「閣下、いらっしゃいますか?リュドミラです」
国立病院の病室の一角、書類と見舞品、…頼まれた昼食を手に扉を数回ノックする。
『どうぞ』
若そうな女の人の声…、私から聞いたら聞き覚えしかない声が部屋の中から聞こえてきたのを確認して扉を開けた。
「体調はいかがですか?」
『昔よりかは身体の治りが早いね。骨は繋がったし腕は動く』
「お元気そうでなによりです」
体の至る所を包帯で巻かれた彼女、ただの患者のように見えるが足元には頑丈そうな枷、首には神経毒のチョーカーをつけてさながら"囚人"のようである。
彼女が今の帝国を作り上げた、かの英雄にまで称えられる皇帝権の一員で「強い帝国」の第一線を率いる外務宰相であっても、帝国は彼女をこうして飼い殺しにしている。そんなこと気づいていない、いや、慣れてしまったのかただニコニコと微笑んでいる。
『腹が減っていてね。こうも体がボロボロでも食欲は衰えないものだね』
「一応ご希望に沿うように買いましたが…、今回は色々と報告すべきことがありましたので伺った次第です」
そう言って彼女は、私の買ってきたファストフードの袋を開けて次々と食べていった。買った量は一日で一般人が食べる量を軽く超えていたが、彼女は平気で食べてしまうだろう。
「…、まず海洋研究所ですがACMFがそのまま駐留して防衛。特殊作戦群と合同で臨時防衛にあたるようです」
『まぁそうだろうね。襲撃で企業共の私兵は蹴散らされたわけだしいくらエレナ・ニーナと言っても補充は容易じゃないだろうし…、あむっ』
「襲撃者は全滅。…ですが研究所からいくつかのデータのコピーの形跡が確認されていたようです。漏洩した可能性は高い…と」
彼女はそんな報告を耳にしつつも食事の手を止めない。
『襲撃者はどこの差し金だって?』
「現状では不明…とのことです。ただあんな高度なものを反政府勢力が調達できるとは思えません」
『ん…、旧OCSTか第三国か、…それとも企業か…、はたまた味方か…、まぁそれを探すのは私の仕事じゃなくて企業や政府、軍の仕事だ』
ACMF
エーギル停戦監視軍こと、帝国陸軍第22独立自動車化狙撃兵旅団のこと。
リュドミラ
リュドミラ・ヴィツカヤ・シチェコチヒナ。元帝国陸軍第6自動車化狙撃兵師団所属で、現在は訳あって帝国外務省特別保安任務部隊(通称、ヴァルハラ小隊)の隊長。最終軍歴は上等兵。
『昔よりかは身体の治りが早いね』
能力の使いすぎによって、抑制剤で抑制できる同化の範囲を超えて同化が進行した結果。よりエーギルに近くなった、人間から遠ざかった。
その他
シナミー茶番の後日談みたいなもの。
ペロッ...、これは後日談...ッ!!(迫真)
これは、こちらも書かねば無作法というもの...。
今週中には仕上げるのでしばしお待ちを。
シナノさんのファストフードシーンで、某ドナルドな店のハンバーガーが脳裏にチラつきました()