「えーと…こんにちは。ミレナ・レヴァーです。」
目の前に立っている黒髪ロングの少女は、
深くお辞儀をしながらそう言った。
年齢は18歳ぐらいだろうか。
…少なくとも、戦場に行く人の見た目ではない。
「紹介しよう、ミレナだ。
このチーム唯一の人ではない兵士で、担当は狙撃手。
君たちと同じチームに入る。」
「能力は?」
「足がすごく速いです!
あ、試しに実演しますか?」
「おい、たったそれだー」
「はい、それだけです」
…次の瞬間、
彼女は後ろにいた。
さらに、誰も彼女を見る事すらができなかった。
無論、全員が特殊部隊から選抜された精鋭中の精鋭である。
その彼らの動体視力を持ってしても、
ほんの僅かな残像が見えただけだった。
「マジかよ… 目で追うぐらいしかできなかったぞ、どうなってんだ」
「本当ですよ!種も仕掛けもありません!」
彼女がふくれっ面で反論した。
そしてその後ろでは、その様子を並んで見ながら、
ライラとハンネス大佐は話し合っている。。
「どうだライラ?今回の作戦で使えそうか?」
「室内での近距離戦や中距離戦ならどうにか…
遠距離戦は無理っぽいですね。」
「やはりそうか…」
「やはり?」
「彼女の投入は、上の一存で決められたことなんだよ。
私も最初は反対しようと思っていたんだが…
流石に分が悪すぎたんだ」
「上と言うと… 大将とか、元帥クラスですか?」
「もっと上だよ」
「…参謀総長? それとも…国防長官?」
「もっと上だ…
ラドヴァン・ドゥプチェク。どうやら、チェコ首相直々に口を挟んできたらしい。」
「首相がわざわざ口を出してくるんですか?
そりゃあ、人じゃないらしいしそれぐらい重要だと思いますけど…」
「まあ…そんなこと、私たちには分かりっこないさ。
とにかく、作戦を遂行することだけを考えておいてくれ。」
「はあ…」