「…ああ、畜生! あと少しで公海だってのに!」
「まだだ、まだ終わってない! 全力で機体を制御してなんとかそこまで飛ぶ!」
機体のあちこちが火を噴き、警報音が大音量で響いている。
『高度150m、直ちに上昇してください。』
『高度140m、直ちに上昇してください。』
『高度130m、直ちに上昇―――』
「おい、誰かこの警報を黙らせろ! 頭がおかしくなりそうだ!」
「黙ってろ! 気が散る!
…いいか、よく聞け! この速度だと、あと少しで公海に到着できる!
そこまで逃げ切れば、完全にこっちの勝ちだ!」
「そうなら、とっととそこまで飛べ!」
『高度100m―』
「おい、機体の一部がすっ飛んだぞ!
本当に大丈夫なんだろうな!?」
「安心しろ! ちゃんと着地させる!」
『高度60m―』
「公海まであと10mだ! このまま逃げ切れるぞ!」
「銃弾が飛び交ってるのにか!?」
「いいから黙れ!」
『高度20mー』
「…公海まであと5m」
『高度15mー』
「…やった! 公海だ!」
「おい、本当か!?」
「ああ、そうだ!」
「逃げ切れたんだな!?」
「多分な! …ただ、このままだと着水する! 失敗したら全滅だ!」
「いいか、確実に成功させろ! こっちはもう2名やられてる、もう後がない!」
『高度5mー』
「…着水するぞ! 伏せろ!」
…衝撃。 強烈な負担がかかり、あちこちの部品が外れる。
……しばらくして目を開けると、機体はなんとか海面に浮いている。
どうやら助かったようだ…。
通報 ...
…海面に浮かんでいる機体の遠くに、1機の弾痕だらけのヘリコプターがホバリングしている。
機体には数門の機銃が装備されているが、いくつかは長時間の射撃により銃身が溶けていた。
「……負けたな」
「…え?」
「あいつらが公海に入った。
これ以上追いかけたら、今度はこっちが問題を引き起こす羽目になるぞ。」
「し、しかし…」
「いいから離脱しろ」
「…了解しました、隊長。離脱します。」
そう言うが早いが、ヘリは機首を170度旋回させて今来た道を戻っていく。
…ふと外を見てみると、きれいな朝日が昇っていた。
一体何時間眠っていないんだろうか…。
「ああ、眠い…」