『実際どうなんだ?』
クッキー缶に仕舞われたままのせいでやや声が反響する。机の上のランサーはそう問いかけた。
行儀悪く足を組んで紅茶を口にしていた楡が眉を上げる。ハルと六花はたまたま話に上がった枢木邸の書庫の見学に行っていた。
「どうって何がよ」
『見たところここに張られた結界はそこそこ古い。200年は経ってないが100年は経っている。
質も悪くない。特に20年ほど前に張られたものは俺の目から見てもなかなか見どころがあるくらいだ。俺の目からだぞ?』
念を押すランサーに楡は溜息を付いた。…確かに、ルーン魔術の太祖が言うならけちはつけられない。
「20年前か。お父様ね。そうでしょう。あの人はうちの家系の傑物だったから」
『お前も俺から見れば素質に比べて実力不相応に見えるがな』
「仕方ないじゃない」
紅茶の液面を見つめる楡の瞳が遠く霞んでいた。
「そのお父様が結論を出してしまったんだもの。『この家の魔術師には未来がない』って」
少しの間沈黙があった。やがてランサーが言った。
『お前たち現代の魔術師は在り方の定義を複雑にしすぎたな』
「あなたにそう言われたら何も返す言葉がないわね。私の皮肉も品切れよ」
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