【けものフレンズ I2】
12、i+i話 ~帰るべき場所~
イエイヌ
「どうぞ、お湯に葉っぱを入れたものです」
サーバル
「わーい、紅茶だぁ!」
ぐびぐび…
カラカル
「あんた、ちょっとは遠慮しなさいよ」
キュルル一行は、イエイヌ宅にお邪魔していた。
サーバル
「・・・?」
カラカル
「どうしたのよ、変な顔が更に変よ?」
サーバル
「もう! またそんなこと言ってぇ!
なんか博士たちやアルパカ淹れたのに比べると、ちょっと…」
カラカル
「コク…
うん、まあ言われてみると変に苦いけどさ…」
キュルル
「・・・」
イエイヌ
「すいません。
実は、見よう見まねでやってただけなんで・・・」
サーバル
「博士たちとかアルパカに教えてもらったら?」
イエイヌ
「いえ、いいんです。
飲んでくれる人もいませんし・・・
ところでキュルルさんの おうちは見つかったんですか?」
キュルル
「・・・」
カラカル
「明るくて、優しくて、暖かな場所…
このジャパリパークが僕のおうちなんだぁ! ・・・だっけ?」
イエイヌ
「!」
キュルル
「///」
カラカル
「もしかして照れてんの?」
キュルル
「なんか今更 恥ずかしくなってきた…」
カラカル
「もっとみんなの役に立てる事を探したい!
もっと一緒に冒険したいんだー!」
キュルル
「やめてー!」
サーバル
「っていうことだからさ、イエイヌも一緒に行かない?」
イエイヌ
「!」
カラカル
「サーバルにしてはいいアイデアじゃない」
サーバル
「もう、またぁ! 素直に褒められないの?」
イエイヌ
「いえ、遠慮しておきます・・・」
サーバル
「え~!?
いろんなフレンズとお友だちになれるし、きっと たーのしーよ?」
カラカル
「ちょっと。
嫌がってるのを無理に連れ出したって楽しめないわよ」
キュルル
「そうだね。 僕たちじゃルフ〇先輩のようにはいかないよね…」
サーバル
「うーん、そんなもんかなぁ…」
カラカル
「じゃあ、そろそろ行きましょ?」
キュルル
「また来るよ」 ノシ
そう言うと一行は帰って行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イエイヌ
「ジャパリパークが僕の家…か。
ご主人様と同じことを言うヒトがいたなんて・・・」
イエイヌは金庫から1枚の絵を取り出す。
最近は、その頻度も上がってきている気がする。
そうしないと『ご主人様』の顔も、想い出も、時間と共にどんどん薄れていくようだったからだ。
この色褪せてきた絵のように・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
園長
「イマドキくん、まだ残っていたんですか?」
イマドキ
「・・・」
園長
「完全退去の期日は明日ですよ?」
イマドキ
「・・・」
園長はチケットを2枚取り出す。
園長
「今夜、最後の貨物便、そして明日の飛行機が人員の最終便になります。
どちらかでパークを・・・」
イマドキ
「何でですか!?
どうして僕たちだけで逃げるんです? フレンズを見捨てて!」
園長
「それなら何度も説明したでしょう。
これはもう、決定事項です」
イエイヌ
「あの~」
イエイヌが入って来た。
イエイヌ
「大丈夫ですか? 隊長」
園長
「ああ、イエイヌさん。
用事があるのは僕です。
・・・ ちょっと場所を変えましょうか」
園長とイエイヌは、打ちひしがれている僕をおいて部屋を出た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕は、園長室から出てくるイエイヌを待ち伏せし、一緒にパークを出ようと提案した。
イエイヌは思いのほか、あっさりと了承した。
正直、拍子抜けだった。
イエイヌ
「つまりは、お別れってことですね」
イマドキ
「・・・」
イエイヌ
「退去命令が出たんでしょ?
だったら隊長は、おうちにおかえりになるんですよね」
隊長
「ジャパリパークは僕の家だよ!
今となっては・・・」
イエイヌ
「パークを第二の故郷みたいに思ってくれるのは嬉しいです。
でも、ご家族が待っているんでしょ?
本来 帰るべき場所があるなら、そこに帰るべきです」
隊長
「フレンズたちと・・・君と別れるのはイヤだ!
・・・ そうだ、一緒に行こう!」
イエイヌ
「聞き分けの無いこと言わないでくださいよ」
隊長
「君の聞き分けが良すぎるんだよ!」
イエイヌ殊更 命令に絶対なのは、フレンズ化の影響かもしれませんね」
「イヌ科の動物には『上下関係』がありますから。
私が
隊長
「そんなマジレス要らないよ。
それとも僕のことなんて、何とも思ってないのか?
別れるのは寂しくないのか?」
イエイヌ
「寂しいに決まってるじゃないですか。
でも命令には従わなくては・・・」
~貨物船~
イエイヌを家に連れ帰ったら家族は驚くだろうな、とか
追っ手から身を隠しながらの逃避行・・・なんて駆け落ちみたいだな、とか。
そんな夢想は文字通り2行で終わる程度の夢物語でしかなかった。
警備隊長
「フレンズを連れての密航は違法行為だと知っているはずだが?」
船が出航して一安心・・・と思っていたら、
大捜索が始まり、あっさり見つかってしまった。
どうしてこんなに沢山の警備員が?
警備員
「隊長、船内をくまなく探しましたが、ビーストは居ません」
警備隊長「そうか、ごk…
トワ「ご苦労様です」
警備隊長
「!? どうしてここに?」
イマドキ
「園長!?」
トワ
「なかなか博士が口を割ってくれなくて・・・
あなた方には ご足労を掛けました。
パーク外に出ていないことさえ上に報告できれば、なんとか恰好は付きます」
警備隊長
「そんな報告はパークに居ても受けれるでしょう。
あと、これは当然の仕事をしたまでですから。 労いの言葉など必要ありません」
トワ
「あなたは最後まで仕事熱心ですねw
私は、彼がチケットを忘れたので渡しに来たんです」
そう言うと『フレンズさんと うきうきクルーズ♪ 遊覧チケット』をイマドキに手渡す。
警備隊長
「貨物船で!?
しかも、こんな状況下で!?」
警備隊長は訝しんでいる。
当然だろう。
園長の言い分は明らかに苦しい。
法を逸脱している、と言われても文句は言えない。
イマドキ
「一体どうして?」
チケットを受け取りながら僕も疑問を口にする。
トワ
「そりゃ、園長室の前で喋ってたら筒抜けですよ。
出るに出れなくて困りましたよw」
イマドキ
「あ~! 移動するの忘れてたぁ!」
イエイヌ
「叙述トリックぅですかねぇ…」
警備隊長
「そんな良いもんじゃない! どうせ、うっかり作者の書き損じでしょ?
あと、メタギャグを挟んでる場合ですか!」
トワは深々と頭を下げながら言った。
「すいません。
でも、こんな時だからこそ・・・
ここは2人の思い出作りに協力してやってくれませんか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
~船長室~
本来いるべき主の居ない、二人きりの船長室は居心地が悪かった。
どういうわけか、まるですべての責任が自分の肩に掛かっているかのような重圧を感じる。
園長は、僕たちをここに案内すると、
「どうするか決まったら指示を下さい」
とだけ言って出て行った。
イエイヌは期待を込めた目で僕の命令を待っている。
僕の考えは浅はかだった。
園長はそれをすべて見抜いた上で、リスクをしょって、僕たちのために ここまでしてくれた。
ロスタイムを工面してくれた園長には、ただただ感謝しかなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
現実は厳しい。
げんじつちほーに連れ帰ったとしても、ちっぽけな僕の力では、とても幸せにはしてやれないだろう。
博士たちも『合わないちほーでの暮らしは寿命を縮める』と言っていたじゃないか。
それなのにイエイヌと別れたくないというのは、僕個人のワガママでしかない。
ヒトのエゴで笑顔を曇らせるなど本末転倒だ。
ここにきて、やっと自分の想いに気付いた。
『イエイヌにはいつも笑顔でいて欲しい!』
それがすべてだ。
本音を言えば寂しいけど、そのためには隣にいるのが自分でなくてもいい…
代わりに誰かが守ってくれるなら・・・ 僕は遠くから祈ろう。
そう。
『帰るべき場所』があるなら、きっとそこに帰った方が良いのだ。 お互いに・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕は、そのまま貨物船で帰途に就くことにした。
園長には、避難用ゴムボートでイエイヌをパークへ送り届けてもらった。。
『おうち へおかえり』
~to be continued~
やっぱりフレンズはジャパリパークにいるのが一番あっているんですよネ
と、言うか外に出てしまったらフレンズの状態を維持できるのかどうか…
出来なくてもこの際構わないと思って隊長さんはイエイヌちゃんを連れ出したのでしょうか…?
研究者としてきた訳ではないので、そこまで深く知らない、
もしくは頭から抜け落ちていたのかもしれませんね。
そのまま感情に流された行動をしていたら、途轍もない後悔に苛まれていたかも…