すぺしゃるさんくす】
マフティさま・・・クスシヘビちゃん
クスシヘビさんマジいい医師!
さて、タイリク姉さんとリカオンはどうなるか
クスシヘビちゃんは、チョイ役ながら良い仕事しましたねぇ。
リカオンは・・・前話で出番が終わってしまいました… (;^_^A
(今回は回想シーンとなっております) フォローしとこうかしら?
タイリク先生は、最後にもう少し見せ場を用意しています。
あ、回想シーンやったか
リカオンどんまい