いつぐらいからなんだろう。仁を好きになったのは……
昔の私は有名財閥のお嬢様として両親から過保護にされた。私に恋愛感情を抱いてくる人がいればすぐに転校するし、何かと制限を付けてきた。外出禁止だったり、恋愛禁止だったり…それと何回「あなたはお嬢様なんだから、それらしくいなさい」と言われ怒られたのだろう……
そんなある日、私は秋田の名門私立に転校してきた。いつも通り、親からの縛り事項を確認して学校に向かった。想像していた通りだが教室に入ると女子からは自分の容姿に対する尊敬と嫉妬の目、男子からはいやらしい目をされた。けどその中で一人だけ終始顔を上げないフードをかぶりっぱなしの人がいた。
「彼は森田仁、話しかけても意味のないやつだよ」
クラスメイト達にその人のことを聞くと同じようなことを言われた。隣の人のことを知っておこうと思ったがこれでは情報にならない。仕方なく本人聞くことにした。
「すみません~初めまして、今日からお隣に座らせていただく月夜雪です」
「どうも……森田です」
多分人生で初めてだったかな。あんな感じで冷たく反応されるのは。でも余計気になる、仁っていう人のことが…
転校してから数ヶ月経った頃かな?夏が終わりそうなころに忘れ物を取りに学校に戻ったことがあった。もうすぐ日が暮れそうだったけど親にばれずに抜け出してきたきた。
「忘れ物も取ったし戻りますか」
つぶやきながらまだ少し夏の感じがする廊下に出たとき、誰かが階段のところで泣いているのが聞こえた。気になって階段の方を覗いたら
「なんでだよ……なんで世界は僕に死なせてくれないんだよ……」
いつもとは雰囲気が違う仁がいた。いつも冷たい反応されていた仁があんな感じになるなんて…と思っていた私には少しばかりあった興味と恋心が化学反応を起こし、彼を助けたいという感情が芽生えてきた。
泣いていた彼はしばらくすると泣き止み、何かを企んでいるような足取りで屋上に向かっていった。
「そろそろ時間だ…」
と呟いて
そのあとのことはあまり覚えてなかった。今までにないぐらいの速さで階段を駆け上がり屋上に上がり、屋根の淵から落ちようとしていた仁を慌ててつかんで連れ戻した。何が私をそうさせたのかも、なぜ私がそうしたのかもわからなかった。ただ本能が、彼から離れたくないと叫んでいたのはわかった。
「なん…で?」
私に引っ張り戻された仁は驚いてこっちを見た。フードが脱げたことも知らずに。
「なんで僕を助けるの?君の利益もないのに…もしかして英雄きどr」
「そんなんじゃない!!」
まったくもって見当違いなことを言われた私は憤慨した
「ただ…死んでほしくなかった…いままでいろんなことでお世話になっていたし…」
「死んでも君に影響はないのに?」
「影響大有り!乙女の心分からないの?まったく……」
「もしかして…僕のことが好きだったり?」
「そ…そうだけど…ダメなのかな…」
その時初めて初めて会った時からの私の思いを伝えた。とてつもなく恥ずかしかったけど彼は真剣に聞いてくれた。
「なるほど…ただ、君の親はどうするの?」
「家出する。もうあんな生活はこりごりだよ」
「がちかよ…でも家出した後はどうするつもりだ?」
「仁君の家に居候」
そういったときに彼は顔を赤くした、どうやらそんなことを言われるのは初めてみたいだった。
「……逆にいいの?こんな僕で…人でもない僕で…」
「全然問題ないよ。恋に壁なんてないし…なんちゃって///」
そういった瞬間、仁はまた泣き出した
「ど、どうした!?だ、大丈夫?」
「いや、ただこんな人にあらずの僕でも誰かが必要になっているって考えると嬉しさと安堵が…」
「と、とりあえず落ち着こ!ね!」
「うん」
そういい私はとりあえず仁を抱きしめた。一般的にこうすれば泣き止むと聞いたことがあったからなんだけど……抱きしめられた仁は泣き止み一言
「こんな僕を助けてくれてありがとう……」
「どういたしまして…」
ふと横を見ると日記をのぞき込んでにやついている仁がいた。そんな仁に向かって
「あの時の約束は覚えてるよね?」
「もちろん!」
仁は自信満々に言った。
「絶対君のそばに戻ってくる。でしょ?」
話の内容は今から約16年ぐらい前の仁と雪が初めて出会って、仁の自殺を食い止めたときの話になります。
有名財閥のお嬢様・・・日本の華族とロシアの貴族の子孫によって作られた財閥の令嬢
屋根の淵から落ようとしていた仁・・・絶賛病んでいて、死にたがりだったため