───それは、輝かしき夢の影差す新世界───
───昔、大きな戦争があった。
私が生まれる前のことだ。
しかし、戦争が終わっても、平和には影が落ち続けた。
誰しもが“聖杯”を持ち、運命の示すサーヴァントを喚ぶ。
安寧からはあまりにも離れた狂騒の中で、それでも、私達は生きている。
それは、「秋葉原」から遠く離れた、影に包まれる繁栄の世界。
・(泥Requiem世界を舞台としたロールスレッドです。)
───それは、輝かしき夢の影差す新世界───
───昔、大きな戦争があった。
私が生まれる前のことだ。
しかし、戦争が終わっても、平和には影が落ち続けた。
誰しもが“聖杯”を持ち、運命の示すサーヴァントを喚ぶ。
安寧からはあまりにも離れた狂騒の中で、それでも、私達は生きている。
それは、「秋葉原」から遠く離れた、影に包まれる繁栄の世界。
・(泥Requiem世界を舞台としたロールスレッドです。)
モザイク市「神戸」。
鋼が剥き出しの、不均一で異様な無人の街中に、複数の異音があった。
「……──────邪魔!!」
銃弾を発射する複数の異様な機械に囲まれながらも、それらを次々と破壊する少女が一人。直営回収業者 "。この「神戸」において、オーバーテクノロジーたる遺失技術「ロストHCU」を正規に回収する者達の一人だった。
彼女は"
だというのに、白髪赤目のスカジャン姿にスカルマスクを被った他には、特段の武装を所持していない。
少女がそれらを破壊しているのは────両の腕から生える、異形の黒腕だった。
「きりがない…」
『これは…普段より、妙に多いな?』
漆黒の不気味な異形腕をもって銃弾を防御しつつ潰しているが、それでも周囲の無人兵器は減る様子がない。
少女の息は上がり始めてきている。このまま増援等が来なければ消耗戦であろう事は、誰の目にも明らかだ。
/テストがてら絡み待ちです。どなたでもどうぞ
そんな中、喧しい爆音と声が響き渡る。
火薬の爆ぜる音と、鼻につく硝煙の匂い。これだけで、ある回収業者が近くで戦闘しているのだと、神戸に住む人々ならすぐに察せられる。
「いよっしゃあああああ!!! またまた1つ撃破ァ!! ノルマも超えたし今日は天使餃子も付けるかァ!!」
炎纏う拳で無人兵器を貫きながら、呵々大笑とばかりに笑う青年が1人。
笑いながら腰に下げたモーゼルを構え、曲芸のように周囲の無人兵器に打ち込みながら、
その銃弾の打ち込まれた箇所に的確にその拳を当てていく。
「なんか数が多いが面白れぇ! ボーナス弾ませてもらわねぇとなこりゃ!」
『マスター、後ろ』
「おっと! サンキューSCORE!」
爆炎の逆噴射で瞬時に方向転換し、そして銃撃をぶち込む。
爆音、爆熱、また爆音、時折火花。神戸では日常と言える、一人の馬鹿の戦闘行為がそこに在った
>> 1
>> 2
爆豪。鈍い殴打音。それらの響く戦場を見下ろす、影がいた。いや、あったというべきか。そも、“それ”が「ヒト」である確証がない。
何と特定し難い何か。“それ”としか言いようがないモノは、家屋の上から、群れる機械へと、ゆっくり体の一部を差し伸ばした。“それ”がヒトであるなら、手を出し、指で指した、という形容が当てはまろうか。
すると……どうであろうか。“指差された”機械達は、突然機能を停止していく。
指差しによる北欧の呪い、ガンドであろうか。否、破壊力を持った呪弾など飛び出していない。かといって、生命なき機械に呪詛は通用しない。
ではハッキングの類であろうか。否。これらの暴走機械は、基本的にスタンドアロンだ。それに対しハッキングをかけることは、できない。
原理不明。その指差しは、魔術を含む如何なる干渉を伴わず、一つ一つ、しかし確実に機械を停止させていく。
……少年、少女へ救援の意志を示すでもなく、“それ”は指差しを続ける。言葉は、当然のようになかった。
>> 2
聞き覚えがある大声と爆音が、すぐ近くで聞こえた。
数瞬遅れて無人兵器の破片がこちらにまで吹き飛び、兵器の鉄の体を引っ掻いた。
異形腕で防御しながら、彼女は静かに舌打ちをする。──────あいつしかいない。
「相変わらず、うるさい……」
金属片によって無人兵器が僅かに怯んだところで異形腕を伸ばして建物の屋上を掴み、声のする方へと体ごと引っ張っていく。
声の主の元へ着くと、やはり、というべきか──────そこには、見知った顔があった。
「やっぱりか。何?あんたも同じ依頼で来たの?」
そうして声をかけた瞬間──────
>> 3
突然、周囲の兵器が停止をはじめた。
「──────!?」
故障にしても不自然すぎる。不可解な現象に目を見開きつつ、あたりの原因を探る。
するとただひとつ、家屋の上に、異質なものが立っているのに気付いた。
『何だ?ありゃ。──────おい小僧、あれはお前の同業か?』
姿を見せぬまま、彼女のサーヴァント──────悪竜のライダーの声が、眼下で暴れる少年に問いを投げかけた。
>> 3
「あんだぁこいつ!? なかなかすげぇ芸当するな!」
指をさす"それ"に呆気にとられ、攻撃の手が止まる。
「SCORE!あいつ誰だかわかるか?」
『わからない。見覚えはないから……』
「ああそっか、見たことないやつは知らないんだったかお前。ってあたり前かそれ」
自分のサーヴァントと会話する静雄。その背後からは聞き覚えのある声が聞こえた。
>> 4最悪の 場合を想定しての行動だ
「その声……あ!? クロ姐!? なんだアンタも来てたんすか!
サーヴァントのおっさんも一緒っぽいっすねその様子だと!」
得体の知れない存在に会って困惑している中で知った顔に会った為か、どこか安心したような顔をする静雄。
『──────おい小僧、あれはお前の同業か?』
「んぁー…少なくとも俺は知らんっすね! 同業者なら嬉しいんすけど!」
そう言いながら、彼は銃弾をモーゼルに込める。
>> 4
>> 5
少年少女への言葉はない。ただ機械を停止させていくだけ。一方で、敵意らしい敵意も見受けられない。
機械を停止させるペースは常に一定で、遅々としたものだが、決して速度は落ちない。
有り体に言って、他の二人のことは、歯牙にもかけていない……というところだろうか。
>> 5>> 6
「クロ姐て…まだその呼び方してんの?」
呆れたように、どこか照れているかのように、少女は頬を掻く。
仇名で呼ばれ慣れていないのだろうか。少しばつが悪そうに、視線を得体のしれない"それ"の方へ移し。
「のんきな事言わないの。この程度じゃ平気だろーケド──────変なの居るし。」
遠巻きにじっと、彼女は辛うじて人型なのであろう、謎の存在を注視する。
「(……ロストHCU?いや……何かすらわからない…)」
機械を停止させてくれるのは有り難いが、あれが何であるのかは調べる必要があるかもしれない。
彼女は静かに、左手に異形腕を形作った。
「あんた、離れてて」
眼下の少年に声をかけつつ、"腕"を伸ばし、刺激しないように触れてみようとする。
腕は彼女の肉体ではない、魔術的なものだ。万が一危険でも、彼女にとってはこれが最良といえる接触の方法だった。
>> 6 >> 7
「ちょ、大丈夫なんすか…?」
少しビビりながらも、一歩下がってアンリエッタの行動を見守るように退がる。
ただ言いなりになっているだけでなく、されど自分から逃げたわけではない。彼女を信用しているからだ。
彼女には今まで何度か助けられた。実力は確かに分かっている。ゆえに、不可解な"アレ"を任せても大丈夫だろうと踏んだ。
だが、何もただ手をこまねくわけではない
「(何か動きがあったらすぐ言ってくれ)」
『りょうかい』
目くばせで自分のサーヴァントに指令を送り、いつでも攻撃ができるように構える。
アンリエッタに対して"アレ"が攻撃をするようなら、即座に銃撃をかます。そう言った決意が静雄の目にあった
>> 7
>> 8
しかし、そうして警戒されている“それ”に、異形腕が触れた結果は、というと。
ふるり、と微かに震え。頭らしき部位を、異形腕に向け。少しだけ、それに触れ。
こてりと、微かに傾げる……と、随分、人間臭いものだった。
相変わらず、言葉はないままだが。
一方、その遥か背後。
『ふっふふ〜んふ〜ん』
巨人がくぐもった鼻歌を歌いながら資材を運んでいた。巨人は三階建てのアパートくらいはあるだろうかというトロッコからレールのようなものを引き出しては並べ引き出しては並べ、真っ直ぐに並べていく。
『よしよし』
並べたレールを眺めた巨人が満足げにくぐもった声を漏らした。
『そろそろ溶接入るかなぁ。さて……HCUからの警告を行う! 架線接続を開始する! 周辺の住民、回収業者、不法侵入者は架線から離れるように! 繰り返す! 架線接続を開始する! 周辺の住民、回収業者、不法侵入者は架線から離れるように!』
だだっ広い荒野に拡がりゆく声は反響することなく通り過ぎて、すぐに辺りは水を打ったように静まり返った。
『……警告よし。生命反応もなし。規定どおりに勧告から一分経過。よーし、溶接開始だ。管制AI! 登録4の設定でクルージーンを起動しろ!』
────クルージーン。ケルトの大戦士クー・フーリンが使ったとされる伝説上の剣の名を関したH.W.(HCU Weapon)。巨人、即ちGRV-10と呼ばれる人型ロボット兵器の右腕にマウントされた杭剣は、かつて古き歌の中で彩られた同じ名を持つ剣の如く輝き始める。灼熱。光に照らされて燃え盛るように輝く荒野の一帯が真夏の砂漠のように渇き上がり土が焦がされていく。
これほどの熱を以て何を焼こうと言うのか。クルージーンの先端がレールの境界へとゆっくりと近づけられていく。
いや、逆である。これほどの熱量を以てしなければレールの溶接は適わないのだ。レールのような資材の正体は真田製鋼の遺産。魔力を供給する架空魔力線の依代。常軌を逸した耐久性と不変性を宿す合金を一瞬でも融解させるには小太陽ですらまだ足りない。ダイヤルがキリキリと慎重に回されクルージーンはますます白熱していき────
『……あれ?』
ぷすん。間抜けな音を立ててクルージーンの輝きが失せていった。溶けかけていた合金レールは涼し気な顔で荒野に寝転がったまま。急激に気温が下がっていく。
GRV-10の操縦席に座る男はポカンと開いていた口を閉めると、サイドボードからキーボードを引き出し、パチパチと打鍵を開始する。その手が不意に止まった。
『ERROR:1054……?! ……さては古い架線を壊したやつがいるな?』
今の資材を扱うようになったのはごく近頃のこと。それ以前の架線は厳しい「神戸」の環境に耐えうることのみが優先されていたため破損しやすい……ということはないがロータスFA製の爆弾でも数発ぶつければ壊れてしまうのだ。
やはり旧架線を優先するべきだった、そんな後悔が彼の脳裏を掠めたが今更嘆いても遅かった。溶接には20秒以上の加熱が必要となる。架線から供給する魔力を欠いてはクルージーンでの溶接作業は不可能だ。どう足掻いても今日の作業はこれ以上進まないだろう。
仕方ない。そう心中で溜息をついた彼、リゥ・ペンリは彼の愛機『クルージーン』の進行方向を「港町」の方へ向けたのだった。
と、そんな話があったのが数十前。
途中送信です
>> 8>> 9
さて、腕をどの程度まで捥ぎ取られるだろうか──────と身構えていた彼女にとって、その"それ"の反応たるや、逆に彼女を少し驚かせた。
「ひゃ!?」
伸ばした手をすぐに引っ込め、異形態を解除する。これは正解だったかもしれない。
彼女の手は長く触れていれば、精神に異常をきたす呪いが含まれているのだから。
……だが、不可解な謎は深まるばかりだった。
──────と、その時。
重苦しい金属音と共に、辺りの建物が揺れた。
『何事だ!?』
瞬間、彼女らのすぐ近くの地中から──────巨大な、無人兵器の集合体が出現する。
それはあたかも一つの巨大なロボットのような姿をとって、目の前に現れた。
「これは──────!?」
『ほう。これが、妙に無人兵器が多かった理由……というわけだな?』
ロストHCUの一だろうか。無数の無人兵器が集まった、十数メートルにも及ぶと目される巨大な塊は、敵性物体を求めて動き出す。
それはまず、最も近くに在った"それ"に向かい、大きくその巨腕を振り上げた。
「──────危ない!」
何故その言葉が出たのかはわからなかったが、彼女はそう叫ぶ。
ライダーもまた姿を現し、万が一の事態に備えた。
────その巨腕を蝋燭の剣が切り落とした。
『お前か! お前だな! お前だろ絶対! よくもこんな場所の架線壊してくれたなお前!』
くぐもった怒声は蝋燭の剣に照らされた巨人から響いていた。
GRV-10、『クルージーン』。アンリエッタの同僚の愛機だった。
>> 9
「あんだぁ? あの…ガキ……でいいのかわかんねぇけど。 割とそこまで危険でもねぇのか?」
拍子抜けしたような。あるいは安心したかのような声を出す静雄。
まぁ危険でないなら危険でないでそれでもいいのだが、ここで油断してはいけないと目の前の少女に教えられた身でもある。
さてどんな事態が待ち受けているか…と身構えていたその時、それは起きた。
>> 13
「なんだぁ!!?」
突如として出現したその巨躯に、一瞬呆気にとられる。
鬼が出るか蛇が出るかと考えていたら巨大ロボが出てきた。何言ってるかわからねーとおもうがそんな言ってる場合じゃない
「的がでかくて────助かるぜぇ!!」
爆熱噴射。火薬の推進力を活かして跳躍を決めた静雄はその巨体の背後に回る。
そして急所を的確に狙い定め、モーゼルを撃とうとする。当たれば爆発からの崩壊は免れないが────?
と、そんな話があったのも数十分前。
下手くそな鼻歌を歌いつつ断線現場に到着したリゥの前に現れたのはは無残極まりない破壊の跡。断線どころかレール換算で9つ分が"消滅"していた。うわぁ。リゥの口から思わずそんな声が漏れた。
これだけ直すのに何枚の申請書類と何回の出撃が必要になるだろう。ここ近辺は無人機が多く邪魔が入りやすい難所。スムーズに作業するには同行者は絶対に必要だが、露払いを雇うにも「港町」に一旦申請しなければならないうえに、このエリアに連れてきて自力で生き残れる知り合いも思い当たらない。リゥの目は煩雑な未来を見て虚ろに染まりいく。
そして、無になった心がふとドンパチ聞こえてくる方向に気づいた。誰かが戦っているらしい。
『……なら手伝わないとダメだよな。ふ、ふふ、ふふふふふふふふふふふ』
目のすわり切ったリゥは音の方へと旋回すると『クルージーン』のアフターバーナーを全開に火をともした。振り上がった拳とやり切れない思いを晴らすために。
いわゆる八つ当たりだった。
「キキ…」
神戸での喧騒を遠くから見つめる影があった。
その姿は人ではない。類人猿のシルエットだが、その頭部には犬科の獣のようにマズルがあり、ピンと張った三角の耳のある奇妙なキメラだ。
それは、獣雷のアルターエゴと名乗り、呼ばれるサーヴァントの使い魔。
その中でも本体と直接接続された端末の一匹だった。
「なーんか騒がしいと思ったらぁ、また派手にやってるわねぇ」
使い魔に隻眼を接続したリコリプレスは、僅かな間に損得勘定を巡らせる。
周辺には使い魔が何匹か巡回している、首を突っ込む事も可能だし、中々楽しそうな事になりそうだが……
「デメリットの方が大きいわねぇ……主催者様も見つかってないしぃ、ここは監視に留めて置くわ
ぁ」
至極残念そうにため息を突くと、リコリプレスは周辺の使い魔を警戒モードに移行させ、端末との接続を切断した、
>> 13
>> 14
触れていた異形腕が離れ、そして、背後の爆音。180度“それ”は反転し、初めてその巨躯に気づいたように、ふるりと小さく震えた。
少女の発した咄嗟の声にも、飛び出した少年の爆音にも、やはり反応はしない。
ただ、腕を振り下ろす機械の巨人を“見上げ”。
——ふっ、と、腕が別の巨人に切り落とされたその瞬間、その場から消えた。
いや。消えたのではない。いる。いるではないか。
何処に?
新たに現れた、その巨人の頭の上に。ちょこんと。
>> 14
「ちょーちょ、あんたはすぐ壊す──────!!」
目標をたびたびスクラップにして持ち帰るのはお互い様だが、特に静雄の破壊傾向は群を抜いている。
この前も、もう少し丁重に扱えと言ったばかりだと言うのに。モーゼルの一撃は直撃したが、巨人の下半身を形成していたロボットを吹き飛ばすに至り、その場には大きく土煙が巻き起こった。
>> 17
その瞬間、彼女は視認した。
巨躯の右腕を同時に斬り飛ばす、彼方から飛んできた、見知った巨大な人型を。
爆発の余波で、右腕を成していた無人兵器群がこちらに向けて飛んでくる。
『ふん!!』
彼女の前に立ちはだかるライダーが、手に持った槌矛の一撃のもとにそれを吹き飛ばした。
>> 18
それと共に土埃は晴れる。……しかし、そこに"それ"の姿はない。
まさか潰されたか?と一抹の不安が頭をよぎった時、ふとライダーが上を指さしているのが見えた。
その通りに視線を動かすと——————いる。
下半身を失い、ほぼ機能停止に陥った巨躯の頭の上に、いつの間にかそれは移動していたのだ。
「——————ホント、何なのアレ?」
呆れと共に声を出し、彼女は飛んできたもう一体の巨大ロボットに向けて、同じような調子で声を上げた。
「……で、何でこんなトコに居んの?ペンルィ君 。」
同業、同社に属する男。見知った機械の主に少し不満げに声をかける。……彼女の方に、右腕が飛んできたためであろうか。
——————————奥でほぼ動かぬ巨体が、再び集まってくる無人兵器により再生しつつあるとも知らず。
『なんでも何も、また架線を壊しただろうルーキーども!
ここまでめちゃくちゃなのはアンタらが初めてだ! まったく……』
『クルージーン』から聞こえる声が俄に落ち着きを取り戻す。『状況は? 何に手を出したらこうなった? ここ一帯は無人機の巣窟だ。CDUからの忠告もあったはず。その上で何故立ち入ったかは今は尋ねないことにしておく。回収物もないなら命あるうちに撤退することを勧めるけど』
そう言いつつリゥはアンリエッタたちと機体を挟んだ反対側、『クルージーン』の左の杭剣を白化させていく。
アンリエッタに問いを投げかける最中も『クルージーン』のカメラは周囲を伺うことをやめない。リゥは過去にもあの合体巨人を相手にしたことがあった。その時に確かに灼き尽くした手応えがあった、にも関わらず同型のものの発見報告が何度も上がっている。つまり、あれは再生能力を持つということだ。
再生速度はわからないが最悪を考えるとキリがない。とにかくここを離れなければ。
>> 17
「やべぇ! デケェの来た! お礼参りか!!?」
と驚いたが、どうも見ると中に人がいる様子。ああこれは同業者かな……と安心しながら巨大な機械に銃弾を撃ち込み下半身を吹き飛ばす。
「動きは封じさせてもらったぜ!! 大人しく狩られてな!!」
そうしてとどめを刺そうとしたとき、信じられないものが視界の端に映った。
>> 18
「うぇ!? マジック!?」
余りの唐突な一瞬に、トドメも忘れてそちらに視界を映す。
見ると、先ほどアンリエッタが触れていた少年(と、なんとなく仕草から定義して、静雄はそう呼ぶことにした)が、突如として現れた巨大ロボの頭上にいる出会ないか!
「すげぇ! ルーラだルーラ!! SCORE見ろよドラクエの勇者だあいつ!」
『服装はどっちかって言うと僧侶じゃないかなあれ…』
>> 19
などと馬鹿らしい会話をしながら、爆炎を噴射させながら着地する。
そうしてアンリエッタの傍にかけより、先ほど顕れた巨大ロボに話しかける彼女に問うた
「あれ? 知り合いっすかアレ?」
「チッ……今のところ収穫は無しか……」違法回収業者 、正規に依頼された業者ではなく、違法に「神戸」の街に眠るロストHCUを回収するハイエナのような存在。
鋼の残骸を漁りながら、銃を構えてながら呟く。
男は
そんな彼が「神戸」で回収作業を始めてから今日、未だにめぼしい収穫が無かった。
危険を承知で「神戸」へ来たのに、このままでは骨折り損。なんでもいいからなにか回収持ち帰らねば、という思いが渦巻く。
自身のサーヴァントも腹が減ったなにか食わせろとうるさい。
少しずつイライラを募らせながらどうしたものかと思案していると、遠くから爆発音が聞こえてきた。
その爆発音に心当たりがあった。「あの羽付きか」と呟き、同時にアイツが戦闘しているということは、そっちに何かあるかも知れないな、という目星も付ける。
「……何か見つけたかも知れないな。まぁたまにはいいだろう。いつも邪魔されてる礼を返さなきゃな…」
そして爆発音が響く場所の方へと一気に駆け出す。
向かううちに何か巨大な機械が現れたのと巨大なロボが、爆発音がしたであろう方向に移動しているのが見えやっぱり辞めとくべきだったか?という思いが過ぎたが…
>> 19
>> 20
>> 21
周囲の騒がしさを余所に、“それ”は巨人の頭の上から動こうとしない。巨人は徐々に再生し、それに伴って体躯が傾き始めているが、頓着することなく、頭の上に鎮座している。
『座る』ように縮こまって『腕』を伸ばし、ぺたぺたと巨人に触れる。不思議がるように『首を傾げ』、今度は軽く叩いてみる。敵性体を検出した巨人は、それを取り除こうと左腕を伸ばすが、どうした訳か、一向に触れることができない。触れようとする度に、“それ”は揺らぎ、掴み上げようとする腕をすり抜けていく……ように見える。
しかし、何度もすり抜けていく内に、“それ”は嫌がるように身体を攀じり、再び消え、今度は巨人の眼の前に現れた。
じっと、先程小さな戦闘機械にそうしていたように『見つめる』。しばらくの後、やはり同じように、巨人に向けて『指差し』。その先にあるのは、再生が進んでいるはずの脚。
……ぴたりと。それを切っ掛けに、巨人の再生が止まった。
>> 21
「あーすんませーん!! 忠告聞いてませんでしたー!!」
ひとまず謝罪を返す。そもそも忠告されてたっけ?とか 偉そうだな先輩かな?とか 色々思うところはあったが、
まずとりあえず謝れと親父に言われたことを思い出して謝罪する。
しかし架線作ってる人だったのか…悪いことしたな、今度は火薬量に注意しよう…と考えている中、新しく顕れた人影を見やる。
>> 22
「おっ? あのヤロウ…また来やがったな」
目に映ったのは、よく邪魔される(=彼を邪魔する、ともいえる)違法回収業者だ
ったく、何度も懲りねぇ野郎だ。そんなに戦いたいなら正規になってから来い、と思いながらそちらを向く。
さてどうするべきか、違法回収業者だし痛い目見てもらうべきか…とか考えながら周囲を見渡していると、
"それ"がまたもや目を引いた。
>> 23
何と巨人が再生している。いやそれどころじゃない
その上に少年がいるではないか。これはまずい。ケガしてしまう
「あぶねぇ!」
と叫んだが、少年は怪我どころか、触られる事さえなかった。
それどころか、巨人の動作を止めてしまったではないか
「なんだありゃあ……。なんか…あれだ。ゲームでも見てるみたいだ…。なんつーんだろ? あれだよ…ジョジョとかのゲームで見る…わざとバグらせる奴」
目の前で起きる不可解な現象の理由を考えるも、少ない脳細胞は回らない。
ええい! 違法回収業者とか巨大ロボとか気になるけど! と頭を振って静雄は叫ぶ
「おいお前!! 何もんだ!? サーヴァント!? 新入り!? とにかくあぶねーから! こっちこい!!」
停止させた少年に対して、静雄はそう叫んだ。
念のため、SCOREを通して声も届けてみた。
>> 20>> 21先輩 だけどね。上の会社一緒だし」
「ん……知り合いっつーか、同僚。シゴトじゃ
とりあえずの危機は脱した事を確認して、埃を払いながら静雄に向けて呟く。
「架線?"かんしゃく玉"で永久に壊れるじゃん、そんなん。いちいち気にしてらんないし」
減らず口を言いながらも、上空で警戒を怠らない大型ロボットを見つつ、流石のベテランだと彼女は微かに思う。
聞かれたことに対しては素直に、これまでの状況を簡単に説明した。
「ん——————回収物は一応。無人機の全自動生産システムだかのプログラム。工場はこの辺にあるらしいけど、スクラップで埋まってるっぽい。私はその調査。……こいつは知らんケド。」
「——————で、まあ。壊しながら探してたら、そのでかいのと——————」
彼女は次に、"それ"へと指を指す。そこには驚くべき光景があった。
>> 23
「——————!?」
彼女の指さした先には、その光景の一部始終があった。
腕をすり抜け、瞬間移動などの不可解な行動を行いながら、"それ"が巨人に向けても先の動作をしているのに気づく。
巨人が再生していたことと、その再生が止まった事に彼女が気づいたのは、ほぼ同時だった。
まったく理解できない光景だが、あるとすれば眼前のそれは———————
「ホント、何これ。——————"サーヴァント"?それとも……」
>> 22
『——————』
同時期。こちらへと近付いてくる不審な影に、ライダーは気づいていた。
金色の邪眼を静かにそちらへ向けるが、たくみに視線を避けながら移動しつつ、しかし確実に近づいてきている。
手練れの間者か、あるいは——————そう判断したライダーは静かに、しかし確実にそちらの様子をうかがっている。
何か行動を起こしてくるならば、少なくともマスターだけは護れるよう、密かに構えた。
>> 23直営回収業者 が操作する巨大ロボ、同じく他にも見知った直営回収業者 が二人。“死に損ない” と呼ばれる彼も、この状況では出るに出られなかった。
(おいおい、何が起こってるか気になったから見に来たら…どういう状況だこりゃ…)
イーサンは物陰から周囲の状況を伺う。
謎の機械の巨人と、見るからに
流石に
しかしその場から逃げ出そうとは思っていない。
ここまで回収業者が揃っているのだ、おそらく何かがあるという予測。
あわよくばそれを回収しようと考えているのである。
隙あればいつでも飛び出せる準備はしている、あとは機会を待つだけだ……
>> 21
それまで、どんな声にも反応しなかった“それ”が、初めて反応を示した。
『指差し』は止めず、しかし、『顔』をそちらへ……SCOREへ向ける。「如何なるものへも声を届ける」というSCOREの特性が、効果を発揮したものだろうか。
反応したのは、SCOREからの呼びかけだけ。それ以外には気づいた素振りすら見せなかったが、しかし、聞こえた言葉には従うことを決めたようで、足音一つ立てずに『走り寄り』、『指差し』で巨人を押し留めたまま、少年の傍らへと“それ”はやってきた。
……そして、初めてそれは、声と認識される音を出した。
「縺ゅj縺後→」