「…お客さん」
眠い… 起こさないでくれ…
「…お客さん? おーい?」
ああ、まぶたが重い…。
目の前に人のよさそうな中年男性がいる…
「お、ようやく起きた…
目的地ですよ。 代金払ってください。」
その言葉を聞いて、記憶が蘇ってきた。
どうやら、滕王閣にようやく着いたらしい。
「ああ、代金か… 何円ぐらいだ?」
「ざっとこのくらいです」
運転手が提示した金額は、予想よりもだいぶ高かった。
「…おい、料金がなんか高くないか?」
怒りを押し殺しながら質問する。
「何言ってんですかお客さん。 サービス料ですよ、サービス料。」
運転手は打って変わって、笑いながら気楽に答えた。
「サービス? そんなこと受けた覚えなんてないぞ?」
サービスなんて受けた覚えがない。
しいて言えば、途中観光名所を教えてもらったぐらいしか…
「そんなこと言ったって、しっかりサービスしたじゃないですか。
ほら、おすすめの観光名所を教えてあげたでしょ?」
ドンピシャだった。こんな事で金とるか、普通?
「ほら、早く払って払って」
そう言いながら、運転手はポケットから電話を取り出した。
…何故かはよくわからないが嫌な予感がする。
「ああ、分かったよ… ほら、料金だ。」
財布から新台湾ドルを取り出して渡す。
「おー、ありがとうございます。 お客様は神様です!」
料金を目にも止まらぬ速度で受け取った後、
運転手は半装機式タクシーでどこかへと去っていった。
「……この事はあいつらに伝えとくべきだな…」
そう独り言をつぶやくと、彼は滕王閣へと歩いていった。
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