ハミルトンは自身の椅子から一度たりとも立ち上がることなくただ突っ伏してひたすらに考えていた。どうしてこうなったのだ?、少しでも考えるのをやめてしまうと外からの群衆や警察官らが発する悲鳴と怒号が耳に飛び込んできてしまう。今すぐにでもこの仕事を辞めてしまいたい。そもそも彼女は内政のことなんかより外交の方がよっぽど適任なのだ。
各大臣からの電話が鳴り止まない。内容は全て一貫してハミルトンに何かしらの指示を求める内容だった。しかし、いくら指示を求められても言えることは何も無い。ハミルトンだって彼らと同じ状況だったからだ。
最早今の政府には情報も物資も支持すらもなにもない。
そう、無いのだ。誰にも、十分に。
しかし辞任したところでこの暴動は収まるのだろうか?、答えはおそらく違うだろう。もしそうしてしまえば彼女自身は解放されても共和民主党が崩壊し失礼で不恰好な野党が政権を奪取するのは分かっていた。
与党と野党の議員らがお互いのことを批判するのをやめない限り議会でも暴動が起きかねない。ここで決めなければそれこそ本当に取り返しがつかなくなるのは目に見えていた。
彼女は何か行動を起こさねばならないのだ。
陸軍はどうだろう?、ノートンに死刑判決を下した時彼らは政府を批判するどころかファシストへの正義の鉄槌を下したと称賛の声をあげていた。今の彼らならば政府に従順に従ってくれるだろう。
次に彼女自身が直接彼らに対して演説を行うという手もある。最も現実性が無く難しい選択だがリターンを考えると最も良い選択かもしれない。
そして、これは難しい選択となるかもしれないが辞任するという手もある。もしかしたらこれは国民にとって最善の選択となるのかもしれない、国民に対して何もしてやれなかったハミルトンが最後に行う「国民のための政策」になるのかもしれないのだ。しかしこれを選んでしまうと彼女は凶弾に倒れる可能性があるのは目に見えていた。一瞬だけこのまま生き恥を晒すよりその方が良いと思ってしまったがすぐにその考えを頭から追い出す。
どれを選ぶにしてももう時間はない。最善の選択を見極めるのだ。
陸軍に収拾を願おう ←
直接話をするのが礼儀というものだ
それでも辞任が最善の選択だ