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ルクス・シャンツェCブロック第3練地下2階にて──────
「お待ちしておりましたわ。主任...。と、ヘルツォーゲンベルク教授」
ヘルツォーゲンベルクに案内され部屋へと入室したが、その部屋には既に先客が居た。
「げっッ!!なんでコーカサスゼーニクダルマッドがここにいやがるんですの?!」
「相変わらず口うるさいお子様ですわね。そんなことでは主任に愛想をつかされるのも時間の問題ではなくて?」
見上げるような長身に真白な髪。黒鉄色の四肢と鼻先まで覆い隠すフェイスガードが特徴的な人物。
ヘルツォーゲンベルクは心底驚いた様子であったが、ミーナはその人物がいることに対し、大凡のアタリをつけていた。
『モーネ。先日貴女に預けた子どもたちをもうダメにしてしまったのですか?』
「いいえ、健康上は問題ありませんわ。ただ...、ほんの少し刺激が強かったみたいで...。既に何人かの受け答えが怪しくなってきたので新しいものをと...」
前髪をくるくるといじりながらそう答える彼女へ対し、それを聞いたミーナは痛む脳もないであろう額を抑えながら苦言を呈した。
『貴女の探究心には敬意を持っておりますが...。限りある命です、もう少し大切に扱ってください』
「はい...」
一応、しおらしい態度をみせる彼女──────モーネへ対し一先ずの追求を避けることとして負荷軽減器の結果について尋ねることとした。
『それで、''件のもの''はどうなりましたか?』
「エリックが担当していたので、もうそろそろ持ってくるものかと...」
時計の針は約束の時刻を既に5分は超えている。
『彼にも困ったものです。もう少し時間を遵守していただければ大変助かるのですが』
「アイツがマイペースなのは今に始まった事じゃねーですの。気にするだけ無駄ですの」
「そういえば主任。フォルメランテで何があったのかお聞きしてもよろしくて?」
何時もの経験則からして長引きそうな待ち時間を有効に活用するべく──────という名目で単に旅の土産話をせがむモーネに対し──────フォルメランテでの情報交換を行うこととした。
『施設自体は全て見て回ることはできなかったのですが、面白い方と出会いましたよ?』
「''人ならざる者''と遭遇でもしやがりましたか?」
「ヘルツォーゲンベルク博士も理解力が足りないのではなくて?フォルメランテに行ったのですもの。ある意味''人ならざる者''との遭遇は必至とも言えますわ。そんな簡単なことも分からないの?」
「いちいち、癪に障りやがるヤツですの...」
ヘルツォーゲンベルクとモーネが噛み付き合いを始めたのを後目にミーナは話を続ける。
『えぇ。''人ならざる者''と接触しましたよ。それも驚くことに基地内にてかの外務宰相『シナノ・リン・ジュスティーヌ』氏と接触しました』
「それは、たまたま外務宰相が視察に来ていてその護衛の''人ならざる者''と接触したということでして?」
「ダルマッドも大概理解力がねぇーですの。主任がいちいちその程度のことで驚くハズがありやがるわけねーです。おおよそ''外務宰相自身が''人ならざる者''だった''とかその辺がいいところです」
施設内でのおおよその出来事へ対しアタリをつけるヘルツォーゲンベルクへ対し、それを気にするわけでもなくミーナは口調を早めながら仮説を立て、施設での一件へ思いを馳せていく。
『えぇ。まさかあれほど目立つ場所に居たとは流石に想定の外でした。もっとも、アレが外務宰相本人なのかはたまた外務宰相になりすました''なにか''なのかについては定かではありませんが...。やはり情報を得るにはもっと深いところへ傀儡を潜り込ませる必要がありますね。それにしてもあの能力特性。アレ、実に興味深いですね。これまでに出会ってきたどの''人ならざる者''とも違う特性。ぜひ一度我々の元へ招待したいものです。一つ一つ検証を積み重ね事象を確かめていきたいものですね。やはり手始めに電力発振のメカニズムから調べるべきでしょうか?生物的な発電を行っているのであれば対応した細胞を持っているはずですが...。あぁ...、実に興味深い』
「また主任がトリップし始めましたの......」
「主任、エリックから連絡が入りましたわ」
『まぁ、時間通りといったところでしょうか』
「"アイツ基準では''...がつきやがります」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「例のものの施術が完了しましたよ主任。うん...?ヘルツォーゲンベルク博士とモーネさんは機嫌が良さそうですね。なにか良いことがありましたか?」
パリッとしたベストと白衣を着こなし、人好きの良さそうな笑みを浮かべた茶髪の男性。エリック・アンダルソンは布が被せられた施術台を押しながら入室してきた。
「残念ながらハズレですわ。主にそこのお子ちゃまのせいで」
「そういうわけでやがりますの。癪に障るダルマッドですの」
「また、間違えちゃいましたか。やっぱり僕には難しいみたいですね。''この娘''も貴女達も同じ表情をしてるのに反応は大違いです」
そう言いつつ、優しく撫でている白布の向こうでは何かが時折ピクリと身動ぎしている。
『状態を見せて頂けますか?』
「どうぞ、こんな調子ですよ」
丁寧にめくり取られた白布。
施術台には円柱型のクッキー缶のような形状をした物体と、チューブで繋ぎ止められた少女が虚ろな目をして横たわっていた。
『同化率は?』
「現状35%といったところです。''ダミー''の方に誘引されているためか、能力行使の割合に対しては緩やかな上がり幅ですね」
エリックへ質問を投げかけながら、ミーナは壊れ物を扱うような手つきで触診を行っていく。
『...、脳の方はどうですか?』
頭まで進めたところで、手をピタリと止め状態を確認する。
「現状、観測することのできる範囲内ではという前提がつきますが''0%''です。もちろん、指示通り抑制剤を投与しない状態で指定時間能力を行使させ続けました」
『負荷軽減器が正常に作動している証ですね』
ほんのりと暖かい負荷軽減器を撫ですさりながら、ミーナはほっと息を吐く。
「意識混濁を起こしてるみてぇーですが、これについては問題ねーですの?」
横たわる少女の顔面を、餅でもこねるようにムニムニと弄んでいたヘルツォーゲンベルクの問いかけに対し、ミーナは顎に手を当てながら思案する。
『......。やはり神経系を繋ぎ合わせたことによる意識の流入が原因でしょうか?』
「エリックの観察レポートによると''頭が割れる''、''が入り込んでくる''などの発言を繰り返していたらしいですわ」
『脳に侵食は及んでいないことは確かです。このままの状態か、ここから回復するかは現状定かではありませんが、ひとまず経過を見守ることとしましょう』
諸々:
山猫砦メンバー
・ミーナさんと愉快な仲間たち()→端から端までもれなく狂人デス。マトモナノハボクダケカ!
・ツィリーナとおしゃべりするミーナさん→傍から見るとかなり異様な光景です。
・コーカサスゼーニクダルマッド→カフカース贅肉達磨マッドサイエンティスト()よくよく見なくとも酷いあだ名。
・シナノサンッ!!→何とかお友達になれないか模索中。
・少女→願いが叶って良かったね()
名前:ミーナ・フェアリュクト
種族:純人間種?
身長:188cm(戦闘用義体)
容姿:様々
所属:山猫砦
好きな物:ツィリーナ
嫌いなもの:無し
概要:おなじみミーナさん()
もはや説明不要の腐れ外道。システムの関係上、人類発展に貢献することが目的と思い込んでいるが、本質的には知識欲を満たすこととツィリーナを愛でることができれば他はどうでもいいタイプのイカレサイコその1。
名前:レオノーラ・フォン・ヘルツォーゲンベルク
種族:純人間種
身長:141cm
容姿:銀髪、暗灰色の瞳、合法ロリ
所属:山猫砦
好きな物:建設的な研究
嫌いなもの:頭のおかしいヤツ
概要:ユンカース出身の山猫砦に所属する研究員。他の研究者が次々とミーナさんの元を離れていく中でミーナさんの元に残り続けた酔狂な物好き達の一人であり、ミーナさんの(というよりプログラムが掲げる)『人々の為に』という理念に共感している。『それ』を実行するためには非人間的な完成された存在が必要であると考えているため人間性を徐々に失っていくミーナさんを眺めながらニマニマと笑っていた生粋のイカレサイコその2。
名前:モーネ
種族:純人間種
身長(義足込み):190cm
容姿:コーカサス系 むちむち 黒髪 銀灰色の目 火傷 梅毒による壊死 技肢獣脚義足
所属:山猫砦
好きな物:ミーナさん
嫌いなもの:ミーナさん
概要:コーカサス系地方有力者の家の妾の子として産まれた。屋敷の火事で重度の火傷と四肢欠損を負った結果、ニンゲンオ○ホとして売られてしまったところをミーナさんに拾われた(というよりその娼館がミーナさんのモルモット集積所だった)
薬物と精神的負担(ンアーッ!!)の日々の中に舞い降りた一筋の希望()次第にミーナさんへ対し陶酔していくモーネであったが、ある日娼館がミーナさんの手によるものであったと知り完全にぶっ壊れた()
あの辛い日々を作り出した元凶である娼館を経営していたミーナさんのことが憎いが、それを理由として離れるにはあまりに真実を知るのが遅すぎた。ミーナさんへ対し愛憎入り乱れる感情を抱く中、ふと『自身の中で渦巻く感情の正体を知りたい』と思ったモーネは『子供たちへ自身の経験を追体験』させそれを観察することによって、その感情の正体を解明できるのではないかと考えた...。イカレサイコその3。
名前:エリック・アンダルソン
種族:純人間種
身長:178cm
容姿:茶髪、茶目、線が細めの優男
所属:山猫砦
好きな物:黙々とした時間
嫌いなもの:すぐ怒る人
概要:中流階級出身の研究員。山猫砦の生き物係()先天的な疾患として、他人の感情表情が分からず、目に映る人間は全員笑っているように見える。本人は喜怒哀楽の見分け方を確立することを研究目標としており、そのために日々邁進している。ヤメテクレヨォ
相手が苦しんでいるのか喜んでいるのかよく分からんので、とりあえず嬉々として実験にかけるイカレサイコその4()
少女→ミーナさんの施設で生活していた子供たちのひとり。弟がいる。
・弟を守る力が欲しい。
・院長先生の役に立ちたい
というふたつの願いを汚いジーニーことミーナさんに放り込んだらこうなった()
ちなみに弟くんはお姉ちゃんの役に立ちたいと願ったそうな()カンドウテキデスネ
もしかしたら今後、詳細な設定が生えてくる...かもしれない。
・能力使用時の同化率向上を無効化、軽減する画期的なアイテムです()
鉄オルシリーズの阿頼耶識type-Eから着想を得たこのアイテムは、20センチ×8センチ程の円柱型の形をしたクッキー缶のような箱型の物体であり、中には生きた人間の脳が詰め込まれいます。仕組み自体は至って単純で、脳と体の間にダミーの脳を介することによって脳へ対する直接の侵食を避ける他、負荷軽減器側の脳へ侵食を分譲することによって同化率の向上を軽減する仕組みとなっています。
利点:
・脳への直接的な侵食を防ぐことが出来ます。ハッピーハッピーハッピー
欠点:
・親和性やダミーとして用いるといった観点から、現状負荷軽減器として用いることができるのは『肉親の脳』に限定されます。
・神経系、血管、あらゆるものを中継させ繋ぎ合わせているので負荷軽減器側の思考がなだれ込んできます()
・なにかこう、ひとのいのちをけいそつにうばいかねないといいますか。たぶんひとととしてやっちゃいけないことしてるとおもいます。
『やぁみなさん、こんにちは(気さくな挨拶)私はミーナ・フェアリュクト。先日そちらの基地へお邪魔させていただいた者です。今回は''例の取り決め''に則り、研究成果の共有を行うべくこのメッセージを送らせていただきました。別個包装のメモリの方にデータが保存されているのでそちらの方をご参照ください。怪しい物ではありませんよ?そうそう、こちらが今回の成果物です。ご覧になりますか?「いや...、やぁ......。離して...ッ」あまり暴れてはいけませんよ。貴女はまだ自分自身の膂力に肉体強度が追いついていないのですから...。あぁ、やはりこうなってしまいましたか。両掌を潰してしまいましたね。良いですか?肉体の再生を行うにもエーギルの力が行使されています。もし''彼''を生きながらえさせたいのであれば自傷はおすすめ致しません。わかってくださいましたか?貴女は本当にいい子ですね。
さて、少々話が逸れてしまいましたがご挨拶はこの辺りにしておきます。本来なら何か能力の行使でもお見せしたかったのですが当の本人がこのような状態でしてね。またの機会でお願いいたします。私達の協力関係、研究が実りあるものになることを祈っています』
一応、モルさんの投稿しているエーギルに関する設定は読んだつもりではありますが、''何か解釈違うな''と感じた点等がありましたら遠慮なく言ってください。
スバラシイ…、ありがとうございました~