「ふふっ、こんにちは。囚人番号9425番さん」
その"'部屋"には物々しい監獄には似つかわしくない、長い金髪をふわりと靡かせ黒と黄色のドレスを着こなした豊満な女性が待っていた。
「怖がらないでいいのよ?さぁ、おいで...抱きしめてあげるから...」
此方に手を広げ、優しく微笑みかける。
動くたびに揺れる、はち切れそうな乳房に目を奪われながらも近づくと、その柔らかな身体に抱擁され、温かな肉に包み込まれる。
「あらあら...甘えん坊さんですね♪ここでの生活は辛くて、苦しかったでしょう?でも、もうなにも悩まなくていいの。好きなだけわたしに甘えてくださいね?」
ぎゅっ、ぎゅっ。強く抱きしめられ、顔が双丘に深く沈み、甘く蕩けるような香りと、熱く湿った感触に思考能力が奪われていく。
天にも昇るような心地よさに溺れてしまい、微かに漂うオゾン臭にも、気付かない。
「オムツもちゃんと履けて偉いですね...♪よしよし、大丈夫。大丈夫よ...きっと良いところに行けるから...」
甘く囁かれながら頭を撫でられる度に信じられないような快感が全身を駆け巡り、脳髄を痺れさせる。
もはや手足に力は入らず、赤子のように母の胸に身を委ねることしかできない状況。
この柔らかな乳房に永遠に溺れていたい。
もっと甘やかされていたい。
そう思った矢先、耳障りなブザー音が"部屋"を満たす。
「時間です。さようなら囚人番号9425番さん」
瞬間、頭に湿り気を感じたかと思うや否や、押し潰されそうなほどに強い力で抱き締められる。
そして、瞬く間に超高圧電流が皮膚の初期抵抗を破壊し、血液と臓器が沸騰する。
血管は弾け、髪の毛が焼ける匂いが辺りに立ち込める。
現在稼働中のあらゆる電気椅子の威力をも上回る、古より続く"裁きの雷"の系譜を汲む英霊による2000ボルトオーバーの絶死の抱擁...母性持つ処刑器具の
その溢れんばかりの
罪人の灼熱に煮えたぎる眼球が最期に捉えた光景は、焼き焦げた骸を愛おしげに撫でる慈しみに満ちた母の微笑みだった。