泣いていた彼はしばらくすると泣き止み、何かを企んでいるような足取りで屋上に向かっていった。
「そろそろ時間だ…」
と呟いて
そのあとのことはあまり覚えてなかった。今までにないぐらいの速さで階段を駆け上がり屋上に上がり、屋根の淵から落ちようとしていた仁を慌ててつかんで連れ戻した。何が私をそうさせたのかも、なぜ私がそうしたのかもわからなかった。ただ本能が、彼から離れたくないと叫んでいたのはわかった。
「なん…で?」
私に引っ張り戻された仁は驚いてこっちを見た。フードが脱げたことも知らずに。
「なんで僕を助けるの?君の利益もないのに…もしかして英雄きどr」
「そんなんじゃない!!」
まったくもって見当違いなことを言われた私は憤慨した
「ただ…死んでほしくなかった…いままでいろんなことでお世話になっていたし…」
「死んでも君に影響はないのに?」
「影響大有り!乙女の心分からないの?まったく……」
「もしかして…僕のことが好きだったり?」
「そ…そうだけど…ダメなのかな…」
その時初めて初めて会った時からの私の思いを伝えた。とてつもなく恥ずかしかったけど彼は真剣に聞いてくれた。
「なるほど…ただ、君の親はどうするの?」
「家出する。もうあんな生活はこりごりだよ」
「がちかよ…でも家出した後はどうするつもりだ?」
「仁君の家に居候」
そういったときに彼は顔を赤くした、どうやらそんなことを言われるのは初めてみたいだった。
「……逆にいいの?こんな僕で…人でもない僕で…」
「全然問題ないよ。恋に壁なんてないし…なんちゃって///」
そういった瞬間、仁はまた泣き出した
「ど、どうした!?だ、大丈夫?」
「いや、ただこんな人にあらずの僕でも誰かが必要になっているって考えると嬉しさと安堵が…」
「と、とりあえず落ち着こ!ね!」
「うん」
そういい私はとりあえず仁を抱きしめた。一般的にこうすれば泣き止むと聞いたことがあったからなんだけど……抱きしめられた仁は泣き止み一言
「こんな僕を助けてくれてありがとう……」
「どういたしまして…」
ふと横を見ると日記をのぞき込んでにやついている仁がいた。そんな仁に向かって
「あの時の約束は覚えてるよね?」
「もちろん!」
仁は自信満々に言った。
「絶対君のそばに戻ってくる。でしょ?」
話の内容は今から約16年ぐらい前の仁と雪が初めて出会って、仁の自殺を食い止めたときの話になります。
有名財閥のお嬢様・・・日本の華族とロシアの貴族の子孫によって作られた財閥の令嬢
屋根の淵から落ようとしていた仁・・・絶賛病んでいて、死にたがりだったため