滕王閣。江南の三大名楼の1つで、中国の5A級観光地。
653年、李元嬰によって創建された。
幾度も戦乱などにより焼失しており、現在までに29回再建している。
なお、トラスト侵攻では幸いにも焼失を免れた。
…この場所を簡潔に説明すると、大体こうだろうか。
そんな幾度となく再建され、歴史が長いのか短いのか
よく分からない場所にエドゥアルトはいた。
観光客は、タクシーの運転手が言っていた通りそこそこいる。
服装を見るに、アメリカ系とアジア系が半々だろうか?
どこか中国の雰囲気がある巨大な寺院を片眼で見ながら、奥へと歩いていった。
…奥に行くと、どこかで見た覚えがある大河が流れているのが見えた。
きっと、トラスト侵攻の時に何かで見たのだろう。
河の向こうには高層ビルが立ち並び、その横で廃墟が広がっている。
一見するとすべてが元通りになっていそうだが、どうやら南昌はまだ復興途中らしい。
もっとも、数か月もすればあの廃墟も無くなるだろうが。
玄関に入ると、正面に白いレリーフがあった。
説明文を読む限り唐王朝時代の人物のようだが、
古代中国史を学ぶ気なんて微塵もない。
無視して先に進むことにした。
今度は、唐時代の宴会を再現した絵画や実物大のジオラマがあった。
真ん中で踊っている女性がアオザイに帯を付けたような衣装を着ている。
あの服、どっかで見たような… ああ、思い出した。
確か、「きもの」とか言う日本らへんの服だったな。
ひょっとしたら、あの服は日本から送られてきたものかもしれない。
「昔の中国人は日本の服を着ていた」なんてことを、土産話にでも話してやろうかな…
上の階に上がろうとして階段を探していると、驚くべきことにエレベーターが設置されていた。
29回もの再建の間に、色々近代化されたらしい。
…残念だが、どうやら身体障害者と高齢者専用らしい。
諦めて階段で登ることにした。
2階にも相変わらず絵画類があった。
そして相変わらず「きもの」を着た女性がわんさか書かれている。
どうやら、昔の中国ではこの服はかなり人気だったらしい。
イェロニームの嫁さんに勧めてみるのもいいかもな…
ここまで特に気をひかれるものはなかったため、
3階をすっ飛ばして4階に来た。
今までの階層とは違い、中央にガラス製のピラミッドのようなものが置かれている。
近づいてみると、「3Dレーダープロジェクターショー」と書かれて…
…3Dレーダープロジェクターショー? …いくら何でも、不釣り合いじゃないか?
映像はこの王閣の再建の歴史を示すもので、
ぶっ壊れては再建し、また壊れては再建し…のループだった。
(念のために言っておくと、決して嘘ではない。 気になる人は調べてみましょう。
本当に崩壊しては再建の方法を説明し(以下略)のループです。)
全く興味がなかったため、途中で見るのを切り上げた。
ここまで来て、ようやく最上階までたどり着いた。
レリーフや誰かの像、長ったらしい漢文が展示されている。
何が書いてあるかは読めなかった。
階段を下りて、とっとと帰ることにする。
…これでざっとここの下見は終わったが、
正直なところあまり興味はわかなかった。
とりあえず、イェロニームに教えとくか…
携帯電話のメモに短い文章を書きこむ。
さて、次は何処に行こうか…