「到着まで2分! 全員降下用意しろ!」
リウ ズシュエン
エルヴィーン・ロハーチェク達は、刘梓萱…「南昌の暗殺者」殺害のため、
高地地帯の中腹にある密林地帯へとヘリコプターで舞い降りていっている。
LZへと2機の攻撃機が飛んでいき、ロケット弾と焼夷爆弾を投下して去っていく。
「おい、あそこに爆弾を投下する意味ってあるのか?」
「手の込んだ待ち伏せ対策だよ。 保険ぐらいにはなるさ」
グエンとラドヴァンが、その光景を見ながら会話しあう。
「降下!」
エルヴィーンのその言葉とともに、
3人は地面へと飛び降りた。
それぞれが持っている銃を各方面に向けて
ここが安全であることを確認した後、
お互いの死角をカバーしながら前進していく。
「目標地点は?」
「デルタ・チャーリー・タンゴ。前進しろ」
「了解」
木々の間をすり抜けながら、
何処に敵がいるかもわからないジャングルを全速力で進んでいく。
しばらく進んでいると、遠くから足音が聞こえてきた。
「止まれ」
全員が地面に伏せる。
「敵のパトロールだ」
「交戦します?」
「どうせ弾の無駄だ… 待機しろ」
すぐ目の前を、4名のパトロール部隊が進んでいく。
直後足音が離れていき、段々と小さくなっていった。
「移動再開」
また全員が立ち上がり、再び移動していった。
通報 ...
開けた場所で、ブラボーチームの3人が遠くの山脈を監視している。
山には大勢の敵兵が移動し続けているが、その中に目標の姿は見当たらない。
「こちらブラボーチームより本部、
目標地点に到達した。オーバー。」
「こちら本部了解、待機せよ。 アウト」
「…おい、ナイフ持ってるか?
貸してくれ」
エルヴィーンが他の2人に問いかける。
「持ってるが… 何に使うんだ?」
そう言いながら、ラドヴァンがナイフをエルヴィーンに渡した。
「こう使うんだよ。覚えておくと便利だぜ」
適当な枝にナイフを突き刺し、簡易的なバイポッドを作った。
狙撃銃を構え、スポッターに各種情報を聞く。
「グエン、今の状況は?」
「距離800m、風力北北西、風速5メートル」
「了解」
それを聞いて、エルヴィーン・ロハーチェクは
ライフルを構え、ハンドガードに手をかけた。
「俺とグエンで標的を探す。
ラドヴァンは後方警戒に当たってくれ」
スコープを双眼鏡代わりに使いながら、
大量の敵兵の中から目標を探す。
その中に、ひときわ厳重に守られている一群があった。
(あいつらか?)
スコープの倍率を上げ、1人1人顔を確認していく。。
…いた。 ゆっくりと進んでいく隊列の中に、写真で見た顔がある。
手には対物ライフルを構え、指揮官のような男の護衛を行っていた。
(…ようやく来たか、この野郎!)
「グエン、見つけたぞ。
あの重武装の一群の中央にいる。」
「了解… ああ、見つけた。 間違いないだろう。」
本部へと無線を送る。
「こちらゴルフ、目標確認。
位置はデルタ・オスカー・タンゴ。
相手には見られてない、最高のコンディションだ」
「こちらHQ了解。念のためにそちらに攻撃機2機を送る、
到着は3分後。それまでに片付けてくれ」
「こちらゴルフ、了解。 オーバー」
そう言ってエルヴィーン・ロハーチェクは
ライフルを構え、引き金に手をかけた。
標準を標的の頭に合わせ…
引き金を引いた。
直後、発砲音があたりに響き渡り
数秒もしないうちに着弾する。
(やった!)
彼は標的が地面に崩れ落ちると思ったが―
地面に落ちたのは帽子だけだった。
(…馬鹿な)
冷や汗が出てくる。
「おい、どうした? 顔色が悪くなってるぞ?」
「見切られた」
「何?」
「信じられないだろうが…銃弾を見切られた。 人間業じゃない」
「そんな馬鹿なことがあるか? あり得ない」
「だが、実際に避けられて…」
そこまで言ったところで、
彼らはブリーフィング中に言われたことを思い出した。
『それがな、どうやら…
あー… 彼女は、人間じゃないらしい』
「おい、ロハーチェク… あんな化け物相手に、勝てると思うか?」
「知るか… とにかく報告するぞ」
遠くでジェットエンジンの轟音と、数回の爆発音が聞こえた。
きっと、本部が送ってきた攻撃機だろう。
果たして、あのパイロットたちは目標殺害に成功しただろうか…?
「…ハンネス大佐。
先ほどブラボーチームが目標を確認、
直ちに狙撃を行いましたが
銃弾をよけられて失敗したと通信が入ってきました」
「そうか…
まあ安心しろ。プランBはもう準備してある。」
「プランB? そりゃどんな計画ですか?」
「…奴が立て籠っているところ目掛けて
爆弾をぶちこんだあと、
特殊部隊で掃討する。簡単だろ?」
そう言うと、ハンネス・コヴイランタは無線機を取った。
「こちらHQよりブラボー・ノーベンバー…」
クリスマスまでには完結させたい…