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『こんにちは。ルェンさん』
「...、今度は何。また君の趣味?それとも腹の中を見たい?」
『いえ、今日は貴女にこちらの作業を手伝っていただきたくて』パラッ
「これは...、紙とカーボンシート。それにトレーシングペーパー?」
『ええ、こちらに一組30枚のイラストがございます。貴女にはこれを転写する作業を手伝って頂きたいのです』
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「それにしてもこのイラストは?紙芝居のように見えるけど...」
『えぇ、その通り。これは紙芝居の原画です。私達が転写した後、子供達が色付けをしてようやく完成するのですよ』
「子供達...、君の勤め先にある孤児院とやらの子供達?」
『そうですよ、皆いい子達ばかりです。同じ施設内に老人介護施設もあるので、週に1度交流会を設けているのですよ。この紙芝居はその交流会で披露するためのものです。あの施設にいらっしゃるご老人の皆様は身寄りのない方々がほとんどなのです。なので、子供たちを本当の孫のように可愛がってくださるのですよ』
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「ふう、全てなぞり終わった。......、寝ているのか?」
『...、ゃん』
「ん?」
『...ぇちゃん......』
『お姉ちゃん......、あのね...今日すっごく楽しかったんだ...。ルェンさんって...、人とお友達になって......、それで、それで...、楽しくお絵描きしたの......』
『あのね...、他にも工作したり......、好きな物の...、見せ合いっこしたり...。勿論私は...、大好きなお姉ちゃんを、見せたよ...。あ、でも......、ルェンさんの好きな物は、まだ見せてもらってないな...』
『それでね...、それでね.........』
「......、何だったんだ今のは」
『』
『これは、おはようございます。ルェンさん。どうされましたか?何やら眉をひそめられていますが...』
「いや、なんでも無い...」
『そうですか。わざわざ手伝っていただいたというのに申し訳ありません。ちょうどデータ更新の時間でしたもので。義体の方である程度、記憶を集積したらそれを整頓し処理するという動作が一月毎に行われるのですが...。処理中は眠ってしまうのですよ。一般的な言い方をすると夢を見ている状態に近いのでしょうか?』
「......」
『おっと、もうこのような時間ですか。今日のところはそろそろお終いにしましょう』
「...、待て」
『どうされました?』
「今日は何故、私を作業に誘った?」
『特に深い理由はありません。強いて理由付けするのであれば、貴女の精密動作性を見たかったからでしょうか』
「そうか...」
『えぇ。ではルェンさん。また明日』
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『おはようございます。ルェンさん』
「...、手術台に磔にされているということは今日は実験?」
『えぇ、その通りです。ですが今回の検証は普段行っているものより長くなりそうです』
「具体的には?」
『そうですね...。大凡3日を予定しております』
「3日...、3日ッ?!!!」
『えぇ、貴女の再生能力に関するテストです。今日から貴女には3日間。貴女自身の手足を食料としていただきます。そこから再生に要する大凡のカロリーを逆算します』
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