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サーヴァントバトルコロッセオ

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AIのべりすとを使ってサーヴァントまたはマスターを戦わせるスレ。

AI企画
作成: 2022/02/04 (金) 21:33:25
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1

【第一回】
サーヴァントバトルコロッセオ!それは英霊たちの戦いの場である!!
大勢の観客たちがそれぞれが推す英霊を応援し盛り上がっている。英霊たちの勝敗には多額の賭け金が飛び交いこの戦いを市民たちにとってよりスリリングなものとしている。

さて、もうすぐ最初の試合が始まることとなる。
二人の英霊が闘技場に姿を表した。
片方は漆黒の鎧に身を包んだ騎士である黒の騎士ペルカード。ランサークラスのサーヴァントだ。
もう片方は一転して綺羅びやかな宝石や細やかな装飾が施された黄金の鎧に身を包むアーチャークラスのサーヴァント、リディア王クロイソスだ。
果たして対象的な二人がどう戦うのだろうか。観客たちが見守る中、試合が始まった。

2

先に動いたのは黒の騎士ペルカードの方だ。彼はその手に持つ漆黒の槍を構えながら相手に向かって駆け出す。
対するリディア王は右手を掲げ、そこから幾つもの金色のコインを空中に放り投げる。コインはくるくると回転しながら宙に浮かび上がる。次の瞬間、コインが光を放ち始める。眩く輝く金貨たちは一斉に空へと舞い上がりペルカードの頭上から降り注ぐ。
だがそんな攻撃もものともせず、黒の騎士は突き進む。
一方のリディア王の方はというと左手から今度は大量のコインを取り出しそれを自分の周囲にばら撒いた。
すると地面に落ちたコイン達がまた再び輝き始め、そこから矢のような光線を放つ。
上空からの無数の光線の雨に晒されながらも、黒の騎士はその足を止めない。
そのまま一気に距離を詰めると、手にした槍を突き出した。
対するリディア王もその身に纏う鎧の一部を変化させた盾を構える。
ガキンッ! 両者のぶつかり合う金属音と共に、一瞬の拮抗が生まれる。
しかしすぐに両者は互いに距離を取る。
続いて仕掛けたのは黒の騎士ペルカードだ。彼は両手に構えた槍を振り回し、まるで舞うように連撃を叩き込む。
それに対してリディア王はその場を動かず、ただひたすらその攻撃を受け止めるのみ。
やがて痺れを切らしたのはペルカードの方であった。
「ふんっ!」
彼は大きく飛び退き、手にしていた槍を投げ放つ。
彼の手を離れたそれは一直線に飛び、相手の胸元を狙う。
それに対しリディア王が取った手段はシンプル極まりないものであった。なんと自らの剣を抜き放ったのだ。
リディア王の剣は飛来してきた槍を打ち払い、そのまま振りかぶって投げ返す。
予想外の反撃を受けて体勢が崩れていたペルカードは避けきれず、まともに食らうこととなった。
「ぐあっ!?」
思わぬ一撃に苦悶の声を上げる彼だが、そんなことはお構いなしにリディア王は追撃を仕掛ける。
彼は右手に持った剣を振るいながらも、同時に左手に新たな黄金の剣を生み出しそれを投げつけてくる。
迫り来る二刀の刃に対し、ペルカードはとっさに両腕で防御の体制を取った。
しかしその程度のことで防げるような生易しい攻撃ではない。
「ぬあああ!!」
彼は全身に力を込め、踏ん張ることでなんとか攻撃を耐えきった。一方の攻撃を防いだところで、今度はもう片割れの刃が迫っている。
ペルカードは再び腕を交差させて受け止めようとするが、そこに容赦のない連続攻撃が叩き込まれる。
「ぐうぅ……!」
衝撃に耐えかねて思わず膝をつく。
一方でリディア王の方は全くと言っていいほどダメージを受けていないようだ。
先ほどのコインの一斉射撃といい、今の連続攻撃といい、明らかにこちらの方が分が悪い。
この勝負、このままでは負けてしまうだろう。その時、会場の隅で観戦している一人の男が立ち上がった。

3

「……これは、いけませんね。あの二人、本気で殺し合いを始めていますよ」
そう言って眼鏡の位置を直しながら呟いたのは、審判役のサーヴァントだった。
その言葉に周りの者達はどよめく。
「なんですと?まさか、そのようなことが……」
「本当ですとも。私の目は誤魔化せません。あれは間違いなく、相手を殺めるつもりで戦っている。それもどちらかが死ぬまで終わらないでしょう。私にはわかります。あの戦いは、そういう類のものだ。
まあもっとも、それを止められるのは同じ"主催者側"であるマスターだけなのですが……。……おっと失礼。どうやら向こうも決着がついたようですね。勝者は……クロイソス殿だ」
サーヴァントの言葉通り、いつの間にかクロイソスが地面に倒れ伏すペルカードを上から見下ろしていた。
そして倒れた彼に歩み寄りながら声をかける。「降参するなら、命までは取らないが?」
ペルカードはその言葉を鼻で笑い飛ばした。
「フッ、ハハハハハハハ!バカを言うな!ここまで来て引き下がれるものか!たとえここで朽ち果てようと、俺は最後まで戦い抜くぞ!それが騎士というものよ! さぁこいクロイソス!俺はまだ戦えるぞ!」
彼は立ち上がり、再び構えを取る。
その姿からは、もはや敗北の恐怖など微塵も感じられない。
「ふむ、ならば仕方がない。お前に敬意を表して、我が全力を持って相手しよう!」
対するリディア王もまた、自らの最強の技をもって応戦せんとする。
二人の視線がぶつかり合った次の瞬間、両者は同時に動いた。
「行くぞ、『金の魔貨・銀の聖貨(コイン・コイーン)』!!」クロイソスの手から大量の金貨と銀貨が発射される。
だがそれはただの貨幣ではなく、魔力によって生み出されたものである。クロイソスはそれを空中に投げ上げ、そして指を鳴らした。
するとコインは重力に従って落下することなく、その場で静止した。
まるで、一枚ずつが意志を持っているかのように、自ら宙に浮かび続けているのだ。
やがて全てのコインは、一斉にクロイソスに向かって飛来し始めた。
それに対してクロイソスは黄金の鎧を身に纏い、さらに手に持っていた短剣を頭上に掲げる。
「うおおおおおお!!!」
雄叫びと共に、クロイソスは短剣を振り下ろす。
その動作に連動するように、空中に浮いていたコイン達が一斉に動き出した。
そしてクロイソスの周りをぐるりと一周してから、彼の手元へと戻っていく。
最後に彼がもう一度短剣を振ると、先程までコインだったものは一瞬で金塊に変わっていた。
「『金の魔貨・銀の聖貨(コイン・コイーン)』はその名の通り、金と銀を生み出す宝具。
つまりクロイソスは、自分の望むものを自由に作り出すことができるのです。」
「何という宝具だ……」
サーヴァントの解説を聞いている間にも、試合は続いていた。
クロイソスは今度は両手を掲げ、そこにそれぞれ一本ずつの金の槍を作り出すと、一気に投擲してきた。
二本の槍は回転しながら飛び、ペルカードの身体を貫かんとする。しかしそれを、ペルカードは難なく避けて見せた。
「ふんっ、狙いが見え見えなんだよバーカ!」
そのままクロイソスに接近し、一撃を入れようとする。
だがクロイソスは余裕そうに笑うと、右手で拳を作り、振りかぶった。
次の瞬間、ペルカードに強烈な衝撃が走る。
なんと、クロイソスは右ストレートを繰り出してきたのである。
まともに食らってしまったペルカードはよろめきながらも、なんとか体勢を立て直す。
「なんだと!?︎くそ、小賢しい真似を……!」
「どうだ?これが俺の実力だ!さぁ、次は何を出す?」
クロイソスの言葉を聞きながら、ペルカードは相手の隙を探る。
あの宝具は、一度使うたびに莫大な魔力を消費するようだ。
それ故に、連発はできないはず。ならば、そこを狙うしかない。
(ならばまず、手数を減らす!)「喰らえ!」
再び距離を詰めて肉薄する。そして、渾身の力を込めて蹴りを放った。
しかしその攻撃も、クロイソスは腕をクロスさせて防御する。
ペルカードはそのまま回し蹴りの要領で足を横に振る。

5

「甘いわっ!」
だがそれも、クロイソスには簡単に避けられてしまった。
逆に彼はペルカードの背後に回り込み、槍を突き刺そうとする。
「……ッ!」とっさに体を捻って避けるが、肩口を少し掠めてしまう。
血が滲み出るが、気にしている暇はない。
すぐに振り返り、追撃をかける。
クロイソスは今度は左手からコインを生み出し、投げつけてくる。
ペルカードは身を低くして走り抜け、クロイソスの懐に飛び込んだ。
そのまま腹部に向けて、掌底を放つ。
「ぬぐぅ!!」
流石のクロイソスもこれを防ぎきれず、後ろに仰け反ってしまう。
その隙を逃さず、ペルカードは足払いを仕掛けた。
だがクロイソスはすぐに立ち上がると、大きく跳び退いて回避した。
そして空中に浮かんだまま、また新たな宝具を作り出し始める。
「まだまだ行くぞ!」
「させるか!」
再び接近しようとするペルカードを牽制するように、クロイソスは次々とコインを投げていく。
ペルカードはそれらを全て弾き飛ばし、一気に距離を詰めた。「無駄ァ!!」
勢いのままに拳を振り下ろす。
クロイソスはそれを槍の柄で受け止めると、そのまま押し返そうと力を込める。
しかし、そこで異変が起きた。
突然ペルカードの足元が光を放ち始めたのだ。
「なにっ!?︎」
「おぉっ!?︎なんだこりゃあ!?︎」
同時にクロイソスが動揺の声を上げる。
二人は驚きつつも離れようとしたが、遅かった。
次の瞬間、二人の身体は眩い光の渦の中に飲み込まれていた。
二人が立っていた場所を中心に、まるで竜巻のような風が吹き荒れる。
それは周りの木々をなぎ倒し、地面の土を巻き上げていった。
やがて光が収まり、視界が戻る。
そこには、先ほどまでの光景は無くなっていた。
あるのは、クレーターのようにえぐれた大地のみ。
周りにあった木や草は全て消え失せており、代わりに黒焦げになった岩や砂が広がっている。
その中心で、二人の戦いはまだ続いていた。
「おおおおおおおおおおおお!!!!」
「うおらああああああ!!!」
「おおおおおおっっっっっっ!!!!!!!!」
ペルカードは全力の一撃を繰り出す。
対するクロイソスもまた、全身全霊の力を込めた突きを繰り出してきた。
互いの力が拮抗し、一瞬だけ動きが止まる。そして、爆発が起こったように弾けた。
二人の鎧が砕け散り、辺りに散らばる。クロイソスの鎧は、彼の頭部と左腕の籠手、そして腰の部分しか残っていなかった。
一方のペルカードも鎧の大半を失っており、残った部分もボロ布と化している。
両者ともに満身創痍であり、立っているだけでもやっとの状態だ。
だが、それでも戦いは終わらない。

6

「まだだ……まだ……!」
「………………」
「負けられないんだよ……俺は……!」
「………………」
「だから………………死ね。」
クロイソスは右手に持っていた槍を放り捨て、空いた手でコインを生成し始める。
そしてそれを、渾身の力を込めて投擲してきた。
「ッ!くっ……!」
「ぬおっ……!」
ペルカードは避けようとするが、間に合わない。
彼は咄嵯に右腕を前に出し、防御の姿勢を取った。
しかし、衝撃は来なかった。
ペルカードが顔を上げて見ると、クロイソスの姿が無い。
慌てて周囲を見回すと、上空高くからこちらを見下ろすクロイソスを発見した。
どうやら、ペルカードの頭上を飛び越え、背後を取っていたようだ。
「終わりだ!!」
クロイソスは左手に持った剣を突き出す。「……!」
ペルカードは振り向きざまに槍を振るおうとする。しかしその前に、クロイソスの放った刃先がペルカードの心臓を貫いた。
「……!」
ペルカードは目を大きく見開く。
それと同時に、胸元に強烈な痛みを感じた。
しかし、それも束の間。
意識が薄れていき、何も考えられなくなる。
目の前が暗くなっていき、全てが闇に包まれていく。
最後に聞こえたのは、クロイソスの呟きだった。
「さようなら、我が宿敵よ……」
(………………そうか……そういう事だったのか……)
その言葉を最後に、ペルカードの思考は途絶えた。
————
「……」
「……」
静寂がその場を支配する。
ペルカードの身体は崩れ落ち、地面に倒れ伏した。
クロイソスはその様子を、じっと見つめている。
やがて、彼が口を開いた。
「勝ったぞ、イアソン。お前との約束通り、仇は取ったぞ。」
クロイソスは空に向かって語りかける。

7

【第二回】
サーヴァントバトルコロッセオ!それは英霊たちの戦いの場である!!
この闘技場では英霊たちが日夜戦いを繰り広げている。どの試合も相手が消滅するまで戦い合うことだろう。
その決死の戦いを見て観客たちは盛り上がるのだ。

さて、どうやら次の試合が始まるようだ。
出てきたのは筋骨隆々のバーサーカー。対するのはエクストラクラスであるブラックスミス。
彼もなかなかの身長だがバーサーカーと比べては子供も同然だ。
観客たちもこれはどう見てもバーサーカーが勝つと思っているようでブラックスミスへの声援は少ない。
そして試合のゴングが鳴った。

8

まず仕掛けたのはバーサーカー、手近にあった鉄柱を持ち上げるとそのまま振り下ろす。
対してブラックスミスはそれを難なく避ける。
さらにバーサーカーの攻撃が続く、今度は壁を破壊して瓦礫を飛ばしてきた。
これには流石のブラックスミスも避けきれずいくつか食らう。しかし、致命傷には至らない。
次にブラックスミスは何かを取り出した。それは一冊の古びた本。表紙の文字を見る限り魔術書の類だろうか。
それを開き、呪文のようなものを唱え始めた。すると、黒い炎のような物が吹き出し、バーサーカーに襲いかかる。
「おおっと! ここでブラックスミス選手の攻撃が決まったァ!」
確かに決まったように見えたのだが、当のバーサーカーは全く効いていない様子。
逆にバーサーカーの方からも反撃が来る。巨大な拳が繰り出され、それをまともに受けたブラックスミスは大きく飛ばされ、地面に叩きつけられる。「ぐっ……!?」
かなりのダメージを負ったのか、ブラックスミスはそのまま動かなくなる。
どうやら気絶してしまったようだ。
「ああっ、これはまずいぞ! バーサーカーの勝利かと思われたその時、なんとブラックスミスが意識を取り戻したああ!!」
そしてそのまま立ち上がり、再び戦闘態勢に入る。
「まだやる気なのか、あいつ……」
「そのようですね」
しかし、そんな状況でも、ブラックスミスは戦い続ける。今度は剣を構え、果敢に攻めていく。
対するバーサーカーも応戦し、両者の攻防が続く。
そして、一瞬の隙を突いて、ブラックスミスの攻撃が決まる。
それは、今までで一番大きいダメージを与えた一撃であった。
「おおっと、ここでついにブラックスミスの攻撃が決まったああ!」
「すげぇ、やるじゃねぇかアイツ!!」
「いけえ、ぶっ殺せ!!」
「あのバーサーカーに勝てるかも!!」
「頑張ってください!!」
観客たちからの声が飛ぶ。
だが、それでもバーサーカーはまだ倒れない。
バーサーカーが手に持っていた武器を構える。それは大ぶりの剣だった。
「お、おいあれってまさか……」
「そう、彼が持っているのは不毀の極刃。その名の通りの宝具です!!」
「不毀の極刃、だと?」
ブラックスミスは、それが何を意味するか理解しているらしく、少し焦っているようにも見える。
「なぁ、アレやばくね?」
「だよなぁ……。あんなの食らったら死ぬんじゃねぇの?」
「だな……」
「いいから黙って見てろよ。面白いからよぉ!!」
観客たちも不安を感じているらしい。

10

そんな中で、遂に勝負が決まろうとしていた。バーサーカーが走り出す。それに反応して、ブラックスミスは迎え撃つべく構える。
そして次の瞬間、両者がぶつかり合った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「きゃあああああああ!?」
「うぎゃああああああ!?」
その衝撃は凄まじいものだった。まるで地震でも起こったかのように地面が大きく揺れたのだ。
ブラックスミスも吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
しかし、バーサーカーの方も、ダメージが大きかったのか、膝をついてしまう。
ブラックスミスは、よろめきながらも立ち上がり、剣を構え直す。だが、もう限界なのか肩が激しく上下に動いている。
「ああっ、これはまずいか……?」
「どうやら決着がついたようですね……」
「そんな……!」
「そんなことってあるんですかっ!」
観客たちは、この結末を受け入れられないようだ。
その時、ブラックスミスが動いた。彼は懐から何かを取り出し、それを天に掲げると、突然光り出した。
それは、とても眩しく、目を開けていられなかった。
光が収まり、目を開けると、そこには、先程まで戦っていたはずの二人の姿は無く、代わりに、二人の男が立っていた。
一人は、全身を黒の衣装に身を包んだ、長身の男。
もう一人は、スーツを着た、金髪の男性。
二人は、互いに睨み合っている。
「な、なんだこれ?」
「え、どういうことだ?」「も、もしかして、今、あの二人が、闘っているんじゃないでしょうか?」
「そ、そういえば、なんか、声が聞こえるような……」
「お、おい、あれって……」
観客たちがざわめく。
そして、ブラックスミスは、スーツ姿のバーサーカーに向かって、宝具である『W.・F.・D(ワールドフェイクデイドリーマー)』 を放つ。
「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「きゃー!!」
「な、何だ!?」
「一体、なにが起こってんだよ!!」
「どっちが勝ったんだ!!」
観客が混乱する中、突如、会場が揺れ始めた。
すると、観客席の壁の一部が開き、そこから、巨大な恐竜が現れた。
「ぎゃあああ!!」
「に、逃げろ!!」
「た、助けてくれぇ!!」
「いやぁぁぁ!!」
「ま、待て!! 俺を置いていくな!!」
「ひぃいい!!」
「くっ……! こうなったら、やるしかないか!」
(こいつらは、ただの人間じゃない)
「はああっ!!」
ブラックスミスが叫ぶと、ブラックスミスの周囲に、恐竜や怪獣などの模型が現れる。
「さ、再現完了! 行け!!」

11

ブラックスミスが指示を出すと、恐竜達は一斉にバーサーカーへと襲いかかる。しかし、恐竜達の攻撃は全てかわされてしまい、逆に反撃されてしまう。
「うぐぅ……」
「ブラックスミスさん!!」
「そんな……」
「うおおおっ!!」
バーサーカーは恐竜達に気を取られている隙にブラックスミスに近づき、彼の腹に拳を叩き込む。「がふッ!?」
「ブラックスミス!!」
「ブラックスミス!!」
「ブラックスミス!!」
「ブラックスミス!!」
ブラックスミスは吹っ飛ばされ、壁に激突し、そのまま気絶してしまった。
そして、バーサーカーはブラックスミスの方を向いた。
ブラックスミスは、スーツのポケットから、小さな瓶を取り出し、その蓋を開ける。
すると、中から、白い煙のようなものが出てくる。「な、なんですか? あれ……」
「さ、さあ……?」
「む? なにか、様子が変だぞ?」
「た、確かに」
「どうしたんでしょうか?」
「……?」
観客が不思議に思っていると、突然、黒い霧のような物がブラックスミスを包み込み始める。
「なんだこれは!? き、消えていく!? どういうことだ!!」
「うおっ!!」
「な、なんじゃありゃ!!」
「お、おい、まさか、あいつ消えるのか!?」
「おい、嘘だろう? まだ決着ついてないじゃないかよぉ!!」
観客が騒いでいると、ブラックスミスの姿が変わっていき、やがて完全に消えた。
「ど、どこに行ったんだ?」
「も、もう終わりなのか……?」
「………………?」
「ああ……なんて素晴らしい戦いだったのだ……」
「え……」
「な、何言ってるんですか……?」
「すげぇ……あんな化け物相手に一歩も引かずに戦ってたぜ……」
「ブラックスミスさん、凄かったなぁ……」観客達が感動していると、「いいや、まだまだだね」と誰かが言った。
声がした方を見ると、そこにはブラックスミスが立っていた。「な、なにぃ!?」
「ば、馬鹿な!!」
「い、一体、どうやって復活したんだ!!」
「なにを言っている。私は最初からここにいるが?」
「なにを言っているのはこっちのセリフだ!!」
「そうですよ!!」
「そうだ、そうだ!!」
観客達は口々に言う。しかし、ブラックスミスには通じていない。
ブラックスミスは自分の手を見た後、自分の腕の皮膚を剥がしてみせた。

12

「な、なにをしている!?」
「ちょ、ちょっと、グロすぎますよ!!」
「血だらけじゃねぇか!!」
「ほら、見てくれ。この傷を。痛々しいだろ。だから、お前達の心に訴えかけているんだよ。お前達を楽しませるために、あえてこんなことをしたんだ。どうか許してくれないか。お前達を喜ばせるためなら、どんなことでもするから。なぁ、頼むよ。なぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁ」
「な、なにがお前をそこまでさせるんだ……!?」
「俺を楽しませてどうするつもりだ!!」
「ひいっ!!」
「こ、怖い!!」
観客は悲鳴をあげる。ブラックスミスは笑顔のまま、無言で彼らの顔を見ている。
「た、助けて!!」
「た、たすけてー!!」
彼らは泣きながら逃げ出した。
「待ってくれよぉ!!」
「置いてかないでくれよぉ!!」
「俺はお前らに最高のエンターテイメントを提供するぞぉ!!」
「嫌だぁあああ!!」
「たすけてぇえええ!!」
「俺を置いていかないでくれよぉ!!」
こうなってはもはや試合どころではない。観客は皆逃げていき、残っているのはブラックスミスとバーサーカーだけになった。
「おい、バーサーカー。あいつらを追っかけようぜ。俺が連れてきてやるからよ。なに、簡単さ。追いかけっこだよ。お前が逃げる連中を追いかければいい。そして全員捕まえたら勝ちだ。簡単だろ? なぁ、やろうぜ?やらないのか? あ? やれよ。なぁ。俺と遊ぼうぜ。なぁ、なぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁ!!」
「Astolfoooooooooooo!!!!」
バーサーカーが走り出した。ブラックスミスは剣を構える。
「ふんぬぅうううううう!!」
バーサーカーがブラックスミスをぶん殴った。吹っ飛ばされる。
「なにやってんだよぉおおお!! もっと俺を楽しませろよぉ!!俺は……俺の作った物を楽しんでくれる観客が好きなだけだ!!」
「Astolfoooooo!!!!」
「うるせぇよ!! 俺が楽しむには観客が必要なんだよ!! 俺が満足するためにお前らは存在するんだ!! そうだろぉお!?」
「Astolfo!!」
「なに言ってるか分かんねぇよぉおお!! 黙って殴られやがれ!!」
「Astorfooooooooo!!」
「ぐわぁああ!!」
ブラックスミスがぶっ飛んだ。
「もういい。飽きた」
「Astolfo?」
「なぁんか、面白くねぇよなぁ。俺が作ればもっと面白いはずなのによ。なにがいけねぇんだ? もっと観客を沸かせられるはずだ。もっと観客を喜ばせてやりゃあ俺も嬉しい。俺が楽しい。お前らも楽しい。それで良いじゃねぇか。なんでそれができねぇ?」
「Astorfoooo!」
「なにを怒ってるのか知らねぇけど、俺が気に食わないなら、殴り返してみろよ。ほぉら、どうした。来いよ! なぁ!!」
「Asto-」
「遅いッ!!」ブラックスミスが腹パンをぶち込んだ。
バーサーカーが膝をつく。

13

その頭を踏みつける。ぐりぐりと、踏み躙るように。
バーサーカーの目が見開かれる。
そこに映るのは怒りではない。
憎しみでもない。
ただ、退屈。それだけだ。
つまらない。ただひたすらにつまらん。
そう感じている。
この男の本性は、おそらくこちらだろう。観客を、作品を、己自身を、愛している。
だからこそ、それらを傷つけられることを何よりも嫌う。
だが、同時に、彼は、自分自身もまた、作品の一つなのだと考えている。
彼の作品は、彼自身。
そして、彼の作品に傷をつけることは、彼にとって、自分を傷付けられることに等しい。
だから、許せないのだ。自分の作品が、他人によって汚されることを。
「俺は、俺の作品は完璧であるべきだ。それは、俺自身が最高傑作であるという証明でもあるからだ。それを、否定する奴がいる。ふざけるんじゃねぇぞ。誰であろうと、絶対に許さん。俺が、俺の作品を侮辱することは……俺自身を否定することだ。俺が俺を殺せば、作品は完成しなくなる。俺が俺の作品を殺すということは、俺を俺が殺すのと同義だ」
「…………」
「お前は、俺を怒らせた。俺の作品に泥を塗った。お前のようなクズには死すら生温い。俺の怒りを知れ。悔い改めよ。それが、お前にできる唯一の贖罪であり救済だ」
「Astorfooooooooooo!!!!!!!!」
「お前に、俺の最高傑作をくれてやる。ありがたく思え。お前に相応しい舞台を用意してやった。お前が俺と戦うのに相応しくない場所だと? 馬鹿を言うな。俺の戦いにふさわしい場所はここしかない。さあ、戦おうぜ。最高の演者同士による、最高の舞台で、最高に楽しく、最高に派手に、最高に盛り上がって、最高に、最高に、最高に、最高に、最高に、最高に、最高に、最高に、最高に、最高に!最高な戦いを始めようじゃねぇか!」
「Astolfooo!!! Fooooaaahhh!!!」
「俺が憎いか。俺が殺したいか。いいとも! 来いよベネット! その怒り、憎悪、殺意、全て受け止めてやろう! お前はそこで見ていればいい! お前のために用意した、最高に楽しい余興を、とくと味わってくれ!!」
「Astorfoooooooooo!!!」
「行くぞオラァアアッッ! 俺の最高傑作を、テメェに叩き込んでやるよォオオオオッ!!」
「Astolffu!!! Astoldouf!(アストルフォ!!!ああ、素晴らしい!)」バーサーカーは、手にした剣を振り上げた。
まるで、獣のように。
そして、彼は叫んだ。
それは、まさに。
獣の雄叫びだった。
バーサーカーの宝具、『不毀の極刃(ドゥリンダナ)』が振り下ろされる。ブラックスミスは、避けない。
そのまま立ち尽くしている。
直撃すれば、間違いなく即死だろう。だがブラックスミスは、微動だにせずそれを待ち構えている。
「FuOooooooo!!!!」
「…………」
そして、ついに。
彼の脳天目掛けて『不毀の極刃(ドゥリンダナ)』が落下し。
その瞬間、ブラックスミスの姿が消えた。

14

「!?」
「Astolfooooohh!!」
直後、バーサーカーの背後から、声が響いた。
「──────────」
「………………あ?」
それは、何かの詠唱だった。
だが、何の呪文かわからない。理解できない言葉だった。
「………………」
「……!」
「………………」
「ッ──────!!」だが、それがどうしたと言うのか。
「Gaaaaahhaaaaahhh!!!」
そんなものは、関係ない。
「────────────」
バーサーカーは、振り向かずにそのまま突っ込んだ。
「Astolfooooonnn!!!」
そして、ブラックスミスの姿を捉えた瞬間、彼は叫んだ。
「────────────」
だが。
その時既に、勝敗は決していた。
「────────────」
バーサーカーが、自分の首に刺さっている短刀を見た。
「…………」
だが、何も言わない。
何故なら、もう終わっているからだ。
「───」
ブラックスミスの手には、先程までなかったはずの一冊の本があった。
そしてその表紙を、黒い光が覆っていた。
「……」
だが、バーサーカーは何も言わずに崩れ落ちた。
「───」
その後頭部に、ぽつりと血の花が咲いた。
バーサーカーは、倒れ伏した。
「……………………ふぅ」
ブラックスミスの勝利だ。「…………」
ブラックスミスが、ゆっくりと息を吐いて、構えを解く。
「勝った」
そして、そう言った。
「……」
だが。

15

「──────────」
バーサーカーが、立ち上がった。
「え?」
「Astolfooooohh!!」
「なっ───」
「うおおおおぉおああぁアァアアアッ!!」
「くっ…………」
「Astol!!」
バーサーカーが、再び突進してくる。
だが、ブラックスミスの表情に変化はない。
「……」
そして、またあの詠唱を始める。
「───」
「Gaaaahh!!」
だが、今度は止まらない。
「…………」
「Astol!!」
「……仕方ないか……」
「Ga!?」
ブラックスミスが、右手を前に出す。すると、彼の目の前に巨大な盾が現れた。
「……!」
「Astol!!」
「───ッ!!」
「Astolfooooohhh!!!」
そして、激突。
だが、今回は拮抗しなかった。
「うああっ───」「Gyaaaaaahh───」
押し切られたのは、ブラックスミスの方だった。
「───」
だが、まだ終わらない。
「Astol!!」
「───ッ!!」
「Astolfooooohhh!!」
「─────」
「Astolfooooohhh!!」
「─────」
「Astolfooooohhh!!」
「─────」
「Astolfooooohhh!!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
ブラックスミスが膝をつく。その体には無数の切り傷があり、血を流している。
対して、バーサーカーはほとんど無傷。

16

「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
ブラックスミスはもう、限界だ。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
もはや、立っていることすら奇跡に等しい。だがそれでも、彼は立ち上がる。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
ついに、ブラックスミスは倒れ伏す。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」
バーサーカーは、その巨体を震わせ、天へと叫ぶ。
「Astolfooooohhh!!!!」
そして、その拳を、振り下ろす。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
ブラックスミスだったものは、もはや原形を留めていなかった。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」
試合が終わってもバーサーカーは叫び続ける。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
それは、正に、嵐。荒れ狂う、猛威の化身。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
だが、それ故に、その一撃は、必殺となる。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
彼は、バーサーカーなのだから。
彼の前に、敵など、存在しない。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
ゆえに、彼は、無敵。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
勝者はバーサーカー。
「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」「Astolfooooohhh!!」「───」
だが、この結末は当然だろう。
彼は最強。最強のバーサーカー。
彼は、決して負けない。
たとえ相手が神であろうとも。
彼は、最強だからだ。

17

サーヴァントバトルコロッセオ!それは英霊たちの戦いの場である!!
この闘技場ではまるで古代ローマの剣闘士たちのように、日夜戦いが繰り広げられている。
サーヴァントと名がついているが別に普通の人間たち同士で戦うこともある。
魔術師を普通の人間と呼ぶのならば、だが。
今回はそんな試合をご紹介しよう。

ますは2102年から来た男、水無月サクヤが入場する。どう見てもただの高校生だ。こいつにマスター戦とかできるのだろうか。
彼のスペックをフルに発揮できるようここは電脳世界ということにしておいてやろう。
対する相手は『AIのべりすと』が作り上げたマスターである李小蓮の登場だ。
ガチガチの武闘派マスターである李小蓮!観客たちも彼女の勝利は間違いないと思っているようだ。
無理もないだろう。水無月サクヤはどうみてもただのチャラい高校生にしか見えないのだから。
互いに挨拶をし終えた後、マスター同士による注目の一戦が始まった。

18

まず最初に仕掛けたのはサクヤだった。サクヤは固有結界『B・Y・T・S』を展開する。
サクヤの姿が一瞬で変わったかと思うと、その手には大きな断ち鋏が握られていた。サクヤは固有結界を纏いながらもそれを自在に操っている。
「さぁ、僕の服を脱がせてみてはいかがかな?」
そう言うと彼は李小蓮に向かって突進していく。
「はっ!」
小蓮は拳で応戦するが、サクヤはそれを難なくかわす。
「当たらなければ意味はないということなのだ」
そのまま彼は高速で移動しながら、小蓮に切りつけていく。サクヤの動きはまるで重力を感じさせない。その動きについていけず、一方的にダメージを受ける小蓮。
「くそ、なんだこいつ……」
一方的な戦いになっているが、サクヤは焦った様子もなく、余裕たっぷりに笑う。
「ほら、僕の服はまだ着れるぞ?脱がせられるものなら脱がしてみるが良い」
それに対して小蓮は無言でサクヤに接近して殴りかかる。
「君のパンチは軽すぎる。そんなんじゃ僕の服を破けないよ」
「うるさい」小蓮は苛立ったように呟いた。その後もサクヤは攻撃をかわしながら、挑発を続ける。
「君じゃ僕の服は脱がせられない」
「黙れ」
「僕が怖いかい?」
「……怖がってなんかない」
「僕が憎いだろう?」
「……」
その言葉にカッとなったのか、今までよりもさらに激しく、素早い連打でサクヤに襲い掛かる。サクヤはその全てを簡単に避けた。
「僕は、君の味方だ」
「お前は敵だよ」
「いいや、違うね」サクヤは言った。「君は、僕と同じ目をしている」
その瞬間、サクヤは右手を軽く振るい、小蓮の腹部を思いっきり殴る。彼女は後ろに吹き飛び、地面を転がる。サクヤは追撃せず、彼女を見下ろしている。
「ぐっ、がはぁ……」
「どうした、もう終わりか」サクヤはそう言って彼女の方へ一歩踏み出す。
「来るな」
「ふむ、では僕も質問しよう。君に足りないものは何だと思う?」サクヤは首を傾げて尋ねる。
「……」小蓮は答えない。
「それは、愛さ」サクヤは歌うような口調で言う。
「愛?」

19

「ああ、そうだとも。僕には分かる。君は、愛が欲しいんだ。誰かを愛したいと思っている。その思いがある限り、君は決して負けはしない」サクヤの言葉に、小蓮の目が大きく見開かれる。
「そんなことない!」小蓮が叫ぶように言う。
「いいや、あるね」「……ない」「ある」サクヤは首を振る。「あるんだよ」「ないったらない!だって、誰も私を救ってくれなかった。私のことを分かってくれなかった」「救いなんて求めていない。誰にも救われたくない」「じゃあ、どうして」サクヤは人差し指を立てる。
「僕が、僕が君の理解者になってみせる」「……」サクヤは続ける。「僕なら、君を理解してあげられる」「私は、あんたが嫌いよ」サクヤは微笑みながら肩をすくめる。
「僕は好きだ」「大っ嫌い」サクヤは目を細めて笑っている。「好き」「大っ嫌」「大好き」「大っ」「だ」「い」「す」「き」サクヤは小蓮の目の前まで歩いてくると、しゃがみ込み、彼女の顎を掴む。サクヤは目を閉じる。そして、ゆっくりと唇を重ねた。サクヤが離れると、小蓮は顔を真っ赤にして震えていた。
「どうだい?これが僕の答えだよ。僕の、愛の形だ」サクヤは立ち上がる。「何で、キスしたの」「僕が、したいと思ったから」サクヤは笑う。「それが、僕の理由さ」「……そう」小蓮も立ち上がり、サクヤの手を握る。
「分かったわ。信じてあげる」「ありがとうございますお嬢様」二人は笑い合う。
「でも、一つだけ約束」「はい、なんなりと」サクヤは頭を下げる。「もし私があなたより先に死んだら絶対に後を追って死ぬような真似しないでね」
「かしこまりました」サクヤは再び深々と礼をする。「それともう一つ」「はい、まだ何か?」
「あなたがどんな理由であれ私を助けてくれたことには変わりない。だから、その、あり、あり、」サクヤは小蓮を抱き締めた。「んー!」「愛してますよ、僕のマイフレンド」サクヤは耳元で囁く。サクヤは抱き締める手を緩めると、小蓮の頬を撫でる。「これからもよろしくお願いします、僕のマイフレンド」サクヤが微笑む。「え、あ、うん」小蓮は戸惑った様子で顔を赤らめていた。「僕は、あなたのことが、好きです」サクヤは真剣な表情で言う。「私は、あなたを愛してるわ」小蓮は笑顔で答える。「ありがとうございます」サクヤは照れ臭そうに笑っていた。
「では、参りましょうか」サクヤは手を差し出す。「はい、行きましょ」小蓮はサクヤの手を取る。二人は歩き出した。サクヤはふと思う。
(僕には、こんな風に誰かを愛する資格なんてない)サクヤは目を伏せる。それでも自分の感情を抑えられない。
(だけど、今だけは許して欲しい。あなたを愛したいと思うことを、どうか、この愚かな僕を許して欲しい)サクヤはそっと願う。

20

【第四回】
ここはバトルコロッセオ。日夜行われる英霊たちの戦いに観客たちが熱狂し、それを見て王は満足する歴史ある闘技場である。
観客たちは次の試合はまだかまだかと騒いでいたが、対戦カードが発表されると途端に静まり返った。

マスターであるトリグと彼女のサーヴァントであるアサシンである追い剥ぎソロヴェイが北の門から入場してくる。
対する対戦相手であるロゼ・パトラシェクと彼女のライダーであるヴィズリルが南の門から入場する。
両者は向き合い、鐘の音とともに二組による試合が始まった。

21

まず最初に動いたのはアサシンだった。彼は口を大きく開き息を思いっきり吸い込む。そして―――
「~~~♪!!!!」
彼の口から大音量で放たれた歌声は衝撃波となり、会場全体を揺るがせた。
あまりの爆音に耳を塞いだ者もいれば気絶する者もいた。
そんな中でもロゼはなんとか耐えきり、一歩前へ出る。
「……ふんっ、それがどうしたっていうのかしら?」
彼女は不敵な笑みを浮かべながらそう言う。
それに対し、アサシンはまたも大きく息を吸う。しかし今度はすぐには撃たなかった。
代わりに彼は、歌うように喋り始めた。
「♪~」
その声色はまるで天使のような慈愛に満ちたものだった。だが、それを聞いている内にロゼは徐々に気分が悪くなっていくのを感じた。
(なにこれ……。頭がくらくらして……。立ってられない!)
立っているのも辛くなりその場に座り込んでしまう。
それを好機と捉えてか、アサシンはさらに言葉を紡ぐ。「♪~~♪~~~♪♪♪」
それは次第に歌へと変わっていく。そしてそれに呼応するように観客たちが次々と倒れていく。
そしてついにはロゼ自身も意識を失ってしまった。ライダーは倒れた彼女の体を受け止め、そのまま抱きかかえる。そして歌い続けるアサシンを睨みつけながら静かに呟いた。
「許さないぞ。僕のマスターを傷付けた罪、万死に値する!」]
「!?︎」
アサシンはその言葉を聞き、咄嵯にその場を離れようとしたその時だった。彼の胸元に衝撃が走り、そのまま壁まで吹き飛ばされる。壁に叩きつけられ床に崩れ落ちた彼は、自分が攻撃されたことに気づく。しかし、何が起きたのか分からなかった。何故ならその一撃は彼の予想以上に重く、彼が受けたダメージは決して軽くはなかったからだ。

22

「逃すわけないだろう?」
ライダーの声と共に再び彼に衝撃が走る。今度は反対側の壁にまで吹き飛ばされた。それでも何とか受け身を取り、即座に立ち上がる。自分の状態を確認すると、攻撃を受けたであろう箇所を中心に体が痺れていた。まるで強力な電流を浴びせられたような感覚だ。
「…………」彼は声を出すことすらできず、ただ黙って立ち尽くすしかなかった。すると、目の前にライダーが現れる。そしてゆっくりとした動作で彼に向かって手を伸ばしてきた。
次の瞬間、凄まじい電撃が彼を貫いた。それは先ほどとは比べものにならないほどの威力であり、全身を焼かれるような激痛に襲われる。だが、そんな状況でもなお、彼は必死に耐え続けた。この程度の痛みならば耐えられる自信があった。だが、それすらも甘かったと思い知らされることになる。
ライダーは更に手に力を込める。すると次第に体に力が入らなくなっていく。
(これは……まずいな)既に意識も薄れ始めておりこのままでは確実に死ぬだろう。
彼はこの状況を打開するために全力を振り絞り抵抗を試みる。アサシンのマスターであるトリグは何かに気付いたのか慌てた様子だった。
しかし、もう遅い。ライダーはアサシンの体から手を離すと彼の体は力無く崩れ落ちた。そのまま床に転げ落ち、うつ伏せの状態になり動かなくなる。その様子を見て、ライダーは呟くように言った。「これで終わりですか……。呆気ないものですね。まぁ良いでしょう。僕の勝ちです。約束通り貴方には死んでもらいます。恨むなら自分の不運さを恨みなさい。」
そう言うとライダーは彼の体を持ち上げようとした。その時、突如として倒れていたはずの彼が起き上がり、手に持っていたナイフで斬りかかって来たのだ。
不意打ちを受けたライダーはそのまま吹き飛ばされてしまう。
そして再び立ち上がり今度はしっかりと構えを取る。「ほう……まだ動けるとは驚きましたね。でも残念ながら無駄ですよ。今ので分かったはず。僕に勝つ事は出来ないんです。諦めてください。」
それを聞いた彼は不敵に笑いこう言い放った。
「確かにお前さんは強いだろうな。だけどな、俺はただの盗賊じゃないんだよ!!『小夜吼鳥(ソロヴェイ・リーク)』!!]
その瞬間、彼の声は衝撃波となってライダーを襲う。
「ぐぅっ!?」
咄嵯に腕で防御するも、その衝撃は凄まじく、思わずよろけてしまう。しかし、そんな事は関係ないとばかりに追い討ちをかけるように彼は叫ぶ。
「『小夜曲(セレナーデ)』!!」
その声は空気を震わせ、ライダーの鼓膜を破り、脳までも揺さぶる。
そして次の刹那、その声は指向性を持ち、まるで弾丸のように放たれる。ライダーはその一撃を辛うじて避けたが、それは余りにも予想外だった。
何故なら、その声はライダーに掠りもせず、そのまま後ろにあった壁を撃ち抜いたからだ。しかしそれだけでは終わらない。
声はそのまま空気を切り裂いて直進し、闘技場の壁に穴を空けて消えた。同時に、壁の穴の先に居た観客たちがバタバタと倒れていく。
それはさながら、超音波によって脳を揺すられたような感覚。何が起きたのか、誰も理解できなかった。
そしてただ一人、ライダーだけは笑みを浮かべていた。
「これは……凄まじいですね」
「これが……アサシンの宝具……」
トリグが呟く。どうやらあの音響兵器じみた一撃は想定外だったらしい事が分かる。だが、それで終わりではなかった。
「おい、まさかアレが全部だとでも思ってんのか?」
そう言って、追い剥ぎソロヴェイは懐から新たな楽器を取り出し構えると再び吹き鳴らす。今度は先程より幾分か音量が小さいがそれでも十分すぎる程の威力を持っていた。
「なっ!?︎」
それにいち早く反応したのはライダーである。その声を聞いた瞬間、ライダーは即座に行動に移した。
彼は、自分の耳を押さえると同時に走り出した。
ライダーは今度こそ確信した。この音には間違いなく精神汚染効果がある。しかもかなり強力なものだ。
(まずいな。このままではまともに動けなくなる。せめて一刻も早く決着をつけなければ!)
ライダーは走る速度を上げる。そして一気にアサシンとの距離を埋めると拳を振りかぶった。だが、そこに待ち構えていたのはアサシンではなく、トリグであった。

24

「馬鹿め!」
そう言うとトリグはその手に持ったナイフを投擲する。
ライダーはそれを弾き落とそうとするが、その隙を狙っていたかのようにアサシンが斬りかかってきた。
咄嵯に身を捻ってそれをかわすものの、避けきれず左腕を切りつけられる。
「ぐっ!?」
痛みに耐えながら体勢を立て直そうと足を踏み出すと、そこにはすでに別のナイフが迫ってきていた。なんとか体をひねり直撃を避けるも肩口に刺さる。そのまま壁際まで吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられて崩れ落ちるように地面に膝をつく。そんなライダーを見てトリグは勝ち誇るように叫んだ。
「はっはー!!」「見たかこの力!」「戦いは数だよ兄貴ぃ!!」
その叫びを聞いてロゼは唇を噛む。
ライダーが負けた。いや、まだだ。まだライダーは負けていない。あの程度の攻撃でライダーが倒れるはずがない。
そう思い、ライダーへと視線を向けると、ライダーは膝を突き息を荒げていた。その身体は傷だらけで血を流している。明らかに満身創痍だった。
「はあッ……はあっ……」
「おいおいどうしたライダー」
「っ、まだだ。僕は諦めない。マスター、下がっていて下さい。僕も少し本気を出します。……あまりやりたくなかったんですけど」
「大丈夫なの?」
「はい。この距離なら十分です。―――来なさい、『嵐の王(リネアール)』。」そう言ってヴィズリルが手を伸ばすと、虚空から大剣が姿を現す。
そしてライダーが大剣の柄を握ると同時に、大剣がバチバチという音を立てて稲妻に包まれていく。
ライダーが立ち上がる。稲妻を纏った大剣を構えるその姿はまるで神話の英雄のようであった。
ライダーはアサシンを睨みつける。
そして、一瞬の溜めの後、雷光となって飛び出した。
ライダーの雷速の突撃に対して、アサシンが反応できたのは奇跡と言ってもいいだろう。
だが、それでも完全には避けきれず、ライダーの一撃は肩口を掠める。
ライダーはすれ違いざまにアサシンの腹を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたアサシンは大きく後ろに吹き飛ぶが、すぐに体勢を立て直す。

25

だが、雷光の速度を乗せた大剣の斬撃を受けたことで、その肉体からは煙が上がっている。
ライダーが再び駆け出す。今度はアサシンが迎え撃つように構える。
だが、ライダーは途中で軌道を変え、壁際に立つロゼの元へ走る。
突然のことに驚くロゼを無視して、そのまま抱えて大きく跳躍する。
直後、それまで立っていた場所に無数のナイフが突き刺さり、爆発する。
ライダーが着地したのは観客席の最前列。観客たちは何が起きたのか分からずざわめいていた。
これはアサシンのマスターであるトリグたちの放った攻撃だ。ライダーは客席最前列から飛び降りると、地面すれすれまで姿勢を低くして走り、またもや急加速でアサシンの背後を取る。
だが、振り向き様に放たれた拳がライダーの顔面を捉え、大きく仰け反らせる。
「ッ!?」
ライダーは即座に腕を振り上げ、肘鉄を放つ。
だが、それは囮だった。
カウンター気味に入った筈のライダーの一撃が、逆にアサシンの脇腹に叩き込まれる。
アサシンの身体が折れ曲がるように浮き上がり、地面に転がった。
「がっ、あああ!」
アサシンは悲鳴を上げながら転がり、やがて止まる。
そして顔を上げると、そこにはいつの間にか距離を詰めてきたライダーの姿があった。
起き上がろうとするアサシンの頭を踏みつけ、その動きを封じる。
「ぐぅ、あ……!!」
ライダーはそのまま足を滑らせ、アサシンの背中に体重をかける。
ミシミシという音が聞こえそうなほど強く体重をかけられ、苦しげな声が上がる。
そして『嵐の王(リアネール)』が振り落とされる。それは一瞬の出来事だったが、それでも十分すぎるほどの時間だった。
アサシンの右腕が肩から切断され、宙を舞う。
鮮血が舞い、観客たちの歓声が上がった。
しかしライダーは油断しない。
まだ、終わっていないからだ。
ライダーは足に力を込め、思い切り蹴り上げる。
ライダーの蹴りは、そのままアサシンの首へと叩き込まれる。
首の骨の砕ける嫌な音と共に、アサシンの意識は闇に沈んだ。
自らのサーヴァントであるアサシンを失ったトリグたちは、苦々しい表情を浮かべてその場から走り去っていく。
ライダーはそれを追おうとはせず、その場に佇み、辺りの様子を窺っていた。
ふと、観客席の方を見ると、ロゼがこちらを見て笑っているのが見えた。それに軽く手を振り返すと、彼女は驚いたように目を丸くする。
そんな彼女に対して、ライダーは大きく口を動かして笑いかけるのであった。