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『こんにちはルェンさん』
「今日は何の用だ?」
『私が席を外している間、一人では暇を持て余すと思いまして...。貴女の為に遊び相手を連れてきました』
「クゥーン...」
「その子犬は?」
『この基地で番犬として飼育されているジャーマン・シェパードが居るのですが...。どのタイミングかはハッキリとしていませんが子供をもうけていたようでして。これは今朝、産まれた子ですよ』
「ヘッヘッヘッ」
「...可愛いな。名前はあるのか」
『プフィと名付けています』
「プフィか、何だか間の抜けた名前だな」
『可愛いでしょう?それと...、こちらの方もどうぞ』
「これは?」
『哲学の書です。空き時間に読んで感想文をまとめておいてください』
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「プフィ」
「ワンっ!!」
「プフィ」
「ワンっ!!ワンっ!!」
「よし、よくできた。お前は本当に賢いな」
「他にやることもないし本でも読むか...。『科学の倫理と人道生』著者は、アイツか...」
「?外が騒がしいな…」
『皆さん、余りはしゃいでは行けませんよ』
「すっげぇ!」
「そっちダメだって!」
ガチャッ
『おはようございます。ルェンさん』
「今日は何の用?」
『ルェンさん。外に行きましょう』
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『皆さん、あまり遠くに行ってはいけませんよ』
「はーい、院長先生!」
「しっぽー!」
「髪、きれい...」
「何故、私が子守りなど...。それに首につけられたコレ、微妙に邪魔なのだが」
『あぁ、そういえばまだ紹介していませんでしたね。この子達は私の運営する孤児院の子供たちです。それとチョーカーについては諦めてください。そういう取り決めですので』
「はぁ...、なら仕方ないか。諦めるとするよ。そういえば研究員以外にも色々やっていると言ってたな」
『えぇ、他にも老人介護施設と更生施設の運営も行っております。やることは多いですが、非常にやりがいがありますよ。ちなみに今貴女の尾に抱きついているのが連れてきた中で一番年少のエーミール。貴女の髪で三つ編みを作っているのがハンナ、皆の面倒をよく見てまわっているのがアデリナ、先程貴女へ対しスカート捲りを敢行したのがクラウスです』
「結構多いな」
『施設全体で見ればほんのひと握りですよ』
『さて、皆さん。今日は海岸のゴミ拾いを行いましょう』
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『結構集まりましたね。さて、皆さん。約束通りゴミ拾いの後はバーベキューを行います。それまで砂浜で自由に遊んでいただいて構いませんよ。何か困ったことがあれば私かエーゴンさんにご相談ください。それとあの柵より向こうに行っては行けませんよ?分かりましたね』
「「「「はーい!」」」」
『皆さん、本当に良い子ですね。準備が出来たらお呼びします』
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『それで...、ルェンさん。お話があるとのことでしたが...』
「率直に言うが...、ここキューバ グアンタナモのアルゴン基地だろう」
『これは、よく分かりましたね』
「ここに来るまでの道中で、収容キャンプらしきものを見たからな」
『えぇ、今の時期ですとイラク辺りの方が多いのではないでしょうか。無論、子供たちに見せるには少々刺激が強いのでなるべく避けるルートを通っては来ましたが...』
『今度は私が質問しても?』
「...、内容による」
『そこまで難しいことではありませんよ。私が聞きたいのは、他の人ならざる者の皆様についてです』
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『こんばんは。ルェンさん』
「また水滴刑か」
『えぇ、ですが今回は少々条件が異なります』
『こちらをご覧下さい』ピッ
ウィーン...、ガゴンッ
「ルェンさん...」
「嫌だッ!」
「何で...」
「先生ッ!」
「クゥーン...」
「待て、まさか首につけているのは...」
『えぇ。ゴミ拾いの際に貴女に身につけていただいた爆薬付きのチョーカーです。貴女が大きく身動ぎする度に圧力センサが反応する、という点は変わりませんが、今回センサの先に繋がっているのはカウントの計測器ではなく子供たちとプフィに装着したチョーカーです』
『順番としてはクラウス、ハンナ、アデリナ、エーミール、プフィとなっております。計測時間は前回と変わりません』
「そんな...、私先生に憧れて...。勉強だって頑張って。いつか先生の研究を手伝えるような科学者になりたかったのに...」
『えぇ、アデリナ。貴女の頑張りはよく知っています。貴女が私を手伝っくれようとしていることも。本当に感謝しています』
『他の皆さんにつきましても。あなた達の献身を忘れることはありません』
「先生...?」
「怖い...いやだ......」
『さぁ、ルェンさん。始めましょう。事故防止の為に猿轡をはめさせていただきますね』
「待て」
『?なんでしょう』
「お前は最初、人外を調べる時に我々人類の恒久的な利益の為と言っていたな」
『はい。それが何か?』
「一つ言っておく。お前はまだ、自分が人間のつもりで、人外である私の精神性を物珍しそうにみているのかもしれないが...。お前の精神性も大概に化け物のソレだぞ」
『?おっしゃる意味について分かりかねます』
「もういい...」
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実験結果のまとめ:
やはり私の推測に狂いはなかったようです。行ったのは初歩的な対照実験ではありますが充分な結果を得ることができました。最初に『ルェンさんの精神のあり方』を探る上で『殺人へ対する抵抗感』について調べた際に『抵抗感を抱いた素振りが一切なかった』ことを踏まえ、それ以外の存在へ対する反応を見るためにプフィを連れてきましたが...、興味深い結果を得ることができました。子供たち4人のチョーカーが起動するタイミングは計測器の時と比較し10~20秒ほどのタイムラグがあったものの、おおよそ計測器の際と変わりませんでした。しかし、順番がプフィの番になるとタイムがあからさまに伸びるどころか、制限時間いっぱいまで耐え抜きました。このことから、ルェンさんには独自の『優先順位』があると思われ...「おい」
『はい、何でしょう。今日の実験については以上となります。お疲れ様でした。明日の予定としては「...れた」』
『はい』
「いい加減疲れた...。そろそろ帰してくれ」
『...他にも試してみたいことは色々あったのですが、またの機会としますか』
細かい諸々
・ルェンさんは白衣を手に入れた!(怨念でもついてそう...)
・頭をかち割られた人→捕獲したモヒカンの一人。一通りの実験を済ませた後アッサリと56された。
・水滴刑→何かを聞き出すための拷問というより単純な検証のために行っている()
・台を強化→ルェンさんに台を壊されてしまったので、素材をタングステン合金鋼に、垂らす水をガリウムに変更した。
・子犬→ルェンさんがあまりにもアッサリとモヒカンをsatu★害したので生き物へ対する根本的な考え方が人とは違うのではないかと考え、用意したジャーマン・シェパードの子犬(名の由来は『供物』を意味するオプフェルから来ている)
・子供たち→色々と条件を変えて検証するために連れてきた(何人かいなくなったとしても他の施設利用者は『里親が見つかった』程度にしか考えないので遠慮なく連れてきた)
・ゴミ拾い&子守り→活動を通して、ルェンさんの思考パターンを読み解こうとしている(ちなみにゴミ拾いしていた海岸から1キロにも満たない地点でイラクから連れて来られた人々が激しい拷問を受けていたり...)
・やっぱり院長先生は『あくのかがくしゃ』だったんだ!!→ちなみに、別に残虐行為を好んでいる訳ではなく、単純にカウントに子供と子犬というワンクッションを挟むことで、記録にどれだけの違いが出るかについて検証しようとしている。
・1名様おかえりです→これ以上続けてしまうと飲み茶番に支障をきたししてしまいそうでしたので一旦終了としました(私自身もモルさんとの約束があるので)
追記:諸々の都合でカットした描写もあるので時を見計らって追加していこうかと...。
ミーナ……、やはり殺しておくべきだったっ!(メタルギア雷電風)
ルェン「あんた……、ただの外務宰相じゃ…」