「馬鹿め!」
そう言うとトリグはその手に持ったナイフを投擲する。
ライダーはそれを弾き落とそうとするが、その隙を狙っていたかのようにアサシンが斬りかかってきた。
咄嵯に身を捻ってそれをかわすものの、避けきれず左腕を切りつけられる。
「ぐっ!?」
痛みに耐えながら体勢を立て直そうと足を踏み出すと、そこにはすでに別のナイフが迫ってきていた。なんとか体をひねり直撃を避けるも肩口に刺さる。そのまま壁際まで吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられて崩れ落ちるように地面に膝をつく。そんなライダーを見てトリグは勝ち誇るように叫んだ。
「はっはー!!」「見たかこの力!」「戦いは数だよ兄貴ぃ!!」
その叫びを聞いてロゼは唇を噛む。
ライダーが負けた。いや、まだだ。まだライダーは負けていない。あの程度の攻撃でライダーが倒れるはずがない。
そう思い、ライダーへと視線を向けると、ライダーは膝を突き息を荒げていた。その身体は傷だらけで血を流している。明らかに満身創痍だった。
「はあッ……はあっ……」
「おいおいどうしたライダー」
「っ、まだだ。僕は諦めない。マスター、下がっていて下さい。僕も少し本気を出します。……あまりやりたくなかったんですけど」
「大丈夫なの?」
「はい。この距離なら十分です。―――来なさい、『嵐の王(リネアール)』。」そう言ってヴィズリルが手を伸ばすと、虚空から大剣が姿を現す。
そしてライダーが大剣の柄を握ると同時に、大剣がバチバチという音を立てて稲妻に包まれていく。
ライダーが立ち上がる。稲妻を纏った大剣を構えるその姿はまるで神話の英雄のようであった。
ライダーはアサシンを睨みつける。
そして、一瞬の溜めの後、雷光となって飛び出した。
ライダーの雷速の突撃に対して、アサシンが反応できたのは奇跡と言ってもいいだろう。
だが、それでも完全には避けきれず、ライダーの一撃は肩口を掠める。
ライダーはすれ違いざまにアサシンの腹を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたアサシンは大きく後ろに吹き飛ぶが、すぐに体勢を立て直す。