近い未来
サンドスターの輝きが世界を覆い尽くす頃。
サンドスターがそびえ立つ島、ジャパリパークにとある訪問者が訪れた。
空を飛ぶ謎のフレンズの影…
???「ここがジャパリパークか… なるほど、いい島だぜ」
ザバーッ!
マイルカ「なになに~?見かけないコ~ きみはだ~れ?」
???「ああ?俺か?俺の名前は…
???「俺の名はグリフォン…
マイルカ「ぐりふぉん?聞いたことないなぁ、この辺のコ~?」
グリフォン「いいや、違う。 俺はな… 復讐する為にここに来たのさ」
~生まれた事が罪… 復讐の為… 突然パークに現れた謎のフレンズ【グリフォン】… パークの空には嵐が近づいていた…~
一方その頃さばんなちほーでは…
人気アイドルグループの嵐が来るという話題で持ちきりだった
アイドルグループ「嵐」とは…
アフリカタテガミヤマアラシ インドタテガミヤマアラシ オグロキノボリヤマアラシ
の3人で構成されるさばんなちほーで今話題沸騰中のアイドルグループである!
さばんなちほーでのライブが決まったので、彼女たちはその準備に大忙し…
アフリカタテガミヤマアラシ「誰か手伝ってほしいですぅ~~~~!!」
アフリカタテガミヤマアラシ「ふう~、猫の手も借りたいくらいですぅ~…」
グリフォン「…なら俺が手を貸してやろうか?幸い俺には猫も混じってるらしいからなぁ!!」
アフリカタテガミヤマアラシ「っ!誰ですぅ?!っきゃああああー!!!」
さばんなちほーにある会場を目指すヘラジカの一行
パンサーカメレオン「拙者達が手伝いに来たと知ったらきっと驚くでござるよ、おっ!あれでござるな」
しかしそこで一行が目にしたものは思いもよらない光景だった
オオアルマジロ「そんな…ここが会場?メチャクチャに壊れてるよ…」
ハシビロコウ「………あれ…!」
ハシビロコウは一層目を見開くと会場の一角を指差した
シロサイ「あそこに誰か倒れてますわ!」
その声を聞いたヘラジカは傍らで呆然と立ち尽くすインドタテガミヤマアラシとオグロキノボリヤマアラシには目もくれず、ぐったりするアフリカタテガミヤマアラシを抱き起こす
ヘラジカ「おいっヤマアラシ!しっかりしろ!ヤマアラシィーーーーーっ!!」
今にも雨が降りだしそうな空に悲痛な叫びだけが響いていた
じゃんぐるちほーにて…
グリフォン「クソッ なんでこんなにセルリアンが多いんだ!どうなっていやがる…これじゃあキリがないぜ!」
なんとかセルリアンの大群から逃げおおせたグリフォンは木陰でQKしていた。
グリフォン「チクショウ、腹がへった…」
そこへ現れたのは…
オカピ「オカピだぞぉ!私に会えるなんて運がいいよ君~!でもこの辺じゃ見ない子だね、どっから来たの?」
グリフォン「……何か…食い物……くれ…」
オカピ「はい、じゃぱりまん!おいしいよ!」
おなかペコペコだったグリフォンは差し出されたじゃぱりまんを一心不乱に貪る
グリフォン「はー食った食った… べ、別に助けてくれと頼んだわけじゃねーぜ!でも、借りが一つできちまったな」
オカピ「フレンズ同士、困ったときはお互いさまだよ~!」
グリフォン「俺はグリフォン、このパークにある【けんきゅうじょ】を探している。俺はそこに用があるんだ」
オカピ「けんきゅうじょ?聞いたことないな~。でもパークに詳しいコなら知ってるよ。よかったら紹介してあげる!」
グリフォンは鬱蒼としたじゃんぐるで出会ったオカピというフレンズに誘われて、パークにある【としょかん】を目指すのだった…
オカピ「それにしてもさあ、何であんなところで行倒れてたの?」
グリフォン「……実は…」
オカピ「えーっ!嵐ってあの人気沸騰中のアイドルグループじゃない!ヤバイよ!」
グリフォン「し、仕方無いだろ!設営を手伝うかわりに新しく考えた振り付けをちょっと見てもらおうとしただけなんだ!」
オカピ「それが何で会場がメチャクチャになっちゃうのさ~?」
グリフォン「俺…踊り始めたら夢中になっちっまって…気付いたら周りがメチャクチャになってて…パニくって全力で逃げてきた…」
オカピ「それでじゃんぐるちほーでへたばってたのか~」
グリフォン「俺はどう言うわけか他の奴らより凄く力が強いんだ…だけど力の加減が上手く出来なくて…ホントは俺だってアイドルみたいに…!?」
図書館を目指す二人の前に突如、3人のフレンズが立ちはだかる、パークの安全を守るセルリアンハンターだ
ヒグマ「見つけたぞ、コンサート会場を破壊したのはお前だな!覚悟しろ!」
オカピ「ちょっとまって、話を聞いてあげてもいいんじゃないかな?」
ヒグマ「話?…そうだな、聞いてみよう。何であんな事をしたんだ?」
グリフォン「うるせぇ…お、俺は別に…
その時!遠くのほうでドーンという大きな音と共に、誰かの声が聞こえた!
???「だ、誰かたすけてー!!」
ヒグマ「!?セルリアンか!?」
リカオンとキンシコウに目で合図をするとヒグマ達は声の方向へ走り出した!
ヒグマ「まずはセルリアンを優先する!お前の事は後回しだ、逃げるなよ!」
グリフォン「お、おい!待てよ!!」
オカピ「待って待って~~!!」
6人が、悲鳴が聞こえた場所へと辿り着くと、そこは真っ黒な影で覆われていた。
視界に入らないほど大きなセルリアンがそこに居た。
そして、その後ろの木の影には、1人のフレンズが、身を震わせながら隠れ 立ち尽くしている姿が見えた。
ヒグマは恐怖した。
そのセルリアンの大きさに。
「ヒグマさん、どうしましょう!?」
キンシコウが、ヒグマにそう言った。
そして、ヒグマはそのセルリアンへ熊手を向けて言った。
「私達はセルリアンハンターだ。だから、セルリアンが出たら倒す。それだけだ。」
戦闘が始まってから既に数十分が経過していた、巨大セルリアン本体の動きは遅いものの、本体より生える無数の触腕によってヒグマ達は苦戦を強いられていた
リカオン「うわわわっ!ひっヒグマさぁーん!オーダーきついですよぉーっ!」
必死にセルリアンの注意を引くリカオンが悲鳴をあげる
キンシコウ「まずいですね…触腕をいくら潰してもすぐに再生してしまうんじゃ…」
ヒグマ「くっ、このままじゃジリ貧だぞ…!何か…何か手はないのか…!」
じゃんぐるちほー特有の温かく湿った風がハンター達の体力を容赦無く奪って行く、焦るヒグマには熊手がいつもより重く感じられた
ヒグマ「…あの触腕が厄介だ…加えてこの暑さ…どうしたら…」
思考を巡らせていたヒグマの集中力が僅かに緩んだ刹那、リカオンを追っていた触腕の一本がヒグマに襲いかかる
ヒグマ「しまった…!!」
致命傷を避けようと熊手を盾に頭を覆ったヒグマだが衝撃は来かった、ふと防御を解くとそこには触腕を鷲づかみにするグリフォンが立っていた
グリフォン「こいつをどうにかすりゃあいいんだな?」
ヒグマ「あ、ああ」
グリフォン「へっ任せな!うおらぁああああーーーーーっ!!」
叫びとともにグリフォンは触腕を強引に引き寄せると力任せにセルリアンを投げ飛ばした、グリフォンを中心に弧を描くように浮き上がったセルリアンは反対側の地面へと叩きつけられた
ヒグマ「なっ!?馬鹿力にも程があるだろ…!」
地面に叩きつけられた衝撃でセルリアンの動きが止まる
ヒグマ「今だリカオン!キンシコウ!石を砕け!!」
顕になった弱点の石に二人の攻撃が炸裂するがサンドスターを消費し過ぎた為か完全に破壊出来ない
ヒグマ「まずい!復活するぞ!」
セルリアンがその巨体を起こそうとした直後だった
オカピ「オカピだゾッと!」
オカピの強烈なキックが砕けかけた石を完全に粉砕した、『パッカーーン』という音とともにセルリアンはサンドスターの結晶となった
ヒグマが、セルリアンを倒したオカピを見上げながら驚いた。
「今のは……私たちでは間に合わなかった。」
オカピが、そんな声を上げたヒグマの方を振り向いた。
「……そんな事はどうでもいい! あいつは……」
ヒグマはグリフォンを探した。
「……クソッ、」
グリフォンは、既にそこには居なかった。
オカピ「あれれ、行っちゃったのかー…」
ヒグマ「あいつはどこへ行ったんだ?行先を知らないか?」
オカピ「【けんきゅうじょ】っていうのを探してるんだって~。場所が分からないからとしょかんへ行こうって話だったよ」
キンシコウ「なら、私たちもとしょかんへ向かえばまた会えますね」
リカオン「追いますか?」
キンシコウ「あの子…私にはそんなに悪いコには見えないですよ」
ヒグマ「…言い分があるのならあいつから直接聞くさ。とにかく後を追うぞ!」
オカピ「待って待って~ あたしも一緒に行くよー!」
じゃんぐるちほーを遥か下に眺めながらグリフォンは大空を羽ばたいていた、目の前には高くそびえる山々が連なっている
グリフォン「あのハンターとか言う連中に絡まれると面倒そうだ、撒いて正解だったぜ」
ふと自分にジャパリまんをくれたオカピの顔が浮かんだ
グリフォン「…ま、縁がありゃまた会えるだろ、それにしても一暴れしたらまた腹が減ってきやがった……ん、何だありゃ?」
山頂付近の草で覆われた一帯に一軒の山小屋が建っていた、その脇には除草され土が剥き出しになって出来た奇妙な印のようなものが見える、グリフォンはとりあえずそこに降りてみることにした
山小屋の前に降り立ったグリフォンは驚愕!小屋の中を覗くとこんな山頂とは思えない程沢山のフレンズがいる
グリフォン「なんなんだぁ、ここは!?」
戸惑うグリフォンの後ろから声がする…
アライさん「おい、おまえ!入るのか入らないのかどっちなのだ?入らないならどいて欲しいのだ!」
後ろから声をかけてきたのはアライグマとフェネックだった
グリフォン「ああ?…お、おう。すまん… あ、ちょっと!ここは一体何なんだ?」
フェネック「ここはじゃぱりかふぇっていうのさー。」
グリフォン「かふぇ?かふぇって何だ?」
フェネック「みんなで景色を見ながらおしゃべりしたり、アルパカさんが出してくれるおちゃを飲んだりする所だよー」
グリフォン「おちゃ…?何かよくわからんが、どれ… 少し中を見てみるか…」
ぎぃぃ…
少し羽根を休めたいグリフォンはカフェのドアを開けて中に入ってみる事にしたのだった
扉をくぐり『かふぇ』に入ると中は大勢のフレンズ達で賑わっていた。
アルパカ「ふわぁ~~いらっしゃあ~い、ようこそ~じゃぱりかふぇへ~、お好きな席にどうぞ~」
グリフォン「お、おう」
グリフォンは窓際の席に腰を下ろすと改めて店内を見渡した、様々なフレンズ達がジャパリまんと何かを飲みながら楽しそうにお喋りをしている。
アルパカ「お待たせ~何飲む~?お薦めは紅茶かな~、他にも色々あるゆぉ~」
グリフォン「じゃ、じゃあその紅茶?ってやつとあの丸い食い物をくれ!」
アルパカ「はいよ~紅茶とジャパリまんのセットを一つね~」
グリフォン「…ふう」
グリフォンは椅子に深く腰掛け背もたれに体を預けると一呼吸し窓から外の景色に目をやった。
陽は既に傾き山々はうっすらと夕陽色に染まっている。
飛翔能力を有するグリフォンにとってそれは特段珍しい光景では無かったが今はとても新鮮に感じられた。
グリフォン「こういうのも悪くねえな…」
そう呟きしばらく景色を堪能していると程無くして紅茶とジャパリまんがテーブルに並べられた
アルパカ「はい どーぞぉ!ちょっと熱いから気を付けてにぇ!」
そういうとアルパカはグリフォンの座る席に対面する形で着席した
グリフォン「お・・・おい!なんで座ってんだよ!」
アルパカ「お客さんかふぇに来てくれたの初めてでしょお?まあまあ、私の事は気にしないでぐいっと飲んでみてぇ!」
グリフォン「見られてちゃ飲みにくいな・・・」
アルパカ「いいからいいから~」
カップの中を覗き、なんだか少しおどろおどろしい色の「紅茶」という飲み物を見るグリフォン
グリフォン「・・・ほんとに飲んで大丈夫なのか、これ・・・」
恐る恐るカップを口に運ぶ…
ゴク…
グリフォン「…あ、うま…っ…… あっ!」
思った以上に美味しかった事に驚いたグリフォンは思わず うまい!と口走りそうになったが、目の前に座ってニコニコしながらこっちを見ているアルパカを見て我に返った
グリフォン「…ま、まあまあだな。」
アルパカ「ほんとぉ?やったぁ~!おかわりもいっぱいあるから言ってにぇ~ じゃぱりまんもおいしいヨ~」
そう言って席を立ったアルパカが少し遠くまで行くのを見届けてから、もう一度机の上にある紅茶を覗き込む
グリフォン「へへ…まぁ、いいや。気に入ったぜ」
そう言うとカップを持ち紅茶をもう一口飲んだグリフォンの目に、ちらりと窓から見える満月が写る…
その月明りに誘われるように、カップとじゃぱりまんを持ってバルコニーへふらふらと出た
外に出てみると月明かりに照らされたバルコニーは思いのほか明るかった、時折吹く風が心地いい。
こんな時間にも関わらず『かふぇ』の中は相変わらずの賑わいぶりだ、みんなこの場所が大好きに違いない。
グリフォンはジャパリまんを頬張りながら紅茶を一口すすると『としょかん』のある方角を見つめ誰かに話しかけるように呟く。
グリフォン「…もうすぐだぜ…ヒポグリフ…」
気がつくとその手に持たれたティーカップには頭上高く昇った満月が映り込んでいる。
グリフォンは少し冷めた紅茶を一気に飲み干すと『かふぇ』を後にした。
グリフォン「……あつい……あつすぎる!!俺はあついのは嫌いなんだよぉーー!!」
さばくちほーの上空を飛びながら一人叫ぶ その叫び声は誰にも届かない程に、砂、砂、砂…
何処まで行っても砂ばかりの風景にグリフォンは心底うんざりしていた
グリフォン「ちくしょー、これじゃあ干上がっちまうぜ!どこか、どこか休憩できるような日陰は…」
そう呟きながら飛び続けるもやはり一面の砂だらけ…
少し意識がもうろうとしてきたのか、空を飛ぶ高度が徐々に下がってきた
グリフォン「…クソー、やばいな…… ん?…あれは… 」
グリフォン「な、何だああ?!」
前方の空が砂色に変わる、それは強風とともに大量の砂を巻き上げながら猛烈な速度でグリフォンに迫って来た、砂嵐だ。
グリフォン「う…ぉおおお!こっちくんなぁあーっ!!」
何とか逃れようと必死に足掻くが長時間の飛行と暑さで体力を失ったグリフォンにもはやどうすることも出来無かった、なす術無く砂嵐に巻き込まれ吹き飛ばされた。
ツチノコ「ごくごく・・・プハー!生き返るなー!このへんで水が飲めるのはここだけだからな…少し補充しとくか・・・よっと」
瓢箪の水筒に水を入れるツチノコの頭上に黒い影!
ツチノコ「ああ?なん・・・」
ゴチーーーン!
ツチノコの頭の上に落下してきたのはスナネコだった
ツチノコ「な、ナニヤッテンダァオマエーー!」
スナネコ「お?ツチノコじゃないですか。こんなところで一体何をしているのですかぁ?」
ツチノコ「こっちのセリフだ!どっから出て来たんだオマエ!」
スナネコ「歩いてたら、大きな砂嵐があったので、見に行ったら、飛ばされて・・・」
その時スナネコの頭上に黒い影!
グリフォン「わーーーー!」
ゴチーーーン!
今度はスナネコの上に吹きとばされたグリフォンが落ちてきた
ツチノコ「おおおおお!?ななな、ナンダァコイツ!おい、大丈夫かー!?スナネコー!」
スナネコ「あ、はい」
ツチノコ「…お前何でいつもそんなにケロッとしてるんだ…今度いったいは何なんだよ?!」
二人は側で横たわっているグリフォンに近づいた。
ツチノコ「お、おい、スナネコあんまり無闇に近寄るなよ」
スナネコ「やあ、見たことない子ですね」
珍しそうにグリフォンの顔を覗き込むスナネコだったがグリフォンは当たりどころが悪かったのか気絶している。
グリフォン「……ううーん…はっ!?み、水?水の匂いだ!!」
喉がカラカラだったグリフォンはガバッと勢いよく飛び起きると水面に顔を突っ込んだ。
グリフォン「ゴクゴクゴク…プハァーッ!はーうめぇー!…ん?うわっ何だぁお前らは?!」
水を飲むのに夢中になったいたグリフォンはようやく二人に凝視されている事に気が付いた。
スナネコ「僕はスナネコです、あなたは誰ですかぁ?」
グリフォン「俺か、俺はグリフォンってんだ、そっちの被り物してる奴は?」
ツチノコ「お、俺はツチノコだよコノヤロー!シャーッ!!」
グリフォン「なんで怒ってるんだ…?」
ツチノコ「お、俺はこれが普通なんだよ!」
スナネコ「まあまあ、ツチノコの事は置いといて、とりあえずジャパリまんでも食べませんかぁ~?」
『ジャパリまん』その言葉にグリフォンの目が輝いた。
グリフォン「ムシャムシャ…この前のじゃぱりまんとはまた味が違うんだな。(これもうまいな…)」
ツチノコ「お前、こんな所で何やってたんだ!?」
グリフォン「訳あってこのさばくを突っ切らなきゃいけないんだ。だが、途中で暑さにやられて羽根も砂だらけ… で、このザマだ。」
ツチノコ「そんなの当たり前だ!!この一番暑い時間にぶっ通しで空を飛んで行こうだなんて無茶苦茶なヤツ!!」
グリフォン「どこかこの辺で休憩できそうな涼しい場所はないのか?」
スナネコ「それなら、ボクのおうちに行きますか?すぐ近くですよ。」
ののののののののののの
グリフォン「ふー!確かにここは涼しくていいな。ちょっと暗いけど… 悪いがしばらく休ませてもらうぜ。」
スナネコ「ふふふふ ふふふふ ふふふふ~ん♪(地面に落書き)」
ツチノコ「お前まだこんなところを寝床にしてるのか!!この先の遺跡にはセルリアンがもううじゃうじゃ沸いてるんだぞ!あぶないんだぞ!」
グリフォン「遺跡?遺跡ってなんだ?」
ツチノコ「ここが入り口だ」
案内された先には大きな扉があり、入ってみると広い空間が広がっていた、だが扉には何故かつっかえ棒がされ完全に閉じないようになっていた。
謎の声「ようこそ~地下迷宮へ~君は無事に出口まで辿り着けるかな?フッフッフッフッ…」
グリフォン「うおっ?!何だ!誰かいるのか?!」
何も無い所から発せられる声に驚くグリフォン、だが回りを見回してもツチノコとスナネコの二人しか見当たらない。
ツチノコ「そっか!初めての奴はビックリするかもな!ここはなー、大昔にこのパークにまだヒトが居た頃に作られた『あとらくしょん』施設なんだ!」
妙なテンションで興奮ぎみにツチノコが話し出す。
グリフォン「あとらくしょん…?…ヒト?」
ツチノコ「あとらくしょんってのはなヒトを楽しませるための施設だ!といってもここは正式稼働する前にだな……地図に……」
捲し立てるように語りだすツチノコを遮るようにスナネコが前に出た。
スナネコ「ヒトはツルツルしてて、僕達みたいな耳も尻尾も無いんですよ~」
グリフォン「耳も尻尾も…うえっ…なんか気味が悪いな…まあいいや、とにかく先に進もうぜ?外に繋がってるんだろ?」
ツチノコ「それなんだがな…さっきも言った通り最近セルリアンが大量に湧き出してな、今は危なくて通れないんだ…」
ツチノコは悔しそうに言った。
グリフォン「倒せないのか?」
ツチノコ「駄目だ数が多すぎる…、それに地下迷宮は入り組んでてな、袋小路にでも追い込まれたらアウトだ」
グリフォン「 じゃあやっぱり空を飛んで行くしかないのか…」
諦めて引き返そうとしたその時、突然入り口の扉が音を立てて閉まった。
ツチノコ「おわぁーっ!何でだ!?閉じないようにつっかえ棒がしてあった筈なのに!」
スナネコ「もしかして、これの事ですか~」
ツチノコ「そうそう、それな…ってお前かーーっ!何て事してくれたんだ!」
グリフォン「中から開けられないのか?壊すか?」
ツチノコ「…無理だろうな…それにこの施設も大分脆くなってるしな下手に壊しでもしたら最悪生き埋めだ…いや、あいつならもしかしたら……」
ツチノコはそう言いかけて止めた、今は無い物ねだりだ。
グリフォン「よく分かんねぇけどどうやら先に進むしか無いみてえだな」
スナネコ「わあ、なんだか面白そうですね~」
ツチノコ「お前が言うな!まったく…さっさとついて来い!置いてくぞ!」
一行は覚悟を決め迷宮の奥へと足を踏み入れた。
グリフォン「出口は分かってるのか?」
ツチノコ「外のにおいは、わかる。真っすぐたどりつけるとは思えないけどな。」
グリフォン「なんか… 道がグネグネしてて奇妙なとこだな。」
スナネコ「これ、何ですか?すごーい!変なのー!……… でも、まあ…」
ツチノコ「何度も言うが、セルリアンの数が尋常じゃない。見つからないように気を付けて進むぞ。」
とにかく出口へ向けて歩く三人の前方に、赤い球体型のセルリアンが3体…
まだこちらには気づいていないようだ。
グリフォン「おっと、早速お出ましか… だがあの程度の数なら問題ないな。」
ツチノコ「待て待て!できるだけセルリアンとの接触は避けるんだよォ!」
グリフォン「何でだ?あの程度なら倒して通った方が手っ取り早いんじゃないか?」
ツチノコ「さっきも言っただろ!ここはもういつ崩れたっておかしくないくらいボロボロなんだぞー!俺はこんな所で生き埋めなんてごめんだ!」
グリフォン「…」
ツチノコ「それにここのセルリアンには、音を出して仲間を呼ぶやつがいるんだ!あれに見つかってみろ!どんどん仲間を呼ばれて厄介だぞ!」
グリフォン「…チッ、面倒だが仕方ないな… なんとか避けて動くか。」
スナネコ「二人とも、なんだか楽しそうですね♪」
ツチノコ・グリフォン「どこがだッッ!!」
のののののののののののの
別の道を行く一行…
ツチノコ「こっちもダメか。」
のののののののののの
グリフォン「ここもだ…あっちへまわろう…」
のののののののののの
スナネコ「ねむくなってきました。」
のののののののののの
グリフォン「くそっ…まさかこんなに多いとはな。さっきから同じところをグルグル回ってる気がするぜ。」
ツチノコ「どんどん増えている…なんとか抜け出さないと囲まれちゃうぞ!!」
グリフォン「もういっそ見つかるの覚悟で正面突破するか?」
ツチノコ「ナニイッテンダー!そんなの無謀にもほどがあるだろ!」
グリフォン「じゃあどーすんだよ!」
二人が口論しあっている後ろで、スナネコはそんな事はどこ吹く風…
変わったモノが色々ある迷宮内に興味津々だった
【火災報知器】
◎
スナネコ「なんだろー、これ?」
ポチッ
ジリリリリリリリリリリリリリ!!
大きな鐘の音が迷宮内に響く!
音に反応してセルリアン達がざわつき出す
ツチノコ・グリフォン「なにやってんだお前ーーーーーーーー!!」
迷宮には魔物が潜む…3人の運命や如何に!?
あれからどれくらい走っただろうか、セルリアンを避け続け地下迷宮を散々右往左往した結果、グリフォンには自分たちが何処にいるかさっぱり分からなくなっていた。
グリフォン「ハアハアッ…なあ、ツチノコ、これ本当に出口に近付いてるのかよ…!?」
スナネコ「僕もうお家に帰りたいです…」
ツチノコ「ゼェゼェ…大分回り道をしたが間違いない、もうすぐ出口の筈だ!」
しかし火災報知器によって刺激されたセルリアンはしつこくグリフォン達を追い回していた、途中何度か木製の衝立を蹴破った気がするが流石にその程度で崩落することは無いだろう、迫り来るセルリアンは気になるが振り向いている余裕は無かった。
グリフォン「チクショウ、喉が渇くな…もっと飲んでおけば良かったぜ…」
ツチノコ「もうすぐだ!あそこさえ抜ければっ…!」
走り抜けた先にはこれまでの迷路からはかけ離れた広い部屋があった、そしてその奥には外からの明かりが射し込んでいる、しかし出口を前にして一行が目にしたものは大量のセルリアンだった。
ツチノコ「嘘だろ…」
グリフォン「後ろからも来てるぞ!どうする?!」
スナネコ「僕もう走りたくないです…」
セルリアンが回りを取り囲み徐々にその包囲を狭めて行く。
ツチノコ「ちくしょー、囲まれたぞ!」
グリフォン「くっそー、こうなったら一匹でも多く道連れにしてやる…!」
そこでグリフォンはあることに気が付いた。
グリフォン「…何だ?…水の匂い…!?」
ツチノコ「ああん!?こんな時に何だよ?!水がこんな所にあるわけ…いや、まさか…グリフォン!少しだけ時間をくれ!」
ツチノコが赤外線視認能力で辺りを探る。
グリフォン「どうしたっ?!ツチノコ!セルリアンの数が多すぎる!スナネコももう持たねえぞ!」
押し寄せるセルリアンに応戦するグリフォンだが流石に歩が悪い。
ツチノコ「…ある!確かに水だ…だがこれは…!いや、もう迷ってる場合じゃ無い!グリフォン!俺達を抱えて飛べるか!?」
グリフォン「ああ?!少し位なら…多分…!」
ツチノコ「グリフォン!スナネコ!俺が合図したら全力で床の一点を攻撃するんだ!いいな!」
一同「野生解放!」
三人の瞳に野生解放の証である光がぼうっと灯る。
ツチノコ「今だっやれ!ふんっ!!」
スナネコ「えい~!!」
グリフォン「うおらぁああ!!」
ズガガガッ!!三人の全力の一撃が床の一点に集中した直後、音を立てて床に亀裂が走る、それは次第に床全体へと広がって行き、ついには轟音を上げセルリアンを巻き込みながら崩れ落ち始めた。
ツチノコ「グリフォン頼む!」
グリフォン「よしっ!掴まれ!」
グリフォンはフラフラしながらも二人を抱えて無事に出口付近の安定した足場に辿り着く、眼下には崩落し大きく口を開けた大穴があった、さらにその下には激流が流れている、地下水脈だ。
グリフォン「あっぶねぇ…俺達の下にこんなのがあったのかよ…よく分かったなツチノコ」
ツチノコ「水の匂いがするって言うお前の言葉にピンと来てな、おそらく長い時間をかけて地形を削って空洞が広がったんだろ」
スナネコ「すごいですねぇ!…でもまあ…」
グリフォン「はあ、とにかく外に出ようぜ、もう狭いところは懲り懲りだぜ…」
三人は苦笑しながら地下迷宮を脱出した。
どうにかこうにか迷宮からの脱出に成功した3人は大きく息を吸った。
スナネコ「外ですね~。」
グリフォン「・・・・・出られたはいいが、やっぱりあついぞ。」
ツチノコ「さばくが暑いのは当たり前だ!でもここまで来れば、さばくちほーの出口は近いぞ。」
グリフォン「そうか、そいつを聞いて少しだけ気が楽になったな、ハハハ。」
ツチノコ「おまえ、さばくちほーを抜けてどこへ行くつもりなんだ?」
グリフォン「・・・としょかんって所に用があるんだ。お前知ってるか?」
ツチノコ「としょかんは知ってる。でも、としょかんに何の用だ?自分が何のフレンズか調べるのか?」
グリフォン「・・・いや、そうじゃない。」
グリフォン(・・・俺の目的は復讐・・・こいつらに正直に言うべきか?今までの事から考えても、あまり関わり過ぎると面倒な事にならないか?うーん、どうするか・・・)
ツチノコ「?」
グリフォンは少し迷ったが黙っている事にした。
グリフォン「何でもねえ、お前らには世話になったな」
ツチノコ「お、おう、もう行くのか?」
スナネコ「僕もとっても楽しかったです」
ツチノコ「これでも持っていけ、餞別がわりだ」
ツチノコはどこからともなくジャパリまんを取り出すとグリフォンに差し出した。
グリフォン「へへっ悪いな、助かるぜ!おっとそうだ…」
グリフォンはごそごそと懐をまさぐるとキラリと光る何かをツチノコに手渡す。
ツチノコ「こっ、これは…!ジャパリコインだ!!」
グリフォン「逃げ回ってる最中に拾ったんだ、お前にやるよ」
ツチノコ「おおお!良いのか?!いい奴だな!お前!!」
ツチノコは尻尾を激しく振りながら興奮している。
グリフォン「じゃそろそろ行くか、お前ら元気でな!」
ツチノコ「おう、お前もなー!」
スナネコ「また遊びましょ」
グリフォンは羽根を広げると『としょかん』を目指し空高く舞い上がった。
ざばくちほーを越えしばらく飛び続けていると大きな湖に出くわした、丁度空腹を感じていた上に喉も渇いていたグリフォンは少し休もうと湖の畔に降り立った。
辺りを見渡すと湖に浮かぶ小島には少し変わった小屋が建っていて、近くの岸には奇妙な穴が無数に掘られていた。
グリフォン「何だ…あの穴…?」
何か少し嫌な予感がしたグリフォンだったが、恐る恐る無数に大地に空く穴を覗き込んでみた
どうも一つ一つ深さや掘られている方向が違うようで、ごく浅いものもあれば異様に深く底が見えないものもあったり、別の穴とつながっているものもあるようだ
グリフォン「こいつは…セルリアンの仕業!?」
グリフォンは想像した。のたうち回りながら大地をえぐり取る大蛇のようなセルリアンの姿を…
きっと誰かがここで強大なセルリアンと一戦交えたのではないか?戦ったフレンズは、セルリアンはどうなった?
さばくちほーで消耗した分、次のちほーにいけば落ち着いて休養を取れると思っていたグリフォンだが見るからに難敵の予感に嫌が応にも緊張が走る
グリフォン「チッ…長居は無用ってことか…?」
一歩後ろに後ずさりをしたグリフォンの足元が崩れる!
グリフォン「うおお、しまった!罠かッッッ!!」
静かなこはんに鷲獅子の咆哮がこだまする…
思いもよらず突然生き埋めになったグリフォンはかなり焦っていた。とっさに口元だけは手で覆い僅かな隙間を作ったが視界は塞がれ呼吸も思うようにままならない、自慢の怪力で土砂を払い除けようにも思った以上に土は厚く、土砂と密着した状態では十分な力を発揮するために必要な勢いもつけられない。こうしている内にも徐々に空気は失われ、更には正体不明のセルリアンが今にも襲ってくるかもしれない。
グリフォン「こんな所で終わってたまるか…くそ…もう息が……」
その時だった、地上を何かが動く振動が感じられた
プレーリー「そこに誰かいるのでありますかーっ?!…おかしいでありますな、確かに声が聞こえたのでありますが…」
ビーバー「プレーリーさん、本当に声が聞こえたっスか、俺っちには聞こえ無かったっスけど…」
プレーリー「う~ん…そんな筈は…」
近くに誰かがいる、そう思ったグリフォンは呼吸も絶え絶えに、それでも力の限り叫んだ。
グリフォン「俺はここだっ!頼む!出してくれぇっ!!」
踵を返そうとした二人の耳に微かにだが声が届いた。
プレーリー「やっぱり誰かいるであります!でも何処に…?!」
ビーバー「俺っちにも聞こえたっスよ!きっと生き埋めになってるっス!早く助けないと!」
プレーリー「あの崩れている所でありますか!うおおーっ、今助けるであります!」
プレーリーは急いで崩落場所に駆け寄ると勢いよく土砂を掻き出し始める、グリフォンは薄れ行く意識の中で何故かプレーリーの悲鳴を聞いた気がした。
グリフォン「うーん…うーん… ハッ!!ここは…!?」
グリフォンは気がつくと、どこかの建造物の中で横たわっていた。
グリフォン「何がどうなったんだっけか…確かセルリアンを避けようと思ったら地面が崩れて…それからどうなった?確か誰かの声が聞こえてきて…それから…うーん、思い出せねえ…」
グリフォン少し息を整えてから周りを見回してみたが、誰もいない。風の鳴く音と、鳥のさえずりだけが響いている。
ぼうっとしていると、遠くのほうから話し声が近づいて来た…どうやら2人いるようだ。
登ってくるような足音が近づいてくる…グリフォンは警戒した。
プレーリー「おおっ、目が覚めたでありますか!」
グリフォン「…ここは…?もしかしてあんたらが俺を助けてくれたのか?」
ビーバー「俺っちはアメリカビーバー、ビーバーでいいっスよ、ここは俺っち達の家っス」
プレーリー「私はオグロプレーリードッグ、プレーリーでいいであります!」
グリフォン「俺はグリフォンだ、危ない所を助けてくれて感謝す…え?!」
グリフォンが感謝の言葉を言い終える寸前、唐突にプレーリーに顔を掴まれる。
プレーリー「グリフォン殿でありますか!早速プレーリー式のご挨拶をさせていただくであります!ぶちゅ~~~~~!」
そして振り解く間も無く自身の唇にプレーリーの唇が重ねられた。
グリフォン「むぶぅ~~~~~~?!?!?」
グリフォンは突然の出来事に目を白黒させた。
ビーバー「…プレーリーさん、挨拶はそれぐらいにしてほしいっス」
そう言いながらビーバーが少し不満そうに二人を引き剥がした。
ビーバー「良かったっスねぇ、もう少し助け出すのが遅かったら手遅れだったっスよ…助けに行った筈のプレーリーさんまで埋まっちゃうし…」
プレーリー「うう…面目無いであります…ビーバー殿…」
グリフォンは思いもよらない出来事にまだボーッしている頭を左右に振った。
グリフォン「…まあ、とにかく助かったぜ、ありがとうな!」
プレーリー「いやぁ、お礼を言われる程の事では無いであります、そもそも私が掘った穴をそのままにしておいたのがまずかったのでありますし…」
プレーリーはばつが悪いのか少し口ごもった。
グリフォン「なっ?!あの穴ってあんたが掘ったのかよ?!俺はてっきりセルリアンの仕業かと…」
プレーリー「セルリアン?なんの事でありますか?」
ビーバー「セルリアンなんてこの辺りじゃ、殆ど見たこと無いっスねえ」
グリフォン「は~何だよ…緊張して損したぜ…」
『グ~~~~~~』
グリフォン「おっと、…そういや腹減ってたんだっけ…」
奇妙な穴を掘った主の意外な正体知ったグリフォンは、拍子抜けすると同時に空腹を知らせる音を小屋に響かせた。
ビーバー「そう思ってじゃぱりまんを貰ってきたッスよ、みんなで食べるッス。」
プレーリー「私もお腹がペコペコであります!
グリフォン「おおじゃぱりまんか!ありがてえ!」
プレーリー「私もじゃぱりまんが大好きでありますよ!グリフォンはんもひゃふぁりふぁんがふきでありまふか?」
ビーバー「プレーリーさん、口にものを入れながら喋るのはお行儀が悪いッスよ。ほら、こぼしてるッス…」
プレーリー「おお!ビーバー殿、面目ないであります!」
グリフォン「モグモグ…おたくらは仲がいいんだな。」
ビーバー「そうなんッスよ…」
プレーリー「このパークにいるフレンズ達はみんな仲良しであります!もちろんグリフォン殿も、もうご挨拶をさせてもらったらお友達でありますよ!」
ビーバー「…」
グリフォン「…ふーん、みんな仲良し…ねぇ」
プレーリー「グリフォン殿はどうしてこはんに来ていたのでありますか?」
グリフォン「…としょかんへ行くつもりなんだ。そこにいる何とかってヤツに話があるんだよ。」
ビーバー「としょかん?だったら、【博士】か【助手】の事ッスかねえ?」
グリフォン「博士?と、助手?…」(そういや用があるヤツの名前を知らないな)
のののののののののののののののの
グリフォン「じゃあ、俺はそろそろ行くぜ…世話になったな。」
ビーバー「もう行っちゃうんスか?この辺りはそうでもないけど、最近はセルリアンの数が増えてるみたいッスから気を付けてほしいッス。」
プレーリー「それでは、新しく考えたプレーリー式の別れの挨拶を…」
グリフォン「いい!挨拶はもういい!!」
第十一話「戦」
それは今から3日程前、グリフォンが破壊されたライブ会場から飛び去ってまだ間もない頃だった。
ヘラジカ達が心配そうに見守る中、アフリカタテガミヤマアラシはヘラジカに抱えられながら目を覚ました。
アフリカタテガミヤマアラシ「う~~ん…あれ…みんなどうしたですぅ?」
ヘラジカ「ヤマアラシ!気がついたか!体は何ともないか?!」
ヤマアラシ「…どこも痛く無いですぅ、でもライブ会場が…」
ヘラジカ「壊れたものは直せばいい、お前が無事で何よりだ!」
ヤマアラシ「ううっ…ヘラジカ様ぁ」
ヘラジカは改めて辺りを見渡しながらヤマアラシに問いかけた。
ヘラジカ「それにしてもこの有り様は一体どうした?セルリアンの仕業か?」
そこで側で見守っていた『嵐』のメンバーであるインドタテガミヤマアラシとオグロキノボリヤマアラシの二人がまだ少し怯えた様子で話し出した。
オグロキノボリヤマアラシ「あの…私達、離れた所から見てたんです…初めて見るフレンズでした…アフリカタテガミヤマアラシの方に近寄って行って…何か話したと思ったら急に暴れだして…私達怖くて物影から出られなくて…」
ヘラジカ「そいつはどんなフレンズだったんだ?」
インドタテガミヤマアラシ「んっとねー、頭に羽根があってー、でもでもお尻にはライオンみたいな尻尾があったよー」
ヘラジカ「尻尾だって?!尾羽根じゃなくてか?」
オグロキノボリヤマアラシ「間違いないです…ハッキリと見ました」
ヘラジカ「ううむ、とにかく会場をこんなにメチャクチャにするとは…許せん奴だ!」
アフリカタテガミヤマアラシ「そうじゃ無いんですぅ…」
アフリカタテガミヤマアラシは事の顛末を説明した。グリフォンは振付けに夢中になってしまうと周りが見えなくなってしまう事、そして尋常ならざる怪力の持ち主であるが故に起きてしまった事故であり、会場を破壊したのは決して故意では無かった事。
アフリカタテガミヤマアラシ「止めようとはしたんですぅ、でも凄い力で弾き飛ばされて…」
ヘラジカ「なるほど…そういう事か…それは是非とも勝負してみたいものだな!」
パンサーカメレオン「ヘラジカ様、そんな悠長な事を言ってる場合では無いでござるよ!」
シロサイ「このままではまた同じような事が起きてしまうかも知れませんわ!」
ヘラジカ「おおっ!それもそうか…!」
オオアルマジロ「ハシビロコウに頼んでハンターに知らせた方が良くないか?」
ヘラジカ「うむ、ではハシビロコウ、一っ飛びしてヒグマ達に知らせて来てくれないか、ここに来る途中のあんいん橋辺りですれ違っただろう?」
ハシビロコウ「……うん…わかった」
ののののののののののののの
ヒグマ「何?!今度はライブ会場で?!まったく…各地のセルリアンの異常発生といいどうなってるんだ…!キンシコウ!リカオン!すぐにそいつを追うぞ!」
ののののののののののののの
そして現在、グリフォンは平原上空を飛んでいた。
グリフォン「このちほーは過ごしやすくていい所だな。どれ、ちょっくらここらで休憩するか。」
丁度ジャパリまんを運ぶラッキービーストが見えたので、そこへ降りた
少し高台になっていて、見晴らしのいい場所だ ちょっと遠くの方には謎の建造物が見える
グリフォン(あれは…何なんだ?まぁ、いいや。)
食事が終わってぼーっとしていると、後ろから何やら向かってくる気配を感じる
グリフォン「…誰だ?、セルリアンじゃなさそうだが…」
人数は2人くらい…こっちへ向かってくる
グリフォンはとっさに障害物の裏へ身を隠して様子をうかがった
アフリカタテガミヤマアラシ「さあ、早いとこみんなと合流するです」
ハシビロコウ「…うん、そうだね」
グリフォン「…あっ!」
見覚えのある顔につい声がでてしまったグリフォンに二人は気づいた
アフリカタテガミヤマアラシ「あっ!!!あーーーーーーー!!」
ヤマアラシ「おまえはあの時のー!」
ハシビロコウ「知り合い?」
ヤマアラシ「この間、さばんなでライブ会場を壊して逃げたヤツですぅー!」
グリフォン「うっ…あ、あれは…」
ハシビロコウ「まあまあ、わざとじゃないんでしょ?」
ヤマアラシ「わ、わかってるです!でもあの後大変だったんですぅー!」
グリフォン「ハハハ…あれは、その、調子に乗りすぎちゃって…すまんかった」
ヤマアラシ「まったくもー!プンプンですぅ!」
ハシビロコウ「じーーー…」
グリフォン「な、何だよっ」
ハシビロコウ「あなた、すごく力が強いってきいたけど本当?」
ヤマアラシ「あっ!そうだ!!丁度良いところに出会ったです!こいつにも協力してもらうですぅー!」
グリフォン「協力?何の話だ?」
ヤマアラシ「セルリアンの…セルリアンの大群がこのちほーへ向かってきてるんですぅー!!」
セルリアンの襲来に備え、ヘラジカ軍団とライオン軍団はライオン城に拠点を構えていた。城内には戦いに向いていない者やあまり力の強くない者も避難していた。
ヘラジカ「おおっ!ヤマアラシ、ハシビロコウ戻ったか、偵察ご苦労だったな、…ん、そこの者は?」
ヤマアラシ「ライブ会場をぶっ壊した奴ですぅー!うろついてたからつかまえて連れて来たですぅー!そういえば何のフレンズか聞いてなかったですぅ?」
その場にいるみんなの視線がグリフォンに集中する、グリフォンは少し緊張した。
グリフォン「お、俺はグリフォンだ、ライブ会場をあんなにしちまったからな…こんな俺でも役に立つんならセルリアン退治に協力させてもらうぜ」
城内が少しざわつく中、一人のフレンズが歩み寄った、ヘラジカだ。
ヘラジカ「そーかそーか!それは頼もしいな!私はヘラジカだ!よろしく頼む!ううむ、なるほど確かに強そうだ!どうだ、私と勝負してみないか?」
グリフォン「…へ?!」
そこに割って入るようにライオンが話に割り込んできた。
ライオン「ヘラジカ~、流石にそんな場合じゃ無いと思うよ~、ふーん、君かぁ、確かに私とそっくりの尻尾だねぇ私はライオン、よろしくね~」
グリフォン「あ、ああ!こっちそ…!よろしく頼むぜ!」
ヘラジカ「で、ハシビロコウ、セルリアンはどの辺りまで迫っている?」
ハシビロコウ「…あの移動速度からみて、…多分夜明け過ぎにはここから見える所まで来ると思う…」
ヘラジカ「そうか、では明日の決戦に備えて今の内にしっかりと休んでおくとしよう!」
ライオン「みんな、ジャパリまんはたっぷり有るから遠慮無く食べて力を蓄えてね~明日は早いよ~!」
その夜は、明日の戦の事など忘れてしまいそうなほど月の出た良い夜だった
グリフォン「いい月だ…さて、寝る場所、寝る場所… 静かな所ないかな…」
明日の戦に備えて寝床を探しているグリフォンに近づくフレンズが一人…
ヤマアラシ「待つです!」
グリフォン「うっ…な、なんだよ。やっかみなら今度にしてくれよ」
ヤマアラシ「違うです。明日の事でまだ話が色々あるですぅ!」
グリフォン「明日の事で?」
ヤマアラシ「…この城には、へいげんにいる戦う力のないフレンズ達も沢山避難しているです。だから明日は、絶対にここを守り切らなければいけないんですぅ!」
グリフォン「わかってるよ…見りゃあわかるさ」
ヤマアラシ「でも、セルリアンは数が多いですぅ…もしかしたら、押し負けちゃうかも…」
グリフォン「おいおい弱気だな、大丈夫なのかそんなんで」
そんな事を話していると、ハシビロコウが割って入ってきた
ハシビロコウ「明日は作戦があるの」
グリフォン「作戦?」
ハシビロコウ「このお城には前門と後門があるの。後門は閉めて、前門にセルリアンを集中させます。」
ヤマアラシ「そのほうがこっちの戦力も分散されなくていいんですぅ。」
グリフォン「後門・・・大丈夫なのか、閉めておくくらいの事で。突破されたら挟み撃ちだぞ。」
ヤマアラシ「そうならないように補強をみんなで入れたですぅ!」
ハシビロコウ「念のため、後門にも誰か見張りをつけます。それと、万が一城に侵入されちゃった時の為に城内にも少人数残ってもらうわ。」
ヤマアラシ「つまり城内、後門、そして前門と3手に別れることになるですぅ!」
グリフォン「なるほどな。俺はどこに行けばいいんだ?」
ハシビロコウ「あなたは・・・
オーロックス「はあっ!でやぁーっ!」
シロサイ「そんな攻撃で私の守りは崩せませんわ!」
アラビオオリックス「そこだぁ!やぁあっ!」
オーロックスがセルリアン牽制し、攻撃をシロサイが防ぐ、そこをアラビオオリックスが弱点の石を狙い打った。
パッカーンという破裂音とともにセルリアンはサンドスターの結晶となって消えて行く、ヘラジカ軍団とライオン軍団はそれぞれの長所を生かせるチームを編成してセルリアンと応戦していた。
ライオンとヘラジカは城の左右前方に、機動力と攻撃力をあわせ持つグリフォンは中央奥である城の前門に展開していた。
グリフォン「うらぁっ!!」
グリフォンの手の甲から指先がサンドスターの輝きを放つ鋭い爪に包まれセルリアンの弱点を貫いた、石を砕かれたセルリアンはそのまま結晶となって消える。
グリフォンは前衛で戦うフレンズ達を遠くに見ながら呟く。
グリフォン「凄いな…あいつら…こっちまで殆どセルリアン来ねえじゃん…こりゃ案外楽勝かもな…」
ハシビロコウ「じーーーーー…」
城の後門ではハシビロコウが虚空を見つめ続けている。
城内はそれでも緊張に包まれ、一刻も早いセルリアンの撃退を待ち望まれていた。
ヤマアラシ「うー…なんかハブられてる気がするですぅ…」
ヘラジカ「セルリアンの数も大分減ってきた!あと一踏ん張りだ、みんな気を抜くな!」
ライオン「ふーっ、結構しんどいねぇ…ヘラジカは元気だなぁ…」
ヘラジカ「そうか?ライオン、ゴロゴロし過ぎで腕が鈍ったんじゃないのか?」
ライオン「うっ…言うねぇ…」
会話が通るほどセルリアンが少なくなってきたその時、急にセルリアンの動きが変わった。それぞれバラバラに攻撃を仕掛けていたセルリアンが組織的な攻撃をし始めたのだ。
ヘラジカ「どうなってるんだ?!今までと様子が違うぞ?!」
ライオン「まずい!このままだと突破されるよ!」
後方のグリフォンは低空を飛びながらセルリアンの接近に備えていた。
セルリアンが統率された動きになった途端、前衛が苦戦し始めたのを察知した。
グリフォン「…この感じ…まさか…」
そして脳裏に一人のフレンズが思い浮かんだ。
グリフォン「…目覚めたのか…ヒポグリフ…!」
オーロックス「わーーーーっ!!」
アラビアオリックス「オーロックス、大丈夫!?」
シロサイ「これは一体どうなってますの!?急に動きが変わりましたわ!!」
オーロックスが押し切られて、攻撃が一斉にシロサイに集中する!
シロサイ「だ、だめ!これでは防ぎきれませんわっ!!」
その時、後方から伸びるゲートセルリアンの触手が鞭のようにしなり、シロサイにクリーンヒットした!
シロサイ「あぁーーーっ!!」
ヘラジカ「シロサイ!大丈夫か!ケガはないか!」
シロサイ「だ、大丈夫ですの…でもこのセルリアン達、急に動きがはやく…」
シロサイを吹き飛ばしたゲートセルリアンを睨むヘラジカは次の瞬間、目を疑った。
ゲートセルリアンの上に、謎のフレンズの影が見えたのだ。
ヘラジカ「これは…どういうことだ!?」
謎のフレンズ「………」
のののののののののののの
一方その頃…
ツキノワグマ「ねえあんた、大丈夫?顔が怖いよ?」
ツキノワグマの言葉を全く無視して、しかめっ面で最前線を睨むグリフォンは直観で何かを感じ取った
グリフォン「…!!!間違いねぇッ!」
ツキノワグマ「ちょっとあんた!どこいくの!?」
パンサーカメレオン「グリフォン殿!持ち場を離れては…!!」
グリフォンは二人の言葉を無視して最前線に急行した
パンサーカメレオンとツキノワグマの静止を振り切りグリフォンはヘラジカ達のいる最前線へと飛び出した、既に陣形は徐々に崩れ始めている。それでもヘラジカとライオンは的確にセルリアンと応戦するが手薄となった部分の防衛線の突破は時間の問題だった。
グリフォンは直感に従い先端が鰐口状になった触腕を持つゲート型セルリアンのいる場所へと急ぐ。
ヘラジカはゲート型セルリアンの頭上に静かに佇む謎のフレンズに向かって叫ぶ。
ヘラジカ「お前は何者だ!何故セルリアンと共にいる?!」
しかし答えは帰って来ない、まるでこちらの声が届いていないかのようだ。
その姿は頭に鳥のフレンズのような翼を生やし尾羽がある筈の場所には馬の尾が棚引いていた。
そしてよく目を凝らして見ると閉じられた両の瞳の上、その額にはセルリアン特有の目が発現している。
ヘラジカ「…何だあれは…?!」
セルリアン上のフレンズは無言のまま手を上げるとヘラジカとライオンの方に向けてスッと振り下ろす、その合図に応じてゲート型セルリアンの無数の触腕が襲いかかった。
ヘラジカ「くっ、話の通じる相手では無いと言うことか!」
ライオン「来るぞっヘラジカ!」
ヘラジカは触腕の攻撃を武器で払い除けながらライオンとの見事な連携を見せる。
ライオンの爪が触腕の先端部分を千切り飛ばすが怯む事無く攻撃の直後で体制を崩したライオン目掛けて襲いかかった。
ライオン「くっ!かわせないっ!」
そこに猛スピードでグリフォンが飛び込んだ。
グリフォン「止めろーっ!ヒポグリフーッ!!」
ライオンを狙った触腕の攻撃がグリフォンの頭を掠めたが意に介す事無くヒポグリフを睨み付ける、少し深めに巻かれたバンダナが僅かに赤く滲んだ。
同時にヒポグリフの額の目が閉じ、代わりに閉ざされたままだった両の瞳が眠りから覚めるように開いた。
ヒポグリフ「…グリフォン?!あなたなの…!?」
グリフォン「……久しぶりだな、…ヒポグリフ…!」
ヒポグリフ「…そんな… そんなこと… あなたは死んだって…」
グリフォン「へっ… 俺がそう簡単に死ぬと本気で思ったのか!?」
ヒポグリフ「だって…」
しばらく二人の睨みあいが続き、周りのセルリアンの動きも止まる 場に異様な静寂が流れる…
その静寂を断ち切るように言葉を発したのはヘラジカだった
ヘラジカ「どういうことだ?知り合いなのか?」
グリフォン「ああ… 色々ちょっと訳アリでね。」
ヘラジカとのやり取りの間も、ひどく動揺した様子のヒポグリフと呼ばれるフレンズは一人でぶつぶつと呟く
ヒポグリフ「グリフォンが生きていた…?うそよ… どうして… どうして今頃になって…」
グリフォンは動揺するヒポグリフの額を見て、眉間にしわを寄せ歯を食いしばる
グリフォン「お前、そのおでこ…! やっぱりお前、NEO体に…!!」
ヒポグリフは額のもう一つの目を手で隠すようにしてうろたえた
ヒポグリフ「!! こ、これは……」
その時、ヒポグリフのうしろからもう一人謎の声が響く
???「何を手こずっているのです?」
群がるセルリアンが道を開けはじめ、奥から謎のフレンズがもう一人こちらに近づいてくる…
グリフォン「!!!て、てめぇは・・・!!」
ヘラジカ「また新手か!?」
???「なっ!!き、君ははグリフォン・・・バカな、何故ここに?」
グリフォン「てめぇを探してたんだ!そっちから出てきてくれるたぁ、探す手間が省けたぜ!」
ヒポグリフ「ちょっと、どういう事ですか!グリフォンは死んだって・・・アナタ・・・嘘ついたのね!スフィンクス!」
スフィンクス「・・・嘘はついていないさ。こいつは死んだはずだった。」
ヒポグリフ「でも現にここにいるじゃない!」
スフィンクス「そんなハズはないんだ。何かの手違いだよ。」
飄々と喋るスフィンクスを見てグリフォンの頭にビキビキと血管が浮く
グリフォン「全部、てめぇのせいだろうがァァァァーーーーー!!!」
スフィンクスは肩をすくめる。
スフィンクス「やれやれ、そうやってすぐに感情を爆発させる…相変わらずですねぇ…君は」
スフィンクスは浅く掛けられた眼鏡を中指で押し上げる仕草をとると呆れた口調で言った。
スフィンクス「そんな事だから自分の力すら上手く制御出来ないんですよ」
グリフォン「何だとぉおお!」
スフィンクス「本来なら君がNEO体になる筈だったのですが…コントロール出来ないのでは何の意味もありませんからねぇ」
スフィンクスはつまらない物でも見るようにグリフォンに目を向けた。
グリフォン「ヒポグリフには手を出さねぇ約束だったろうが!!」
スフィンクス「それは君が完成されたNEO体になっていたらの話です、ヒポグリフはそのための予備ですからね、当然の事をしたまでですよ」
スフィンクスはグリフォンを嘲笑う。
グリフォン「てめぇ…どこまで腐ってやがる!!」
わなわなと怒りに震えるグリフォン。
スフィンクス「お喋りはここまでです、ヒポグリフ!その出来損ないを始末して下さい」
ヒポグリフ「スフィンクス!あなた何を言っているの?!そんな事出来るわけ無いでしょ!」
『パチン』とスフィンクスが指を鳴らすとヒポグリフの額の目が開く。
ヒポグリフ「うあ…お願い…止めてスフィンクス……」
ヒポグリフは再び意識を失うように両の瞳を閉じるとセルリアンを操り始める。
グリフォン「スフィンクス…!てめぇヒポグリフに何しやがった!!」
スフィンクス「大した事ではありませんよ、ヒポグリフには大人しくしてもらった迄です」
それまで静止していたゲート型セルリアンがグリフォンに狙いを定めて一斉に攻撃をくり出した、猛り狂うグリフォンは力任せに攻撃を払いのける、弾かれた触腕は尚もしつこくグリフォンに襲いかかる、一方の触腕は真っ直ぐグリフォンを狙い、もう一方はぐるりと大きく円を描きグリフォンを取り囲んだ。
グリフォンが向かって来る触腕を切り裂いた途端、もう一方の触腕が一気に輪を縮めグリフォンを締め上げた。
グリフォン「ぐっ…、舐めるなぁああ!!」
ブチブチと音を立てながら強引に体に巻き付く触腕を引き千切った。
スフィンクス「ははは、凄い凄い、その馬鹿力も変わってませんね、ですがあまり粘られても困ります、ヒポグリフ!」
スフィンクスがヒポグリフに向かって合図するとゲート型セルリアンがもう二体現れた。
その間、ヘラジカとライオンは押し寄せるセルリアンの処理で手一杯だ、とてもグリフォンに加勢出来る状況では無い。
グリフォン「ちっ、芸のねぇ野郎だぜ…!」
苦笑いするグリフォン、彼女は怪力を持つ反面、サンドスターの消費が激しく、継続的な戦闘には不向きであった。
三体のゲート型セルリアンがグリフォンに迫ったその時、空より見覚えのある三人のフレンズが降り立つ、ヒグマ、キンシコウ、リカオンのセルリアンハンターの三人組だ。
上空にはハンター達をを運んできたと思われる、三人の鳥らしきフレンズが飛んでいる。
ヒグマ「…ヘラジカ達の加勢に来てみれば、まさかお前までいるとはな」
グリフォン「お前ら…あの時の…」
ヒグマ「話は後だ、今はあのセルリアン討つぞ!」
キンシコウ「ヒグマさん!セルリアンの上にフレンズが… あれは一体!?」
ヒグマ「よくわからないが何か訳アリのようだな。今私たちがすべきことは、このセルリアンどもを倒すことだ!」
リカオン「でも数が多いですよ、どうします!?」
ヒグマ「このセルリアン、背中に石があるタイプか…! 一体を一人で相手するのは避けろ!チームを組んで戦うぞ!」
リカオン「でも、私たち3人でこの数は分が悪いですよ!」
ヘラジカ「私もいるぞ!ライオンもまだ大丈夫だ!」
ヒグマ「よし、一体はヘラジカ達に任せる!もう一体は私とリカオン… キンシコウは周りの小型どもを頼む!」
リカオン・キンシコウ「了解!!」
ヒグマ「背中だ!背中の石を叩け!うおおおーーーー!!」
見事なコンビネーションで手際よく対応するヒグマ達のおかげで、こちらの優勢は歴然だった
見る見るうちにセルリアンは数を減らしていく…
グリフォン(さすがはセルリアン退治の専門家達だな… 恩に着るぜ)
周りのセルリアンを任せられると分かったグリフォンは、目の前のゲート型セルリアン、その上のヒポグリフと更に後ろのスフィンクスを見据える…
そしてグリフォンは一度、息を呑むと、ヒポグリフと、スフィンクスに向けて言った。
「見てろ……。お前らを、呪縛から解放してやる!」
――そんな時だった。
ゲート型のセルリアンに、みるみるうちに複数の小さな突起が生え始め……
それは1つの大きな塊となり、ヒポグリフの体を呑み込んだ。
「あ"……あ"あ"あ"あ"あ"……!」
ヒポグリフが呻き声を上げながら、その塊をみるみる内に、己の体へと取り込んで行く。
ヒポグリフは、その塊を、最後の数ミリも、全て取り込んだ。
ヒポグリフが眼を開いた。
その瞳は、紅く染まっていた。
「グリフォンを……倒せ。」
スフィンクスが言った。
ヒポグリフはスフィンクスの言葉に従うように、グリフォンに向かって走り出した。
ただ、何者かの命令に突き動かされる二人。
だが、その二人の中で、意識、記憶は生きていた。
しかし、体に命令を下すことは、その何者かに制限をされていた。
何者かの命令と異なる行動をすると、とてつもない痛みが身体を襲うのだ。
グリフォンを倒したくはないが、倒さなければ、もしかしたら何者かに殺されてしまうのではないか?
そう思った二人に、何も出来る事はなかった。
一つだけできることがあると言っても、グリフォンを応援する事のみだった。
ヒポグリフはグリフォンに飛びかかり、爪による猛ラッシュでグリフォンを攻めたてる!
ゲートセルリアンの腕による攻撃も避けながら、ヒポグリフの攻撃を防ぐもグリフォンに反撃に転じる余裕がない
グリフォン「は、早ぇ!おい、やめろヒポグリフ!!やい、スフィンクス!てめぇヒポグリフに一体何を・・・
パチパチと手を叩きながら少し含み笑いをするスフィンクスが口を開いた
スフィンクス「すごいだろう?こんな事もできるようになったんだ、彼女は。いや、実に素晴らしい。」
ゲートセルリアンとヒポグリフの猛攻は止まらない!ゲートセルリアンの腕を跳ね除けるも、ついにヒポグリフの爪を一撃もろに食らったグリフォンは膝をつく
グリフォン「ぐっ!!」
更に追い打ちをかけるように、ヒポグリフは羽根で突風を起こしグリフォンを吹き飛ばす!
グリフォン「おわああーーー!!」
少し離れた地面に倒れ込んだグリフォンは必死に起き上がるも、こちらに向かってくるゲートセルリアンとヒポグリフ・・・
いよいよグリフォンは追い詰められていた・・・
その時空から一人のフレンズの影!
ハクトウワシ「キミ、私も加勢させてもらうよ!レッツジャスティス!」
ヒグマ達を運んできた鳥のフレンズの一人、ハクトウワシがゲートセルリアンの石を一撃で破壊する
スフィンクス「ちっ・・・無粋な事を。小鳥風情が!」
ゲートセルリアンの攻撃は無くなったものの、ヒポグリフの猛ラッシュに追い込まれるグリフォン
グリフォン(どうする・・・!?このままじゃやられちまう!!反撃するか!?いや、しかし・・・!俺は手加減なんかできねえ!もし万が一直撃しちまったら、俺がこの手でヒポグリフを・・・!いや、考えろ、考えろ!いや、しかし・・・!)
ヒポグリフ「・・・・ッ!!」
ヒポグリフの額の目が光りギリギリと歯を食いしばる!爪に力が集中する、大きく飛びあがり、勢いよく爪を振り上げた!
グリフォン「や、やばい!!ちくしょう、やるしかねええぇぇッッッ!!」
グリフォン達がセルリアンと戦いを繰り広げる中、その上空ではアフリカオオコノハズクの博士とワシミミズクの助手、そしてトキが地上での戦いを見守っていた。
博士「あれがオカピの話していたグリフォンとか言うフレンズですか、なるほど確かに奇妙な姿なのです」
助手「オカピの話ではとしょかんに向かっているとの事でしたが…何故ここにいるのでしょう?」
博士「それよりもあのセルリアンと一体化したフレンズは何なのです?まるでセルリアンを従えているようにも見えるたのです…」
トキ「もう一人誰かいるわ、仲間かしら?」
博士「まったく…、分からない事だらけなのです…、とにかく今はセルリアンの大群をどうにかするのが優先なのですよ!あっちはヒグマ達に任せて我々も城の防衛に回るのです!」
一方、地上では三体いるゲート型セルリアンの内、既に一体はヘラジカ・ライオンチームによって仕留められていた。
ヒグマ「リカオン!突っ込み過ぎるな!下がれ!」
リカオンは素早いバックステップでセルリアンの攻撃をかわす、急に目標を失った触腕は地面に激突し土を抉った、セルリアンより生える触腕の半分は戦いによって切断され残す所2本のみだ、ヒグマは一瞬の隙を突き一気に距離を詰めた、真っ直ぐ向かってくる触腕を熊手で払い除けるとそのままセルリアンの頭上に飛び掛かり、石を目掛けて全力で熊手を叩き込む。
ヒグマ「でやあぁぁーっ!!」
サンドスターの輝きを放つ熊手が弱点の石を粉々に粉砕した。
ヒグマ「ふうっ、残りは一体のみか、あっちはどうなってる…」
ヒグマはヒポグリフと対峙するグリフォンの方に目を向けた、グリフォンはセルリアンを取り込んだヒポグリフに躊躇してか、苦戦こそしていないものの膠着状態に陥っていた。
グリフォン「くそっ、正気に戻れヒポグリフ…!このままじゃ迂闊に手が出せねえ…!どうする…」
迷っている間にもヒポグリフは苦痛に顔を歪ませながらも攻撃の手を緩めることは無い。
グリフォンは覚悟を決め、一か八かの賭けに出た。
NEO体の特徴である額に現れるセルリアン目、その直下には極めて小さなセルリアンのコアである石が埋め込まれている。
自身もかつてNEO体手術を受けた際、その呪縛から逃れるために額に埋め込まれたそれを自ら取り出したのだ。だが今度は動く相手が対象だ、ましてやその相手はヒポグリフである、絶対の精度と集中が必要となる、いつもの力任せに拳を振るうことは出来ない。グリフォンは拳を手刀の形に構えると指先の一点に意識を集中させた。
グリフォン「ごめんな…ヒポグリフ…!ちょっと荒療治になるぜ!!」
ヒポグリフがその腕にセルリアンの体で出来た刃を纏いグリフォン目掛け突進する。
グリフォン「はああぁーーーーー!!」
セルリアン製の鋭い刃がグリフォンの頬を掠める、と同時にサンドスターの輝きを帯びたグリフォンの指先がヒポグリフの額の目を貫く、そしてその奥に埋め込まれたのセルリアンの石を破壊した。
ヒポグリフ「うぐああぁっー…!」
額の目とコアを破壊されヒポグリフが呻きを上げる、破壊されたセルリアンの目と伴にそこに繋がりった極小のセルリアンのコアである石がズルリと地面に落ちた。
ヒポグリフはそのまま意識を失ったかのように倒れそうになる。
咄嗟にヒポグリフを抱き抱えるグリフォン。
グリフォン「ヒポグリフ大丈夫かしっかりしろヒポグリフ!!」
心配そうにヒポグリフに声をかけるグリフォン。呼び掛けにヒポグリフの瞳がゆっくりと開いた、その色はいつものヒポグリフの瞳だ。
ヒポグリフ「……ごめんなさい、グリフォン…私…、私…」
グリフォンの胸に頭を埋めるヒポグリフ。
グリフォン「…いいんだ…ヒポグリフ…」
グリフォンはヒポグリフを力強く抱き締めた。
ヒポグリフをセルリアンの呪縛から救いだしたグリフォンは、ぐったりと倒れるヒポグリフを強く抱きしめた
グリフォン「いいんだ。何も言うな・・・」
セルリアンハンター達やヘラジカ達、みんなの協力あってセルリアンはほぼ一掃
残るはスフィンクス一人という状況となった・・・
ヒポグリフを抱きしめるグリフォンに影がかぶる
グリフォンが はっと振り向くと、スフィンクスがすぐ後ろまで迫ってきていた!
スフィンクス「全く、なんという事をしてくれたんだ・・・!キミはことごとく我々の邪魔をするんだね。やはりあの時、ちゃんととどめを刺しておくべきだった・・・」
そう言うと、スフィンクスの額にギロリとセルリアンの目が開いた
グリフォン「て、てめぇ!!てめぇもNEO体に・・・!!」
ヒポグリフを抱き上げ構えるグリフォンだったが、スフィンクスから発せられる謎の衝撃波に吹き飛ばされる!
グリフォン「うおおおーーーーー!」
吹き飛ばされたがハクトウワシが空中でキャッチしてくれたおかげでダメージはさほどではなかった
ハクトウワシ「大丈夫か!しっかりするんだ!」
グリフォン「あ、ああ。すまねえ・・・」
スフィンクスは地面に横たわるヒポグリフを抱きかかえた
グリフォン「ま、待ちやがれ、逃げる気か!」
スフィンクス「逃げるなどと人聞きの悪い事は言わないで貰いたいね…だが今の状況では多勢に無勢、こちらに分が悪いのは確かだ…ここは一旦退かせて貰いましょうか」
スフィンクスは飛行型セルリアンを呼び出すとその背に飛び乗る。
グリフォン「スフィンクスてめぇ!ヒポグリフを返しやがれっ!」
スフィンクス「ヒポグリフは貴重な成功体です、コアを破壊されたとは言えみすみす渡す訳にはいきませんからねぇ、では…ごきげんようグリフォン…?!」
ヒグマ「でやあぁーーっ!」
スフィンクスが身を翻そうとしたその時だ、 キンシコウとリカオンに担ぎ上げられヒグマは高く飛びあがり空中のスフィンクスに一撃を見舞った。
スフィンクス「くっ!」
ヒグマ「ちっ!かすっただけか!」
だが、咄嗟にヒグマの攻撃をかわしたために体制を崩されたスフィンクスの腕からヒポグリフが解放される。
スフィンクスの放った衝撃波で気を失っているヒポグリフは力無く落下して行く、キンシコウとリカオンはヒポグリフを素早く受け止めた。
スフィンクス「くっ…おのれぇ……ぐうっ…少し力を使い過ぎましたか…」
スフィンクスが唐突の苦痛に顔をしかめる、ハクトウワシの腕を離れたグリフォンがスフィンクスに飛び掛かるが更に呼び出された浮遊型セルリアンに行く手を阻まれる。
スフィンクス「…どうやら時間切れですね…グリフォン、君の相手はまた今度にしましょう、今はこの子達とでも遊んでいて下さい」
スフィンクスはそう言うとその場を飛び去った。
グリフォン「くそっ、待ちやがれスフィンクス!」
グリフォンはスフィンクスを追おうとするが、大量の浮遊型セルリアンが行く手を阻む
グリフォン「クソォ、どきやがれ!おい汚ねぇぞ…俺と戦いやがれ!」
空を飛び浮遊型セルリアンの間を縫って無理やり通ろうとするが、セルリアンの振り回すしっぽをもろにくらい叩き落とされる
ハクトウワシ「おいキミ、無茶をするな!先にこのセルリアンの対応するべきだ!」
グリフォンの言葉を無視して飛び去るスフィンクスは、みるみるうちに点になり、見えなくなってしまった
グリフォン「チッ… 逃げやがった!」
スフィンクスの飛び去った方向を見上げて立ち尽くすグリフォン…
ヒグマ「おい、ぼさっと突っ立ってないでお前も手を貸せ!飛べるやつがいないと空中型は厄介なんだ!」
スフィンクスは逃げたが場にはまだ無数の浮遊型セルリアンが残る… ハンター達やヘラジカ達が対応に当たるが、数の多さと空中戦に苦戦を強いられていた
リカオン「ダメだ、届かない!攻撃さえ当たれば、こんなやつらすぐやっつけられるのに!」
ヒグマ「リカオン、無理にジャンプするな!着地を狙われるぞ!攻撃に降りてきた所を返り討ちにするんだ!」
ライオン「こういうときって飛べるコが羨ましいよねぇ~」
ヘラジカ「ハッハッハ!ライオン、どっちが数多くこのセルリアンを倒せるか勝負しないか!」
そんな中、一人宙をすごいスピードで舞い次々にセルリアンを撃破していくハクトウワシ
ハクトウワシ「空中戦なら私にお任せよ!それそれそれそれっ!!もっと、もっと早さを!!」
グリフォンはキンシコウが抱きかかえるヒポグリフの姿をちらりと見た
グリフォン「…まぁ… 収穫はあったか。覚えてやがれ、スフィンクス!」
そうつぶやいてヒグマ達の助太刀に向かおうとするグリフォンの背後から浮遊型セルリアンがとびかかる…!
キンシコウ「あぶない!!うしろです!」
グリフォンはくるりと後ろを振り向くと、セルリアンの突進から軽やかに身をかわして石を砕いた
グリフォン「うおおおーーー!!一気にいくぜえー!」
気合をいれると宙に飛び上がり、空を飛ぶ無数のセルリアン達の石を次々に狙い撃つ
グリフォン・ハクトウワシ・ハンター達やヘラジカ達の健闘によりセルリアンはみるみる数を減らしていく
グリフォン「こいつで最後だ!でやあああー!!」
最後の1匹をグリフォンが急降下で貫いた!
ハクトウワシ「あなた、すごいパワーね!一体何のフレンズなの!?」
グリフォン「す、すまん・・・おまえジャパリまん持ってないか・・・腹が減ってもう動けねえ・・・」
ヨロヨロと落下していくグリフォンをハクトウワシが掴みあげる
ハクトウワシ「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
あまりの空腹と疲労で意識が朦朧としていた俺は昔の事を思い出していた、まだ俺達三人が仲良く笑いながら飯を食っていた頃のだ。
『けんきゅうじょ』と呼ばれているそこは全身真っ白な格好をした『けんきゅうしゃ』と呼ばれてる奇妙な奴らが沢山いて、俺達はいつも『じっけん』とか言う物に付き合わされていた、気がついた時から俺達はそこに居てそれが当たり前の事だった、おかしいなんて特に疑問に思うことなんて無かった。
スフィンクスは難しい言葉でしょっちゅう俺をからかって笑ってたりしてたけど、俺達の中で一番しっかり者で頼りになる奴だった。ヒポグリフの奴は大人しいけど凄く優しくて面倒見がいい奴だ、一緒にいると凄く安心出来た。
それはある日の事だった。スフィンクスが真剣な顔をして俺にこう言った。
スフィンクス「…いいかいグリフォン、よく聞いてくれ、僕が次にあの部屋から戻って来たら、僕はもう君達の知っている僕では無くなっているかも知れない…、その時は君の手で僕を止めて欲しいんだ」
グリフォン「突然何だよ…それ、訳がわかんねぇよ…スフィンクス」
スフィンクス「ヒポグリフの事、頼んだよ…、あの子を守ってやれるのは君だけなんだから」
それからスフィンクスに会ったのは随分経ってからだった、その頃にはもうスフィンクスは別の何かになっていた…、あの顔に付けた眼鏡ってやつを直す癖、前のあいつはそんな事を一度もした事は無かった。
でも俺は覚えてる、あれと同じ癖いつもをしていた『けんきゅうしゃ』を、そいつは他の『けんきゅうしゃ』に囲まれていて、異様な雰囲気をしていた。
そいつの名前は『永久(とこしえ)』博士。
俺が様子のおかしくなったスフィンクスと会ってからはそいつを一度も見る事は無かった。代わりにスフィンクスが『けんきゅうしゃ』達と一緒に居るようになった。
それからだ、NEO体化『じっけん』が本格的に始まったのは…、最初にヒポグリフが手術を受ける事を知った俺は必死に自分にしてくれと頼んだ。そしてヒポグリフは見逃してくれと。
NEO体手術を受けた俺は暫くしてセルリアンとか言う変なのと同じ部屋に入れられた。
セルリアンを『こんとろーる』するのが目的らしかった、『じっけん』は途中までは順調に行っていたんだ、そして最後のセルリアンと一体化する『じっけん』であの事故が起こった。
セルリアンを取り込んだ俺は制御を失い暴走した、途切れ途切れの記憶の中で『けんきゅうじょ』を壊した事以外、後はもう何も覚えていなかった、気が付いたときにはどこか全く別の場所に居た。
それから長いこと各地を点々としてようやく『けんきゅうじょ』があると言うこのジャパリパークにたどり着いたのだ。
ライオン城の一室で目覚めた俺の側ではヒポグリフが、もたれ掛かるように眠っていた。
「ん……あれ? どうしたんだ……。」
俺は辺りを見回した。
「……! ヒポグリフ!」
そう言って彼女に駆け寄ると、どこからか声が聞こえてきた。
「もう少し、寝かせてあげてやるのです。」
そんな声に反応し、俺は顔を上げる。
――そこには、博士と助手が居た。
「まだ怪我も治ってないのですから。」
「俺……助け出せたんだな。ヒポグリフを。」
へいげんでの戦いも終わり、城内では勝利の宴が行われていた
ジャパリまんや、ジャパリちっぷす、さらにはもっとレアなジャパリちょこ等大盤振る舞い!
城に避難していた者達や直接戦には参加していないフレンズ達は宴たけなわ
そんな中、今回の戦に参加した者達は城の最上階に集まっていた
ハクトウワシ「あのフレンズセルリアンを操るフレンズ…それから君たちは、一体何者なんだ?」
ヤマアラシ「力が強いのはともかく、セルリアンを操れる動物なんて聞いたことないですぅー!」
ヒグマ「そんな動物いるわけがないだろ…」
リカオン「じゃあ、何なんですか、あのおでこにセルリアンの目があるフレンズは!」
ヒグマ「そんなの私が知るか!」
リカオン「それにあの何とかって子、こちらに置いておいて大丈夫なんですか!?さっきまで敵だったんでしょ!?」
キンシコウ「落ち着いてください二人とも!」
ハシビロコウ「い、一体私が後門の見張りしてる間に何が…」
セルリアンを操る謎のフレンズ…未知の相手に場は戦々恐々としてざわついていた
シロサイ「博士達もご存じありませんの?」
博士「セルリアンの群れの中にいるフレンズの目撃話は何度か聞いているのです。が、それが何なのかは我々もわからないのです。」
ヘラジカ「事情を知っていそうな者に直接聞くのが早いだろう。なぁ、グリフォン!」
ヘラジカの問いかけに、ジャパリまんをかじりながらグリフォンは答える
グリフォン「多分俺もすべては知らない。でも、あいつがセルリアンを操って各地で暴れているとなりゃあ、もうあんたらも無関係だとは言えねえ。」
ヘラジカ「話してくれるか?」
グリフォン「話せば長いぜ…
グリフォンは淡々と話し始めた・・・
過去に自分の身に起きた出来事の事・・・
ヒポグリフとスフィンクスの事・・・
「けんきゅうじょ」と「けんきゅうしゃ」・・・「じっけん」の話・・・
そして、「トコシエ博士」というけんきゅうしゃの事・・・
グリフォン「・・・と、まあ俺が知っているのはこのくらいだ。」
一同「・・・・・・」
ライオン「どういうことなの?その「トコシエ」ってやつが、スフィンクスって子を乗っ取っちゃったって事?」
グリフォン「俺にもわからねえ。だが、スフィンクスは俺の友達だった。俺なんかよりずっとまともで良いヤツだった。」
一同「・・・・・・」
静寂を破るように、ヒポグリフの介抱をしていた助手が部屋に入ってくる
助手「あの子はひどく衰弱しているのです。しばらくはまともに動けそうもないですね。」
グリフォン「意識は戻ったのか!?」
助手「さっき一度意識が戻りましたが、また気絶するように眠ってしまいました。しばらくは安静にしてやるのです。」
グリフォン「そうか・・・すまねえな」
博士「で、お前はその「けんきゅうじょ」へ向かうつもりなのですか?」
グリフォン「当然だ。居場所が分かってるのに待つ意味はねえぜ。まずは「としょかん」へ行って、けんきゅうじょの場所を聞いてこねえとな」
博士「・・・その「詳しいヤツ」とは我々の事なのです。「けんきゅうじょ」の場所は確かに知っています」
グリフォン「え!?そうなのか?こいつはありがてえ、手間が省けたぜ。」
博士「あの辺りはセルリアンが多く、危険なセルリアンが多いのです。立ち入り禁止なのです。」
グリフォン「そりゃあねえだろ!あんだけのセルリアンと戦わせといて、今更危険もクソもあるか!教えろよ!」
博士「条件があるのです。お前ひとりだけではとても危なっかしくて任せられないのです。」
グリフォン「だったらどうだってんだ?おたくらが一緒に来るとでも言うのか?」
博士「今この場にいる者の中から3人ほど選んで、一緒に連れて行くのです」
グリフォン「な、なんだと!?」
博士「誰を選ぶかはお前に任せるのです。気の合うものをじっくり見極めて決めるといいのです」
グリフォン「誰か3人連れていけだと!?よせよ、俺は団体行動が苦手なんだ。」
博士「…二度は言わないのです。条件が呑めないのであればけんきゅうじょの場所は教えられないのです。」
グリフォン「…ちっ、わかったよ!」
ののののののののののののののののの
会議はとりあえずお開きになり、今宵はもうあとみんな休むだけ…
各々が思い思いの場所で過ごす。一人勝利の余韻に浸る者、食事をとる者、固まって話をしている者…
そんな中グリフォンは一人、城の屋根の上ににあぐらをかいて座っていた
グリフォン「3人選べだと…?うーん、そんな事言われてもよ… 全然知らないしな、連中の事」
そう独り言を言うと、今日の戦いの情景を思い出してみる
グリフォン(ヒグマというヤツは明らかに一人抜きんでていたな。ヘラジカというヤツの突進力は頼りになりそうだが…やや暑苦しい感じなのが… キンシコウというヤツは、早さも攻撃力も中々だがやや決め手に欠けるか…?シロサイというヤツ、動きは早くないが防御力は高そうだが… )
色々と思考を巡らせるが、やはり今一よく知らないフレンズ達の事なのでどうもピンとこない
グリフォン「うーん…」
頭をぼりぼりを掻いて立ち上がったグリフォンは、屋根から降りて城の中に入ってみた
すると一人、グリフォンを待ち伏せするように部屋の暗がりの壁にもたれ掛かってこっちを見ているフレンズがいた
グリフォン「んん?誰だ…?」
暗がりから出てきたのは何とライオンだった。
グリフォン「あんたは…、俺に何か用か?」
ライオン「いやぁ~、君にも私と同じ ライオンが混じってると思うと何だか放って置けなくてさ~、私もその『けんきゅうじょ』までついて行こうかと思うんだ」
その話を聞いていたのか更にハクトウワシまでもがやって来た。
ハクトウワシ「何だ、ライオンもかい、やっぱり親近感わくよね、そう言う訳で私も同行させて貰うよ」
グリフォン「まあ、あんたらが付いて来てくれるんなら俺も心強いぜ、正直どうしようか困っていた所なんだ」
ハクトウワシ「ああ、任せてくれ!私としてもパークを脅かす連中を放っておくわけにはいかないからな!レッツジャスティス!」
ライオン「よろしく頼むね~」
グリフォン「これで二人は決まりか、さて…あと一人はどうするか…」
グリフォン「あと一人誰か連れて行かなくちゃいけないようだが、俺はここの連中を殆ど知らない。あんたら2人、誰か相性のいいヤツとかいないのか?」
ハクトウワシ「私はへいげんにはたまに来るくらいだから、すまないがこれといって…」
ライオン「うーん、どうかなぁ?うちのチームから誰か連れて行く?ツキノワグマなんかどう?力は強いよ~」
そんな事を話していると、階段をゆっくりと上がってくる音が聞こえる…
ヒポグリフ「……けんきゅうじょへ行くんでしょ?わたしも一緒に行くわ!」
グリフォン「お、お前…意識が戻ったのか!?」
意識が戻ったとはいえ彼女は目はうつろで脚ががくがくと震え、立っているのもやっとのような状態に見える
グリフォン「ふらついてるじゃねえか… 顔も真っ青だぞ!まだ寝てなきゃダメだ!」
ヒポグリフ「あ、明日まで休めば、歩くくらいなら平気なくらいには回復してみせるわ…だから私も連れて行って!!」
グリフォン「バカ、ダメに決まってるだろ!こっちは俺に任せてお前はここでしばらく休んでろ!」
ヒポグリフ「…やだ!私も連れて行って!」
グリフォン「ダーメだっつってるだろ!多分道中だって色々危険があるし、あいつとまた会ったら…」
ヒポグリフ「やだやだやだ!わたしも行く!…ね?そっちの二人も一緒に行くんでしょう?…お願い!!」
ライオン「うーん…キミ、大丈夫~?動くならもうちょっと回復してからのほうがいいんじゃないの~?」
ハクトウワシ「どうも色々ワケがあるようだからね…」
グリフォン「その頑固さは相変わらずだな!いい加減にしねえと怒るぞ!!」
しばらく沈黙が流れ、ヒポグリフの目からぽろぽろと大粒の涙がこぼれだした…
ヒポグリフ「わたしの知らない所で勝手に事が進んで、知らないまま事が終わってるのはもうイヤ…!あなたもスフィンクスも、ひどいわ!!わたしには詳しい事なんか何も話してくれないで勝手なことばっかり!みんな勝手よ!」
グリフォン「…ヒポグリフ…」
グリフォン(…どうする?ヒポグリフはこのぶんじゃ、連れて行っても絶対に足手まといになる。俺だけならまだしも、あの二人の足もひっぱることになる…危険も多いだろう。それでも、連れて行くべきか?それとも、無理やりでもここで休ませておくべきかな?)
グリフォン「・・・・・ライオン、ハクトウワシ」
ライオン「う~ん?」
ハクトウワシ「何だい?」
グリフォン「こいつを・・・ヒポグリフを一緒に連れて行ってやってくれないか。多分色々おたくらにも迷惑をかける。でも・・・多分一緒に連れて行ってやったほうが良いような気がするんだ」
ヒポグリフ「・・・・・」
そういうとグリフォンは深々と頭を下げた
グリフォン「・・・この通りだ。」
ライオンとハクトウワシは目を見合わせた
ライオン「ま~ いいんじゃない?何かあったら、みんなで手を貸してあげればいいんだし。それが友達フレンズってもんだよね~」
ハクトウワシ「私もそう思うわ!そうと決まればヒポグリフさん、これからよろしくね!」
ヒポグリフ「・・・・うん!ありがとう二人とも!グリフォンも、ありがとう!」
博士「・・・話はついたようですね。」
グリフォン「おお、あんたか。実はその、ヒポグリフを・・・」
博士「話は全部聞いていたのです。そんなボロボロではケガをしにいくようなものですが、その分ではここに残していくと言っても、恐らく大人しくここに残ってはいないのです。だから下手に勝手な事をされるよりは、そのほうがかえって都合がいいのです。」
グリフォン「・・・まぁ、確かにな。それで、けんきゅうじょの場所だが・・・」
博士「【けんきゅうじょ】は、ここからとしょかんのある辺りを通って、みずべちほーを抜けてその先にあるゆきやまちほーの奥地にあるのです。本来は立ち入り禁止なのですが、こういう事態だからまあ仕方がないのです。ゆきやまちほーにいったら、ぎんぎつね達のいる温泉を訪ねて詳しい場所を聞くといいのです」
グリフォン達の目指す『けんきゅうじょ』はみずべちほーを越えた先のゆきやまちほーにあるとの話だった。
グリフォンとハクトウワシは飛ぶ事の出来ないライオンを二人で抱えながらの飛行を続け丁度みずべちほーの上空にさしかかっていた。
ライオン「いやぁ~、悪いね~二人とも~」
グリフォン「いや、まあそりゃそうだよな…」
ハクトウワシ「すっかり失念していたね…」
ヒポグリフ「二人とも大丈夫?ごめんなさい、私も手伝えたらいいんだけど…」
グリフォン「気にすんなって、それよりお前は体の回復に専念してくれよ」
ハクトウワシ「ああ!こうして重りを持って飛ぶというのも良いトレーニングだからね!」
ライオン「……地味に傷つくこと言うねぇ…」
グリフォン「しかしさすがにちょっと疲れてきたぜ…」
ライオン「この先を少し行くとPPP(ペパプ)のライブ会場があるからそこで少し休憩していこうか~」
ハクトウワシ「私も賛成だ、ヒポグリフ君もまだ無理は禁物だしね」
グリフォン「何?!ライブ会場だと?!」
『ライブ会場』その言葉に性懲りもなく目を輝かせるグリフォン。
その頃『としょかんでは』博士と助手に留守番を頼まれたオカピがいつまで経っても来ないグリフォンを待っていたのだった。
オカピ「…えー誰も来ないぞ…何か忘れられてる気がするぞ…」
グリフォン「…なーんか忘れてるような気がするけど…ま、いいか…その内思い出すだろ」
すっかり忘れられていた。
グリフォン「ところで・・・ヒポグリフ。お前知らないか?あいつがなんでセルリアンを使ってフレンズを襲っているのか」
ヒポグリフ「・・・全てはわからない。わたし、半分以上は彼に操られていたし・・・でもスフィンクスは、フレンズ達を襲ってサンドスターを集めて・・・それを使ってセルリウムって言うものを作ろうとしているみたい・・・」
ハクトウワシ「セルリウム?」
ヒポグリフ「セルリウムが何かはわたしも知らない。でも、スフィンクスはなんだかそのセルリウムの精製にとても焦っているようだったわ。」
グリフォン「セルリウム・・・何だかわからんがろくなもんじゃあなさそうだな」
PPPライブの会場へはまだ少し距離があるものの、歩きやすそうな陸地が見えてきたのでとりあえずそこへ降りて小休止をする4人…
ヒポグリフ「……なんか変な感じ。」
グリフォン「何がだ?」
ヒポグリフ「だって死んだと思っていたあなたと、こんな風に横に座って一緒に一緒に行動して、喋ってるんだもん。」
グリフォン「ま、確かにそうだな…」
ライオン「ジャパリまん貰ってきたよ~ みんなで食べよう」
グリフォン「おお、悪いな。」
ライオン「いいっていいって。二人とも飛んでばっかりで疲れてるだろうし、けが人に行ってもらう訳にもいかないでしょ」
ハクトウワシ「どれ、ありがたく頂こう!」
もぐもぐ…
ヒポグリフ「おいし~い!!何なのコレ!」
ライオン「ジャパリまんだよ~ 食べた事なかったの?」
ヒポグリフ「…研究所では味のないペレットしか食べていなかったから…」
ハクトウワシ「…大変だったのね。」
グリフォン「…… なぁ、ヒポグリフ。俺がいなくなった後、けんきゅうじょはどんな感じだった?」
少しの沈黙のあと、堰をきったように話し始めるヒポグリフ
ヒポグリフ「どんなって…色々あったわ。スフィンクスがおかしくなって、あなたがいなくなって…」
グリフォン「そうか…色々大変だったんだな…結局俺はスフィンクスとの約束を守ることが出来なかった…お前までNEO体にされちまって…すまねぇ…」
ヒポグリフ「もう済んだ事でしょグリフォン、あなたが無事で居てくれただけで十分よ、それにこうして助けてくれたじゃない」
グリフォンはジャパリまんの最後の一口を飲み込んだ。
グリフォン「…なあ、ヒポグリフ、俺が『けんきゅうじょ』を去ったあと永久(トコシエ)博士を一度でも見たか?」
ヒポグリフ「いいえ、見てないわ…グリフォン、あれは本当に私達の知ってるスフィンクスなの…?」
グリフォン「…どうだろうな…、少なくとも俺は今のスフィンクスは永久(トコシエ)の奴が成り代わってると思ってる」
ヒポグリフ「そんな…じゃあ元のスフィンクスはどうなってしまったの…?」
グリフォン「どうやったらそんな事が出来るのかはわからねぇ…只、あの雰囲気と眼鏡をかけ直す癖は間違い無く永久(トコシエ)博士だ。…覚えてるかヒポグリフ、俺達がふざけてスフィンクスの眼鏡を取ろうとしても体の一部みたいになってて取れなかったろ?」
ヒポグリフ「覚えてる!あの時どうやっても取れなかったもの!」
グリフォン「珍しくあいつスゲー怒ったもんな…」
ヒポグリフ「あんなに怒るとは思わなかったわ…」
グリフォン「スフィンクスも言ってただろ、『これは僕の体の一部みたいなものなのさ』ってな」
ヒポグリフ「『けんきゅうじょ』での暮らしは…食事もパサパサで味気無かったけど、グリフォンとスフィンクスの二人さえ居てくれたらわたしはそれで良かったの…ねぇ、グリフォン、またあの頃みたいに戻れるかな…?」
グリフォン「ああ…!心配すんな、お前を助けた時みたいに俺がバッチリやってやるさ!」
勿論グリフォンにはそんな確証など無かった、だが今はヒポグリフを不安にさせたく無かった事もあるが何より自分自身にそう言い聞かせたかった。
グリフォン「しかし何だってわざわざフレンズからサンドスターを集めてるんだ?ここからでも見えるけどあの山のてっぺんにあるのはでっかいサンドスターなんだろ?」
ヒポグリフ「私も少ししか聞いていないけど…確かセルリアンとの接触によって恐怖を与えられたフレンズの体内でサンドスターは少しずつだけどセルリウムに近い物質に変質するって…」
グリフォン「ふーん…よく分からんがスフィンクスはそれを集めてるって訳か…」
ハクトウワシ「ううむ、益々放っては置けないな!」
ライオン「ふあぁ~、じゃあそろそろ出発しようか~」
小休止を終えたグリフォン達はゆきやまちほーに向けて出発した。
けんきゅうじょの場所を知るために、ゆきやまちほーの温泉を目指すグリフォン一行はみずべちほーを抜け、ゆきやまちほーの上空を飛んでいた
グリフォン「ぶぇっくしょーーーーい!!」
ヒポグリフ「だ、大丈夫?」
ライオン「だいぶ冷えてきたねぇ…」
ハクトウワシ「なんだか雲行きもだんだん怪しくなってきたわね」
グリフォン「おんせんって所はまだ遠いのか?」
ハクトウワシ「まだゆきやまちほーに入ったばかりだから、だいぶあるわ」
ヒポグリフ「どこかで休みましょうか?」
グリフォン「いや、天気が崩れないうちにできるだけ距離を…ん?」
ふと、地上に目をやると何者かが走っている姿がちらりと見えた気がした
ヒポグリフ「どうしたの?」
グリフォン「今なんか… 誰かがいたような気が…」
ライオン「どこに?」
グリフォン「あの辺りに…ちらっと見えたと思ったんだがな」
ライオン「ん~?誰もいないけど… うん?」
ハクトウワシ「… 誰かフレンズがいるね。走っているようだが何かあったのだろうか」
その後ろから、球体型のセルリアンが3体ゴロゴロ転がってくるのがみえた
ハクトウワシ「いけない!セルリアンに追われているんだ!助けなくては!」
ハクトウワシはグリフォンにライオン を預けるとセルリアン目掛けて一気に急降下する、フレンズに気を取られていたセルリアンは瞬く間に石を砕かれサンドスターの結晶となって消える。
ハクトウワシはそのまま側で腰を抜かしてへたり込んでいるフレンズに声をかけた。
ハクトウワシ「大丈夫だったかい?君、怪我は無い?」
ヌートリア「あ、ありがとう…はぁ~怖かったぁ~、いや~友達に誘われて温泉に浸かりに来たのに偉い目に会ったよ~」
ハクトウワシ「最近はセルリアンが増えてきてるからね、今まであまりセルリアンを見なかったちほーでも現れるようになったみたいなんだ」
ヌートリア「そうなのか~ちょっと位のセルリアンなら自慢の歯でやっつけちゃうんだけどな~、温泉までまだ少しあるしどうしようかな~」
ハクトウワシ「丁度良かった、私達もそこに向かう途中なんだ、良かったら一緒にどうだい?」
ヌートリア「助かるよ~!」
ハクトウワシ「よし、じゃあしっかり掴まって!」
ハクトウワシはヌートリアを抱き抱えると羽を広げ上昇する。
ヌートリア「うわわわわわーーっ!?たっ、高い!飛んでる!私、今飛んでるよ~すご~い!」
ハクトウワシ「ははは、飛ぶのは初めてかい?どう、素晴らしい眺めだろう!」
目の前に広がる雪で覆われた山々にヌートリアは息を呑んだ、遠くには温泉だろうか白い湯けむりが見えた。
グリフォン「お、ハクトウワシが戻ってきたぞ、ん?一緒に誰かいるぜ、さっきのフレンズか?」
ハクトウワシ「やあ待たせたね、この子、温泉まで行くそうなんだ一緒にいいかな?」
ヌートリア「私はヌートリアさ~よろしくね~」
グリフォン「おう、旅は道連れだ、俺はグリフォンだ、よろしくな!」
ヒポグリフ「あの、私はヒポグリフ、よろしく」
ライオン「やあ、私はライオンさ、飛べない者同士よろしく~」
ヌートリアを加えたグリフォン一行がしばらく飛び続けていると温泉から立ち上る白い湯気が次第にが濃くなってきた、山の中腹辺りに点々と大小様々な温泉が見えたその先に目的の建物が建っていた。
グリフォン「おっ、あれだな!おい…なんだちょっと様子が変だぞ?!」
ハクトウワシ「確かに…この気配は、セルリアンがいるのか!?」
ヌートリア「ええっ!ここにもセルリアン!?」
ヒポグリフ「あっ!あれ見て!誰か建物から走って出てきたわよ!」
ライオン「あれは…ぎんぎつねだねぇ。何だかただ事じゃなさそうだよ。」
グリフォン「みんな降りるぞ!」
ぎんぎつね「きゃっ!!あ、あなた達は… ライオン!と、ハクトウワシ!と…」
そう言ったあと、グリフォンとヒポグリフの姿を見たギンギツネはひどく怯えだす
ぎんぎつね「ど、どういうこと!?ウソ、こっちにもいるの!?追い詰められちゃったわ!」
グリフォン「ああ?おい、あんた大丈夫か?」
ギンギツネ「触らないで!!あなた達、一体何が目的で…!!」
ライオン「ちょっとちょっと、落ち着きなよ!何があったのさ?」
一行がもみ合っているその時、温泉の入り口から先ほど倒した球体セルリアンが数体ゴロゴロ転がり出てくる…
ヒポグリフ「あ、あぶない!みんな避けて!」
グリフォンはとっさにぎんぎつねを抱きかかえるようにセルリアンを回避!
ライオン「よっ…と!」(パッカァーン!)
ヌートリア「わーーー!」
ハクトウワシ「みんな大丈夫!?ケガはない!?」
グリフォン「おい、大丈夫か?何があった?」
ぎんぎつね「助けてくれた…?あなた達は、さっきの奴の仲間じゃないの…?」
グリフォン「さっきの奴?まさかアイツが…!」
温泉の入り口を睨みつけるグリフォン・・・その時、中から一人のフレンズが出てきた
謎のフレンズ「ぐふふ・・・!逃げようったってそうは・・・おう?誰だキサマらは!」
温泉から出てきた謎のフレンズはどことなく、グリフォンやヒポグリフに雰囲気の似た風体をしている
グリフォン「スフィンクス・・・じゃねえ!?誰だこいつ!?」
ヒポグリフ「あなたは・・・!!」
ぎんぎつね「こいつらが、急にセルリアンと一緒に現れて建物の中であばれだしたのよ!」
ライオン「キミは誰~?」
謎のフレンズ「ぐふふ・・・」
ライオン「・・・名乗るくらい、したらどうかな~。」
睨みあうライオンと謎のフレンズ・・・その後ろから、もう一人声が聞こえる
謎のフレンズ2「何やってるんだい、キマイラ姉さん。あんまりモタモタしてると・・・ん?」
グリフォン「また出てきたぞ!お前ら、スフィンクスの知り合いか?」
キマイラ「おう、オルトロス。そう急くなよ。なんだか骨のありそうなヤツがでてきたぜ。」
オルトロス「スフィンクスを知ってるって事は、おそらくアナタはグリフォンですね?で、そっちのが、ヒポグリフ。」
ヒポグリフ「キマイラとオルトロスですって・・・!!?」
温泉には猛吹雪が近づいていた・・・
グリフォン「何だあいつらは?!俺が『けんきゅうじょ』に居たときはあんなのいなかったぞ!」
ヒポグリフ「知らないのも無理無いわ、あなたが『けんきゅうじょ』から居なくならなった後でスフィンクスが誕生させたのよ!」
キマイラ「お前がグリフォンか、スフィンクスから聞いてるぜ、『けんきゅうじょ』から逃げたした腰ぬけだってな!」
グリフォン「んだとぉ!」
ヒポグリフ「やめてキマイラ!あなた達はスフィンクスに騙されてるのよ!」
キマイラ「おうヒポグリフ、そっちに居るってことはつまり…どう言うことだ?オルトロス?」
オルトロス「はあ…、戦闘以外は本当にポンコツですね…キマイラ姉さんは…」
呆れ顔でオルトロスがぼやいた。
キマイラ「おう、戦闘なら任せろ!」
オルトロス「……はいはい、今のヒポグリフは額の目が除去されている…つまりもうNEO体の呪縛から逃れている…元に戻ってしまったようですね」
キマイラ「あたしらを裏切ったって事か…!まあ、遊ぶ相手が多いに越したことはねぇ!」
キマイラは首を捻ると嬉しそうに笑う。
キマイラ「いい加減『けんきゅうじょ』のセルリアンどもと遊ぶのも飽きたところだ。さあて誰から相手してやろうか、何なら一度に全員でもいいぜ!」
ヒポグリフ「みんな気を付けて!抜けてるように見えてもとんでもない力の持ち主よ!!」
不敵な笑みを浮かべながらキマイラはグリフォン達に向かって一気に突進した。
グリフォン「うわっ!」上空に避ける
キマイラ「ちょっ……上はなしだぞ!」
勢い余ってキマイラは転ぶ。
オルトロス「姉さん…………」
オルトロスは呆れ顔だ。
ヒポグリフ「弱点は二人とも飛べない事ね………」
キマイラ「…………」
オルトロス「…………」
グリフォン「この戦い………勝てない訳ではなさそうだな………すまんが倒させてもらうぞ…!」
キマイラ「そう簡単に倒されはしないぞ!」
*喧嘩が始まった。
グリフォン「おらっ!」ボコッ
キマイラ「やったな!クソがっ!」ボコッ
グリフォン「いってー!このやろっ!」ボコッ
ヒポグリフ・オルトロス「えぇ………」
──────────────────────────────────────
ライオン「吹雪いてきた…………」
ハクトウワシ「まだ何匹かセルリアンがいそうだから探そう。」
ライオン「そうだねー」
ギンギツネ「私たちも手伝うわ!」
ヌートリア「頑張るよ!」
この子達は別行動するようだ………
──────────────────────────────────────
キマイラ「くそっ!こんな馬鹿みたいな奴にあたしが苦戦するとは……!!」ボコスカ
グリフォン「なかなか手強い……!!こんなに阿呆みたいな奴なのに………!」ボコスカ
ヒポグリフ「このままじゃあ勝負がつかない………」
オルトロス「………………行きな!」
オルトロスは空を飛ぶヘリコプターのセルリアンを出した……
ヒポグリフ「!?!?」
そのセルリアンはヒポグリフに銃口を向けて……発射した。ヒポグリフは突然の出来事に動けない。
ヒポグリフ「んっ………………!!!」
…………………?
ヒポグリフ「あれ?……私は撃たれたはず……」
ヒポグリフの真ん前、セルリアンがいる方角に見知らぬフレンズがいた。
??「……………………有害なセルリアンめ……消えろ!」
さっき撃ったと思われる弾が今度はセルリアンに発射された。その弾はセルリアンを貫通し、へしを砕く。
セルリアン「!?!?」パッカーン!!
オルトロス「お前は…………誰だ………?!」
??「私か、私は真西方守護者(仮)風使いの窮奇だ!私の守護地を破壊する行為、許せん!成敗してくれる!」
オルトロス「守護者がなによ!お前達!潰してやりな!」
セルリアン軍団「!!!!」
*本当の戦いが始まった。
オルトロス「あの数のセルリアンをものともしないなんて…何て奴…!」
オルトロスに呼び出されたヘリ型セルリアンの半数が既に窮奇によって倒されていた、ヘリ型セルリアンより発射される弾丸はまるで見えない壁に弾かれるように軌道逸れ窮奇を捉える事なく四方に消える。
オルトロス「そんな馬鹿な…一体どうなってる…!」
キマイラ「ちっ、どいつもこいつも頭の上をヒラヒラ飛びやがって…!目にもの見せてやる!どいてろオルトロス!」
オルトロス「キマイラ姉さん、あれを使うのか!?」
キマイラの警告に咄嗟に後ろへ下がるオルトロス、次の瞬間大きく開かれたキマイラの口から鉛をも溶かす灼熱の火炎が放射された。
火炎は舞い降る雪を一瞬で蒸発させながらグリフォン、更にはその後方の窮奇にも迫る。
グリフォン「うおぉ危ねえっ?!なんだありゃあ?!」
グリフォンは咄嗟に急上昇し火炎をやり過ごす、だが窮奇は避ける素振りすら見せない。
窮奇「ほう…炎か面白い…、ならばこちらも答えるとしようか!」
言うより早く窮奇を中心にして周囲の雪が渦を巻くように舞い上がった。
それを見たオルトロスはようやく何が起きているのかを理解した。
オルトロス「…風使いの窮奇…!姉さん!まずい!!」
窮奇は自在に操る風を纏うとに迫り来る火炎を絡め取る、火炎は更に燃え上がり荒れ狂う炎の大蛇となってキマイラとオルトロスに襲いかかった。
キマイラ「なっ?!ぐわあぁああーーーっ!!!」
オルトロス「うわあぁああーーーっ!!!」
だが、炎の大蛇は二人を飲み込む寸前で一気に燃え上がるとそのまま掻き消え、周囲の地面を焼き尽くした跡だけが残った。
キマイラとオルトロスはその場で動けずに立ち尽くす。
窮奇「お主ら、退くなら追わぬが…さあ、どうする?」
キマイラ「くっそぉ…舐めやがって…!」
オルトロス「キマイラ姉さん、ここは退くべきです!あいつは余りに底が知れない…!」
キマイラ「ちっ、お前がそこまで言うならしょうがねぇ…!一旦退くぞ!」
オルトロスとキマイラは残ったヘリ型セルリアンに掴まるとその場から飛び去ろうとする。
グリフォン「あっ、こら!待ちやがれ!」
グリフォンが逃がすまいと追おうとするがキマイラの吐き出した火炎に遮られ近付く事が出来ない。
キマイラ「グリフォン、てめぇとの勝負はひとまずお預けだ!あばよ!」
そう言い残しキマイラとオルトロスは山から涌き出る温泉より立ち上る湯気の奥へと消えて行った。
しばらくして建物の裏手側からライオン達が戻ってきた。
ライオン「お~い!向こうは片付いたよ~」
ハクトウワシ「こっちはどうなっている?」
ヌートリア「……うえ~寒いよ~…凍えちゃうよ~」
グリフォン「お、そっちも終わったみたいだな」
ギンギツネ「窮奇さん!無事だったのね!良かった!」
グリフォン「何だ、知り合いなのか?」
ギンギツネ「ここの温泉によく来てくれるのよ、今日も朝から温泉に入っていたの…そこにさっきのセルリアン達が襲ってきて…そうだわ!キタキツネがまだ建物の中に…!!」
ギンギツネの顔色が青ざめる。
窮奇「心配には及ばぬ、ギンギツネよ、キタキツネはカピバラと供に安全な場所に避難させておいた」
その言葉に一同はホッと胸を撫で下ろす。
窮奇「やれやれ…せっかくの湯浴みが台無しだ…さて、気を取り直してもう一風呂浴びるとしよう」
建物内に入る一行
グリフォン「へー これが温泉…?で、温泉ってなんなんだ?」
ライオン「温かい水の中に入って身体を温めるんだよ。気持ちいいんだーこれが」
ヒポグリフ「なんだかちょっと楽しそうね…」
ギンギツネ「キタキツネー!カピバラー!もう大丈夫よー!」
窮奇「騒がんでもよい。こっちだ。」
案内されたのは食堂だった
ギンギツネ「あ、安全な場所ってここ?」
窮奇「ここならば閉鎖された空間だし、中から施錠もできよう。」
ギンギツネ「キタキツネー!もう終わったから出てきても大丈夫よー!」
……
ヌートリア「反応ないですね…」
ギンギツネ「しっ…!静かに…」
グリフォン「…?何だ、どうしたんだ」
…ズズー ズズー…
ギンギツネ「ま、まさか!キタキツネ!カピバラ!開けなさい!」
ドンドンと食堂の戸を叩くギンギツネ
グリフォン「なんだなんだ?大丈夫なのか?」
しばらく間が空いてガチャっと鍵の開く音が響くと、勢いよく戸をあけるギンギツネ
ギンギツネ「あーっ!!や、やっぱり!」
グリフォン「????」
ギンギツネ「ふっくら 食べてるー!!ダメでしょ、こんな時間に食べちゃ!晩御飯が食べられなくなっちゃうわよ!」
キタキツネ「…だから食べ終わるまで閉めといてっていったのに…」
カピバラ「ぎんぎつねに心配かけるのも申し訳ないよよよ…ズルズル おあげが美味しいんだよよよ…」
緊張状態が続いていた一行の緊張が一気にほぐれる
ライオン「あの食べてるものは何なの?」
グリフォン「なんかよくわからんが大丈夫そうだな…ハァー 腹が減った」
窮奇「さて、湯冷めしてしまったのでもう一風呂頂いていくぞ、ギンギツネよ。」
ヌートリア「カピバラさん!しばらくぶりで~す!」
ハクトウワシ「私たちも少し休憩していくかい?」
ヒポグリフ「温泉…ちょっと入ってみたいな~」
ギンギツネ「じゃあ、ご飯の前に行ってみる?」
ヒポグリフ「やった!」
ののののののののののののののののののののののの
[大浴場]
窮奇「さあ、ここが雪山名物雪山温泉大浴場だ。」
窮奇に案内された大浴場はスーパー銭湯のような雰囲気の温泉であった。
グリフォン「ここが…………温泉………」ゴクリ
窮奇「ここでこの服を脱ぐ」
窮奇は自分の衣服を脱いでいる
ヒポグリフ「これって取れるのですか!?」
窮奇「最近の奴らは知らんやつが多いが、ここに人が沢山いた頃はみんなそうしてたんだぞ」
ギンギツネ達も脱いでいる、窮奇は頭にタオルを乗せた。
グリフォン「なんか変な気分だな……」
ヒポグリフ「そうだね………」
全員が入る準備が出来たようだ。
グリフォン「よっしゃ!」タタタッ
カピバラ「あっ……」
グリフォン「アベッ!?………痛ったぁ〜!」
グリフォンが派手にすっ転ぶ。
カピバラ「滑るから気をつけるんだよよよ…」
ヒポグリフ「ふぅ………………暖かい………」
ヌートリア「ぬくぬく…………♪♪」
グリフォン「なるほど…」パシャ
皆それぞれ好きな所で入浴している。
グリフォン「なあ窮奇、お前さっき人間が沢山いる頃って言ってたけどさ、窮奇はここがまだ開園していた時から居たのか?」
窮奇「そうだぞ、開業していた時はアンインの自然公園でゆるりと生きてたな、いやー懐かしい。」
ヒポグリフ「なるほど…しかしそこから結構経ちますけど、よく生きれましたね?」
窮奇「まあ偶然と偶然が重なったからな……寿命は普通のフレンズは120歳そこらだと言うが私ら神様系はセルリウムがなんとかかんとかで………」
グリフォン「セルリウム!?」
窮奇「と言ってもどうもセルリウムには2種類あるようで、名前は……呼ぼえていないが私はアリウムとナシウムって呼んでいる。」
ヒポグリフ「2種類?ということはセルリアンも2種類がいると?」
窮奇「ああ、セルリアンも1型と2型がいる。1型セルリアンは有機物に反応してセルリアン化する。私達神様系フレンズにも同様のアリウムが少しある。だから化身を出せるんだよ。2型セルリアンは無機物に反応してセルリアン化する。その姿は1つ目の独特な形状ってわけだ。ヒポグリフのその第3の目は恐らく無理やりナシウムを打たれてアリウムの部分を乗っ取ったのかもしれないな。」
グリフォン「俺も前はついてたぞ…ということは……」
ヒポグリフ「つまり…………」
窮奇「グリフォンの寿命は普通のフレンズと同じぐらいで、二人とも化身を出せないっていうこったな。……………アリウムは神様系フレンズの中以外はほとんど消えちまったからな、お主らが化身になるのは諦めるしかないようだな………」
グリフォン「化身かーっ!よくわかんないけどなってみたかったなー!」
ヒポグリフ「ですねー」
窮奇「長々と話に付き合わせちまったな、代わりに今日の晩飯は私がラーメンを作ってあげよう。私が作るラーメンは自慢じゃないが美味いぞ。」
長風呂は続く………
はらはらと雪が舞い落ちる中、グリフォン達は白銀に覆われた山々を眺めながらの露天風呂を堪能していた。
グリフォン「ふい~、こりゃいいや…」
ヒポグリフ「お湯に浸かってる所は温かいのに顔はひんやりなんて不思議な感じね…」
窮奇「どうだ、景色を楽しみながら風呂に浸かる、これが露天風呂の醍醐味よ、なかなか良いものであろう?」
ハクトウワシ「ふ~これは疲れが取れるね~」
キタキツネ「ギンギツネー、早く上がって『げえむ』したいよー…」
ギンギツネ「ダーメ、キタキツネあなた今入ったばっかりでしょ!」
ヌートリア「は~温泉最高~、苦労してここまで来たかいがあったよ~」
カピバラ「何度入ってもやっぱり最高だよよよ」
ライオン「気持ちよくて眠くなっちゃうな~ぐ~ブクブク…」
キタキツネ「ライオン…お風呂で寝たら死んじゃうよ…」
それぞれが思い思いに温泉を楽しむ中グリフォンは窮奇の会話にあった【ヒト】と【人間】と言う言葉が気になっていた。道中に出会ったツチノコやスナネコも話して居たのを思い出したのだ。
グリフォン「なあ窮極、さっきのヒトだの人間だの何の事だなんだ?」
窮奇「何だ?知らないのか?」
そこに二人の会話を聞いていたヒポグリフが割って入った。
ヒポグリフ「グリフォン、あなた何言ってるのよ、ヒトなら『けんきゅうじょ』に大勢いたじゃない?!」
グリフォン「なに?!あそこには『けんきゅうしゃ』っていう全身が白い毛皮の奴らが居ただけだろ?!」
ヒポグリフ「あれがヒトなのよ!」
グリフォン「な、そうなのか?!ヒポグリフお前、何でそんな事を知ってるんだ?!」
ヒポグリフ「スフィンクスがまだ普通だった頃に話してくれたでしょ?聞いてなかったの?」
グリフォン「んんんー、難しくて途中から聞いてなかったかもしれん…」
窮奇「ふむ、どうやら疑問は解決 したようだな、因みに人と人間は同じ意味だ」
グリフォン「でもよ、途中で会ったスナネコの奴はヒトは俺達みたいな耳や尻尾も無くてツルツルしてるって言ってたんだぞ?」
窮奇「今の私達に元動物だった頃の尾も耳や羽が無いのを思い浮かべれば良いのだ、何せフレンズと言うものは動物がヒト化したものらしいからな」
ヒポグリフ「…グリフォン、ちゃんと聞いてるの?」
グリフォン「お、おうよ!バッチリだぜ!」
各々が温泉での談笑をして過ごす内に陽は傾き、雪に覆われた山々もうっすらと夕日を帯びて茜色に染まり始めていた
ヒポグリフ「うーん、なんだか頭がクラクラしてきたわ。まだ体力が戻らないのかしら。」
カピバラ「それは、のぼせたんだよよよ・・・」
ヒポグリフ「のぼせた?どういうこと?」
カピバラ「お湯に長く浸かっていると、身体が暖まりすぎてボーっとしてくるんだよよよ・・・そういう時は、一度上がって身体を冷ましてからまた入るんだよよよ・・・」
ヒポグリフ「へぇー、あなた物知りなのね。それじゃ、一度上がろうかしら。グリフォンはどうする?」
グリフォン「俺は何ともないから、もうちょっと入ってるぞ」
ライオン「わぁ~たしも上がろうかなぁ~アハハ」
ぎんぎつね「ライオン、顔が真っ赤よ!大丈夫なの!?」
ヒポグリフ「ライオンさん、一緒に上がりましょう。」
フラフラのライオンの肩を支えて上がるヒポグリフの後を追うようにカピバラがザバっと立ち上がる
カピバラ「どれ・・・いい場所を案内するよよよ・・・」
ヒポグリフ「いい場所?」
身体をよく乾かした2人は、カピバラに連れられて温泉施設の一室に導かれる
そこは畳が敷かれ、その上にはマットレスのようなものの上に布団が敷かれていた
ヒポグリフ「ここは何なんですか?」
カピバラ「御休処おやすみどころっていうんだよよよ・・・ここで少し休んで、また入りたくなったら温泉に入るといいよよよ・・・」
早速横になる二人・・・
ライオン「グガ~ 💤」
ヒポグリフ「な、なるほど・・・これは・・ハマるわね・・・うーん 💤」
ピポグリフとライオンと一緒に戻ってきた。
ヒポグリフ「なになに?食堂にいますって。」
ライオン「寝たらお腹も空いたしいこうよ〜」
既に他のみんなは食堂にいってしまったようだ。
グリフォン「おう、ヒポグリフ、もうそろそろラーメンとやらが出来るらしいぞ」
ヒポグリフ「たのしみですね!」
窮奇「みんな並んでー」
グリフォン「どんなのなんだ……?」
隣の調理室からはいい匂いが立ちこめる…
最初に並んだグリフォンにラーメンがプレートと一緒に渡される
ギンギツネ「落とさないようにね?」
グリフォン「お、おう」
グリフォン(これがラーメンか………にしてもいい匂いだな……)
その後みんな席に座る。
窮奇「では日本式で行かせてもらうぞ、知らん人は聞いてね、こうやって手を合わせて、いただきますって言うんだよ。じゃあ行くぞ!いただきます!」
全員「「「いただきます!!」」」
グリフォン「ズルル………美味い!」
ヒポグリフ「ほんとね!」
窮奇「おう、それなら良かったよ。作ったかいがあるってもんさ」
グリフォン「だけどどうやって作るんだ?」
窮奇「ラッキービーストが持ってくるジャパリまんってあるだろ?その中身を包んでる外側の部分がこの細長い麺と同じ材料で作られてるんだよ。その余ったのを荒野って細長くして作ってるんだよ。」
ヒポグリフ「手間がかかりそうですね…」
窮奇「だけどこうやってジャパリまん以外のものを食べるのも乙なもんだろ?」
窮奇は隣に置いてあるコーヒー牛乳を飲む。
キタキツネ「今日はもう夜だからさー泊まってく?」
ギンギツネ「あいつらも夜間に外に出るのは暗くて控えるだろうしね、セルリアンも夜は活動しないみたいだし……」
グリフォン「ヒポグリフ、どうするか?」
ヒポグリフ「お言葉に甘えましょう!」
グリフォン「そうだな。」
グリフォン一行は温泉に泊まることになった……
次の日の朝…グリフォンは生まれて初めての「布団」で目を覚ます
グリフォン「ふぁ~あ… なるほど、このフトンってやつは中々寝心地がいいな。気に入ったぜ」
少しの間寝起きのまどろみに身をゆだねつつ、ふと部屋の外に目をやる
グリフォン「…よし、天気は回復してるな。はええとこけんきゅうじょを探さないとな。」
グリフォンは部屋を後にし、食堂へ移動する
ヒポグリフ「あら、おはよう。ねぇ見て見て!少し体力が回復したみたい!温泉ってすごいわね!」
グリフォン「…おお、自分で飛べるくらいにはなったんだな。そいつぁ良かったぜ。」
食堂にいるのはヒポグリフ、ぎんぎつね、カピバラ、ハクトウワシだけだ
他の連中はまだ寝ているのだろうか
ぎんぎつね「あら、おはよう。今朝ごはんを出すからそこに座っててね。」
グリフォン「あさごはん?じゃぱりまんか?」
ヒポグリフ「何が食べられるんだろう、楽しみだわ。」
ぎんぎつね「うふふ…はいどうぞ。『ふっくら』よ。」
ヒポグリフ「わあ!昨日のラーメンみたいだけど、匂いが違うわね…どんな味がするのかしら」
カピバラ「おあげをまず一口かじるのがツウの食べ方だよよよ…」
グリフォン「…なぁ、ぎんぎつね。おまえ、『けんきゅうじょ』の場所を知ってるか?ここに来れば場所を知ってるやつがいるってコノハズク達が言っていたんだ」
その話を聞いて、笑顔だったぎんぎつねの顔がとたんに険しくなり、ふっくらを食べようとおあげを持ち上げていたヒポグリフも手が止まる
ぎんぎつね「…けんきゅうじょ… どうしてけんきゅうじょへ?」
グリフォン「色々ワケありでね。そこにいるやつに俺達は用があるのさ。」
ぎんぎつね「……ダメよ、教えられない。」
グリフォン「ああ?なんだと?おい、どういうこった?」
ぎんぎつね「確かに『けんきゅうじょ』は、このゆきやまちほーにあるわ。だけど、あそこはダメなの。」
ハクトウワシ「立ち入り禁止の話は聞いたわ。でも博士達には許可を…」
ぎんぎつね「ダメよ!だって、場所を教えたらあなた達、あそこへいくつもりなんでしょう?そんなのダメだわ。」
ヒポグリフ「…それでも私たちは…」
ぎんぎつね「あそこはもう、セルリアンの巣窟よ。近くを通るだけで、セルリアンのニオイで息が苦しくなるほど… あんなところに行くなんて、自殺行為だわ!」
グリフォン「…それでも、俺はあそこに行く必要があるんだ。そこにいるヤツにどうしても用がある。」
ぎんぎつね「……あなた達には感謝してるの。だから危険な目には…」
グリフォンは深々と頭を下げた
グリフォン「頼む… この通りだ。」
食堂の扉ががらりと開き、食堂にひろがる静寂を断ち切ったのは窮奇だ
窮奇「教えてやるがいい、ぎんぎつねよ。」
ぎんぎつね「窮奇さん、でも・・・」
窮奇「もしお前がここで教えなかったとしても、こやつらは自力で探し出して向かうだろうよ。そういう目をしている」
ぎんぎつね「そ、それは・・・・」
グリフォン「頼むっ!」
ぎんぎつね「ううっ・・・わかったわよ!でも、本当に無茶はしないでね?」
グリフォン「ああ・・・」
グリフォン(そうはいかないだろうけどな・・・)
ぎんぎつね「・・・この温泉を裏口から出ると、丁度正面の位置にこのへんで一番高い山が見えるわ。その山を越えると奇妙な赤い棒(鉄塔)が二つ見えてくるはずよ。その2本の棒の間を目指せば・・・」
グリフォン「一番高い山・・・赤い棒の間・・・よし、わかった。」
グリフォンはぎんぎつねの手を強く握り感謝する
グリフォン「色々世話になった。温泉も、飯も、あんたも・・・ありがとう」
ぎんぎつね「ちょ、ちょっと!別にそんなつもりじゃないわよ!もう・・・」
ヒポグリフ「あの…あなたも一緒に来てくれませんか?」
窮奇「力になってやりたい所ではあるが、私は仮にも真西方守護者・・・あまりうろうろしているわけにもいかんのだ。」
ハクトウワシ「温泉にはよく来るのにかい?」
ぎんぎつね「昨日も来てくれたんですよね~」
窮奇「ま、まぁ色々事情があるのだ。実はこれでも色々忙しい身でな。」
ヒポグリフ「・・・そうですか・・・」
窮奇「そう塞ぐな。いいものをやろう」
窮奇はそういうと胸元に手をつっこみごそごそと弄り、小さな青い石を取り出してヒポグリフに投げた
窮奇「ホレ、受け取れ。」
ヒポグリフ「わっ・・・とと。・・・この石は何?」
窮奇「美しい石だろう。「ターコイズ」という石だ。それは邪気を振り払う勇気の石・・・お前達の行く先で、どうしても辛くなったらこの石を強く握って私の名を叫べ」
ヒポグリフ「叫ぶとどうなるの・・・?」
窮奇「・・・さぁて、どうなるかね。」
ののののののののののののののの
グリフォン「それじゃあ、色々世話になったな。」
ぎんぎつね「こっちこそ助けてもらったんだから。本当にありがとう」
ライオン「カピバラとヌートリアは?」
きたきつね「温泉に入ってると思うよ」
ハクトウワシ「それじゃ、ここでヌートリアとはお別れね。別れの挨拶くらいしたかったけど…」
窮奇「朝風呂は良い…私も入っていけばよかったか。」
ぎんぎつね「よかったら入って行って下さいね。」
窮奇「いや、少し長居しすぎた。私はこれにて失礼するぞ。」
グリフォン「あんたも元気でな。」
ヒポグリフ「あの綺麗な石、ありがとう。大切にするわね。」
窮奇「ふっ…お前達も道中気を付けるが良い。ではな!とうっ!!」
グリフォン「さあ、俺達も出発するぜ。」
ライオン「そんじゃあ、またね~ぎんぎつね~」
ぎんぎつね「またみんなで温泉に入りにくるのよ~!約束だからね~!!」
空は快晴、視界は良好 ぎんぎつねときたきつねに見送られて4人は温泉を後にする
グリフォン「よし、一番高い山…あれだな。天気が崩れないうちに一気に進むぜ!」
ヒポグリフ「赤い棒・・・ってあれかしら?」
グリフォン「見えてきたのか?どこだ?」
ハクトウワシ「あそこよ、丁度太陽が昇っている方向!まだ遠いけど、小さく見えているわ。」
グリフォン「・・・あれか!多分間違いないな。」
ハクトウワシ「少し雲も出てきたみたいだし、急ぎましょう!」
ライオン「zzzz」
グリフォン「いい加減起きたらどうなんだよっ!のんきな奴だぜまったく!」
ぎんぎつねに言われた通りの方角に進み、目印の赤い鉄塔を見つけた4人は徐々に鉄塔へ近づく・・・
丁度鉄塔の間を通りぬけるか抜けないかぐらいのあたりから、少し空気が変わってくる
4人の中では一番体力的に弱っているヒポグリフがいち早く異変に気付いた
ヒポグリフ「・・・うっ・・・・」
グリフォン「おい、大丈夫か?顔色が悪いぞ。」
ヒポグリフ「・・・だいじょぶよ・・・」
ハクトウワシ「・・・セルリアンの気配がすごいわね。間違いなくこの先にすごい数のセルリアンがいるわ。」
グリフォン「確かに何かビリビリとしたものは感じるが、今一俺にはピンと来ないな・・・あんた、勘がいいんだな。」
更に進む一行の目前に、雪に埋もれて今にも倒壊しそうな建造物が見えてくる・・・
グリフォン「・・・けんきゅうじょ!あれだ!!」
建物の前に降り立つ4人・・・
ライオン「クサい所だねぇ」
ハクトウワシ「今にもセルリアンが飛び出してきそうだわ。油断は禁物よ。」
ヒポグリフ「・・・・」
グリフォン「・・・ついにここへ戻ってぜ、スフィンクス!」
ついにけんきゅうじょへたどり着いた4人はけんきゅうじょ入り口に立つ・・・
空は雲が出始め天候の悪化の兆しが見えつつある
グリフォン「早速乗り込むぜ!みんな、準備はいいか?」
ハクトウワシ「OKよ!レッツジャスティス!」
ヒポグリフ「・・・行きましょう!」
その時、ライオンの耳がピクンと動く
ライオン「・・・さっそくお出迎えみたいだねぇ~」
キマイラ「おう、しばらくだなぁオイ。」
オルトロス「さっさと逃げ帰ればいいのに、たったの4人でノコノコと・・・バカな連中。」
グリフォン「お前ら温泉の・・・どきやがれ、お前らに用はねぇ。」
キマイラ「てめぇには無くても、アタシにはあるぜ・・・オラ、一対一だ!勝負しやがれ!」
オルトロス「ちょっと姉さん!!あんまり遊んでる時間は・・・」
キマイラ「おお?・・・おい、オルトロスよ。お前いつからこのアタシに指図できるほど偉くなったんだ?ええ?」
オルトロス「・・・お、怒らないでよ。別にそんなつもりじゃないんだから・・・。私はただ・・・」
キマイラ「ふーん、そうかい。たった一人の大事な姉の楽しみも奪うような冷たいヤツになっちまったんだな、お前。姉さんは悲しいぞ」
オルトロス「も~・・・すぐそうやって拗ねるんだから・・・」
ハクトウワシ「なんか揉めてるわね。」
ヒポグリフ「こういう連中なのよ、昔から・・・」
ライオン「・・・ふぁ~あ。」(あくび)
グリフォン「おい、こっちも暇じゃねえんだ。姉妹喧嘩なら他所でやれよ。」
それは地上にてグリフォンとキマイラの不毛などつき合いが始まろうとする少し前。
ゆきやまちほーの奥深くに建てられた研究所の地上部分は、老朽化が激しく今にも倒壊しそうな見た目だったがその下には地下施設が存在していた。
そこは地熱発電設備より賄われた電力が引かれ、現在も稼働していたが地下施設のほとんどの研究者達は既に退去したのだろうか、整備用の小型ロボットを残してほぼ無人と化ししている。
それぞれの実験室には様々な実験装置が並び、それらは中央制御室からのコントロールで半自動的に稼働していた。
その一室で会話する温泉を襲撃したキマイラとオルトロス。
キマイラ「あー、退屈だぜ…こんなところに居たら気がめいっちまうよ…飯は不味いしよぉ…また抜け出すか…」
オルトロス「…やめてよキマイラ姉さん、私まで怒られるわ…それにしてもヒポグリフの言っていた『私達はスフィンクスに騙されている』…あれはどういう意味?」
キマイラ「おう?そういやヒポグリフのヤツここに居た頃とは様子が違ってたな…」
オルトロス「NEO体の特徴である額の目が除去されてスフィンクスの制御下から外れていた…あれが本来のヒポグリフなのね」
キマイラ「だがなぁ、スフィンクスから聞かされてたのとは大分話が違ってたがな?凶暴で手がつけられずに仕方無くNEO体化してやっと制御した筈だったろう?」
オルトロス「…」
その時、室内に設置されたスピーカーよりスフィンクスの声が発せられた。
スフィンクス「二人とも、無駄話はそれくらいにしてくれますか、
地上に厄介なお客さんです、どうやらこの場所を嗅ぎ付けた様ですね…」
キマイラ「ふん…、あたしらの話を盗み聞きとは感心出来ねえな…スフィンクス、いつから聞いてやがった」
オルトロス「…スフィンクス、私も後で聞きたい事があります、いいですね?」
スフィンクス「構いませんよ、ああ、二人とも、ヒポグリフはなるべく傷つけないように回収してもらえますか彼女はまだ利用価値が有りますからね」
オルトロス「…わかりました」
キマイラ「…注目の多い野郎だな…さあて、出るぞオルトロス!今度こそどっちが強いか決着をつけてやる!」
キマイラ「もう!姉さん、あんまり突っ走らないでよ?!」
地上と地下とを繋ぐ長い通路を抜け二人は外に出る。一面の銀世界を背に再びグリフォン達と対峙した。
睨みあうグリフォンとキマイラ…天気は少しずつ崩れはじめ、雪がちらつき始めていた
キマイラ「おい、そういえばあの窮奇ってやつはどこいった?」
グリフォン「あいつは…今はいねーよ。どこかへ行っちまったみたいだな」
キマイラ「ちっ…あいつが一番上玉そうだったのに… まあいい。それじゃグリフォン、まずはてめぇが……… あ?」
その時!睨みあう二人の視線に割って入る一人のフレンズ… それはライオンだった
キマイラ「あぁ?なんだぁてめーは?」
グリフォンの前に立ち、眉間にしわを寄せるキマイラに満面の笑顔で返すライオン
ライオン「えへへ~」
グリフォン「お、おい!何やってんだよっ!」
ライオン「多分この先さぁ~ キミは体力残しておかないとまずいんじゃないかな~と思ってさ~。」
キマイラ「…おい、出しゃばるんじゃねえニャン公。お前、NEO体でもないただの動物のフレンズだろ。よせよせ、勝負にもならねえよ。」
グリフォン「気持ちはありがたいが、アイツの言う事も一利ある。あんたが強いのは知ってるが相手が少し悪いぜ。」
ライオン「まぁまぁ…ああいう単純そうなヤツの相手は結構慣れてるからね~」
ライオン「それに…」
ゆっくりと目を閉じるライオン… 少し間をおいて目を開くと、ライオンの瞳は煌々と輝く
ライオン「たまには、腕っぷしが強い所も 見せておかないとねぇ…」
キマイラ「なにぃ~?腕っぷし、だぁ?」
キマイラは少し含み笑いを込めてライオンに言い放つと、後ろを向き二人の後ろにちらほらついてきているセルリアンの中から、小さな球体型のセルリアンを片手で掴みライオンの足元にコロコロと転がした
キマイラ「ホレ、ネコってのは玉で遊ぶもんなんだろ?遊べよ。」
ライオンの眉が一瞬ピクッと動くが、ライオンは満面の笑顔で返す
ライオン「えっ、いいの~?それじゃあ・・・ 遠慮なくっ!!」
パッカアーーーーン!!
大きく片足をふりかぶったライオンが球体セルリアンを勢いよく蹴り飛ばすと、キマイラの顔面に直撃した
セルリアンは粉々に砕け散り、キマイラは反動で大きく仰け反る
キマイラ「いっっっ・・・・・!!!てえぇぇ!!」
グリフォン「おお!?」
オルトロス「え!?」
セルリアンが顔面に当たって大きく仰け反ったキマイラは、一瞬呆然とするがすぐに我に返りこちらに向き直り、頭に血管がピキピキと浮かぶ
キマイラ「て、てめぇ・・・ナメたマネしやがって・・・!!」
ライオン「次は何して遊んでくれるのかなぁ~?」
キマイラ「てめぇはもうおしまいだ!!今更謝ったって許してやんねぇ、ボコボコにして泣かしてやるぜッ!!!」
蹴り返された球体セルリアンを顔面に受け激昂するキマイラはライオン目掛け突進し一気に距離を詰めるとそのままの勢いで爪を振り下ろす。
キマイラ「うおらぁーーーっ!」
凄まじい威力の攻撃がライオンの鼻先を掠めた、だが冷静さを失って力任せのキマイラの攻撃はその軌道を容易く読まれ鋭い爪先は空しく空を切った。次々と繰り出される連擊を最小限の動きでかわすライオンには余裕すらある。
ライオン「ほらほらっ、こっちこっち~鈍いね君~」
キマイラ「この野郎ぉおお!ちょこまかと…!こいつを食らいやがれっ!!」
当たらない攻撃に業を煮やしたキマイラが大きく息を吸い込んだ。
グリフォン「やばい!避けろライオンッ!」
ライオン「へ?」
ゴアァアアッ!!直後、ライオンの視界が炎に包まれる。吐き出された灼熱の火炎による高熱で周囲の空気が歪んで見えた。
辺りには毛の焼ける嫌な匂いが漂った。
グリフォン「ライオンッ?!」
キマイラ「はっはぁーー!どうだぁ!ニャン公め!!…あ?!どこ行った?!」
キマイラ自身の放った火炎により遮られていた視界が開けた次の瞬間だった、素早く身を低くし火炎を掻い潜ったライオンがキマイラの顎に強烈なアッパーカットを見舞った。
キマイラ「ぐががっ?!」
脳天まで突き上げる突然の衝撃に視界が揺らぎ堪らずキマイラは雪の積もった地面に膝をついた。
ライオン「ふ~あっぶないなぁ~も~、あ~あ、自慢のタテガミが台無しだよ…もう」
ライオンの指先がタテガミをくるくると巻き取る、その先端はチリチリと焼けていた、それをライオンはふーっと吹き消した。
ライオン「きみ、力は強そうだけど案外大したこと無いねぇ、まだ必死に抗う獲物の方が歯応えあるよ~、それでもまだやるかい?」
キマイラ「くっそぉーーーおおお!!!」
百獣の王と呼ばれるライオン、その秘められた実力の片鱗をまざまざと見せつけた。
オルトロス「姉さん!そいつただの動物のフレンズだけど、妙に戦い慣れてるよ!NEO体の力を…」
キマイラ「うるせえ!こんなニャン公ごとき、アタシの力だけで十分だ!やっつけてやるぜ!」
ライオン「ふぁ~あ… そうこなくちゃね~。せめてヘラジカくらいは頑張ってくれないと張り合いがないなあ。」
オルトロス(こんな所でモタモタやっている場合では… スフィンクスの奴に聞きたい事が色々…)
キマイラ「て、てめぇ…!!!コケにしやがって!!うおおおおおおおおおーーーーー!!!」
激昂したキマイラは腕を大きく振り回してライオンに飛びかかるが、いとも軽々と身をかわすライオン
ライオン「おっ…と ほい ほいっ… 」
オルトロス(頭に血が上り過ぎている…まずいぞ…姉さん…!こうなったら仕方ない…)
オルトロスは目を閉じると、額のセルリアンの目が開きうっすらと光を放ち、次の瞬間グリフォン達めがけてものすごいスピードで突っ込んできた!
グリフォン「うおっ!!とと!!なんだぁ!?あぶねえ、みんなよけろ!」
ハクトウワシ「危ないっ!ヒポグリフ!」
ヒポグリフ「えっ?キャアーーーー!!」
不意を突かれたグリフォンはギリギリのところでオルトロスをかわすが、体力が戻り切っていないヒポグリフは突進してくるオルトロスを避けられずに髪を掴まれ地面に叩きつけられる
ヒポグリフ「グハァッ!!!」
地面に叩きつけられた衝撃で雪が舞い上がり、視界が悪くなり状況がつかめない…
キマイラ「はぁーっ…はぁーっ…!!く、クソ…!避けるんじゃねえ!アタシの攻撃を食らいやがれ!!」
グリフォン達の方をちらっと見たライオンは眉間にしわを寄せる
ライオン「…あれぇ?たたかいごっこはもう終わりなのかなぁ?」
キマイラ「ああ?そんなワケねぇだろ!こっからが本番… ああ?」
頭に血が上って周りが見えていないキマイラに、グリフォン達のほうを指さして視線を誘導するライオン
キマイラ「…あぁ!?おい、オルトロス!!お前なに勝手な事やって…」
オルトロス「お前達動くんじゃない!妙なマネをしたら、こいつは再起不能になるぞ!」
ヒポグリフの髪を掴み、首元に爪を突き立てるオルトロス。ヒポグリフの首に爪が少し刺さり血が一滴つたう
ヒポグリフ「う…く……お、オルトロス…やめて」
グリフォン「…汚ぇぞ、てめぇ!」
オルトロス「私は姉さんとは違う。例え汚かろうが卑怯だろうが、勝てばいいのさ。」
少しうつむき肩をわなわなと震わせるハクトウワシ
ハクトウワシ「…なんと卑劣なッ……!!!許せん…」
オルトロスの卑劣な戦法に怒りを覚えたハクトウワシは少しだけふわりと舞い上がる
オルトロス「お前、妙なマネはするな!ただの動物のフレンズだからといって私は見くびったりしない!」
ハクトウワシ「・・・ヒポグリフを離しなさい!」
グリフォンも隙を見て背後から飛びかかろうと機をうかがうが、オルトロスに気配を察知される
オルトロス「お前もだ、グリフォン!私に近づくんじゃない!」
グリフォン「チッ・・・!!」
けんきゅうじょの入り口や、地面から沸いて出た様々なセルリアンに包囲されるグリフォンとハクトウワシ
オルトロス「反撃は許さない!お前達にはここでのびていてもらう!」
ヒポグリフ「・・・グリフォン、私の事はいいから戦って!!」
グリフォン「バッカ言うんじゃあーねえ!すぐに何とかしてやるから待ってろ!」
大小様々な球体型のセルリアンがグリフォンに一斉に飛びかかる!
グリフォン「うおおおおーーー!?」
ハクトウワシ「貴女!卑怯なマネはやめて正々堂々と戦いなさい!」
ゲートセルリアンの触手を素早く避けながら必死にオルトロスに訴えかけるハクトウワシ
その時もう一体のゲートセルリアンの触手がライオンの方へ伸びる!だが、その触手を振り払ったのはキマイラだった
ライオン「・・・ほぅ。」
オルトロス「姉さん!?一体何を!?」
キマイラ「それはこっちの台詞だぜ!お前、何を勝手な事してやがるんだ!アタシのいう事が・・・」
オルトロス「こんな所でゆっくり遊んでいる暇ないんだよ、姉さん!スフィンクスのヤツから色々聞かなきゃいけない事があるんだ!」
キマイラ「アタシにはそんなこたぁ、どうでもいいんだよっ!今だ!今が一番重要だ!それが以外はどうでもいい!」
オルトロス「聞き分けてよ、姉さん!もしかしてだけど、もしかしたら私達は何か大きな勘違いを・・・」
キマイラとの口論に熱くなっているオルトロスはふと我に返り、ハクトウワシが視界からいなくなっていることに気づいた
オルトロス「ハッ・・・!!?」
ハクトウワシ「後ろだよ、君たちがそう言うてを使うならこっちも手段は選べないからね…」
オルトロスが油断した隙にヒポグリフをハクトウワシが助けて戻ってきた。
オルトロス「ちっ…」
グリフォン「よし!…だがまだ…」
周りにはまだセルリアンがいる。
キマイラ「ハッハッハ!お前らがどう足掻いたって勝ち目はないんだよ!!」
ライオン「どうする?やるか?」
ハクトウワシ「1人10体倒せば行ける?」
グリフォン「いや無理だろ…」
ヒポグリフ「そうだ…!」
ヒポグリフはターコイズを空に掲げた。
………しかしなにも起こらない。
キマイラ「?なんだかよくわからないけど残念だったな!!!」
オルトロス「姉さん、上……」
上空から何かが迫ってきてるのが見える。
グリフォン「!!!おい!逃げるぞ!」
グリフォン一行はその場から離れる
オルトロス「姉さん!私たちも逃げよう!」
キマイラ「ふんっ!そんなのお断りだ。アイツらをけちょんけちょんにしてない限り……」
オルトロス「呆れたよ姉さん、姉さんなんかもう知らない!」
オルトロスは滑り降りて行った。
キマイラ「あんなの私が逆に吹き飛ばしてや…」
‘‘それ’’はあの窮奇であった。
窮奇「強化スキル技…メガウィンドォォォインパクトォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
その技が地面に到達した途端、普通なら一生体験することがないというほどの強さの暴風が吹き荒れ、雪崩を引き起こし、それにセルリアンが巻き込まれて行った。
キマイラ「うっ……………………ぐわぁぁぁぁぁ!!!」
キマイラは研究所の地上階と共にふきとばされていった。オルトロスは雪崩が来る前に横穴に逃げた。
一旦逃げたグリフォン一行は直撃は免れたが強風に煽られ雪山から火山の噴火口付近まで行ってしまった。ほかのちほーでも強弱には違いがあるが皆それに気づいた。
窮奇「………………やりすぎちゃったなこれ………」
周りを見て窮奇はそう言った。