kagemiya@なりきり

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剣道少女といかがわしい下着 2022/06/06 (月) 02:56:12

それはいつものように、教会で洗濯物を畳んでいるときの事だった。

クエロさんと共に生活するにあたって、洗濯や掃除などの家事は私が担当している。
非常時とはいえ曲がりなりにも住まわせてもらっている身だ、出来る限りのことはしておきたい。
その上、彼女の自室を目にしてしまった以上は“やらねばならない”のだ。

……修道服に自分の制服、クエロさんが気まぐれに着たメイド服。
初めて目にした時は動揺で直視できなかった下着の数々も、部屋での様子を見てからは理性で抑えられるようになった。
のだが。その下着の中に紛れ込んでいた一枚の“それ”を手にした瞬間、思考回路が真っ白になった。
布面積が控えめなランジェリー。妖しい黒のシルエットは比較的見慣れてきたが……そのシルエットには、妙な位置に“切れ込み”がある。

「…………え、なんでこんな位置に……」

初めは破れてしまっているのかとも疑った。
だがその裂け目に沿うように刺繍が施されており、三角形の丁度真ん中から頂点に達する切り口は意図的なものだと推測できた。
なら、何の理由で。その裂け目の位置に何が来るのかと、順序立てて推理を重ねた瞬間……その“意味”を理解仕掛け、再び脳裏が焼け付く。

でも理解したくない。なんで?なんで?意図がわからない。
だってこんなの、下着の“てい”を成してない。下着というものの目的が失われている。
ならばこの下着にはまた別の目的があるのだろう。ここが“開いて”いて、便利なことと言えば………………。
思考が止まる。その思考の先に待つ“想像”が、自分の良心を傷つけるものだという確信があったから。
つまりは。この下着を着用している姿を…………乱れに乱れた頭の中を正すように、私はキッチンへ走り冷水で顔を洗い流した。

考えるな。見なかったことにしよう。何を言われても、知らなかったと言っておこう。
無心で“それ”を畳む。この記憶は心の奥底の、もう思い返さないための記憶領域にしまっておこう。
淡々と手を動かして畳み終え、また別の下着で隠すようにし……これで一安心と息を吐いて残りの洗濯物を確認すると。

「─────っ」

なんで上のほうもあるの。

割れ目は二つ。その割れ目に位置する部位がなんなのかを、今の私は瞬時に理解できてしまった。
数秒前にしまっておいたはずの記憶領域から、“興味”と名を変えたそれが溢れ出す。

………………手にし、広げたそのランジェリーを自分の胸元に合わせるように持ってくる。
うん。ソウデスネ。私の想像と合致する位置にスリットがあって、この下着が如何に如何わしいものなのか確信できた。
服の上から合わせただけでも、心臓が口から飛び出てしまいそうなほどに心が乱れる。これを……いつ着けてたんだ、あの人!
ピンク色に乱れた思考が段々と「どうしてこんなものがあるんですか」という叱責に変わっていくのを感じる。
けど……今の私が怒っても何の説得力もないだろう。それにこの顔の赤さはきっと、明日になるまでは引かなそうだし。

そうして結局私は“何も見なかったこと”にして洗濯物を畳み終えた。
とはいえ少しばかりは抗議したい。直接言葉にはせず、しかして「知っているよ」と知らせておきたい。
そんな思いの結果として、私は丁寧に畳んだその下着一色を衣装ケースの一番上に仕舞っておくことにする。

……そういえば同級生の男子が、母親に部屋を掃除された時「いかがわしい本」が机の上に置かれていたと嘆いていたけど。
そのお母さんの気持が少しだけ理解出来た気がした。そんな、少しだけ“大人になる”事の意味を知った一日であった。

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