PMCチームによる奇襲により、収容キャンプの司令部は対応に追われていた。
「こちらHQより全警備兵へ、検問所デルタの通信が途絶。 至急応援を―――」
「電力室がやられた! 非常電源に切り替えろ!」
「いいか、10分以内に全兵員を配置に付かせるんだ!急げ!」
一方収容所の中庭では、1台の装甲車が猛スピードで突っ走っている。
「あの車を止めろ!」
リバティニア兵が重機関銃を発砲したが、装甲版をへこませるだけだった。
「駄目だ! まったく効いてない!」
「戦闘ヘリを呼ぶんだ! ロケット弾で撃破しろ!」
あちこちからの射撃も無視し、ひたすら即席装甲車は走り続ける。
…その時。 ハスはこの作戦の一番の問題に気付いた。
「…おい、リアム! 一つ問題があるぞ!」
「なんだ!?」
「すべての建物に「camp.β、NO.X」って書いてあるんだ!」
「…何!? どういうことだ!?」
「罠だ! 多分、いくつかはリバティニア兵が書いたダミーだぞ!」
「じゃあどうやって目的地にたどり着くんだ!? こっちは数百メートル先としか言われてないぞ!?
「もう一回聞くしかない!もっと正確な場所を教えてもらう!」
「おいバンパー! 本物のキャンプはどこにある!?」
「本物!? どういうことだ!?」
「すべての建物に「camp.β、NO.X」って書いてあるんだよ!
その防犯カメラの映像から特定できないか!?」
「ああ、今特定する… 何ぃ!?」
「なんだ!? そっちでも何かあったのか!?」
「電力を消して得したのは向こうだけじゃない!
こっちも電力が完全に途切れてる! モニターに何も映ってない!」
「…嘘だろ!?」
「何とかして復旧させる! それまで耐えろ!」
ローターの音が近づいてくる。
「こちらテキサス1-1、これより30mm機関砲による攻撃を開始する…
30mm機関砲による銃撃。 重機関銃とは比べ物にならない発砲音が連続して鳴り、
簡易装甲車はあっさりと無力化されてたちまち横転した。
「…おい、リアム… 大丈夫か…?」
「駄目だ! …足の骨を折った、動けない!」
「嘘だろ!? このままじゃ作戦は完全に崩壊する!」
「行け、ハス! 早くしないとリバティニア兵が大挙してやってくるぞ!
その前に電力室にいるガスターと合流して、無線機を頼りに目的地にたどり着くんだ!」
「でもお前は無事じゃすまない!」
「無視していくんだ! 早く!」
…かくして。 彼は数日も立たないうちに、あの言葉をもう一度言う羽目になった。
「…分かったよ! もう何でもやってやる!」