kagemiya@なりきり

サーヴァントバトルコロッセオ / 22

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22

「逃すわけないだろう?」
ライダーの声と共に再び彼に衝撃が走る。今度は反対側の壁にまで吹き飛ばされた。それでも何とか受け身を取り、即座に立ち上がる。自分の状態を確認すると、攻撃を受けたであろう箇所を中心に体が痺れていた。まるで強力な電流を浴びせられたような感覚だ。
「…………」彼は声を出すことすらできず、ただ黙って立ち尽くすしかなかった。すると、目の前にライダーが現れる。そしてゆっくりとした動作で彼に向かって手を伸ばしてきた。
次の瞬間、凄まじい電撃が彼を貫いた。それは先ほどとは比べものにならないほどの威力であり、全身を焼かれるような激痛に襲われる。だが、そんな状況でもなお、彼は必死に耐え続けた。この程度の痛みならば耐えられる自信があった。だが、それすらも甘かったと思い知らされることになる。
ライダーは更に手に力を込める。すると次第に体に力が入らなくなっていく。
(これは……まずいな)既に意識も薄れ始めておりこのままでは確実に死ぬだろう。
彼はこの状況を打開するために全力を振り絞り抵抗を試みる。アサシンのマスターであるトリグは何かに気付いたのか慌てた様子だった。
しかし、もう遅い。ライダーはアサシンの体から手を離すと彼の体は力無く崩れ落ちた。そのまま床に転げ落ち、うつ伏せの状態になり動かなくなる。その様子を見て、ライダーは呟くように言った。「これで終わりですか……。呆気ないものですね。まぁ良いでしょう。僕の勝ちです。約束通り貴方には死んでもらいます。恨むなら自分の不運さを恨みなさい。」
そう言うとライダーは彼の体を持ち上げようとした。その時、突如として倒れていたはずの彼が起き上がり、手に持っていたナイフで斬りかかって来たのだ。
不意打ちを受けたライダーはそのまま吹き飛ばされてしまう。
そして再び立ち上がり今度はしっかりと構えを取る。「ほう……まだ動けるとは驚きましたね。でも残念ながら無駄ですよ。今ので分かったはず。僕に勝つ事は出来ないんです。諦めてください。」
それを聞いた彼は不敵に笑いこう言い放った。
「確かにお前さんは強いだろうな。だけどな、俺はただの盗賊じゃないんだよ!!『小夜吼鳥(ソロヴェイ・リーク)』!!]
その瞬間、彼の声は衝撃波となってライダーを襲う。
「ぐぅっ!?」
咄嵯に腕で防御するも、その衝撃は凄まじく、思わずよろけてしまう。しかし、そんな事は関係ないとばかりに追い討ちをかけるように彼は叫ぶ。
「『小夜曲(セレナーデ)』!!」
その声は空気を震わせ、ライダーの鼓膜を破り、脳までも揺さぶる。
そして次の刹那、その声は指向性を持ち、まるで弾丸のように放たれる。ライダーはその一撃を辛うじて避けたが、それは余りにも予想外だった。
何故なら、その声はライダーに掠りもせず、そのまま後ろにあった壁を撃ち抜いたからだ。しかしそれだけでは終わらない。
声はそのまま空気を切り裂いて直進し、闘技場の壁に穴を空けて消えた。同時に、壁の穴の先に居た観客たちがバタバタと倒れていく。
それはさながら、超音波によって脳を揺すられたような感覚。何が起きたのか、誰も理解できなかった。
そしてただ一人、ライダーだけは笑みを浮かべていた。
「これは……凄まじいですね」
「これが……アサシンの宝具……」
トリグが呟く。どうやらあの音響兵器じみた一撃は想定外だったらしい事が分かる。だが、それで終わりではなかった。
「おい、まさかアレが全部だとでも思ってんのか?」
そう言って、追い剥ぎソロヴェイは懐から新たな楽器を取り出し構えると再び吹き鳴らす。今度は先程より幾分か音量が小さいがそれでも十分すぎる程の威力を持っていた。
「なっ!?︎」
それにいち早く反応したのはライダーである。その声を聞いた瞬間、ライダーは即座に行動に移した。
彼は、自分の耳を押さえると同時に走り出した。
ライダーは今度こそ確信した。この音には間違いなく精神汚染効果がある。しかもかなり強力なものだ。
(まずいな。このままではまともに動けなくなる。せめて一刻も早く決着をつけなければ!)
ライダーは走る速度を上げる。そして一気にアサシンとの距離を埋めると拳を振りかぶった。だが、そこに待ち構えていたのはアサシンではなく、トリグであった。

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