基地の大型ポータルを超えた先…見るも無残な姿になった”古代遺跡”では、人と人ならざる者の戦いの場が繰り広げられていた。
現在、ファントムが展開している車両数、歩兵数は共に一個大隊(1000人、45両)に匹敵するかしないかの量だ。
ポータルから近い順に砲兵部隊及び軽、主力戦車部隊がいる後衛部隊、装輪戦闘車や戦闘支援車がいる中衛部隊、歩兵戦車や兵員輸送車がいる前衛部隊の3つの部隊が展開している。
歩兵は3つの部隊に満遍なく別れており、前線への補充やバックアップといった形で分散している。
そしてその前線では…
6体の獣に吹きすさぶのは、弾丸のスコール。横殴りに叩きつける弾丸達は完全に奴らを地面に縫い付けている。
兵士1「リバティニアからの合図が出ました!!」
兵士2「ダイバー1!!ここからは”個人プレー”に切り替えるぞ!」
ダイバー1「了解!!ファントムはポイントを更新!!”檻”を一時的に解くぞ!!」
その号令と共に6体に降り注いでいた銃撃がピタリと止む。いきなり圧力が解けて自由になった”ウォーデン”達は呆然とするが…。その瞬間、”左右”から3体ずつを狙った散発的な銃撃が再開された。
しかし…前程の強さはない。銃撃されながらもある程度の自由を与えられた”ウォーデン”は、危害を与える者達に文字通りの鉄槌を下すべく咆哮をあげながら突撃を敢行するが…勇敢な行動はすぐさま激しさを増した銃撃の嵐によって阻害される。
3体ずつ引き離され、複数のキルポイントに誘導出来る場所まで連れてこられた”ウォーデン”はファントム部隊が作った”銃弾の檻”に再収監されてしまったのだ。
ダイバー2「ターゲットをリード。ダイバー1、これからどうする?」
ダイバー1「威力偵察を行う。主力戦車小隊に伝達、”N-09合金”を使った…120mmNZ徹甲弾を使用してくれと。」
ダイバー2「分かった、後衛部隊に伝えよう。」
指示が発令され、主力戦車部隊はその砲塔を旋回し砲口を…何も無い虚空に向けた。
兵士1「主力戦車部隊、指定ポイントに射線を向けました。いつでも誘導可能です。」
ダイバー1「了解した。檻を解くぞ…一体を射撃座標まで誘導する。」
3体の”ウォーデン”を囲んでいた”銃弾の檻”の一部が開き、一体が開放される。急に自由を与えられた1体の”ウォーデン”は困惑するが…突如飛来した歩兵戦車が搭載する30mmの機関砲によって殴りつけられる。
今まで食らったことのない威力に驚きながらも、大きな脅威を与える存在を排除するべく生存本能のままに活動を開始する。
兵士3「いいぞ…そのままこっちに来い!怪物め…!!」
怪物である“ウォーデン”とはいえ、所詮は生物。今までよりも強力な刺激を喰らえば反応しないわけがない、雄叫びをあげながら馬鹿正直に一直線に突き進み続ける…しかし、しばらく走った瞬間に何かに躓き大きな音を起てて盛大に転ぶ、それがファントム側が仕掛けた罠とも知らず。
兵士2「奴がコケた!動きを止めるぞ!」
地面に仕掛けたワイヤーに足を取られ、盛大にコケた”ウォーデン”に追い打ちとばかりに仕掛けられたIEDが起爆する。爆炎に身を包まれ、”ウォーデン”が苦痛の声を上げる。
大きな隙を晒した”ウォーデン”に横から忍び寄る歩兵達、彼らは足元にコロコロと円筒状の物を投げ入れる…それは閃光と大音量による無力化を行うスタングレネード。目がない”ウォーデン”に閃光はともかく、人間ですら難聴になる恐れのある160デジベル以上の音量を聴覚に頼る生物に放ったらどうなるか。
“…!?!?!?!?…!!!!????…!?”
声にならない音を発した後”ウォーデン”はグッタリとしてしまった。過敏ですらあった聴覚に過剰な音量を流した結果、許容量を超えてしまったと考えられる。なにはともあれ無力化に成功した。
そして”ウォーデン”が無力化された場所は…主力戦車部隊の射線上である。
戦車小隊長「無力化に感謝する!戦車小隊NZ徹甲弾発射!!」
最新式のmod.3モジュールに換装された1個小隊、計5両の”Type 2 Mk.3主力戦車”から放たれたのは、NZ徹甲弾である。
ネザライト(略称NZ)とは、N元素産物である古代の残骸から抽出した金属元素の”N-09”に金元素を合わせて生み出した合金である。
試作を繰り返した結果、モース硬度10以上の硬さを持ったネザライトは砲弾の弾芯としての価値を見出され、N元素兵器の1種であるNZ徹甲弾として生まれたのであった。
精製及び鋳造技術があれば量産はできるのだが、N-09を含有する物質である古代の残骸、通称”スクラップ”は埋蔵料が少ないため、原料のコストが高く一発一発が本来の10倍近い価格が掛かってしまう。なので今回は主力戦車1両につき2発ずつ…合計10発しか持ち込み出来なかった超貴重弾薬なのだ。
しかし威力はお墨付き、装甲角度によっては跳弾もあるが、生物のソフトスキンが相手だと…
そこに残ったのは上半身をごっそりと削り取られた”下半身だけのウォーデン”がそこに居たのだ。この結果に戦闘中にも関わらず兵士たちからは歓声が上がる。
兵士1「”アバドン”を一体撃破!次の対象に移ります!」
ダイバー3「NZ徹甲弾…不安定なN元素兵器の中では安定した代物だと聞いていたが…まさかここまでの威力があるとは…」
ダイバー1「喜ぶのは後にするぞ、まだ2体残っている。可能な限り素早く片付けてリバティニアの援護に向かうぞ。」
「「「了解!!!」」」
士気を上げたファントム軍はこのまま2体目撃破に向けて動くのであった。