まず最初に仕掛けたのはサクヤだった。サクヤは固有結界『B・Y・T・S』を展開する。
サクヤの姿が一瞬で変わったかと思うと、その手には大きな断ち鋏が握られていた。サクヤは固有結界を纏いながらもそれを自在に操っている。
「さぁ、僕の服を脱がせてみてはいかがかな?」
そう言うと彼は李小蓮に向かって突進していく。
「はっ!」
小蓮は拳で応戦するが、サクヤはそれを難なくかわす。
「当たらなければ意味はないということなのだ」
そのまま彼は高速で移動しながら、小蓮に切りつけていく。サクヤの動きはまるで重力を感じさせない。その動きについていけず、一方的にダメージを受ける小蓮。
「くそ、なんだこいつ……」
一方的な戦いになっているが、サクヤは焦った様子もなく、余裕たっぷりに笑う。
「ほら、僕の服はまだ着れるぞ?脱がせられるものなら脱がしてみるが良い」
それに対して小蓮は無言でサクヤに接近して殴りかかる。
「君のパンチは軽すぎる。そんなんじゃ僕の服を破けないよ」
「うるさい」小蓮は苛立ったように呟いた。その後もサクヤは攻撃をかわしながら、挑発を続ける。
「君じゃ僕の服は脱がせられない」
「黙れ」
「僕が怖いかい?」
「……怖がってなんかない」
「僕が憎いだろう?」
「……」
その言葉にカッとなったのか、今までよりもさらに激しく、素早い連打でサクヤに襲い掛かる。サクヤはその全てを簡単に避けた。
「僕は、君の味方だ」
「お前は敵だよ」
「いいや、違うね」サクヤは言った。「君は、僕と同じ目をしている」
その瞬間、サクヤは右手を軽く振るい、小蓮の腹部を思いっきり殴る。彼女は後ろに吹き飛び、地面を転がる。サクヤは追撃せず、彼女を見下ろしている。
「ぐっ、がはぁ……」
「どうした、もう終わりか」サクヤはそう言って彼女の方へ一歩踏み出す。
「来るな」
「ふむ、では僕も質問しよう。君に足りないものは何だと思う?」サクヤは首を傾げて尋ねる。
「……」小蓮は答えない。
「それは、愛さ」サクヤは歌うような口調で言う。
「愛?」