次の日の朝…グリフォンは生まれて初めての「布団」で目を覚ます
グリフォン「ふぁ~あ… なるほど、このフトンってやつは中々寝心地がいいな。気に入ったぜ」
少しの間寝起きのまどろみに身をゆだねつつ、ふと部屋の外に目をやる
グリフォン「…よし、天気は回復してるな。はええとこけんきゅうじょを探さないとな。」
グリフォンは部屋を後にし、食堂へ移動する
ヒポグリフ「あら、おはよう。ねぇ見て見て!少し体力が回復したみたい!温泉ってすごいわね!」
グリフォン「…おお、自分で飛べるくらいにはなったんだな。そいつぁ良かったぜ。」
食堂にいるのはヒポグリフ、ぎんぎつね、カピバラ、ハクトウワシだけだ
他の連中はまだ寝ているのだろうか
ぎんぎつね「あら、おはよう。今朝ごはんを出すからそこに座っててね。」
グリフォン「あさごはん?じゃぱりまんか?」
ヒポグリフ「何が食べられるんだろう、楽しみだわ。」
ぎんぎつね「うふふ…はいどうぞ。『ふっくら』よ。」
ヒポグリフ「わあ!昨日のラーメンみたいだけど、匂いが違うわね…どんな味がするのかしら」
カピバラ「おあげをまず一口かじるのがツウの食べ方だよよよ…」
グリフォン「…なぁ、ぎんぎつね。おまえ、『けんきゅうじょ』の場所を知ってるか?ここに来れば場所を知ってるやつがいるってコノハズク達が言っていたんだ」
その話を聞いて、笑顔だったぎんぎつねの顔がとたんに険しくなり、ふっくらを食べようとおあげを持ち上げていたヒポグリフも手が止まる
ぎんぎつね「…けんきゅうじょ… どうしてけんきゅうじょへ?」
グリフォン「色々ワケありでね。そこにいるやつに俺達は用があるのさ。」
ぎんぎつね「……ダメよ、教えられない。」
グリフォン「ああ?なんだと?おい、どういうこった?」
ぎんぎつね「確かに『けんきゅうじょ』は、このゆきやまちほーにあるわ。だけど、あそこはダメなの。」
ハクトウワシ「立ち入り禁止の話は聞いたわ。でも博士達には許可を…」
ぎんぎつね「ダメよ!だって、場所を教えたらあなた達、あそこへいくつもりなんでしょう?そんなのダメだわ。」
ヒポグリフ「…それでも私たちは…」
ぎんぎつね「あそこはもう、セルリアンの巣窟よ。近くを通るだけで、セルリアンのニオイで息が苦しくなるほど… あんなところに行くなんて、自殺行為だわ!」
グリフォン「…それでも、俺はあそこに行く必要があるんだ。そこにいるヤツにどうしても用がある。」
ぎんぎつね「……あなた達には感謝してるの。だから危険な目には…」
グリフォンは深々と頭を下げた
グリフォン「頼む… この通りだ。」
食堂の扉ががらりと開き、食堂にひろがる静寂を断ち切ったのは窮奇だ
窮奇「教えてやるがいい、ぎんぎつねよ。」
ぎんぎつね「窮奇さん、でも・・・」
窮奇「もしお前がここで教えなかったとしても、こやつらは自力で探し出して向かうだろうよ。そういう目をしている」
ぎんぎつね「そ、それは・・・・」
グリフォン「頼むっ!」
ぎんぎつね「ううっ・・・わかったわよ!でも、本当に無茶はしないでね?」
グリフォン「ああ・・・」
グリフォン(そうはいかないだろうけどな・・・)
ぎんぎつね「・・・この温泉を裏口から出ると、丁度正面の位置にこのへんで一番高い山が見えるわ。その山を越えると奇妙な赤い棒(鉄塔)が二つ見えてくるはずよ。その2本の棒の間を目指せば・・・」
グリフォン「一番高い山・・・赤い棒の間・・・よし、わかった。」
グリフォンはぎんぎつねの手を強く握り感謝する
グリフォン「色々世話になった。温泉も、飯も、あんたも・・・ありがとう」
ぎんぎつね「ちょ、ちょっと!別にそんなつもりじゃないわよ!もう・・・」
ヒポグリフ「あの…あなたも一緒に来てくれませんか?」
窮奇「力になってやりたい所ではあるが、私は仮にも真西方守護者・・・あまりうろうろしているわけにもいかんのだ。」
ハクトウワシ「温泉にはよく来るのにかい?」
ぎんぎつね「昨日も来てくれたんですよね~」
窮奇「ま、まぁ色々事情があるのだ。実はこれでも色々忙しい身でな。」
ヒポグリフ「・・・そうですか・・・」
窮奇「そう塞ぐな。いいものをやろう」
窮奇はそういうと胸元に手をつっこみごそごそと弄り、小さな青い石を取り出してヒポグリフに投げた
窮奇「ホレ、受け取れ。」
ヒポグリフ「わっ・・・とと。・・・この石は何?」
窮奇「美しい石だろう。「ターコイズ」という石だ。それは邪気を振り払う勇気の石・・・お前達の行く先で、どうしても辛くなったらこの石を強く握って私の名を叫べ」
ヒポグリフ「叫ぶとどうなるの・・・?」
窮奇「・・・さぁて、どうなるかね。」
ののののののののののののののの
グリフォン「それじゃあ、色々世話になったな。」
ぎんぎつね「こっちこそ助けてもらったんだから。本当にありがとう」
ライオン「カピバラとヌートリアは?」
きたきつね「温泉に入ってると思うよ」
ハクトウワシ「それじゃ、ここでヌートリアとはお別れね。別れの挨拶くらいしたかったけど…」
窮奇「朝風呂は良い…私も入っていけばよかったか。」
ぎんぎつね「よかったら入って行って下さいね。」
窮奇「いや、少し長居しすぎた。私はこれにて失礼するぞ。」
グリフォン「あんたも元気でな。」
ヒポグリフ「あの綺麗な石、ありがとう。大切にするわね。」
窮奇「ふっ…お前達も道中気を付けるが良い。ではな!とうっ!!」
グリフォン「さあ、俺達も出発するぜ。」
ライオン「そんじゃあ、またね~ぎんぎつね~」
ぎんぎつね「またみんなで温泉に入りにくるのよ~!約束だからね~!!」
空は快晴、視界は良好 ぎんぎつねときたきつねに見送られて4人は温泉を後にする
グリフォン「よし、一番高い山…あれだな。天気が崩れないうちに一気に進むぜ!」
ヒポグリフ「赤い棒・・・ってあれかしら?」
グリフォン「見えてきたのか?どこだ?」
ハクトウワシ「あそこよ、丁度太陽が昇っている方向!まだ遠いけど、小さく見えているわ。」
グリフォン「・・・あれか!多分間違いないな。」
ハクトウワシ「少し雲も出てきたみたいだし、急ぎましょう!」
ライオン「zzzz」
グリフォン「いい加減起きたらどうなんだよっ!のんきな奴だぜまったく!」
ぎんぎつねに言われた通りの方角に進み、目印の赤い鉄塔を見つけた4人は徐々に鉄塔へ近づく・・・
丁度鉄塔の間を通りぬけるか抜けないかぐらいのあたりから、少し空気が変わってくる
4人の中では一番体力的に弱っているヒポグリフがいち早く異変に気付いた
ヒポグリフ「・・・うっ・・・・」
グリフォン「おい、大丈夫か?顔色が悪いぞ。」
ヒポグリフ「・・・だいじょぶよ・・・」
ハクトウワシ「・・・セルリアンの気配がすごいわね。間違いなくこの先にすごい数のセルリアンがいるわ。」
グリフォン「確かに何かビリビリとしたものは感じるが、今一俺にはピンと来ないな・・・あんた、勘がいいんだな。」
更に進む一行の目前に、雪に埋もれて今にも倒壊しそうな建造物が見えてくる・・・
グリフォン「・・・けんきゅうじょ!あれだ!!」
建物の前に降り立つ4人・・・
ライオン「クサい所だねぇ」
ハクトウワシ「今にもセルリアンが飛び出してきそうだわ。油断は禁物よ。」
ヒポグリフ「・・・・」
グリフォン「・・・ついにここへ戻ってぜ、スフィンクス!」
ついにけんきゅうじょへたどり着いた4人はけんきゅうじょ入り口に立つ・・・
空は雲が出始め天候の悪化の兆しが見えつつある
グリフォン「早速乗り込むぜ!みんな、準備はいいか?」
ハクトウワシ「OKよ!レッツジャスティス!」
ヒポグリフ「・・・行きましょう!」
その時、ライオンの耳がピクンと動く
ライオン「・・・さっそくお出迎えみたいだねぇ~」
キマイラ「おう、しばらくだなぁオイ。」
オルトロス「さっさと逃げ帰ればいいのに、たったの4人でノコノコと・・・バカな連中。」
グリフォン「お前ら温泉の・・・どきやがれ、お前らに用はねぇ。」
キマイラ「てめぇには無くても、アタシにはあるぜ・・・オラ、一対一だ!勝負しやがれ!」
オルトロス「ちょっと姉さん!!あんまり遊んでる時間は・・・」
キマイラ「おお?・・・おい、オルトロスよ。お前いつからこのアタシに指図できるほど偉くなったんだ?ええ?」
オルトロス「・・・お、怒らないでよ。別にそんなつもりじゃないんだから・・・。私はただ・・・」
キマイラ「ふーん、そうかい。たった一人の大事な姉の楽しみも奪うような冷たいヤツになっちまったんだな、お前。姉さんは悲しいぞ」
オルトロス「も~・・・すぐそうやって拗ねるんだから・・・」
ハクトウワシ「なんか揉めてるわね。」
ヒポグリフ「こういう連中なのよ、昔から・・・」
ライオン「・・・ふぁ~あ。」(あくび)
グリフォン「おい、こっちも暇じゃねえんだ。姉妹喧嘩なら他所でやれよ。」
それは地上にてグリフォンとキマイラの不毛などつき合いが始まろうとする少し前。
ゆきやまちほーの奥深くに建てられた研究所の地上部分は、老朽化が激しく今にも倒壊しそうな見た目だったがその下には地下施設が存在していた。
そこは地熱発電設備より賄われた電力が引かれ、現在も稼働していたが地下施設のほとんどの研究者達は既に退去したのだろうか、整備用の小型ロボットを残してほぼ無人と化ししている。
それぞれの実験室には様々な実験装置が並び、それらは中央制御室からのコントロールで半自動的に稼働していた。
その一室で会話する温泉を襲撃したキマイラとオルトロス。
キマイラ「あー、退屈だぜ…こんなところに居たら気がめいっちまうよ…飯は不味いしよぉ…また抜け出すか…」
オルトロス「…やめてよキマイラ姉さん、私まで怒られるわ…それにしてもヒポグリフの言っていた『私達はスフィンクスに騙されている』…あれはどういう意味?」
キマイラ「おう?そういやヒポグリフのヤツここに居た頃とは様子が違ってたな…」
オルトロス「NEO体の特徴である額の目が除去されてスフィンクスの制御下から外れていた…あれが本来のヒポグリフなのね」
キマイラ「だがなぁ、スフィンクスから聞かされてたのとは大分話が違ってたがな?凶暴で手がつけられずに仕方無くNEO体化してやっと制御した筈だったろう?」
オルトロス「…」
その時、室内に設置されたスピーカーよりスフィンクスの声が発せられた。
スフィンクス「二人とも、無駄話はそれくらいにしてくれますか、
地上に厄介なお客さんです、どうやらこの場所を嗅ぎ付けた様ですね…」
キマイラ「ふん…、あたしらの話を盗み聞きとは感心出来ねえな…スフィンクス、いつから聞いてやがった」
オルトロス「…スフィンクス、私も後で聞きたい事があります、いいですね?」
スフィンクス「構いませんよ、ああ、二人とも、ヒポグリフはなるべく傷つけないように回収してもらえますか彼女はまだ利用価値が有りますからね」
オルトロス「…わかりました」
キマイラ「…注目の多い野郎だな…さあて、出るぞオルトロス!今度こそどっちが強いか決着をつけてやる!」
キマイラ「もう!姉さん、あんまり突っ走らないでよ?!」
地上と地下とを繋ぐ長い通路を抜け二人は外に出る。一面の銀世界を背に再びグリフォン達と対峙した。
睨みあうグリフォンとキマイラ…天気は少しずつ崩れはじめ、雪がちらつき始めていた
キマイラ「おい、そういえばあの窮奇ってやつはどこいった?」
グリフォン「あいつは…今はいねーよ。どこかへ行っちまったみたいだな」
キマイラ「ちっ…あいつが一番上玉そうだったのに… まあいい。それじゃグリフォン、まずはてめぇが……… あ?」
その時!睨みあう二人の視線に割って入る一人のフレンズ… それはライオンだった
キマイラ「あぁ?なんだぁてめーは?」
グリフォンの前に立ち、眉間にしわを寄せるキマイラに満面の笑顔で返すライオン
ライオン「えへへ~」
グリフォン「お、おい!何やってんだよっ!」
ライオン「多分この先さぁ~ キミは体力残しておかないとまずいんじゃないかな~と思ってさ~。」
キマイラ「…おい、出しゃばるんじゃねえニャン公。お前、NEO体でもないただの動物のフレンズだろ。よせよせ、勝負にもならねえよ。」
グリフォン「気持ちはありがたいが、アイツの言う事も一利ある。あんたが強いのは知ってるが相手が少し悪いぜ。」
ライオン「まぁまぁ…ああいう単純そうなヤツの相手は結構慣れてるからね~」
ライオン「それに…」
ゆっくりと目を閉じるライオン… 少し間をおいて目を開くと、ライオンの瞳は煌々と輝く
ライオン「たまには、腕っぷしが強い所も 見せておかないとねぇ…」
キマイラ「なにぃ~?腕っぷし、だぁ?」
キマイラは少し含み笑いを込めてライオンに言い放つと、後ろを向き二人の後ろにちらほらついてきているセルリアンの中から、小さな球体型のセルリアンを片手で掴みライオンの足元にコロコロと転がした
キマイラ「ホレ、ネコってのは玉で遊ぶもんなんだろ?遊べよ。」
ライオンの眉が一瞬ピクッと動くが、ライオンは満面の笑顔で返す
ライオン「えっ、いいの~?それじゃあ・・・ 遠慮なくっ!!」
パッカアーーーーン!!
大きく片足をふりかぶったライオンが球体セルリアンを勢いよく蹴り飛ばすと、キマイラの顔面に直撃した
セルリアンは粉々に砕け散り、キマイラは反動で大きく仰け反る
キマイラ「いっっっ・・・・・!!!てえぇぇ!!」
グリフォン「おお!?」
オルトロス「え!?」
セルリアンが顔面に当たって大きく仰け反ったキマイラは、一瞬呆然とするがすぐに我に返りこちらに向き直り、頭に血管がピキピキと浮かぶ
キマイラ「て、てめぇ・・・ナメたマネしやがって・・・!!」
ライオン「次は何して遊んでくれるのかなぁ~?」
キマイラ「てめぇはもうおしまいだ!!今更謝ったって許してやんねぇ、ボコボコにして泣かしてやるぜッ!!!」