「ああ、そうだとも。僕には分かる。君は、愛が欲しいんだ。誰かを愛したいと思っている。その思いがある限り、君は決して負けはしない」サクヤの言葉に、小蓮の目が大きく見開かれる。
「そんなことない!」小蓮が叫ぶように言う。
「いいや、あるね」「……ない」「ある」サクヤは首を振る。「あるんだよ」「ないったらない!だって、誰も私を救ってくれなかった。私のことを分かってくれなかった」「救いなんて求めていない。誰にも救われたくない」「じゃあ、どうして」サクヤは人差し指を立てる。
「僕が、僕が君の理解者になってみせる」「……」サクヤは続ける。「僕なら、君を理解してあげられる」「私は、あんたが嫌いよ」サクヤは微笑みながら肩をすくめる。
「僕は好きだ」「大っ嫌い」サクヤは目を細めて笑っている。「好き」「大っ嫌」「大好き」「大っ」「だ」「い」「す」「き」サクヤは小蓮の目の前まで歩いてくると、しゃがみ込み、彼女の顎を掴む。サクヤは目を閉じる。そして、ゆっくりと唇を重ねた。サクヤが離れると、小蓮は顔を真っ赤にして震えていた。
「どうだい?これが僕の答えだよ。僕の、愛の形だ」サクヤは立ち上がる。「何で、キスしたの」「僕が、したいと思ったから」サクヤは笑う。「それが、僕の理由さ」「……そう」小蓮も立ち上がり、サクヤの手を握る。
「分かったわ。信じてあげる」「ありがとうございますお嬢様」二人は笑い合う。
「でも、一つだけ約束」「はい、なんなりと」サクヤは頭を下げる。「もし私があなたより先に死んだら絶対に後を追って死ぬような真似しないでね」
「かしこまりました」サクヤは再び深々と礼をする。「それともう一つ」「はい、まだ何か?」
「あなたがどんな理由であれ私を助けてくれたことには変わりない。だから、その、あり、あり、」サクヤは小蓮を抱き締めた。「んー!」「愛してますよ、僕のマイフレンド」サクヤは耳元で囁く。サクヤは抱き締める手を緩めると、小蓮の頬を撫でる。「これからもよろしくお願いします、僕のマイフレンド」サクヤが微笑む。「え、あ、うん」小蓮は戸惑った様子で顔を赤らめていた。「僕は、あなたのことが、好きです」サクヤは真剣な表情で言う。「私は、あなたを愛してるわ」小蓮は笑顔で答える。「ありがとうございます」サクヤは照れ臭そうに笑っていた。
「では、参りましょうか」サクヤは手を差し出す。「はい、行きましょ」小蓮はサクヤの手を取る。二人は歩き出した。サクヤはふと思う。
(僕には、こんな風に誰かを愛する資格なんてない)サクヤは目を伏せる。それでも自分の感情を抑えられない。
(だけど、今だけは許して欲しい。あなたを愛したいと思うことを、どうか、この愚かな僕を許して欲しい)サクヤはそっと願う。