「甘いわっ!」
だがそれも、クロイソスには簡単に避けられてしまった。
逆に彼はペルカードの背後に回り込み、槍を突き刺そうとする。
「……ッ!」とっさに体を捻って避けるが、肩口を少し掠めてしまう。
血が滲み出るが、気にしている暇はない。
すぐに振り返り、追撃をかける。
クロイソスは今度は左手からコインを生み出し、投げつけてくる。
ペルカードは身を低くして走り抜け、クロイソスの懐に飛び込んだ。
そのまま腹部に向けて、掌底を放つ。
「ぬぐぅ!!」
流石のクロイソスもこれを防ぎきれず、後ろに仰け反ってしまう。
その隙を逃さず、ペルカードは足払いを仕掛けた。
だがクロイソスはすぐに立ち上がると、大きく跳び退いて回避した。
そして空中に浮かんだまま、また新たな宝具を作り出し始める。
「まだまだ行くぞ!」
「させるか!」
再び接近しようとするペルカードを牽制するように、クロイソスは次々とコインを投げていく。
ペルカードはそれらを全て弾き飛ばし、一気に距離を詰めた。「無駄ァ!!」
勢いのままに拳を振り下ろす。
クロイソスはそれを槍の柄で受け止めると、そのまま押し返そうと力を込める。
しかし、そこで異変が起きた。
突然ペルカードの足元が光を放ち始めたのだ。
「なにっ!?︎」
「おぉっ!?︎なんだこりゃあ!?︎」
同時にクロイソスが動揺の声を上げる。
二人は驚きつつも離れようとしたが、遅かった。
次の瞬間、二人の身体は眩い光の渦の中に飲み込まれていた。
二人が立っていた場所を中心に、まるで竜巻のような風が吹き荒れる。
それは周りの木々をなぎ倒し、地面の土を巻き上げていった。
やがて光が収まり、視界が戻る。
そこには、先ほどまでの光景は無くなっていた。
あるのは、クレーターのようにえぐれた大地のみ。
周りにあった木や草は全て消え失せており、代わりに黒焦げになった岩や砂が広がっている。
その中心で、二人の戦いはまだ続いていた。
「おおおおおおおおおおおお!!!!」
「うおらああああああ!!!」
「おおおおおおっっっっっっ!!!!!!!!」
ペルカードは全力の一撃を繰り出す。
対するクロイソスもまた、全身全霊の力を込めた突きを繰り出してきた。
互いの力が拮抗し、一瞬だけ動きが止まる。そして、爆発が起こったように弾けた。
二人の鎧が砕け散り、辺りに散らばる。クロイソスの鎧は、彼の頭部と左腕の籠手、そして腰の部分しか残っていなかった。
一方のペルカードも鎧の大半を失っており、残った部分もボロ布と化している。
両者ともに満身創痍であり、立っているだけでもやっとの状態だ。
だが、それでも戦いは終わらない。