テルル「失礼致します。」
ファントムの外務担当大臣であるテルルは、そう言って首相が居る部屋をノックして入る。
ハイドロジェン「お疲れ様テルル。急に呼び出してごめんね。」
テルルに気を配る首相の横にはいつものように秘書であるセレンがおり、その前には軍事担当大臣のプロメチウムと財務担当大臣であるプラチナがそこに居た。
複数の大臣が集まっている...ということはそれなりに切迫した状態だというのか。
ハイドロジェン「君を呼び出したのは他でもない...イラク戦争についてのことだよ。」
やっぱりか、と彼は納得する。イラクはもはや世界を2つに分ける組織であるECSCとOCSTの戦いの場である。小さな世界大戦と言っても過言ではない程の泥沼だ。
テルル「やはり私を呼んだのは、外交による他国との会談が目的でしょうか...?」
ハイドロジェン「うん、その通り。それでファントムの軍事部門が出した見解がこれ。」
そう言うと同時に秘書のセレンが彼に書類を差し出す。そこには現在ファントムがイラク内で行っている軍事行動の内容と、今後のイラク戦争の行末に対する予想が書かれていた。
プロメチウム「内容は見ての通り、現在のファントムはイラク北部の避難民保護区の防衛をしており、その周りで戦闘があれば"フラム・レゾン義勇軍が"ちょっかいをかけて遅延戦闘を行う予定だ。我々はそこまで深く戦闘には関与していない。」
テルル「ということは避難民に火の粉が掛からないようにECSCに保護区の攻撃中止を呼びかけるということですね...これがその締結用の条約と...後は今後の戦争で向かう結末についての考察ですね。」
プロメチウム「ああ、現地部隊からの報告を受けて統合参謀本部で立てた仮説ではあるが...このまま行けば先に
OCSTは国家の数が多いものの、基本的に中小国家が多いというイメージがある。それとは対照的に、ECSCは数は少ないものの、全体的に大きな国が多い。戦争は金、資源、人材を消費して行う為、長引けば長引くほど先に疲弊していくのは小さい国から...ということになる。それはファントムも例外ではない。
テルル「共倒れではないにしろ、互いが疲弊し合う前に何かしら落とし前をつけよう...ということですか。」
そして、他の大国もこのまま行けばタダでは済まない。その前に主要国と話して停戦を呼び掛けよう...ということである。
プラチナ「ええ、このままではイラクは大きな経済的損失を受けて最終的に国として成り立たなくなります。OCST、ECSC、そしてイラクのためにもこの戦争を辞めなければ行けないのが、財務部門の出した結論です。」
主戦場となっているイラクの損失は計り知れない。責任重大なミッションである。
ハイドロジェン「そう、これからテルルにはモルトラヴィス帝国に行って貰って避難民保護地区の攻撃停止条約の締結と、停戦の呼び掛けを行ってきてほしい。」
テルル「...モルトラヴィス帝国ですか?良くそんなアポが取れましたね。」
ハイドロジェン「今の所は敵国同士であるけど、前から顔見知り位の仲だからかね...以外とすんなり快諾してくれたよ。ええと...モルトラヴィス帝国の外務宰相であるシナノさんが対応してくれる手筈になってる。気をつけて行ってきてね。」
プロメチウム「モルトラヴィス帝国までの行き先は手配してある。また仮にも敵国の中で活動する事になるから身辺警護として、"ウロボロス"とSPを同行させる。ただ、彼らには既に通達済みではあるが、こちらからは"絶対に攻撃しない"ということは徹底しておいてくれ。」
テルル「承知しました。こちらから攻撃するということは、向こうに攻撃の口実を作ってしまう事と更なるイラク戦争の泥沼化に繋がりますものね...最善を尽くさせて頂きます。」
そう言って彼はモルトラヴィス帝国へ行く準備をする為に部屋を出る。
プラチナ「今回の戦争で各国がかなり疲弊しますね。我々の行末はどうなるのでしょうか?」
ハイドロジェン「分からない...自分達はとにかく、未来の事を考えて行動しよう。」
プロメチウム「そうですね...。」
イラク戦争による未来の行末は誰にも解らない。
今更ですが前日譚です。遅れて申し訳ありません(土下座)