ピグリン兵「…ん…あれ、おでまだ生きてる…?」
一時的な失神から意識を回復したピグリン兵は潰れかけた運転席で目を覚ます。そうだ、たいちょうさんは大丈夫なんだろう…
”ドンッ!!”という大きい音と衝撃が輸送車を揺らす。車のフロントガラスに映っていたのは口から血をしたらせ、鬼のような形相をした怪物、”ウォーデン”の顔が至近距離にあった。
ピグリン兵「ひぃいい!!」
“ウォーデン”は胸の下までを輸送車に潰されながらも残った右腕で必死に車を押し、叩いて自らの自由を取り戻そうとしていた。
しかし、腕は力を入れるたびに”メリメリッ”と悲鳴を上げ、体の至るところにある傷からは”プシュッウ”と血が噴き出している。
彼等の戦いは無駄ではなかった。彼らが与えた傷は、たとえ小さくとも今となっては大きな傷となって広がり、”ウォーデン”の力を奪う。
ピグリン兵「早く…早く逃げなきゃ!!」
そう言ってドアを開けようとするがドアの開閉レバーが”ガチャガチャ”と動くだけで開けることは出来ない。先程の衝撃でフレームが歪んでしまった為、通常の方法では開けられないのである。
そうこうしている間に”ウォーデン”は自由を取り戻しつつある。腕が悲鳴を上げながらも輸送車をずらし、輸送車によって壁に埋まっていた胸にある大きな口が自由を取り戻す。
下半身はまだ埋まっているが、この大きな口から吐かれる衝撃波があれば、こんな輸送車なぞ吹っ飛ばす事が出来る。青い光が漏れ始め、衝撃波が今か今かと放たれようとしていた。
ピグリン兵「あわわ…早く、早く空いてくれぇ!!」
ピグリン兵も衝撃波が放たれれば自分がどうなるかなんてわかっている。ピグリン特有の膂力をもって必死にドアを開けようと藻掻くが、完全にフレームが歪んだドアはビクともしない。青い光が煌々と輸送車を照らし、放たれようとしたその瞬間。
“ウォーデン"の右肩に30mm砲弾が突き刺さり、傷だらけだった肩から肉を飛び散らせる。
「グォ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オオオア゙????」
突如飛来した砲弾によりさらなる損傷を受け、苦痛を含ませた悲鳴を上げる。”ウォーデン”の右方向からは、歩兵戦車とその周りに展開するダイバーズが英雄の救出のために輸送車目掛けて進軍しているではないか。
運転手「ダイバーズ、30mmが効いてるぞ!このまま奴を削り続ける!今のうちに救出を!!」
ダイバー1「了解した!しかしこれ以上の被害は出せない…自分が行く!他の者は”アバドン”に攻撃!輸送車には絶対に当てるな!」
ダイバーズ「「「了解!!」」」
ダイバー1は輸送車目掛けて駆け出し、他の者達は歩兵戦車と共に攻撃を続行する。
「ガッァア゙ア゙!ゴッオ゙ェ゙ェ゙ェ゙エ!!」
小銃弾、30mm砲弾は共に”ウォーデン”の体表を削り、傷口に着弾した物は更なる深手を与えていく。もうあの時の無類の強さを発揮した獣はいない、ここまでやってようやく歩兵の装備で互角になるのだ。とはいえ完全に致命傷を与えるには大口径による砲撃が必要では有るが。
輸送車まで辿り着いたダイバー1は運転席にいるピグリン兵を肉眼で捉える。
ダイバー1「大丈夫か!?」
ピグリン兵「…!たいちょうさん!ドアが…ドアが開かないんだべ!!」
ダイバー1「クッ…!!やっぱり開かないか。」
やはり開閉レバーが機能してない。しかし、このロックさえ壊せれば二人の力で無理やり壊せるはず…
ダイバー1「下がってろ!」
そう言って自らの小銃をドアのロック部に突きつける。彼もダイバー1のやることを察し隣の席まで移動する。2度の発砲、それによってロック部を破壊する。
ダイバー1「今だ!合わせるぞ。」
ピグリン兵「おりゃああ!!」
“バキンッ!”という音と共にドアが開く。
ダイバー1「来い!!」
ピグリン兵「んだ!!」
ダイバー1が伸ばした手を掴み、共に輸送車から脱出、ダイバーズがいる地点まで急ぐ。
ダイバー1「戦車小隊!英雄を救出した!やってくれ!」
戦車小隊長「了解した!」
砲塔が回転し照準が輸送車の前にいる”ウォーデン”に定まる。