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第1章
[4話 みずべちほー] ~すれ違う想い~
翌日・・・
いつものように練習場に向かおうとすると、1人のフレンズが待ち受けていた
確か・・・
アナツバメ
「昨日は『アイドルごっこ』なんて言ってごめんなさい」
プリンセス
「あなた・・・ わざわざ?」
❗
アナツバメの後ろの方で取り巻きたちが物陰から監視していた。
・・・そういうことか。
そう言えば、さっきの謝罪にも若干ゃ心がこもってなかったように聞こえた。
でも、どんな形であれ謝ったこと自体は評価すべきだろう。
「ちょっと待ってて」
そう言うと、私は中に入り、楽屋で『あるもの』を手に取り、戻ってくる。
アナツバメは所在無さげにしていた。
取り巻きたちは、今や身を乗り出して、こちらの様子を気にしている。
プリンセス
「はい、これ」
ぺらっ×2枚 『ペパププラチナチケット リハーサル見学付き』
アナツバメ
「これは?」
プリンセス
「私たちの『本気』を見てから評価してちょうだい。
あとパートナーは1人に絞ること」
アナツバメ
「・・・」
アナツバメは(どちらに対してなのか)イヤそうな顔をしていたが、
私がチケットを差し出したまま動かないので、渋々受け取った。
アナツバメ
「じゃあ僕も。 代わりにコレを・・・」
つ💎
プリンセス
「ちょっと! こんなの(どちらの意味でも)受け取れないわよ」
だけどアナツバメは無理矢理 私の手にダイヤを握らせると、
逃げるように取り巻きたちの方に駆けていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・仕方ない。
次会った時に返すことにしよう。
それにしたって...せめて💍とかにしてくれたらいいのに。
このままじゃ失くしたり、落としたりしそう・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうしたのだろう?
いつも通り1時間ほど早く来て、振り付けやセリフの確認をしていた私だが、
違和感に耐え切れず、練習を中断する。
プリンセス
「そこで何をしてるの? マーゲイ」
取り敢えず、その1つを確かめようと声を掛ける。
マーゲイ
「ぴやぁぁ!」
どこぞの『セーラー服・メガネっ娘・知識おたくキャラ』のような奇声を上げる。
ドアの隙間からボスカメラで盗撮(?)していたのだ。
マーゲイ
「こ、これはですねぇ…
コウテイさんに頼まれまして...」
プリンセス
「・・・」
マーゲイ
「えっと… そう! メイキングビデオの撮影ですよ!」
コウテイが? 珍しいこともあるものだ。
とは言え、企画・立案は、主に私かマーゲイからがほとんどで、
コウテイが主導することなど ほぼ無い。
どういうことなのだろう?
プリンセス
「だったら堂々と撮ればいいじゃない」
マーゲイ
「それじゃヤラセっぽくなるじゃないですか。
普段 人に見せない努力というものをですね…」
プリンセス ┐(´~`)┌
「好きになさい。 それより・・・」
これ以上マーゲイをつついても、本当のことを話すつもりは無いようだ。
もしくは理由を聞かされてない可能性もある。
その辺りは後でコウテイに聞くことにして...追及の矛先を変える。
プリンセス
「もう集合時間なのに誰も来ないんだけど?」
ジェーンはだいたい5分前、イワビーは大抵 時間ギリギリ、フルルは不定期(たまに遅刻)
でもコウテイだけは必ず10分前には来ていたはずだ。
プリンセス
「あなた、何か聞いてる?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ーと、その時、
コウテイ
「今日の練習は休みにした。
マーゲイ、君も今日は帰っていいぞ。
あ、その映像だけ... 頼む」
マーゲイ
「はい」
マーゲイは、そそくさと去り、入れ替わりにコウテイが入ってくる。
プリンセス
「ちょっと、休みだなんて何を勝手なことを...」
コウテイ
「君への連絡が遅れたことは謝る。
だがこれは、PPPのリーダーとして必要なことだと思ったからだ。
君と折り入って話したいことがあったので、こういう形を取らせてもらった」
プリンセス
「何よ改まって。
それに、私が言いたかったのは、
こんな時期に練習を休むなんて、間に合わなくなるわよ、と…」
コウテイ
「今回の公演は・・・
延期にしようと思う」
プリンセス
「❗❓
今日はタイリク先生も呼んであるって…」
コウテイ
「そうだったな。 そちらにも謝らなくてはな」
プリンセス
「お客さんにはどう説明するの? (アナツバメにもチケットをあげちゃったのに)」
コウテイ
「幸い日時や内容は、まだ公表していない。
問題はないだろう。
どうしてもというなら、ミュージカルだけをヤメて、いつも通りのライブでも・・・」
プリンセス
「それじゃあ『新しいこと』をしよう、っていう今までの・・・
そう! この物語は茶番だった、とでも言うの?
それとも、ここで失踪するの?」
コウテイ
「作者には、きっと考えがあってのことだろう。
読者だって多少ざわつくかもしれないが・・・
分かってくれるさ」
コウテイは、しれっと差し込んだメタ発言にも動じない。
プリンセス
「トップアイドルとしての地位が脅かされるわよ?」
コウテイ
「私たち自身のレベルアップのため、という意味で この企画に賛成だったが、
他のアイドルたちと競争をしていたつもりは無い。
そもそも『なに』で比較するんだ?
喜んでくれるフレンズが1人でも居れば、それでいいじゃないか」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
プリンセス
「・・・」
コウテイ
「君は... 何をそんなに焦っているんだ?」
そう言うコウテイは、どこまでも落ち着いていた。尤 もだった。
コウテイの言うことは、いちいち
逆に私は不安を覚えていた。 今も、これまでも…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
思えば私は、誰よりも努力して、歌や振り付けをいち早くマスターし、それを伝えてきた。
新しいアイデアを出してチームを牽引もしてきた。
それもこれも「自分はみんなの役に立っている」と、自負したかったからだ…
けれど、果たしてそれは、本当に皆のためになっていただろうか?
自己満足に過ぎなかったのでは...?
そしてコウテイは、何を言うつもり…なの?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コウテイ
「思えば、
今まで私たちは、君に頼りすぎていた…
一度、自分たちの力だけでやってみたいんだ。
おかげで個々の問題点は分かっているし。
君の練習の様子は借りるんだけどなw」
なに? 何を言ってるの?
コウテイ
「幸い君のパートは進んでいる。
しばらく休んでも取り戻せるだろう。
ブランクを開けるのが心配だ、というなら自主練習をする分には構わないし、
練習場も好きに使ってくれて…」
プリンセス「私は! 私は必要ないってこと…?」
コウテイ
「・・・
今は そうだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は絶句した。
何でもいい。 いつものように言い返したかったが、言葉が出ない…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まるで時間が止まったかのようだった…
動き出す気配もない。
居たたまれなくなって、思わず楽屋を飛び出した。
「❗ プリンセス!?」
コウテイの声を背中で聞きながら、私は走った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
逃げちゃダメだ!
逃げてどうなるものでもない。
そんなことは頭では分かっていても止まれなかった。
コウテイが次に口にするかもしれない『決定的なセリフ』を聞きたくなかったのかもしれない。
そのまま建物の外に飛び出す。
そこにはジャパリバスが停まっていた。
かばん「あ、プリンセスさん。 タイリクさんを連れてきたんd…」
目の前にバスのボディーが迫る!
💥
時間が飛んだ。
次の瞬間、私は地面に横たわっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ボス
「アワワワ…」
かばん
「大丈夫ですか!? プリンセスさーん!」
周りの声はかろうじて聞こえるが、目の前は昏 い。
サーバル
「かばんちゃん、バスに乗せて、としょかんに連れて行こう...
ってボスがまた…」
タイリク
「頭を強く打っている可能性がある。 下手に動かさない方がいい」
アミメ
「じゃあ、ボスウォッチで博士たちを呼びましょう...
ってボスがまた…」
体が異常にだるく、思うように動かせない。
かばん
「アミメさん、チョークでプリンセスさんの周りを囲わないでください。
サーバルちゃんも番号札を立てないで...」
何が間違っていたんだろう?
時間を巻き戻すことが出来たなら・・・
そんな思いが脳裏を巡る。
走馬灯とやらは見えなかった。
コウテイ
「プリンセス! プリンセスー!」
お芝居でも それぐらい真に迫った演技をしなさいよ、とか
こんなのなんでもないわよ、とか言ってあげたいが、声が出ない。
タイリク
「コウテイくん、あまり体を揺するな」
こんなに取り乱したコウテイは初めてで、こんな時だというのに おかしかった。
そんなどうでもいいことが頭をよぎる...
かばん
「そうだ、コウテイさん。 僕が昨日お貸ししたボスウォッチを持ってますか?
それで博士を呼びましょう」
コウテイ
「分かった。 取ってくる」
ボスウォッチ…?
コウテイは、かばんからそれを借りて、何をするつもりだったのかしら…?
今更そんな疑問が思い浮かんだが、
考えは まとまらない まま
意識は暗転した...
・・・・・・・・・・・・・・・
???
「アワワワ…」
???
「気にしなくて大丈夫よ。 ぶつかってきたのは この子の方なんだから」
???
「でもパークガイドたる私が、フレンズさんに危害を加えるなんて…」
???
「へーきへーき 夜行性だから!」 b
???
「そりゃアンタはそうかもしれないけど、この子はきっと違うと思うわよ?」
「う…」
目を覚ました私が見たのは知らない
天井景色だった。ミライ
「大丈夫ですか? 私はパークガイドのミライ」
カラカル
「わたしはカラカル。 急に飛び出しちゃ危ないじゃない。
フレンズじゃなかったら死んじゃってたかもよ?」
サーバル
「私はサーバル! ここはジャパリパークだよ(すしざんまい)
あなたは何のフレンズ?」
ミライ
「見たところ・・・ ロイヤルペンギンさんのようですね」
サーバル
「じゃあロイヤルで!」
カラカル
「そのまんまじゃない」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夢でも見ているのだろうか?
どうやらここは「さばんなちほー」のようだ。
サーバル・・・ それは分かる。
なんで初対面のような挨拶なのかは引っ掛かるけど…
そしてカラカルと名乗る、見たことのないフレンズ。
そこまではまだ、いいとしよう。
ミライ?
確かにそう言った。
今は居るはずのない絶滅したはずのヒト… よね?
頭が混乱した。
私は思わず叫んだ!
「ここはどこ!?」
サーバル
「だからジャパリパークだってば」
ー 第1章 完 ー