本格的な戦闘回です。
・2つの戦い ・凶弾 ・穴(ホール) ・その獣、手負いに付き ・世界一悲しい幸せをあなたに
の予定です。
~〜~
場所は変わって第3機動軍が所属する大型基地、”オペレーション・バビロン”のHQである指令室の中。多数のオペレータが現地のCPと情報をやり取りしている…それを後ろから見守る者、司令官のコバルトがいる。それとは隣に設けられた席に座っているのは、今回の作戦で派遣されてきたリバティニアの将校である。
コバルト「不安ですかな?」
リバティニアの将校は若干渋い顔をしている…無理もない、作戦は対アバドンプロトコルであるphase3に突入してしまった。最早激突は避けられない。
リバティニア将校「我々は貴国の誘いに乗り、はるばるやってきた。ここまできたら犠牲はやむを得ないと考えているが…果たしてこの戦いで何を得るのだろうか?もしかしたら我々は”パンドラの箱”を開けてしまったのではないだろうか…?」
”古代都市の技術の回収”これが2国の最大の目的である。現在、既に多くの国が存在を発表している”人外”、更にその数は指数的に増加していた…更にその中には、現実に多大な影響を与える”メアリー・スーの怪物”の発現も示唆されている。 ファントムは現状”人外”を保有していない、”人外”に対抗できるのはそれに準ずる存在だけなのだ。
コバルト「個の生物としては強大極まりない能力を持つ”アバドン”、既に古代から確立していた回路施工技術、そして別位相にある世界である”Nether”との接点がないにも関わらずネザーポータルが存在している。…確かに我々は”パンドラの箱”を開けようとしているのかもしれない…古代都市の技術が手に入れば…各国が保有する”人外”に対抗できる…。」
リバティニア将校「毒を制するのは毒のみ…という事か。我々は必死に目の前の餌に喰らいついている状態だ…果たしてそれが毒餌なのかは分からないが。」
コバルト「それがパンドラの箱かどうかは開けてみないと分かりません。危険かどうかも…それを確かめるのが我々の仕事です。このために準備をしてきました…一度負けたから、”負け犬”だからこそ対抗出来るのです。」
そういって二人は指令室から基地の外を見る。 既に基地内の敷地では大型のポータルが起動し、それを半円状に囲うように部隊が展開している。
リバティニア将校「彼らの戦いを支えるのが私達の役目だ。」
コバルト「そのようですね…」
二人は、ポータルを…その先にある戦場を見ている。
忘れてた()
内容は固まったので後は書くだけ
基地の大型ポータルを超えた先…見るも無残な姿になった”古代遺跡”では、人と人ならざる者の戦いの場が繰り広げられていた。
現在、ファントムが展開している車両数、歩兵数は共に一個大隊(1000人、45両)に匹敵するかしないかの量だ。
ポータルから近い順に砲兵部隊及び軽、主力戦車部隊がいる後衛部隊、装輪戦闘車や戦闘支援車がいる中衛部隊、歩兵戦車や兵員輸送車がいる前衛部隊の3つの部隊が展開している。
歩兵は3つの部隊に満遍なく別れており、前線への補充やバックアップといった形で分散している。
そしてその前線では…
6体の獣に吹きすさぶのは、弾丸のスコール。横殴りに叩きつける弾丸達は完全に奴らを地面に縫い付けている。
兵士1「リバティニアからの合図が出ました!!」
兵士2「ダイバー1!!ここからは”個人プレー”に切り替えるぞ!」
ダイバー1「了解!!ファントムはポイントを更新!!”檻”を一時的に解くぞ!!」
その号令と共に6体に降り注いでいた銃撃がピタリと止む。いきなり圧力が解けて自由になった”ウォーデン”達は呆然とするが…。その瞬間、”左右”から3体ずつを狙った散発的な銃撃が再開された。
しかし…前程の強さはない。銃撃されながらもある程度の自由を与えられた”ウォーデン”は、危害を与える者達に文字通りの鉄槌を下すべく咆哮をあげながら突撃を敢行するが…勇敢な行動はすぐさま激しさを増した銃撃の嵐によって阻害される。
3体ずつ引き離され、複数のキルポイントに誘導出来る場所まで連れてこられた”ウォーデン”はファントム部隊が作った”銃弾の檻”に再収監されてしまったのだ。
ダイバー2「ターゲットをリード。ダイバー1、これからどうする?」
ダイバー1「威力偵察を行う。主力戦車小隊に伝達、”N-09合金”を使った…120mmNZ徹甲弾を使用してくれと。」
ダイバー2「分かった、後衛部隊に伝えよう。」
指示が発令され、主力戦車部隊はその砲塔を旋回し砲口を…何も無い虚空に向けた。
兵士1「主力戦車部隊、指定ポイントに射線を向けました。いつでも誘導可能です。」
ダイバー1「了解した。檻を解くぞ…一体を射撃座標まで誘導する。」
3体の”ウォーデン”を囲んでいた”銃弾の檻”の一部が開き、一体が開放される。急に自由を与えられた1体の”ウォーデン”は困惑するが…突如飛来した歩兵戦車が搭載する30mmの機関砲によって殴りつけられる。
今まで食らったことのない威力に驚きながらも、大きな脅威を与える存在を排除するべく生存本能のままに活動を開始する。
兵士3「いいぞ…そのままこっちに来い!怪物め…!!」
怪物である“ウォーデン”とはいえ、所詮は生物。今までよりも強力な刺激を喰らえば反応しないわけがない、雄叫びをあげながら馬鹿正直に一直線に突き進み続ける…しかし、しばらく走った瞬間に何かに躓き大きな音を起てて盛大に転ぶ、それがファントム側が仕掛けた罠とも知らず。
兵士2「奴がコケた!動きを止めるぞ!」
地面に仕掛けたワイヤーに足を取られ、盛大にコケた”ウォーデン”に追い打ちとばかりに仕掛けられたIEDが起爆する。爆炎に身を包まれ、”ウォーデン”が苦痛の声を上げる。
大きな隙を晒した”ウォーデン”に横から忍び寄る歩兵達、彼らは足元にコロコロと円筒状の物を投げ入れる…それは閃光と大音量による無力化を行うスタングレネード。目がない”ウォーデン”に閃光はともかく、人間ですら難聴になる恐れのある160デジベル以上の音量を聴覚に頼る生物に放ったらどうなるか。
“…!?!?!?!?…!!!!????…!?”
声にならない音を発した後”ウォーデン”はグッタリとしてしまった。過敏ですらあった聴覚に過剰な音量を流した結果、許容量を超えてしまったと考えられる。なにはともあれ無力化に成功した。
そして”ウォーデン”が無力化された場所は…主力戦車部隊の射線上である。
戦車小隊長「無力化に感謝する!戦車小隊NZ徹甲弾発射!!」
最新式のmod.3モジュールに換装された1個小隊、計5両の”Type 2 Mk.3主力戦車”から放たれたのは、NZ徹甲弾である。
ネザライト(略称NZ)とは、N元素産物である古代の残骸から抽出した金属元素の”N-09”に金元素を合わせて生み出した合金である。
試作を繰り返した結果、モース硬度10以上の硬さを持ったネザライトは砲弾の弾芯としての価値を見出され、N元素兵器の1種であるNZ徹甲弾として生まれたのであった。
精製及び鋳造技術があれば量産はできるのだが、N-09を含有する物質である古代の残骸、通称”スクラップ”は埋蔵料が少ないため、原料のコストが高く一発一発が本来の10倍近い価格が掛かってしまう。なので今回は主力戦車1両につき2発ずつ…合計10発しか持ち込み出来なかった超貴重弾薬なのだ。
しかし威力はお墨付き、装甲角度によっては跳弾もあるが、生物のソフトスキンが相手だと…
そこに残ったのは上半身をごっそりと削り取られた”下半身だけのウォーデン”がそこに居たのだ。この結果に戦闘中にも関わらず兵士たちからは歓声が上がる。
兵士1「”アバドン”を一体撃破!次の対象に移ります!」
ダイバー3「NZ徹甲弾…不安定なN元素兵器の中では安定した代物だと聞いていたが…まさかここまでの威力があるとは…」
ダイバー1「喜ぶのは後にするぞ、まだ2体残っている。可能な限り素早く片付けてリバティニアの援護に向かうぞ。」
「「「了解!!!」」」
士気を上げたファントム軍はこのまま2体目撃破に向けて動くのであった。
「「「うわぁぁあああああ!!!」」」
古代都市通路、そこでは1台の爆走する兵員輸送車とそれを追いかける1体の”ウォーデン”。現在2体目の”アバドン”撃破作戦中である。
兵士1「おい!俺達の役割って”アバドン”を引きつけるんだよな!?これってただ襲われてるんじゃないのか!?」
兵士2「俺達だけであんな化け物どうこう出来るわけねーだろ!結果的に誘導できてるからいいじゃねえか!」
彼らが与えられた役割は装甲車を使った”アバドン”の誘導である。しかし、あまりにも待ちぼうけを喰らった”ウォーデン”は怒り心頭でおり、目の前の物を破壊するだけのマシーンと化している状態である。
兵士1「おい!距離詰められてきてるぞ!もっとスピード出ねえのか!?」
運転手「駄目だ!道が荒れててやがる!これ以上スピードを出したら横転しちまう!」
兵員輸送車も荒廃した古代都市のせいでスピードを出せずに、徐々にその距離を詰められて来ている。
兵士2「クソッ!近づいてきやがる!!」
兵士3「武器を出せ!少しでもいいから時間を稼ぐぞ!!」
彼らは兵員輸送車に搭載されている12.7mm機関銃や持参している小銃を後ろから迫りくる”ウォーデン”に向ける。
兵士1「撃て撃て!近づけさせるな!」
装甲車上部に取り付けられた12.7mm機関銃や、後部のドアを開けた兵士達が自動小銃を撃ちまくる。
しかしこの“ウォーデン”、20、30mm機関砲で負傷させないまでも、やっとダメージを与える程の硬さである。こんな豆鉄砲で止まるはずがない。現にやや遅くはなったが、ジリジリと距離を詰めてきている。
兵士3「ヤバいヤバいヤバい!まだなのか!?指定されたポイントは!!」
運転手「もう少し…あった!!飛ばすからどっかに掴まってろ!!」
前方に居る誘導ポイントで待機している兵士達の脇を掠め、まさかのドリフトをしながらダイナミック駐車を決める。ナイス駐車。
兵士1「良し!なんとか行けそうだな。ワイヤーを張ってくれ!」
その言葉を受け、誘導ポイントで待ち構えていた兵士達は足元にワイヤーを張って直ぐに退散する。
その数秒後に待ってましたと言わんばかりにその場所を目掛けて”ウォーデン”が突進してきた。そして結果は前回示した通り、足を取られて盛大にすっ転ぶ。
転んだ先は、地面に大きく書かれているバッテン印、ファントムお手製の罠である。『ズボッ』っという音と共に”ウォーデン”は一気に下まで転落する。その瞬間、穴で火柱が噴き上がった。
穴の下に設置されていたのは対戦車用の地雷、前回のIEDと同じく”本命”の攻撃前に行う所詮”繋ぎ”役の攻撃であるが…”ウォーデン”はあまりの衝撃に数m浮き上がるほどの威力であった。
しかし、穴の高さは約10m、工作兵が汗水垂らして必死に掘った結果である。推定体高が3〜5mの”ウォーデン”では数m浮き上がったとしても穴からは出られない。一瞬の浮遊の後はアリ地獄生活に逆戻りだ。
ダイバー1「ポイントにターゲットを誘導成功!! 砲兵部隊は第3波投射用意!!」
オペレーター「了解。砲兵部隊は宜しくお願いします。」
砲兵部隊隊長「おう任せな!お前ら指定のポイントに発射だ!!調理開始と行こうぜ!!」
砲兵1「発射準備いつでも行けます!」
砲兵部隊隊長「おう!奴らをこんがり調理しようじゃねえか!撃てぇ!!」
陣地後方の砲兵部隊が3度目の火力投射を行う、爆音を奏でた砲撃が周りの空気を震わせ、大きな衝撃を与える。
誘導員「砲撃がこっちに来るぞ!全員出来る限り距離を取れ!」
その声を聞き、先程まで装甲車に乗っていた者達、この場所で誘導をしていた者達が一斉に蜘蛛の子を散らすようにその場から退去を始める。
兵士1「ここまでくればいいだろう…来るぞ!その場で伏せて耳を塞いでろ!」
距離は取った、後は砲撃の衝撃から身を守るだけである。
観測兵1「砲兵部隊、砲撃しました!…5、4、3…弾着…今!!」
放物線を描いた投射物は、身動きが取れないながらも穴から出ようと藻掻いていた”ウォーデン”に真上から直撃し…爆発。綺麗な爆炎を咲かせる。
落とし穴という閉鎖的空間で喰らう衝撃は並大抵の威力ではない、爆発による衝撃が逃げる場所が穴の出口…上しかないからだ。その上から降ってきた弾頭が炸裂した際に圧力が一気に高まる…圧力鍋のような状態に近いのだろうか。
逃げられない“ウォーデン”は、文字通り上から降り掛かり穴の中で高まった衝撃を身を持って体験している。誘導弾や榴弾の炸薬によって爆炎の熱で身は焦げ、爆発の衝撃で体内の骨格や内臓は押され、潰れてグチャグチャになる。
穴の中にいた怪物はある程度原型は留めているものの、表皮が焼け爛れて体のあちこちから臓器、が飛び出た物言わぬ骸と化していた。
2度目の成果にファントム陣営から歓声が挙がる。
〜司令室〜
オペレーター1「2体目の”アバドン”の撃破を確認しました!」
オペレーター2「これで後1体を残すのみ…被害もほぼ微小…このまま行けば…!!」
前回とは売って代わり、2体の”ウォーデン”を被害無く葬った事実に司令部は安堵する。このまま行けば…最良の結果を持ち帰ることが出来る…その希望が見え始めた…。
〜〜〜
戦場では最後の”ウォーデン”が未だに銃弾の嵐の真っ只中にいる。頭部に付いている口からは唸り声が鳴るのと同時に、胸部にある大きな口からは青白い光が漏れ出していた。
決して慢心をしていた訳でも油断していたわけでも無い。しかし、今追い詰めていた獣は我々の知っているような只の獣ではなかった…そのことをファントムはその身を持って味わうことになる。
手負いの獣は何よりも恐ろしい。
ボコボコにしてやるから首洗って待ってろファントム軍(鬼畜)
想像したら凄いグロかったです(?)
やはり茶番は文章描写が大事だと思っているので...しっかり描いてます。
次回からグロ描写及び鬱展開に移行します。 苦手な方注意です。
不適切なコンテンツとして通報するには以下の「送信」ボタンを押して下さい。 現在このグループでは通報を匿名で受け付けていません。 管理者グループにはあなたが誰であるかがわかります。
どのように不適切か説明したい場合、メッセージをご記入下さい。空白のままでも通報は送信されます。
通報履歴 で、あなたの通報と対応時のメッセージを確認できます。
~〜~
場所は変わって第3機動軍が所属する大型基地、”オペレーション・バビロン”のHQである指令室の中。多数のオペレータが現地のCPと情報をやり取りしている…それを後ろから見守る者、司令官のコバルトがいる。それとは隣に設けられた席に座っているのは、今回の作戦で派遣されてきたリバティニアの将校である。
コバルト「不安ですかな?」
リバティニアの将校は若干渋い顔をしている…無理もない、作戦は対アバドンプロトコルであるphase3に突入してしまった。最早激突は避けられない。
リバティニア将校「我々は貴国の誘いに乗り、はるばるやってきた。ここまできたら犠牲はやむを得ないと考えているが…果たしてこの戦いで何を得るのだろうか?もしかしたら我々は”パンドラの箱”を開けてしまったのではないだろうか…?」
”古代都市の技術の回収”これが2国の最大の目的である。現在、既に多くの国が存在を発表している”人外”、更にその数は指数的に増加していた…更にその中には、現実に多大な影響を与える”メアリー・スーの怪物”の発現も示唆されている。
ファントムは現状”人外”を保有していない、”人外”に対抗できるのはそれに準ずる存在だけなのだ。
コバルト「個の生物としては強大極まりない能力を持つ”アバドン”、既に古代から確立していた回路施工技術、そして別位相にある世界である”Nether”との接点がないにも関わらずネザーポータルが存在している。…確かに我々は”パンドラの箱”を開けようとしているのかもしれない…古代都市の技術が手に入れば…各国が保有する”人外”に対抗できる…。」
リバティニア将校「毒を制するのは毒のみ…という事か。我々は必死に目の前の餌に喰らいついている状態だ…果たしてそれが毒餌なのかは分からないが。」
コバルト「それがパンドラの箱かどうかは開けてみないと分かりません。危険かどうかも…それを確かめるのが我々の仕事です。このために準備をしてきました…一度負けたから、”負け犬”だからこそ対抗出来るのです。」
そういって二人は指令室から基地の外を見る。
既に基地内の敷地では大型のポータルが起動し、それを半円状に囲うように部隊が展開している。
リバティニア将校「彼らの戦いを支えるのが私達の役目だ。」
コバルト「そのようですね…」
二人は、ポータルを…その先にある戦場を見ている。
忘れてた()
内容は固まったので後は書くだけ
基地の大型ポータルを超えた先…見るも無残な姿になった”古代遺跡”では、人と人ならざる者の戦いの場が繰り広げられていた。
現在、ファントムが展開している車両数、歩兵数は共に一個大隊(1000人、45両)に匹敵するかしないかの量だ。
ポータルから近い順に砲兵部隊及び軽、主力戦車部隊がいる後衛部隊、装輪戦闘車や戦闘支援車がいる中衛部隊、歩兵戦車や兵員輸送車がいる前衛部隊の3つの部隊が展開している。
歩兵は3つの部隊に満遍なく別れており、前線への補充やバックアップといった形で分散している。
そしてその前線では…
6体の獣に吹きすさぶのは、弾丸のスコール。横殴りに叩きつける弾丸達は完全に奴らを地面に縫い付けている。
兵士1「リバティニアからの合図が出ました!!」
兵士2「ダイバー1!!ここからは”個人プレー”に切り替えるぞ!」
ダイバー1「了解!!ファントムはポイントを更新!!”檻”を一時的に解くぞ!!」
その号令と共に6体に降り注いでいた銃撃がピタリと止む。いきなり圧力が解けて自由になった”ウォーデン”達は呆然とするが…。その瞬間、”左右”から3体ずつを狙った散発的な銃撃が再開された。
しかし…前程の強さはない。銃撃されながらもある程度の自由を与えられた”ウォーデン”は、危害を与える者達に文字通りの鉄槌を下すべく咆哮をあげながら突撃を敢行するが…勇敢な行動はすぐさま激しさを増した銃撃の嵐によって阻害される。
3体ずつ引き離され、複数のキルポイントに誘導出来る場所まで連れてこられた”ウォーデン”はファントム部隊が作った”銃弾の檻”に再収監されてしまったのだ。
ダイバー2「ターゲットをリード。ダイバー1、これからどうする?」
ダイバー1「威力偵察を行う。主力戦車小隊に伝達、”N-09合金”を使った…120mmNZ徹甲弾を使用してくれと。」
ダイバー2「分かった、後衛部隊に伝えよう。」
指示が発令され、主力戦車部隊はその砲塔を旋回し砲口を…何も無い虚空に向けた。
兵士1「主力戦車部隊、指定ポイントに射線を向けました。いつでも誘導可能です。」
ダイバー1「了解した。檻を解くぞ…一体を射撃座標まで誘導する。」
3体の”ウォーデン”を囲んでいた”銃弾の檻”の一部が開き、一体が開放される。急に自由を与えられた1体の”ウォーデン”は困惑するが…突如飛来した歩兵戦車が搭載する30mmの機関砲によって殴りつけられる。
今まで食らったことのない威力に驚きながらも、大きな脅威を与える存在を排除するべく生存本能のままに活動を開始する。
兵士3「いいぞ…そのままこっちに来い!怪物め…!!」
怪物である“ウォーデン”とはいえ、所詮は生物。今までよりも強力な刺激を喰らえば反応しないわけがない、雄叫びをあげながら馬鹿正直に一直線に突き進み続ける…しかし、しばらく走った瞬間に何かに躓き大きな音を起てて盛大に転ぶ、それがファントム側が仕掛けた罠とも知らず。
兵士2「奴がコケた!動きを止めるぞ!」
地面に仕掛けたワイヤーに足を取られ、盛大にコケた”ウォーデン”に追い打ちとばかりに仕掛けられたIEDが起爆する。爆炎に身を包まれ、”ウォーデン”が苦痛の声を上げる。
大きな隙を晒した”ウォーデン”に横から忍び寄る歩兵達、彼らは足元にコロコロと円筒状の物を投げ入れる…それは閃光と大音量による無力化を行うスタングレネード。目がない”ウォーデン”に閃光はともかく、人間ですら難聴になる恐れのある160デジベル以上の音量を聴覚に頼る生物に放ったらどうなるか。
“…!?!?!?!?…!!!!????…!?”
声にならない音を発した後”ウォーデン”はグッタリとしてしまった。過敏ですらあった聴覚に過剰な音量を流した結果、許容量を超えてしまったと考えられる。なにはともあれ無力化に成功した。
そして”ウォーデン”が無力化された場所は…主力戦車部隊の射線上である。
戦車小隊長「無力化に感謝する!戦車小隊NZ徹甲弾発射!!」
最新式のmod.3モジュールに換装された1個小隊、計5両の”Type 2 Mk.3主力戦車”から放たれたのは、NZ徹甲弾である。
ネザライト(略称NZ)とは、N元素産物である古代の残骸から抽出した金属元素の”N-09”に金元素を合わせて生み出した合金である。
試作を繰り返した結果、モース硬度10以上の硬さを持ったネザライトは砲弾の弾芯としての価値を見出され、N元素兵器の1種であるNZ徹甲弾として生まれたのであった。
精製及び鋳造技術があれば量産はできるのだが、N-09を含有する物質である古代の残骸、通称”スクラップ”は埋蔵料が少ないため、原料のコストが高く一発一発が本来の10倍近い価格が掛かってしまう。なので今回は主力戦車1両につき2発ずつ…合計10発しか持ち込み出来なかった超貴重弾薬なのだ。
しかし威力はお墨付き、装甲角度によっては跳弾もあるが、生物のソフトスキンが相手だと…
そこに残ったのは上半身をごっそりと削り取られた”下半身だけのウォーデン”がそこに居たのだ。この結果に戦闘中にも関わらず兵士たちからは歓声が上がる。
兵士1「”アバドン”を一体撃破!次の対象に移ります!」
ダイバー3「NZ徹甲弾…不安定なN元素兵器の中では安定した代物だと聞いていたが…まさかここまでの威力があるとは…」
ダイバー1「喜ぶのは後にするぞ、まだ2体残っている。可能な限り素早く片付けてリバティニアの援護に向かうぞ。」
「「「了解!!!」」」
士気を上げたファントム軍はこのまま2体目撃破に向けて動くのであった。
「「「うわぁぁあああああ!!!」」」
古代都市通路、そこでは1台の爆走する兵員輸送車とそれを追いかける1体の”ウォーデン”。現在2体目の”アバドン”撃破作戦中である。
兵士1「おい!俺達の役割って”アバドン”を引きつけるんだよな!?これってただ襲われてるんじゃないのか!?」
兵士2「俺達だけであんな化け物どうこう出来るわけねーだろ!結果的に誘導できてるからいいじゃねえか!」
彼らが与えられた役割は装甲車を使った”アバドン”の誘導である。しかし、あまりにも待ちぼうけを喰らった”ウォーデン”は怒り心頭でおり、目の前の物を破壊するだけのマシーンと化している状態である。
兵士1「おい!距離詰められてきてるぞ!もっとスピード出ねえのか!?」
運転手「駄目だ!道が荒れててやがる!これ以上スピードを出したら横転しちまう!」
兵員輸送車も荒廃した古代都市のせいでスピードを出せずに、徐々にその距離を詰められて来ている。
兵士2「クソッ!近づいてきやがる!!」
兵士3「武器を出せ!少しでもいいから時間を稼ぐぞ!!」
彼らは兵員輸送車に搭載されている12.7mm機関銃や持参している小銃を後ろから迫りくる”ウォーデン”に向ける。
兵士1「撃て撃て!近づけさせるな!」
装甲車上部に取り付けられた12.7mm機関銃や、後部のドアを開けた兵士達が自動小銃を撃ちまくる。
しかしこの“ウォーデン”、20、30mm機関砲で負傷させないまでも、やっとダメージを与える程の硬さである。こんな豆鉄砲で止まるはずがない。現にやや遅くはなったが、ジリジリと距離を詰めてきている。
兵士3「ヤバいヤバいヤバい!まだなのか!?指定されたポイントは!!」
運転手「もう少し…あった!!飛ばすからどっかに掴まってろ!!」
前方に居る誘導ポイントで待機している兵士達の脇を掠め、まさかのドリフトをしながらダイナミック駐車を決める。ナイス駐車。
兵士1「良し!なんとか行けそうだな。ワイヤーを張ってくれ!」
その言葉を受け、誘導ポイントで待ち構えていた兵士達は足元にワイヤーを張って直ぐに退散する。
その数秒後に待ってましたと言わんばかりにその場所を目掛けて”ウォーデン”が突進してきた。そして結果は前回示した通り、足を取られて盛大にすっ転ぶ。
転んだ先は、地面に大きく書かれているバッテン印、ファントムお手製の罠である。『ズボッ』っという音と共に”ウォーデン”は一気に下まで転落する。その瞬間、穴で火柱が噴き上がった。
穴の下に設置されていたのは対戦車用の地雷、前回のIEDと同じく”本命”の攻撃前に行う所詮”繋ぎ”役の攻撃であるが…”ウォーデン”はあまりの衝撃に数m浮き上がるほどの威力であった。
しかし、穴の高さは約10m、工作兵が汗水垂らして必死に掘った結果である。推定体高が3〜5mの”ウォーデン”では数m浮き上がったとしても穴からは出られない。一瞬の浮遊の後はアリ地獄生活に逆戻りだ。
ダイバー1「ポイントにターゲットを誘導成功!! 砲兵部隊は第3波投射用意!!」
オペレーター「了解。砲兵部隊は宜しくお願いします。」
砲兵部隊隊長「おう任せな!お前ら指定のポイントに発射だ!!調理開始と行こうぜ!!」
砲兵1「発射準備いつでも行けます!」
砲兵部隊隊長「おう!奴らをこんがり調理しようじゃねえか!撃てぇ!!」
陣地後方の砲兵部隊が3度目の火力投射を行う、爆音を奏でた砲撃が周りの空気を震わせ、大きな衝撃を与える。
誘導員「砲撃がこっちに来るぞ!全員出来る限り距離を取れ!」
その声を聞き、先程まで装甲車に乗っていた者達、この場所で誘導をしていた者達が一斉に蜘蛛の子を散らすようにその場から退去を始める。
兵士1「ここまでくればいいだろう…来るぞ!その場で伏せて耳を塞いでろ!」
距離は取った、後は砲撃の衝撃から身を守るだけである。
観測兵1「砲兵部隊、砲撃しました!…5、4、3…弾着…今!!」
放物線を描いた投射物は、身動きが取れないながらも穴から出ようと藻掻いていた”ウォーデン”に真上から直撃し…爆発。綺麗な爆炎を咲かせる。
落とし穴という閉鎖的空間で喰らう衝撃は並大抵の威力ではない、爆発による衝撃が逃げる場所が穴の出口…上しかないからだ。その上から降ってきた弾頭が炸裂した際に圧力が一気に高まる…圧力鍋のような状態に近いのだろうか。
逃げられない“ウォーデン”は、文字通り上から降り掛かり穴の中で高まった衝撃を身を持って体験している。誘導弾や榴弾の炸薬によって爆炎の熱で身は焦げ、爆発の衝撃で体内の骨格や内臓は押され、潰れてグチャグチャになる。
穴の中にいた怪物はある程度原型は留めているものの、表皮が焼け爛れて体のあちこちから臓器、が飛び出た物言わぬ骸と化していた。
2度目の成果にファントム陣営から歓声が挙がる。
〜司令室〜
オペレーター1「2体目の”アバドン”の撃破を確認しました!」
オペレーター2「これで後1体を残すのみ…被害もほぼ微小…このまま行けば…!!」
前回とは売って代わり、2体の”ウォーデン”を被害無く葬った事実に司令部は安堵する。このまま行けば…最良の結果を持ち帰ることが出来る…その希望が見え始めた…。
〜〜〜
戦場では最後の”ウォーデン”が未だに銃弾の嵐の真っ只中にいる。頭部に付いている口からは唸り声が鳴るのと同時に、胸部にある大きな口からは青白い光が漏れ出していた。
決して慢心をしていた訳でも油断していたわけでも無い。しかし、今追い詰めていた獣は我々の知っているような只の獣ではなかった…そのことをファントムはその身を持って味わうことになる。
次回:その獣、手負いに付き。
手負いの獣は何よりも恐ろしい。
ボコボコにしてやるから首洗って待ってろファントム軍(鬼畜)
想像したら凄いグロかったです(?)
やはり茶番は文章描写が大事だと思っているので...しっかり描いてます。
次回からグロ描写及び鬱展開に移行します。
苦手な方注意です。