【けものフレンズ I2】
12、i+i話 ~帰るべき場所~
私が一緒に行くことを断ってしまったから、だけではないでしょうが、
この1週間ほどの隊長は、フレンズ思いなのもあって周囲に心配を掛けまいと、
意識して笑顔を作っているようでした。
ヒトの心を読むのが得意なイエイヌのフレンズである私には そういうところや、
内面の寂しさや悔しさが、手に取るように分かっていました。
どうすれば隊長は心から笑ってくれるのでしょう?
~園長室~
イエイヌ
「園長、お話というのは・・・?」
トワ
「そのことですが、
私は現時点を持って園長を辞することになりました。
後任には隊長ことイマドキくんを臨時園長として指名します。
彼には伝えていませんが・・・
パークにおける全権を委譲するので、以降は彼の指示に従ってあげてください。
ただし期限は今日いっぱい。
明日には全職員がここを去ることになるので、一切の命令・指示は効力を失います。
あとは『自由』になさってください。
報告は以上です。 なにか質問は?」
イエイヌ
「ありません。 オーダーすべて了解です」 (`・ω・´)ゞ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
園長室を出た私は、隊長 もとい臨時園長の指示で貨物船に乗り込むことになりました。
その後『おうちにおかえり』という命令を受けてパークに戻ることになりました。
その間、どのような心境の変化があったのかは分かりませんが、何か吹っ切れた様子で・・・
最後は いつものフレンズ思いな、心からの優しい顔でした。
翌日、聞いていた通りヒトはパークから去っていきました。
残された私は。 『自由にしていい』と言われた私は、戸惑いました。
他のフレンズたちも同様のようで、長である博士たちのところに集まっていました。
博士
「自由とは『好きにしていい』という意味なのです」
フレンズA
「ヒトは戻ってくるの?」
助手
「それは分かりません」
フレンズB
「別に戻ってこなくてもいいだろう」
博士
「なんにせよパークのことは、我々に委ねられました」
助手
「フレンズの身はフレンズで守るのです」
フレンズたちのヒトへの思い、今後の方針は十人十色でした。
セルリアンとの戦いを続ける者、フレンズを守るために奔走する者、
遊びに耽る者、やりたいことを見つけるために旅に出る者、
相変わらず、どうしていいか迷っている者・・・
そんな中、私は・・・
隊長
「よし、よくやったぞ。 イエイヌ」
イエイヌ
「えへへ…」
作戦が上手くいって褒めてくれた時の、あの優しい顔・・・
イエイヌ「好きにしていいなら・・・」
私は指示を守ることを決め、ヒトが帰るのを待ち続けることにしたのでした。
思い出に浸っていた私はノックの音で我に返りました。
がちゃ…
ともえ
「こんにちは~!」
ドアを開けると、そこに並んで立っていたのはヒト・・・
アムトラ
「・・・」
・・・と、ビースト!?
イエイヌ
「離れていて下さい!」
ともえ
「いや、この子はもう…」
私は、2人の間に割って入ろうとするが、ヒトは何故か私を止めようとする。
イエイヌ
「離してください!」
ともえ
「だから大丈夫だって…」
そんなやりとりをしている間も、なぜかビーストは襲ってくるわけでもなく、無表情で私たちを見ていました。
そうこうしているうちに私とヒトは、もつれあい、#倒れ込んでしまいました
ともえ「食べていい?」
覆いかぶさる態勢になったヒトが言いました。
イエイヌ「た…食べないでください・・・」
貞操の危機なのだ! を感じて、私はそう返しました。
アムトラ
「冗談はその辺にしておけ」
ともえ「ちぇ~」
表面上は軽く、それでいて残念そうに言って、どいた。
本当に冗談だったんでしょうか?
ある意味ビーストより危ないんじゃないでしょうか? このヒト・・・
アムトラ
「・・・」
ふと気付くと、ビーストが私を睨んでいました。
このヒトの言う通り、以前のビーストとは違うようですが、
ボロボロにされた時のことは記憶に新しく、見下ろされるとやはり委縮してしまいます。
ともえ
「ほら、そんな顔してると『睨まれてる』って勘違いされちゃうよ?」
え・・・?
アムトラ
「・・・ ただ見ていただけだ…」
そう言うとビーストは目線を外しました。
確かに殺気は感じられなかったし、あの時は強く感じた「怒りや悲しみ」も伝わってきませんでしたけど・・・
一体この2人はどういう関係性なのでしょう?
ともえ
「とりあえず中に入れてくれない?
説明するからさ」
ヒトにはマウンティングを取られ、ビーストとの格付けも済んでいる以上、
断る、という選択肢はありませんでした。
片付け忘れていたお茶のセットを目ざとく見つけたヒトが、そう言いました
イエイヌ
「すいません。
すぐに・・・」
ともえ
「いいよ、いいよ、ちょうど喉が渇いてたから。
頂きまーす!」
アムトラ
「さっきと言ってることが。 それに・・・」
ごくごく…
ポットに残っていた紅茶を自分でカップに注ぐと一気にあおりました。
イエイヌ
「え? え!?」
タン!
ともえ
「うーん、マズい!」
イエイヌ
「うぅ…」
普通に淹れてもイマイチという評価だったのに、冷めた状態で飲んでも美味しくないのは当然でしょう。
それよりも、あまりの展開の早さについて行けません。
アムトラ
「#おい!
それはないだろ!」
なぜかビーストの方がフォロー(?)してくれます。
何があって大人しく このヒトに付き従っているのでしょう?
ともえ
「おぉ… 怖い・・・
あ、ごめんね。 勝手に飲んだ上に失礼なこと言っちゃって」
ん?
上下関係が分からなくなってきました。
さっきからビーストがヒトをたしなめ、ヒトは素直にそれを受け入れています。
イエイヌ
「いえ、いいんです。 本当のことですから。
どうせ誰も飲んでくれないし…」
ともえ
「そんなことないよ!
これからあたしたちが毎日飲むんだから」
イエイヌ「!?」
アムトラ「!?」
ともえ
「だから明日、博士の所に紅茶の淹れ方を習いに行こう!」
イエイヌ
「え? え!?」
何が何やら。
一度にいろんなことが起こって頭の整理が追い付きません。
アムトラ
「だから話に脈絡が無さすぎだろ! 毎日ってどういうことだ。
ここに通うつもりか?」
ともえ
「あれ? 言ってなかったっけ?
あたしたちもここに住みたいなぁって。
ん~ 憧れの屋根のある暮らし・・・」
アムトラ
「いや、オレは野宿でも・・・」
ともえ
「袖振り合うも他生の縁。
ここまで一緒に旅してきたんだから、一緒に住んでも問題ないよね」
アムトラ
「・・・
見たところ、他にも家はあったようだが?」
困惑して言葉も出ない私を横目にビーストが食い下がります。
ボス
「ピピ…
ラッキーネットワークの情報によると、
長い間、居住実績がないので電気は通ってないし、掃除にも行ってないみたいだヨ」
イエイヌ
「ウワァァァァ! シャベッタァァァァァ」
ともえ
「お。 お約束だね」
ボスとお話しているということは、やっぱりヒト・・・
ともえ
「ねぇ、この家の主として私たちを受け入れてくれる?
まあ、こっちはあくまでお願いする立場だから、迷惑なんだったら、そう言ってくれていいんだけど。
別を当たるから」
またです。
このヒトは あくまで下手に出て、今度は私に判断を委ねようとしています。
確かに この状況で「今日からあたしがこの家の主だ」と言い出すのも変でしょうし、
ビーストも良い顔をしないだろうことは予想が付きますが・・・
かと言って「命令してください」っていうのも変な気がしました。
イエイヌ
「いえ、迷惑だなんて。
・・・ ぜひ泊まっていってください」
そう言うのが精一杯でした。
ともえ
「・・・ ちょっと気になる言い方だけど、まあいいか。
宿ゲットだね!」
アムトラ
「・・・」
ともえ
「そう言えば自己紹介もしてなかったね。
あたしは『ともえ』
あなたのお名前は?」
イエイヌ
「イエイヌ…です」
ともえ
「イエイヌ・・・イニシャル『I』だね。
このSSの『I』には『if』と『ieinu』っていう意味が込められてるんだって」
イエイヌ
(メタネタ・・・)
ともえ
「あと、この子はアムールトラ アムトラちゃんでいいよ」
アムトラ
「・・・」
ともえ
「それからボス」
ボスウォッチ
「ヨロシク」
イエイヌ
「・・・」
待ちに待った・・・
はずだったヒト…
押しが強いのか弱いのか分からなくて、すっかり調子が狂いました。
そう言えば、自己紹介もさらっと終わってしまって、
ともえさんとアムトラさんの関係は分からずじまいでした。
上下関係は無さそうですし、おともだち…でもなさそうです。
でも一緒に行動している・・・ 一体どういうコンビなんでしょう?
そして・・・
ともえ
「つまりはこれから #どうかよろしくね」
イエイヌ
「!?」
私たちの関係はこれからどうなっていくのでしょう・・・?
~to be continued~
アムトラさんはちゃんと空気の読める良識フレンズだったのです
3人の同居生活楽しそうですね
アムトラちゃんはビースト化していたとはいえ、元はフレンズですからね
この三者三様の同居が、今後どんな化学変化を起こすのか?