#アムトラ編
#イエイヌ編 Ⅰ
#イエイヌ編 Ⅱ
#イエイヌ編 Ⅲ
【けものフレンズ I2】
12、i+i話 ~帰るべき場所~
思っていたのとは かなり違う形とはいえ、ヒトが帰って来てくれたこと、
なぜかビースト(?)さんが一緒にいること、
そして何より・・・
ともえ
「だから明日、博士の所に習いに行こう!」
・・・長い間なかった出掛ける『予定』があるということ。
その晩、私は「ピクニック」の前の日のように興奮していて、なかなか寝付けませんでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ともえ
「はい、 ・・・で行きますんで」
どこからか声が聞こえます。
そう言えば、昨日から ともえさんたちが泊まっていたんでしたね。
イエイヌ
「おはようございます。 早いですね」
ともえ
「おはよう。 ・・・ちょっとね」
そう挨拶を交わしたものの、リビングには ともえさん一人しかいませんでした。
一体誰と話していたんでしょう?
ともえ
「お散歩にでも行こうか」
イエイヌ
#「え?」
思わずしっぽが疼きます。
でも・・・
イエイヌ
「アムトラさんが…」
まだ寝ているようですが,顔が見えないせいもあって、なかなか警戒心が解けません。
ともえ
「アムトラちゃん、朝はゼンゼヨワイーからねー
しばらくは寝かしておいてあげよう。
それよりあたしと散歩には行きたくない?」
またです。
ともえさんは なぜか私の意思を確認します。
命令するか、せめてリーダーシップを取ってくれた方がこちらとしても楽なのですが・・・
イエイヌ
「いえ、お願いします」
ともえ
「・・・
じゃあ行こう」
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お散歩に出てもギクシャクした空気は続きました。
ともえ
「あたし生まれたばかりでパークには詳しくないから、イエイヌちゃんの行きたいところでいいよ」
そう言って先を歩いてくれません。
仕方なく近くの広い空き地でフリスビーを投げてもらおうとしたのですが、
ともえ
「えいっ! あれ…?」
思うように飛びません。
ともえ
「ごめんね。 お絵描きだったら自信あるんだけどなぁ…」
ヒトは投擲能力に優れているのではなかったのでしょうか?
そういう疑問が浮かびましたが、得意なものはフレンズによっても違います。
照れ笑いを浮かべながらとはいえ、謝られると何も言えません。
その日は気まずい雰囲気のまま帰ることにしました。
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おうちに帰るとアムトラさんはまだ寝ていました。
ともえさんは「ほらね」とばかりにウィンクしました。
ともえ
「よし! 朝ごはんを食べに行こう!」
イエイヌ
「え…?」
ジャパリまんを運びかけていた私は、衝撃の光景を目にします。
ともえ
「アムトラちゃん、起きて。
出掛けるよ?」
ともえさんはアムトラさんの体をゆっさゆっさと揺さぶっていました。
イエイヌ
「アワワワ…」
大型のネコ科(しかも元ビースト)の寝起きを邪魔するなんて命知らずな…
噛まれたりしたらどうするんでしょう?
アムトラ
「う…ん・・・ 何だ、朝っぱらから。
勝手に行けばいいだろ?」
どうやら目を覚ましてはいたものの、
起き上がらずにいたらしいアムトラさんは無下に断ります。
ともえ
「ダメだよ。
この企画にはアムトラちゃんが必要不可欠なんだから!」
片腕を掴み、無理にでも連れて行こうとします。
アムトラ
「あ~ 分かった。 分かったから引っ張るな!」
アムトラは根負けしたのか、面倒くさそうに起きてきました。
ともえ
「よーし! かばんさんの家に出発進行ジャパリパーク!」
・・・ ・・・ ・・・
OPが始まるでもなく、3人でポーズをキメるでもなく・・・
私は呆気に取られていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
博士
「かばんが『いつでも連絡してきてね』と言ったからといって、
朝も早くからボスウォッチを掛けてくるとは何事です。 まったく」
助手
「非常識にもほどがあるのです。 まったく」
かばん
「まあまあ。 一応アポを取ったんですからいいじゃないですか」
ああ。 朝のは そういうことだったんですね。
それにしても・・・
博士
「しかも紅茶の淹れ方を教えてやって欲しい、ですか?」
そっちは話を通していたわけじゃなかったんですね・・・
ともえ
「ホントは私がメインの予定だったんだんですけど、ちょっと事情が変わって・・・
なのでイエイヌちゃんだけですけど、お願いします」
助手
「こっちの事情はお構いなしですか・・・」
ともえ
「ーというわけなんだけどいいかな?
イヤなら断ってくれても・・・」
また・・・
ともえさんは私に尋ねます。
博士
「・・・ 許可を得る順番が間違ってませんか?」
でも、ともえさんが望むのなら・・・
イエイヌ
「お願いします。
私に紅茶の淹れ方を教えてください」
助手
「・・・ いいでしょう
ただしパークの掟は『ぎぶ&ていく』
対価としてジャパリまんを寄越すのです。
とりあえず2つもあれば・・・」
かばんさんは、さっきからアムトラさんの尻尾を眺めたり、モフモフしていました。
それでいて時折、野生開放しそうな目でこちらを見ています。
アムトラさんは迷惑そうに、されるがままになっていました。
イエイヌ
「あ・・・ 今、手持ちのモノは…
おうちに帰r…」
ともえ
「無一まんのあたしに対価を要求するんですか?」
ともえさんが、そう言って私のセリフを遮ります。
私は驚きました。
そこまで物怖じせず、長にズケズケものを言うフレンズなど聞いたことがなかったからです。
博士たちも一瞬、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていましたが、
博士
「・・・ 前払いが基本なのですが、確かにお前の言うことも一理ありますね」
助手
「・・・ 出世払いでいいでしょう。 ツケておいてやるのです」
話は付いたようですが、見ているこっちの方がヒヤヒヤします。
ともえ
「ありがとうございます。 じゃあイエイヌちゃん頑張ってね。
かばんさん、お願いします」
そう言うと、外に出て行きました。
かばんさんはアムトラさんのしっぽを名残惜しそうに見ながら、付いて行きました。
ようやく解放されたアムトラさんは体をほぐすように伸びをすると、
「寝直す」
と仏頂面で言い、そのまま床に寝そべろうとしましたが、
博士「そんなところで寝ないのです」
助手「部屋があるので、好きに使うのです」
そう言われて、奥に行きました。
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イエイヌ
「今までは、その辺で拾った色の似た枯れ草なんかを・・・」
博士
「それでは美味しくないはずなのです。
これからは、言えば分けてやるのです」
イエイヌ
「ありがとうございます!」
助手
「紅茶は発酵させたツバキ科の葉を使うのが基本なのです。
アルパカはハーブティーも手掛けているようですが・・・」
イエイヌ
「アルパカ…さん?」
博士
「我々の一番弟子なのです」
助手
「ジャパリカフェのマスターなのです」
イエイヌ
「ジャパリカフェ・・・」
博士
「こうざんに店を構えているので、興味があるなら行ってみるのです」
助手
「お客が増えると喜ぶのです」
おうちに帰ると、博士たちからもらった葉で早速#紅茶を淹れてみました。
ともえさんはニコニコしながら美味しいと言ってくれました。
アムトラさんは・・・相変わらず無表情でしたが、残さず飲んでくれました。
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翌日。
私は思い切って、お願いしてみることにしました。
イエイヌ
「あの・・・」
ともえ
「なに?」
イエイヌ
「ジャパリカフェ?…に行ってみたいのですが・・・」
ともえ
「その気になってくれたんだね。 嬉しい!
うん、うん。 どうぞいってらっしゃい」
イエイヌ
「え…?」
としょかんの時のように連れて行ってくれると思った私は、戸惑いました。
ともえ
「ん?」
・・・ そんな気はさらさら無いようです。
でも勝手に期待をしておいてそれを押し付けるのも、おこがましい気がしました。
イエイヌ
「いえ… 行ってきますね」
ともえ
「お留守番は任せて!」
私は初めての場所に一人で行く不安を抱えながら出掛けることになりました。
ともえ「はい、そうです。 はい・・・」
どこかにボスウォッチを掛けているのが聞こえていました。
きっと私なんかと出掛けるより大事な用事があるのでしょう・・・
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#アルパカ
「いやぁ 待ってたよぉ~」
イエイヌ
「え・・・?」
アルパカ
「今日はメイドカフェデーなのぉ~
でもトキちゃんもショウジョウちゃんも都合が付かないらしくてにぇ~
お手伝いしてくれるなんて助かるな~
はい、イエイヌちゃんの衣装はコレにぇ~」
店に入った途端、畳みかけるように喋り掛けられ、
沸き上がった疑問も差し挟む余地がありません。
あれよあれよとメイド服?…を #着付けられてしまいました。
アルパカ
「ふわぁ~ かわいいにぇ~ すんごい似合ってるゅぉ~」
イエイヌ
「///」
そうこう言っているうちに・・・
「こんにちはー」
「私いつものねー」
「あれ、今日はメイドデーだったんだ。 かわいい~」
「なになに? 新人ウェイトレスさん?」
開店と同時に次々フレンズが訪れ、あっという間に店はいっぱいになりました。
アルパカ
「はい、紅茶を1番テーブル」
「ハーブティーはテラスのお客様ね」
「3番テーブルのカップを下げてきてくれる?」
先ほどのゆったりした喋り方と、ほーげん?はどこへやら。
仕事モードのマスターは、てきぱきと指示を飛ばします。
私は慣れない作業に、終始てんてこ舞いでした。
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アルパカ
「大変だったでしょ~ お疲れ様~」
閉店後、アルパカさんは そういって紅茶を淹れてくれました。
イエイヌ
「ふぁぁ~」
とても美味しくて、知らず知らず張り詰めていた力が、体じゅうから抜けました。
アルパカ
「疲れが取れるお茶だょ~
いやぁ~ おかげで助かったゅぉ~
後で、ともえちゃん?…にもお礼を言っとかないとにぇ~」
イエイヌ
「? どういうことですか?」
アルパカ
「ボスウォッチで『イエイヌちゃんが来るから紅茶をごちそうしてあげてね』
って連絡もらってにぇ~
今日は忙しいからって言ったんだけど、
『じゃあイエイヌちゃんが、いいって言ったら、お店体験をさせてあげて下さい』
って言ってくれてにぇ~
あら~? そう言えばお手伝いしてもらえるか聞いてなかったにぇ~
ごめんにぇ~」
イエイヌ
「いえ、大丈夫です。 楽しかったです」
ああ、そんな話を通してくれていたんですね。
相変わらず、私の了承は得ていませんが…
アルパカ
「それじゃあ良かったよぉ~
今度はお客さんとして来てくれると嬉しぃな~」
イエイヌ
「はい。 ぜひ!」
アルパカ
「あとコレ。
頑張ってくれたお礼にあげるゅぉ~」
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おうちが近付くにつれ、なぜか緊張してきました。
今まではずっと独りで「待つ側」でしたし、
どこかに出掛けたとしても「誰もいない家」に帰るだけだったからです。
イエイヌ
「た… ただいま帰りました」
自分の家なのに、そ~っとドアを開け、恐る恐る声を掛けます。
ともえ
「おかえり~」
ゾクゾク…
なんでしょう? この感覚は…
いつも「言う側」だったので違和感があります・・・が、
ともえ
「ほら、アムトラちゃんも」
アムトラ
「・・・ おかえり…」
ゾクゾク…
くすぐったいような、むずがゆいような・・・
でも決してイヤ感じではありませんでした。
私はカフェに通うようになりました。
お客さんとして、そして忙しい時はウェイトレスもしました。
トキさんやショウジョウトキさんが居る時は、
厨房に入って紅茶の淹れ方を教わることもありました。
そして・・・
おうちに帰ると、ともえさんたちが「おかえり」を言ってくれました。
出迎えてくれる人がいる、というのがこんなに温かいとは思っていませんでした。
久しぶりに「あの日」の夢を見ました。
夕焼けの中で「お別れ」をしたあの日・・・
私は久しぶりに金庫を開けて「例の絵」を眺めていました。
ともえさんたちが来てからというもの、いろんなことがあって・・・
忘れていました。
指示を守ろうと。 ヒトが帰るのを待ち続けようと。
決めたはずだったのに。
それでも思い出は色褪せていってしまいます…
この絵のように・・・
私も、こうやって変わっていってしまうのでしょうか?
変わっていくということは・・・
~次回 完結~
メイドイエイヌちゃんかわいいなぁ~
と、いうか そこらへんの雑草でお茶を入れていたとは…中々の強者ですね💦
日々変わって行く事も、そんなに悪いことじゃないんですよ
でも今まで大切にしていたものがどんどん古くなって、少しづつ記憶から薄れて行ってしまうことは
ちょっと寂しい気持ちにもなりますよね
雑草茶は動物がヒトの見よう見まねをしたら、そうなるかなと思って・・・
当時は(イエイヌの性格上も)、「やってみたーい」とはならなかったでしょうし。
「あの頃は良かった」は美化も加わって、しがみつきたくなる。
でもそれは自縄自縛に陥りかねない、そういう葛藤を書いてみました。