サーヴァントバトルコロッセオ!それは英霊たちの戦いの場である!!
この闘技場ではまるで古代ローマの剣闘士たちのように、日夜戦いが繰り広げられている。
サーヴァントと名がついているが別に普通の人間たち同士で戦うこともある。
魔術師を普通の人間と呼ぶのならば、だが。
今回はそんな試合をご紹介しよう。
ますは2102年から来た男、水無月サクヤが入場する。どう見てもただの高校生だ。こいつにマスター戦とかできるのだろうか。
彼のスペックをフルに発揮できるようここは電脳世界ということにしておいてやろう。
対する相手は『AIのべりすと』が作り上げたマスターである李小蓮の登場だ。
ガチガチの武闘派マスターである李小蓮!観客たちも彼女の勝利は間違いないと思っているようだ。
無理もないだろう。水無月サクヤはどうみてもただのチャラい高校生にしか見えないのだから。
互いに挨拶をし終えた後、マスター同士による注目の一戦が始まった。
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まず最初に仕掛けたのはサクヤだった。サクヤは固有結界『B・Y・T・S』を展開する。
サクヤの姿が一瞬で変わったかと思うと、その手には大きな断ち鋏が握られていた。サクヤは固有結界を纏いながらもそれを自在に操っている。
「さぁ、僕の服を脱がせてみてはいかがかな?」
そう言うと彼は李小蓮に向かって突進していく。
「はっ!」
小蓮は拳で応戦するが、サクヤはそれを難なくかわす。
「当たらなければ意味はないということなのだ」
そのまま彼は高速で移動しながら、小蓮に切りつけていく。サクヤの動きはまるで重力を感じさせない。その動きについていけず、一方的にダメージを受ける小蓮。
「くそ、なんだこいつ……」
一方的な戦いになっているが、サクヤは焦った様子もなく、余裕たっぷりに笑う。
「ほら、僕の服はまだ着れるぞ?脱がせられるものなら脱がしてみるが良い」
それに対して小蓮は無言でサクヤに接近して殴りかかる。
「君のパンチは軽すぎる。そんなんじゃ僕の服を破けないよ」
「うるさい」小蓮は苛立ったように呟いた。その後もサクヤは攻撃をかわしながら、挑発を続ける。
「君じゃ僕の服は脱がせられない」
「黙れ」
「僕が怖いかい?」
「……怖がってなんかない」
「僕が憎いだろう?」
「……」
その言葉にカッとなったのか、今までよりもさらに激しく、素早い連打でサクヤに襲い掛かる。サクヤはその全てを簡単に避けた。
「僕は、君の味方だ」
「お前は敵だよ」
「いいや、違うね」サクヤは言った。「君は、僕と同じ目をしている」
その瞬間、サクヤは右手を軽く振るい、小蓮の腹部を思いっきり殴る。彼女は後ろに吹き飛び、地面を転がる。サクヤは追撃せず、彼女を見下ろしている。
「ぐっ、がはぁ……」
「どうした、もう終わりか」サクヤはそう言って彼女の方へ一歩踏み出す。
「来るな」
「ふむ、では僕も質問しよう。君に足りないものは何だと思う?」サクヤは首を傾げて尋ねる。
「……」小蓮は答えない。
「それは、愛さ」サクヤは歌うような口調で言う。
「愛?」
「ああ、そうだとも。僕には分かる。君は、愛が欲しいんだ。誰かを愛したいと思っている。その思いがある限り、君は決して負けはしない」サクヤの言葉に、小蓮の目が大きく見開かれる。
「そんなことない!」小蓮が叫ぶように言う。
「いいや、あるね」「……ない」「ある」サクヤは首を振る。「あるんだよ」「ないったらない!だって、誰も私を救ってくれなかった。私のことを分かってくれなかった」「救いなんて求めていない。誰にも救われたくない」「じゃあ、どうして」サクヤは人差し指を立てる。
「僕が、僕が君の理解者になってみせる」「……」サクヤは続ける。「僕なら、君を理解してあげられる」「私は、あんたが嫌いよ」サクヤは微笑みながら肩をすくめる。
「僕は好きだ」「大っ嫌い」サクヤは目を細めて笑っている。「好き」「大っ嫌」「大好き」「大っ」「だ」「い」「す」「き」サクヤは小蓮の目の前まで歩いてくると、しゃがみ込み、彼女の顎を掴む。サクヤは目を閉じる。そして、ゆっくりと唇を重ねた。サクヤが離れると、小蓮は顔を真っ赤にして震えていた。
「どうだい?これが僕の答えだよ。僕の、愛の形だ」サクヤは立ち上がる。「何で、キスしたの」「僕が、したいと思ったから」サクヤは笑う。「それが、僕の理由さ」「……そう」小蓮も立ち上がり、サクヤの手を握る。
「分かったわ。信じてあげる」「ありがとうございますお嬢様」二人は笑い合う。
「でも、一つだけ約束」「はい、なんなりと」サクヤは頭を下げる。「もし私があなたより先に死んだら絶対に後を追って死ぬような真似しないでね」
「かしこまりました」サクヤは再び深々と礼をする。「それともう一つ」「はい、まだ何か?」
「あなたがどんな理由であれ私を助けてくれたことには変わりない。だから、その、あり、あり、」サクヤは小蓮を抱き締めた。「んー!」「愛してますよ、僕のマイフレンド」サクヤは耳元で囁く。サクヤは抱き締める手を緩めると、小蓮の頬を撫でる。「これからもよろしくお願いします、僕のマイフレンド」サクヤが微笑む。「え、あ、うん」小蓮は戸惑った様子で顔を赤らめていた。「僕は、あなたのことが、好きです」サクヤは真剣な表情で言う。「私は、あなたを愛してるわ」小蓮は笑顔で答える。「ありがとうございます」サクヤは照れ臭そうに笑っていた。
「では、参りましょうか」サクヤは手を差し出す。「はい、行きましょ」小蓮はサクヤの手を取る。二人は歩き出した。サクヤはふと思う。
(僕には、こんな風に誰かを愛する資格なんてない)サクヤは目を伏せる。それでも自分の感情を抑えられない。
(だけど、今だけは許して欲しい。あなたを愛したいと思うことを、どうか、この愚かな僕を許して欲しい)サクヤはそっと願う。