名無しのフレンズ
2021/04/03 (土) 16:30:11
49980@d0075
【別れと出会い】
― ××年前 -
私は1週間前、長年連れ添ったパートナーを失った。
とても頑丈で細かいことにも気の付く良い子だったが、
この時ばかりは無計画で無鉄砲なところが災いした。
生きる気力を失った私は、そのままサンドスターが枯渇するのに任せて消え去るつもりでいたが、
毎年一緒に花見をしていたのに今年はちゃんと見れなかったことを思い出し、
冥途の土産のつもりで、この丘にやってきた。
しかし桜はものの見事に散っていた。
花びらこそ地面を覆い尽くしていた(桜絨毯というんだったか)が、キレイだと思える気分ではなかった。
なぜ桜は散ってしまうんだろう? なぜずっと咲いていられないんだろう?
そんな感傷的に気分になってしまう。
去年までなら『そんなもの』と割り切れていたのに・・・
ふと視界の隅に花が咲いているのが映った。
でも桜ではない。
なんという名前だっただろう?
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???
「のだーーーーー!」
💃➰➰➰➰➰➰➰➰➰➰ゴロゴロゴロ・・・
しんみりとした空気を台無しにする声と共に『何か』が目の前に転がり込んできた。
フェネック
「…!?」
その『何か』に声を掛けようとして、思わず固まってしまう。
???
「イテテ・・・ 急に突風が吹いてきて飛ばされてしまったのだ」
言葉が出なかった。
早く声を掛けないと、このままではすぐにどこかに行ってしまうだろう。
そして、少しでも会話を引き延ばさないと・・・
フェネック
「・・・春一番のこと~?」
咄嗟に口から出てきたのは子供騙しのような『間延びした言葉遣い』だった。
???
「1、2、3、なのダーー!」
相手は気にすることなくノってきた。
フェネック
「モノマネ芸人の話じゃないよ~ しかも古いよ~」 (今なら誰になるのだろう)
???
「そうなのか? とにかく助けてくれてありがとうなのだ。
・・・えーと、命の恩人の名前を教えて欲しいのだ」
フェネック
「別に助けてないけどね~ フェネックだよ~」
キュルル…
アライ
「あ、アライさんはアライさんというのだ!
アライさんは『けもの』だけどタヌキじゃないフレンズなのだ!」
腹を盛大に鳴らしたアライさんは何故か必死に自己紹介する。
アライ
「そう言えば全然食べてなかったのだ」
フェネック
「あ、じゃあコレ・・・」
一緒に出掛ける時のクセで、つい準備万端整えてしまっていたことに我ながら戸惑いつつ
懐からジャパリまんを1つ取り出すとアライさんに渡した。
アライ
「ありがとうなのだ!」
フェネック
「?」
すぐに齧り付くと思いきやアライさんはニコニコしたままこっちを見ている。
フェネック
「どうしたの~ 遠慮しないで食べなよ~」
アライ
「フェネックは食べないのか?」
フェネック
「・・・今は食欲が無くてね~」
実際、この1週間というもの空腹感はマヒしていた。
アライ
「ジャパリまんを食べて『元気出すかー!』なのだ」
そう言うとジャパリまんを千切って大きい方を差し出してきた。
ツッコミどころが多過ぎる・・・
とりあえずモノマネ芸人の話はもう引っ張らなくていいと思うがスルーして、
フェネック
「全部食べていいよ~」
それだけを言うに留めておいた。
しかし、
アライ 😆
「フェネックが食べないならアライさんも食べないのだ」 キュルル…
フェネック
「・・・」
受け取らないわけにはいかなくなった私は、差し出されたジャパリまんを手に取ると半分に千切り、
片方をアライさんの手に握らせると、自分の分のジャパリまんを一口齧ってみせる。
アライさんはそれを満足げに確認すると、自分も両手に持ったジャパリまんを一気に口に放り込んだ。
アライ
「むぐ… ぐ・・・ げほっ げっほ!」
盛大に噎せるアライさんを見て、スッと水筒を手渡した。
アライ
「んぐんぐ… ぷは~
死ぬかと思ったのだ」
フェネック
「気を付けてよね~ そんなに急いで食べるから~」
アライ
「フェネックは、まるでこうなることが分かってたかのように用意が良いのだ」
フェネック
「・・・」
パークは冬の時代を迎えていた。
長い間サンドスター山の噴火が起こらなかったせいだ。
2代目PPPが3人しか集まらなかった背景にも、そういった事情があった。
特に深刻だったのはライオンやヒグマといった強いフレンズが生まれなかったことだ。
(ジョーンズさんというチート級の宇宙人が居た世代もあったそうだが、この時期は母星に里帰りしていたらしい)
必然的にセルリアンによる被害が増大し、フレンズはどんどん数を減らしていた。
群れで対抗しようにも5人以上集まっていると決まって襲ってくる性質のオメガセルリアン(裏ボス)のせいで
博士たちからは『なるべく密にならないよう』通達が出る始末だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ある日のこと、私たちは毎年恒例のお花見をすることにした。(2人ならセーフだ)
その丘に向かっていると、歌声が聞こえてくる。
フェネック
「今日だったんだ」
このご時世では仕方ないことだったが、
2代目PPP解散コンサートの会場となった桜の丘は閑散としていた。
観客はソーシャルディスタンスを守るようキツく言い含められていたし、
多くのフレンズはボスネットでの配信ライブでの視聴を選んでいた。
♪ジャン、 ジャンジャジャン♬
\ドーーーン/
「なに!?」
「サンドスター山の方だよ」
「噴火!? 何年振りだろう?」
「もうちょっと早かったら…」
「紙テープとかクラッカーを用意しとけばよかったね」
こうして2代目PPPはサンドスター山の粋な演出で最後の花道を飾り、惜しまれつつ引退した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
偶然PPPの解散に立ち会った、その帰り道。
私たちは『例のセルリアン』に出くわしてしまう。
情けないことに私は立ち尽くし、『覚悟』を決めることしか出来なかった。
それを打ち破ったのはパートナーだった。
アライ
「ここは任せるのだ!
フェネックは会場に戻って、この事を知らせるのだ」
フェネック
「でも…」
アライ
「早くするのだ!」
私は急いでコンサート会場に戻ると、
思い出話に花を咲かせたり余韻に浸っていたフレンズ、
そして名残惜しそうにファンと交流しているPPPに例のセルリアンが出たことを伝え、避難を促した。
数分後、急いで取って返した私が目にしたのは、
満足したのか立ち去ろうとするセルリアンの後ろ姿と
元パートナーの変わり果てた姿だった。
アライ
「アライさんはそろそろ行くのだ。
ジャパリまん、ごちそうさまだったのだ」
フェネック
「どこに?」
慌てて引き留める。
アライ
「そうだ、フェネックは知らないか?
実は誰かと一緒に桜を見に行こうとしていた記憶はあるのだ。
だけど、それが誰で、どこに向かってたのかまでは思い出せないのだ」
薄々そんな気はしてたけど、記憶の引き継ぎはされていないらしい。
アライ
「そこに向かっている途中でモノマネ芸人に吹っ飛ばされたのだ」
もう記憶の改竄は進んでいる・・・
フェネック
「もしかして・・・ココ?」
思い出すだろうか?
アライさんは辺りを見渡す。
アライ
「おーー! 確かに記憶の通りの場所なのだ!
さすがはフェネックなのだ!」
どうやら『誰か』までは思い出せなかったらしい。
だけど、それほどショックではなかった。
アライ
「あーー! 散っているのだ!
どうしてなのだ・・・」 orz
物事には必ず『終わり』が来る。
でも一方で『始まり』や『再開』もある・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(うーがおー!)
そこに『例のセルリアン』が現れた。
突然のことに私は立ちすくんでしまう。
『覚悟』を決める余裕も無かった。
アライ
「フェネック! ここは任せて逃げるのだ!
フェネック
「!?」
私はアライさんにパートナーだった頃の記憶が残っているのかなんて、気にしてたのがバカらしくなった。
結構序盤から・・・いや再会した時からアライさんはアライさんだった。
だから言える。
フェネック
「冗談~ アライさんに付いてくよ~」
たとえ散るにしても、今度は一人で逝かせたりはしない。
アライ
「・・・分かったのだ。 でもどうすればいいのだ?」
フェネック
「・・・」
今度ばかりは策を用意するヒマなんて無かった・・・
「ジョーンズビーーーム!」
ぱっかーーーん!
勝負は一瞬で決まった。
ジョンーズ
「大丈夫ですか?
あ、申し遅れました。 今日からまたパークの調査のために赴任したジョーンズです。
よろしく」
アライ
「アライさんの見せ場が取られたのだぁっ!」
フェネック
「いや~ SSがリンクしていたおかげで助かったね~」
アライ
「メタいのだ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アライ
「ジョーンズさんは命の恩人なのだ。
是非お礼をしたいのだ。」
ジョーンズ
「それなら長に挨拶に行きたいので道を教えてくれませんか?」
アライ
「そんなのお安い御用なのだ!
ってフェネック、どう行くんだっけ・・・?」
私はパークの地図を渡しながら[としょかん]の場所を説明する。
ジョーンズ
「なるほど。 よく分かりました。
ではこれでチャラということにしましょう」
そう言うと颯爽と去っていった。
アライ
「すまーとでくーるなだんでぃなじぇんとるまんだったのだ」
今度、缶コーヒー『ボス』を差し入れしておこう・・・
\ドーーン!/
アライ
「のだーーー!」
サンドスター山が再び噴火をした。
その音に驚いたアライさんがひっくり返る。
フェネック
「もしかしたら・・・
太陽みたいなものかも~」
アライ
「なんのことなのだ?」
フェネック
「太陽は沈んでも見えなくなるだけで、朝になったら登ってくるでしょ~
1日で、という訳にはいかないけど桜もそうやってまた咲くんじゃないかな~」
アライ
「そうか・・・サンドスター山も活動再開、なのだ」
????
「あの・・・」
アライ
「なんだ?」
????
「伝説のアイドルPPPが解散しちゃったって本当?」
フェネック
「・・・ちょうど1週間前にね~」
????
「あぁ、やっぱり遅かったのね…」
アライ
「?
無くなったのならまた作ればいいのだ」
????
「❗ そうね、その手があったわね!
ありがとう。 そうと決まれば・・・」 …走
アライ
「なんだったのだ?」
フェネック
「ふっふっふーw」
「ぷは〜! ライブ明けの一杯は五臓六腑に染み渡るわね〜」 (>_<)
「おい、一杯どころじゃないじゃないか! ピッチが早過ぎるぞ」
「もう完全に出来上がってますよね」
・・・・・・
「♪〜 もうすぐは〜〜るですねえ ふんふ ふふふふ ふふぅふん」
「だらだらしても怒られない… 毎日が花見ならいいのに…」
・・・・・・・
アライ
「フェネック、ちょっと気になったのだ」
フェネック
「な〜に〜?」
アライ
「フェネックの喋り方って最初からそうだったのだ?」
フェネック
「さぁ〜 どうだったかな〜?
そう言えばアライさんと会ったのも、このくらいの時期だったね〜」
願掛けみたいな理由で始まった言葉遣いだったが、なんのことはない。
どこまでも付いて行けばよかっただけだった・・・
もうクセになってしまったので今更変えようとは思わないけど。
アライ
「そうだったのだ! あの時はモノマネ芸人に飛ばされて大変だったのだ」
フェネック
「そこまで完全に間違えて覚えちゃってたらフォローのしようが無いね〜」
アライ
「ふぇねっくぅぅぅ!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
サーバル
「あぁ、博士たち!
食べてるじゃなーい!」
博士「やべぇ」
助手「バレてしまったのです」
かばん
「博士たち!」
博士「シュ…」
助手「シュ…」
かばん
「今日はお花見だから大目に見ますけど明日からはきっちり1週間おやつ抜きですからね!」
アライ
「かばんさんは怒らせると怖かったのだ…」
フェネック
「意外だね~」
☁ポツ… ポツ・・・
ジョーンズ
「空模様が怪しくなってきましたね」
アライ
「じゃあそろそろ行くのだ」
フェネック
「はいよ~ アライさんについてくよ~
あ、ジョーンズさんコレ…」
つ缶コーヒー『ボス』
ジョーンズ
「はい?」
フェネック
「今度こそチャラだからね~」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジョーンズ
「缶コーヒー『ボス』の差し入れもあったことだし、私も1つ桜餅でも頂くとしようか・・・」
【このろくでもない、素晴らしき世界】
缶コーh…
アルパカ
「ジョーンズちゃぁん、和菓子を食べる時はお茶に限るよぉ〜
はい、どぅぞぉ〜」🍵
ジョーンズ
「・・・そうですね…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そう。
晴れの日がいつまでも続かないように花もいつかは散る。
そしていつかはまた花開く
私たちも、この先散り散りになることがあっても。
今度は私から会いに行く。
何度だって巡り会ってみせるから・・・
ー完ー
<リンクSS>
>> 5
>> 77
いい話かと思ったらただのジョーンズ無双じゃねーか!
と思ったら最終的にはいい話で面白かったです
時間が押して、思わずジョーンズに縋ってしまいましたw
結果的にトリプルリンクSSならでは、になったかと
良い話だなーそしてジョーンズ強すぎぃ!
やぱり伏線?管理が上手なフレンズですね
アラフェネは尊い。 ジョーンズはチート。 はっきり分かんだね。
ありがとうございます(後で修正出来なくなるので大変ですけどね)
二人にはそんな過去が…とても良いお話でした!
一期はキャラが立っているので「その後」の話も膨らませやすいですが、
「こんな過去が?」という話も作れるのが強いですね