速さを犠牲に装甲を薄くしたこともあり、戦車隊の半数が撃破判定された。
生存判定の乗員は僅かしか残っていない。
さらに彼らは不運なことに、狭い市街地に突入していった。
車体が建物にぶつかって身動きが取れなくなる。
「ベータ5よりガンマとアルファへ!
現在交戦中、既に戦闘能力を喪失した!
至急援護をー」
そこまで言ったところで通信は途絶えた。
「こちらアルファ1よりベータ5へ、応答しろ! 聞いてるのか!
…戦車隊が壊滅した! 進路を変えろ!
このままだと残骸のせいでこっちも身動き取れなくなるぞ!」
無線を聞いて、装甲車部隊は進路を後方に展開しつつある歩兵部隊に向けた。
「あと何両生き残ってる!?」
「9両やられてます! 残り3両!」
既に壊滅しかかっている部隊の周りで敵兵が走り回り、
高所や後方からRPGをぶっ放してくる。
戦車隊にとって、悪夢ともいえる光景が広がっていく。
「11時方向、RPG!」
「砲塔旋回!」
「駄目です! 主砲が壁に引っかかって―」
55口径120mm滑腔砲は確かに強力だったが、その長さが仇になった。
狭い市街地において、長い主砲はむしろ障害になる。
…実際、米軍のM1エイブラムスも
市街地戦の為にあえて砲の長さを短いままにしている。(他にも理由はあるが)
どうせ敵はろくな装甲車両を持っていないし、
砲弾の改良だけで容易に対処可能だからである。
次の瞬間、彼らの車両はもろに攻撃を食らった。
判定は撃破。生存者も居なかった。
さらに追い打ちをかけるように、他の車両も次々と撃破されていく。
車長は、撃破判定になった車両の中で小さくつぶやいた。
「畜生め…」
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