ニューヨークのビル群の中を縫うハイウェイを、黒塗りのランヴィーが駆け抜ける。
「いやはや、旧財団の評議会員と言うのは揃いも揃って変な奴しかいないのかね。お陰で予定より長くなってしまったよホント…」
車内にはスーツとサングラス、黒いフェドーラ帽子を着用した女が一人、そして真っ黒な装備にバラクラバを付けた戦闘員が運転手と助手席、女の両隣合わせて四人乗っている。
「ICFは足並み揃わず、サウジの火は消えるどこか燃え広がっちゃってますし」
「まぁ、財団自体あまり人の良い組織じゃなかったしねー。給料だけは良かったんだけど」
両隣の兵士が喋る。その出立ちとは裏腹に、若い女の声だった。バラクラバから出ている目は愉しげに笑っていた。
「№3との交渉は終了、あとは№2に話を通せば今回の仕事は終わりだ。最も、邪魔が入るとも限らな__」
急に車が止まり、思わず前屈みになる。上半身が前部座席の方へ出るすんでの所で強制的に停止する。両隣の二人が手で体を抑えてくれたらしい。手の動かし方がアレでちょっとくすぐったいと言うかアレだが。
「その手の動かし方をっ、やめたまえ。ちょっと…はぁ、状況は?」
運転席に座る女兵士が喋りだす。バックミラー越しに見える鋭い視線はこちらを捉えていた。
「無線です。2ブロック先でUBCIのDIRUが道路を封鎖、1ブロック先を右に曲がって迂回せよと」
「理由はなんて?」
次は助手席に座る兵士が口を開く。全員女らしい。初めて全員女部隊を書いたかも…
「何も言われてませんが、DIRUなので逸脱性関連かと」
そこまで聞いた女は溜まった疲労を吐き出すように息を吐く。先程の衝撃で外れかかったサングラスを元に戻しながら重たい唇を開く。
「捜査するのは良いんだが、良い加減
「「「さんせーい」」」
暗い車内に四人の元気な女性の声が響く。彼女の茶髪とサングラスの間からは、薄らと光を放つ翡翠色の虹彩が覗いていた。