その後。 本部に送られたナンバーは5分足らずで特定。 犯人の現在地もすぐに特定された。
…しかし。 彼らの現在地は犯行現場からあまりにも遠かったため、
別の車両が犯人の確保に向かうことになった。
話は先ほどの観光客たちから、確保に向かった2人の警官に移る。
…チェニェク・ツァハとユリアーン・オブドルジャーレク。 2人ともDDP所属の刑事で、どちらも男性。
彼らが乗っているmsh-5は犯人が乗っているらしい車両に向かって、意味の無さそうな警告を行っていた。
「…そこの白い乗用車。 直ちにスピードを落とし、路肩に停まりなさい。」
「そんなんで止まるとは思えんがな」
「ま、いうだけ言って止まらなかったら無理矢理止めるだけだ。」
…一応警告はしてみたが、目の前にいる白い乗用車はスピードを落とすどころかそのまま加速していく。
誰がどう見ても、逃走する気があるのは明らかだ。
「…あいつ、加速してくぞ? 犯人か?」
「犯人じゃなくても、逃げた時点で違反だ! 追うぞ!」
そう言った途端、彼は何の迷いもなくギアを最高まで入れた。
vz.67エンジンの出力は最大まで上がり、スピードはとんでもない速さで上がっていく。
スピードメーターはレッドゾーンに近づいていくが、乗り心地も同じぐらいのスピードで悪化する。
何せ、エンジンは運転席の真下にあるのだ。
出力が上がるほど振動もひどくなり、走行音も壮絶なものになっていく。
「ちくしょー、なんでこんなバイクの出来損ないみたいなやつに乗らなきゃいけないんだぁー」
「サイドカーの方が高いからだよ!」
その音をかき消すぐらいの大声で愚痴を叫んではみたが、哀れ正論を言われて沈黙する羽目になった。
「で? ここからどうする気なんだ?」
「相手が値を上げるまで追うまでだ! なんかに捕まってろ!」
「…ああ、分かった! やってやろうぜ!」
さらに半装機バイクはスピードを上げていき、相手の車に近づいていく。
このままいけば、運転手に銃を突きつけるなりして止められそうだが…残念ながら、現実はそれほどうまくいかない。
「…ん? 何だ?」
助手席から、拳銃を構えた男が身を乗り出してきた。
…もちろん、銃口をこちらに向けた状態で。