先に動いたのは黒の騎士ペルカードの方だ。彼はその手に持つ漆黒の槍を構えながら相手に向かって駆け出す。
対するリディア王は右手を掲げ、そこから幾つもの金色のコインを空中に放り投げる。コインはくるくると回転しながら宙に浮かび上がる。次の瞬間、コインが光を放ち始める。眩く輝く金貨たちは一斉に空へと舞い上がりペルカードの頭上から降り注ぐ。
だがそんな攻撃もものともせず、黒の騎士は突き進む。
一方のリディア王の方はというと左手から今度は大量のコインを取り出しそれを自分の周囲にばら撒いた。
すると地面に落ちたコイン達がまた再び輝き始め、そこから矢のような光線を放つ。
上空からの無数の光線の雨に晒されながらも、黒の騎士はその足を止めない。
そのまま一気に距離を詰めると、手にした槍を突き出した。
対するリディア王もその身に纏う鎧の一部を変化させた盾を構える。
ガキンッ! 両者のぶつかり合う金属音と共に、一瞬の拮抗が生まれる。
しかしすぐに両者は互いに距離を取る。
続いて仕掛けたのは黒の騎士ペルカードだ。彼は両手に構えた槍を振り回し、まるで舞うように連撃を叩き込む。
それに対してリディア王はその場を動かず、ただひたすらその攻撃を受け止めるのみ。
やがて痺れを切らしたのはペルカードの方であった。
「ふんっ!」
彼は大きく飛び退き、手にしていた槍を投げ放つ。
彼の手を離れたそれは一直線に飛び、相手の胸元を狙う。
それに対しリディア王が取った手段はシンプル極まりないものであった。なんと自らの剣を抜き放ったのだ。
リディア王の剣は飛来してきた槍を打ち払い、そのまま振りかぶって投げ返す。
予想外の反撃を受けて体勢が崩れていたペルカードは避けきれず、まともに食らうこととなった。
「ぐあっ!?」
思わぬ一撃に苦悶の声を上げる彼だが、そんなことはお構いなしにリディア王は追撃を仕掛ける。
彼は右手に持った剣を振るいながらも、同時に左手に新たな黄金の剣を生み出しそれを投げつけてくる。
迫り来る二刀の刃に対し、ペルカードはとっさに両腕で防御の体制を取った。
しかしその程度のことで防げるような生易しい攻撃ではない。
「ぬあああ!!」
彼は全身に力を込め、踏ん張ることでなんとか攻撃を耐えきった。一方の攻撃を防いだところで、今度はもう片割れの刃が迫っている。
ペルカードは再び腕を交差させて受け止めようとするが、そこに容赦のない連続攻撃が叩き込まれる。
「ぐうぅ……!」
衝撃に耐えかねて思わず膝をつく。
一方でリディア王の方は全くと言っていいほどダメージを受けていないようだ。
先ほどのコインの一斉射撃といい、今の連続攻撃といい、明らかにこちらの方が分が悪い。
この勝負、このままでは負けてしまうだろう。その時、会場の隅で観戦している一人の男が立ち上がった。