「悪徳商人はケツノケ???まで毟るっていうよね!姉ちゃんはそんなタイプには全然見えないから大丈夫ってのもちゃんとわかってるよ!」
にひっと笑うと、差し出された栞を手に取って白と黄色の花びらをまじまじと眺めた。そしてくんくんと嗅いでみたり。
「……イイね!おれ、これからはたっくさん勉強しなきゃなんないんだ。今まで本にはパンの袋とか挟んでたけど、油ジミつけちゃいけないもんな。うん、これにする!はい、お金!」
代金を手渡すと、鞄の中から魔導書らしき本を引っ張り出して開いた。早速挟んでいく気らしい。
「【雪割】……?そこ、おれが今日から泊まろうと思ってた宿だ!へへっ、そっちの先客は姉ちゃんの方だったね。目利きの商人さんの泊まる宿なら期待できそうじゃん!それじゃ宿でもよろしくね。おれデュプレ!デュプレっていうんだ。姉ちゃんの名前はなに?」
「ふふふ~っ、珍しいものいっぱいでしょ?」
目を輝かせ、楽しそうにひとつひとつの商品に注目していく少年の姿に顔を綻ばせる。
「アハハ、大丈夫大丈夫。ヘンなもの売りつけてなけなしの金を毟ろうなんて思ってないからさ。 冒険者同士、同郷同士、助け合わなくちゃ。 そうだねー、その金額だと……これなんかどうかな?」
差し出したのは『押し花の栞』。紫の台紙に白い花が押され、黄色の花びらがアクセントとして添えられている。
「これは一見ただの栞に見えるけど…………うん、本当にただの栞なんだ。 でもこの花は薬の材料にもなってねー。防虫効果もあるしー、ちょっと香りも残ってて集中力が高まるかもよ? 本で魔法の勉強とかするならピッタリなんじゃないかなー? 気に入らなかったらいつでも返品してくれていいよ。 私もしばらくはこの町に……【雪割】って名前の宿にいるからさ。」
「わぁ!!!すげぇ~!!!」
少女が見せてくれた品物を前に、あまりにも正直で分かりやすい感想が飛び出る。思わず触れようとして商品だということを思い出し、指さすに思いとどまった。しかし口の方は歯止めがきかないようで。
「これ、種だろ?こっちはなんだろ…魔術的な巻物かな?この花、見たことない!!おお、これは魔力ガンガン上がりそうな札!あ、これうちのねーちゃんが好きそうなデザイン!あははっ!おお、そしてこれは!!!……ハサミか」
目の前の商品に気をとられ、旅商人の説明は聞いているやらいないやら。しかしオマケするとの言葉はしっかり聞きつけたらしく顔をあげる。子供はオマケに弱い。
「ほんとう?じゃあ何にしようかな~。でも、姉ちゃん。おれ……金持ちじゃないよ?冒険者に必要なものはカネとコネっていうけどさ~、駆け出しだからどっちもまだまだなんだよね。今出せるのはこんだけかな?これだと~……何が買える?」
そう言って財布から出したのは、子供のおやつ程度の金額だ。
「あらあら、奇遇ね、私も甘藍出身なの!なんだかキミとは仲良くなれそうね。」
ぺろりとパンを頬張り、少年の言葉にうんうんと耳を傾ける。 パン屋の生まれ、どうりで小麦の香りがするわけだ。 その麺棒らしい面影を残す杖を見せてもらいながら、
「それならホウキよりもキミに似合ってるかも。個性的で、私は好きだな。」 と、好意的に笑うのだった。
「ふふふっ、それじゃあ口の硬いキミだけに、特別に見せてあげよっかな。」
四季色の刻印の入った箱の蓋をゆっくりと開くと、中にはいくつもの品物が丁寧に積み重ねられているのが見えた。 何かの球根や種。古そうな巻物。深い色に染められた布束。鮮やかな色の押し花。怪しい液体の入った小瓶。 呪術的な意味を持っていそうな銀細工や護符といったお守りの類。ハサミ。花を模ったアクセサリ。
「これはねぇ、ぜんぶ菜花の国で仕入れてきた商品なんだ。 今日からこの国で売ってねー、また新しい商品に換えるの。 そしたらまた別の国に持って行って……って、その繰り返し。旅商人ってそうやって生きてくのよ。 そうだ、気になるものがあったら買ってかない?出逢った記念にオマケしとくよ。」
「シチカ・サンザ君。覚えましたよ、以後よろしく。あはは、おっさんだなんて、親しげに呼ばれると照れますなあ」
にこにこと頭を掻いた。 酒杯を干し、二人分の代金をさっさと払うと立ち上がる。
「では、私はその宿に行ってみることとしますよ。どうぞごゆっくり。酒ばかりではなく、精の付くものを食べた方がよろしいかな? いささかお顔の色が優れないようだ……お若いのに」
それでは、また。 男は帽子を被り、会釈して、杖を手に立ち去った。
◆スィナン・コサル (12)
・中流貴族出身のペイジ ・明るく、超楽観的な性格。 ・器用で身のこなしが軽い。 ・大人のお姉さんがタイプ♡
男が笑い発する様に目を眇めた。 つまみを漁ろうと手を伸ばせど空になった皿を虚しく弄るばかりで、小さく舌打ちすると手を引っ込める。
「食えねぇおっさんだ。 にしても、霊素や奇跡…ねぇ……、どうやら分野は同じかもな」
カマをかけたもののあっさりと躱されたようで面白くない、腕を組んで壁へと背を預けるが その間にも相手の観察はやめられず、警戒というよりは性分なのだろう。
「ああ、どうせ顔を合わせるならうまい具合にやっていこうじゃあないか。 俺は七花汕砂(しちか さんざ)宜しくな、おっさん」
なおも坊やと投げかけられた一種の仕返しなのだろうか、妙に力強く言い締めた。
「へへ、これおれが自分で作った杖なんだ。おれの家は由緒正しき魔術師の……って訳じゃないんだよね〜。残念ながら。パン屋なんだよ、甘藍の国さ。家にある長い物っていったら綿棒とホウキぐらいじゃん?仕方ないから綿棒のほうを改造して作ったのさ」
と少女の口に消えてゆく具材パンを眺めながら語った。箱の中身の話題になると、再び瞳が煌めいた。箱の前へと飛び出して。
「秘密の……品物?見たい!見せてよ!誰にも話しちゃいけないっていうんなら、おれ大丈夫だよ!こう見えて口は硬いんだ!」
薄い人生? 盃を置いた。テーブルに肘をつき、小首をかしげ、けらけら笑う。
「青い春は遠い昔、至れる若気もありませんで。 常世の国はすばらしい。蒼海の国にも道行きで寄りましたけどねえ、まったくあの国の辛気臭いことときたら……ここなら人も十分、仕事もあるうえ、いわゆる『霊素』もたっぷり、『奇跡』すらある。私にとっても、たいへん興味深い国ですよ」
薄ら笑みを浮かべ、目を細めた。 しかしそれも数秒のこと、ぱっとまた表情を崩し、
「まあまあ! ここは同宿の予定もありますし、お互い仲良くしようじゃありませんか。 私はエスター・ルネ・ガレストと申します。どうぞお見知りおきを。 ぜひとも坊やの名前もお伺いしておきたいものですねえ」
一方的に自己紹介をし、いけしゃあしゃあとのたまった。
思った以上に元気な声が返ってきたのに気を良くして、からからと笑いながら話を続ける。
「ふふふっ、やっぱり! 確かにそのカッコいいマントは目立つかな。オシャレでいいね。 でも杖は変わった形してるね?魔術師さんに会ったことはあるけど、今まで見たことないや。 そうそうそう、わたしもそうなの、つい今朝がた来たばかりでさ。 遠くから見ても、街道から見るあの山は朝日に映えてキレイだったな~……。」
情景を思い出しながら具材パンをぱくり。 新鮮な野菜と香草、湖で獲れた小魚のフライを挟んだもので、 濃い味を付けたソースが垂れそうになるのを舌で舐めとる。
「んぐんぐ……(ごくり)。ん、イケるねこれ。 あ、これ?この箱はね~~……ふふふ。 ゴハンを食べるときにはテーブルにもなって便利なんだけど。 兵器は入ってないけど、大事な秘密の品物がいーっぱい入ってるんだ。 ふふふ~、気になる~?見たい~?」
期待を煽るように、にまぁと口を釣り上げて目を細める。
きらきらと噴水を眺めていた瞳は今度は話しかけてきた少女を映した。そのお喋りに一瞬目を丸くしたが、ずずっと鼻をすすりあげ、口元はにんまりと。
「せいかーい!ついさっき到着したばかりの冒険者さ!やっぱ分かっちゃう?おれのこのマントで?いやいやそれともこの杖かな? 白雪のれいほー、うん、そんな気がしてきた。それだよきっと!」
言い切って残りのパンを口に押し込む。細かい事は気にしない性格のようだ。 飲み込んだあとは、少女の下ろした大きな箱を興味深そうに眺めて。
「『も』ってことはさ、姉ちゃんも冒険者なの?ね、この箱なに?秘密兵器?」
13歳♂・150cm 甘藍の国出身の少年魔術師。やんちゃで行動力にあふれている。魔術は魔術師であった祖父に習ったものであり、いつか麻帆の国に住み、そこで魔術研究をするのが夢のひとつ。実家はパン屋。
【装備】
矢継早な男の言葉に今度はじろじろと不躾な視線を浴びせた。 口を開いたが声が紡がれるまで2拍はあっただろう
「御用…か」
へ、と短に笑う。それは皮相に。
「特に決めたものは無いんでね、言う通りさ… 旅は良いもの、だ。 ここは俺の知らない文化もあるし興味は唆られる、冒険者は手っ取り早い"ついで"だよ…けれど 慣れちゃいるがね、体力にゃからっきし。頼もしいなんてもんでもない───が
あんたはどうだい? 若気の至りなおのぼりなんて薄い人生送っちゃいないだろ」
曰く、お前も慣れたものなのだろう と。
ちょうど噴水の近くを通りがかったところ、急に飛び立った鳩たちの羽音に驚き、少女はきょとんとして歩を止める。 鳩をびっくりさせた犯人が目の前の少年であることがわかると、「ふふふっ!」と声を出して笑った。 笑いながら少年のそばへと近づいてくる。
「ゴメンゴメン笑っちゃって。 いやぁ急に鳩が飛んだと思ったら、もー、キミのくしゃみなんだもん。おっかしくて。 よっと、隣いいかな?わたしもこれからゴハンでさ。」
少女は大荷物が入りそうな箱を石畳に降ろし、少年の返事を待つ前にとすんとベンチに座る。 その手には屋台で買い求めたらしい、具材を挟んだパン。
「ねぇ、キミも冒険者でしょ~?当たってる? この噴水みてそんなに目をきらきらさせてるんだもん。あ、きらきらしてるのは噴水もだけど。 町全体が真っ白で真っ青で、ホントにキレイなとこだぁよねぇ。わたしも感動しちゃった。 ちょっと山から吹き降ろしてくる風が冷たいけど。しら、白雪の霊峰だっけ?」
名乗るでもなく名を尋ねるでもなく、滑らかに賑やかに、そして遠慮無しに喋り出す。 その間に鳩たちは少し離れたあたりに降り立ち、再び石畳をつつき回り始めていた。
「おやおや、同輩でしたか。うん、うん、旅は良いものです。若いうちならなおのこと。常世の国には何の御用でいらっしゃいましたか。そのお歳でおっかないところにお慣れでいらっしゃるとは、頼もしい限りで……。
『雪割』。佳い名だ、ぜひお伺いしてみるとしましょう。まだ空き部屋があるとよいのですが。――ということは、お宅も冒険者なんです? それともこれからお成りに?」
ぺらぺらとよく回る舌を乳酒で潤し、取ってつけたように、
「いや、根掘り葉掘り聞きすぎましたかな。すみませんね、私、口から先に生まれてきたような性質でして」
付け加え、肩をすくめた。まったく悪びれた様子はない。
赤白髪に花飾り、左手に武骨なガントレットを身に着けた、旅商人の少女。 商品を仕舞う箱を背負い、ショルダーバッグを下げている。
四季生まれ、甘藍育ち。 故郷を飛び出し、品々を右の町から左の国へ流して生計を立てる日々。
年は20に満たない程。 明朗快活。人の役に立つものを届けるのが信条。 新しいもの・珍しいものが好きで、そういったものを探すのも旅を続ける理由のひとつ。
現在は冒険者の宿【雪割】を拠り所としている。
噴水公園のベンチに腰を下ろし、もっくもっくとパンを頬張る少年がいた。好奇心に満ちた赤い瞳はキラキラと輝く噴水を映し、足元はパンくず目当ての鳩が集まってきている。
「きれいなもんだなぁ~。ナンタラの霊峰…から引いてるんだっけ。……白薔薇?白葡萄?白ヒマワリ? ……うぇぶしっ!!!」
冷えた風に思わずくしゃみをひとつ。驚いた鳩がバサバサと飛び回った。
坊や、と言われればじろりと視線を向けた。が怒るでもなくフンと鼻を鳴らしてつまみを頬張る。
「……別に、わかってて来てるならとやかく言うことじゃないがな。 あと残念ながら俺は常連じゃあない。あんたと同じ旅人だしここへも来たばかりだ。 こういう空気に多少慣れてるってだけのな。」
エスターの笑みとは対象的に皮肉めいた笑みで口角を上げてみせた。 そうしてこめかみを指でコツ、コツ、と叩きそれは記憶を辿るような仕草
「…ここいらで良さそうなのは雪割ってとこだろうな、……冒険者に向いてるかどうか、は知らねぇが 少なくとも、右も左も分からない奴が身を置いてある程度安全は保証されると見るね」
あなたが入って来れば、ちらと視線をやり。
「ん。私ですか」
こちらにもつまみを、と、あなたに便乗して注文した。
「いやあ、これは場違いだったかなとは思ったんですけどね、ははは。そういうところもお伺いしたほうが、今後のためになるでしょう……長い付き合いになりそうな国ですからねえ。そう言う坊やこそ、」
と言ったところで、改めてあなたを見た。二秒ほど逡巡し、
「いや、失敬。坊やってお年頃じゃあない。もしやここの常連さんですか? よければこの国のことを教えていただけませんかねえ。ご覧の通り新参者でして。とりあえず旅人……、 ……あー、えーと、冒険者? そう、冒険者に向いた宿屋だとか。お礼に一杯奢りますよ」
いかにも人の良さそうな笑みを浮かべる。
古い扉が開き、また一人足を踏み入れる。 ジロリとした目つきは元からか…特に臆するでなく男は慣れた風にカウンターへと足を運ぶと注文をする。
「魔術酒か…変わった名前だな…、いや気に入った。それを一つ、それと適当につまみをくれ」
品を受け取ると適当な席へ…と向かいがてら赤毛の男をちらりと見た。 物腰が柔らかそうで風体も悪くない、こんな店には不似合いとも思えるが…
「あんた、こんなところで呑気に食事とはね。店、間違えてんじゃあないか?」
無愛想に投げかけながらも近くの壁際の席を陣取った。
金色の目に大きな隈、顔色の悪い青年、年の頃は25.6といったところだろう。 何処にでも居る旅人のように見えるが信仰圏外からの渡航者である。特に必要のない時、彼はこれを明かさない。 呪術に通じている口ぶりで常世の国を渡り歩く彼も呪術や文化と言ったものに興味を示しているようだ。
冒険者の宿【雪割】に部屋を取っている姿が見られる。
酒場の扉が開き、きょろきょろと周りを見回しながら、男がひとり入ってくる。 右手には今しがた脱いだ帽子。左手には細身の杖。気さくそうな笑みを浮かべ、裏通りの先客たちに会釈した。
「やあやあこんにちは。……おっと怪しい者ではありません。はい? 神官? ガサ入れ? とんでもない! 嫌ですねえ、そんな怖い顔しないでくださいよ。丸腰ですよ? 私はただの旅人でしてね。着いたばかりなものですから、まずはこの国の酒でも味わおうかと。」
やれどっこらしょと、適当な椅子に腰を下ろす。
「なにかお勧めあります? ははあ、乳の発酵酒。それいただきましょうか。」
酒が出された。酒坏をちびちび舐めながら、頬杖をつき、のんびりと過ごしている。
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冒険者の宿【雪割】の看板娘。花が好きな溌剌な乙女。
画像を付ける場合、外部アップローダーを使用するようにお願いします。
男は腕利きの冒険者らしかった。腿を縛って止血をし、最低限の治癒を済ませていた。
「人を食う化け物だ」
化け物に襲われた、と静かに主張していたが、その姿かたちとなると途端に口をつぐみ、首を振るのみであった。 しかし獣ではないといい、亜人でもないといい、男は錯乱しているとしか思えない。 女将や娘、酒場で飲んでいた人間たちも、にわかには信じることができない。なにせ、捕食者と言えば伝説の魔物なのである。
やがて神官がやってきた。男は失くした足の蘇生を頼んだ。 しかし何度試そうとも、成功するはずの復元は成せなかった。 そのうち男の魂は硝子のように割れてしまって、二度と目を覚ますことはなかったのだ。
━━信仰圏を歩むものよ、魂を喰らう魔物に気をつけよ。 たとえ、信じるものがいなくとも、それは確かにいるのだ。
ひっ、と、出迎えた娘は悲鳴を上げた。客に出そうとしていたエールがマグごと床に落ちて滲みを作った。 何故ならその酒場に入ってきた男は、片足を食いちぎられていたからだ。
「お、お客さん、困るよ……。大丈夫かい?」
女将とおぼしきふくよかな女性は、顔面蒼白の男を見ると、パニックになりかけていた娘に神官を呼ぶように言った。 「助かる」か細い声だった。
これはコメントのテスト。 画像もあげることができる。
「悪徳商人はケツノケ???まで毟るっていうよね!姉ちゃんはそんなタイプには全然見えないから大丈夫ってのもちゃんとわかってるよ!」
にひっと笑うと、差し出された栞を手に取って白と黄色の花びらをまじまじと眺めた。そしてくんくんと嗅いでみたり。
「……イイね!おれ、これからはたっくさん勉強しなきゃなんないんだ。今まで本にはパンの袋とか挟んでたけど、油ジミつけちゃいけないもんな。うん、これにする!はい、お金!」
代金を手渡すと、鞄の中から魔導書らしき本を引っ張り出して開いた。早速挟んでいく気らしい。
「【雪割】……?そこ、おれが今日から泊まろうと思ってた宿だ!へへっ、そっちの先客は姉ちゃんの方だったね。目利きの商人さんの泊まる宿なら期待できそうじゃん!それじゃ宿でもよろしくね。おれデュプレ!デュプレっていうんだ。姉ちゃんの名前はなに?」
「ふふふ~っ、珍しいものいっぱいでしょ?」
目を輝かせ、楽しそうにひとつひとつの商品に注目していく少年の姿に顔を綻ばせる。
「アハハ、大丈夫大丈夫。ヘンなもの売りつけてなけなしの金を毟ろうなんて思ってないからさ。
冒険者同士、同郷同士、助け合わなくちゃ。
そうだねー、その金額だと……これなんかどうかな?」
差し出したのは『押し花の栞』。紫の台紙に白い花が押され、黄色の花びらがアクセントとして添えられている。
「これは一見ただの栞に見えるけど…………うん、本当にただの栞なんだ。
でもこの花は薬の材料にもなってねー。防虫効果もあるしー、ちょっと香りも残ってて集中力が高まるかもよ?
本で魔法の勉強とかするならピッタリなんじゃないかなー?
気に入らなかったらいつでも返品してくれていいよ。
私もしばらくはこの町に……【雪割】って名前の宿にいるからさ。」
「わぁ!!!すげぇ~!!!」
少女が見せてくれた品物を前に、あまりにも正直で分かりやすい感想が飛び出る。思わず触れようとして商品だということを思い出し、指さすに思いとどまった。しかし口の方は歯止めがきかないようで。
「これ、種だろ?こっちはなんだろ…魔術的な巻物かな?この花、見たことない!!おお、これは魔力ガンガン上がりそうな札!あ、これうちのねーちゃんが好きそうなデザイン!あははっ!おお、そしてこれは!!!……ハサミか」
目の前の商品に気をとられ、旅商人の説明は聞いているやらいないやら。しかしオマケするとの言葉はしっかり聞きつけたらしく顔をあげる。子供はオマケに弱い。
「ほんとう?じゃあ何にしようかな~。でも、姉ちゃん。おれ……金持ちじゃないよ?冒険者に必要なものはカネとコネっていうけどさ~、駆け出しだからどっちもまだまだなんだよね。今出せるのはこんだけかな?これだと~……何が買える?」
そう言って財布から出したのは、子供のおやつ程度の金額だ。
「あらあら、奇遇ね、私も甘藍出身なの!なんだかキミとは仲良くなれそうね。」
ぺろりとパンを頬張り、少年の言葉にうんうんと耳を傾ける。
パン屋の生まれ、どうりで小麦の香りがするわけだ。
その麺棒らしい面影を残す杖を見せてもらいながら、
「それならホウキよりもキミに似合ってるかも。個性的で、私は好きだな。」
と、好意的に笑うのだった。
「ふふふっ、それじゃあ口の硬いキミだけに、特別に見せてあげよっかな。」
四季色の刻印の入った箱の蓋をゆっくりと開くと、中にはいくつもの品物が丁寧に積み重ねられているのが見えた。
何かの球根や種。古そうな巻物。深い色に染められた布束。鮮やかな色の押し花。怪しい液体の入った小瓶。
呪術的な意味を持っていそうな銀細工や護符といったお守りの類。ハサミ。花を模ったアクセサリ。
「これはねぇ、ぜんぶ菜花の国で仕入れてきた商品なんだ。
今日からこの国で売ってねー、また新しい商品に換えるの。
そしたらまた別の国に持って行って……って、その繰り返し。旅商人ってそうやって生きてくのよ。
そうだ、気になるものがあったら買ってかない?出逢った記念にオマケしとくよ。」
「シチカ・サンザ君。覚えましたよ、以後よろしく。あはは、おっさんだなんて、親しげに呼ばれると照れますなあ」
にこにこと頭を掻いた。
酒杯を干し、二人分の代金をさっさと払うと立ち上がる。
「では、私はその宿に行ってみることとしますよ。どうぞごゆっくり。酒ばかりではなく、精の付くものを食べた方がよろしいかな? いささかお顔の色が優れないようだ……お若いのに」
それでは、また。
男は帽子を被り、会釈して、杖を手に立ち去った。
◆スィナン・コサル (12)
・中流貴族出身のペイジ
・明るく、超楽観的な性格。
・器用で身のこなしが軽い。
・大人のお姉さんがタイプ♡
男が笑い発する様に目を眇めた。
つまみを漁ろうと手を伸ばせど空になった皿を虚しく弄るばかりで、小さく舌打ちすると手を引っ込める。
「食えねぇおっさんだ。
にしても、霊素や奇跡…ねぇ……、どうやら分野は同じかもな」
カマをかけたもののあっさりと躱されたようで面白くない、腕を組んで壁へと背を預けるが
その間にも相手の観察はやめられず、警戒というよりは性分なのだろう。
「ああ、どうせ顔を合わせるならうまい具合にやっていこうじゃあないか。
俺は七花汕砂(しちか さんざ)宜しくな、おっさん」
なおも坊やと投げかけられた一種の仕返しなのだろうか、妙に力強く言い締めた。
「へへ、これおれが自分で作った杖なんだ。おれの家は由緒正しき魔術師の……って訳じゃないんだよね〜。残念ながら。パン屋なんだよ、甘藍の国さ。家にある長い物っていったら綿棒とホウキぐらいじゃん?仕方ないから綿棒のほうを改造して作ったのさ」
と少女の口に消えてゆく具材パンを眺めながら語った。箱の中身の話題になると、再び瞳が煌めいた。箱の前へと飛び出して。
「秘密の……品物?見たい!見せてよ!誰にも話しちゃいけないっていうんなら、おれ大丈夫だよ!こう見えて口は硬いんだ!」
薄い人生? 盃を置いた。テーブルに肘をつき、小首をかしげ、けらけら笑う。
「青い春は遠い昔、至れる若気もありませんで。
常世の国はすばらしい。蒼海の国にも道行きで寄りましたけどねえ、まったくあの国の辛気臭いことときたら……ここなら人も十分、仕事もあるうえ、いわゆる『霊素』もたっぷり、『奇跡』すらある。私にとっても、たいへん興味深い国ですよ」
薄ら笑みを浮かべ、目を細めた。
しかしそれも数秒のこと、ぱっとまた表情を崩し、
「まあまあ! ここは同宿の予定もありますし、お互い仲良くしようじゃありませんか。
私はエスター・ルネ・ガレストと申します。どうぞお見知りおきを。
ぜひとも坊やの名前もお伺いしておきたいものですねえ」
一方的に自己紹介をし、いけしゃあしゃあとのたまった。
思った以上に元気な声が返ってきたのに気を良くして、からからと笑いながら話を続ける。
「ふふふっ、やっぱり!
確かにそのカッコいいマントは目立つかな。オシャレでいいね。
でも杖は変わった形してるね?魔術師さんに会ったことはあるけど、今まで見たことないや。
そうそうそう、わたしもそうなの、つい今朝がた来たばかりでさ。
遠くから見ても、街道から見るあの山は朝日に映えてキレイだったな~……。」
情景を思い出しながら具材パンをぱくり。
新鮮な野菜と香草、湖で獲れた小魚のフライを挟んだもので、
濃い味を付けたソースが垂れそうになるのを舌で舐めとる。
「んぐんぐ……(ごくり)。ん、イケるねこれ。
あ、これ?この箱はね~~……ふふふ。
ゴハンを食べるときにはテーブルにもなって便利なんだけど。
兵器は入ってないけど、大事な秘密の品物がいーっぱい入ってるんだ。
ふふふ~、気になる~?見たい~?」
期待を煽るように、にまぁと口を釣り上げて目を細める。
きらきらと噴水を眺めていた瞳は今度は話しかけてきた少女を映した。そのお喋りに一瞬目を丸くしたが、ずずっと鼻をすすりあげ、口元はにんまりと。
「せいかーい!ついさっき到着したばかりの冒険者さ!やっぱ分かっちゃう?おれのこのマントで?いやいやそれともこの杖かな?
白雪のれいほー、うん、そんな気がしてきた。それだよきっと!」
言い切って残りのパンを口に押し込む。細かい事は気にしない性格のようだ。
飲み込んだあとは、少女の下ろした大きな箱を興味深そうに眺めて。
「『も』ってことはさ、姉ちゃんも冒険者なの?ね、この箱なに?秘密兵器?」
デュプレ
13歳♂・150cm
甘藍の国出身の少年魔術師。やんちゃで行動力にあふれている。魔術は魔術師であった祖父に習ったものであり、いつか麻帆の国に住み、そこで魔術研究をするのが夢のひとつ。実家はパン屋。
【装備】
矢継早な男の言葉に今度はじろじろと不躾な視線を浴びせた。
口を開いたが声が紡がれるまで2拍はあっただろう
「御用…か」
へ、と短に笑う。それは皮相に。
「特に決めたものは無いんでね、言う通りさ… 旅は良いもの、だ。
ここは俺の知らない文化もあるし興味は唆られる、冒険者は手っ取り早い"ついで"だよ…けれど
慣れちゃいるがね、体力にゃからっきし。頼もしいなんてもんでもない───が
あんたはどうだい?
若気の至りなおのぼりなんて薄い人生送っちゃいないだろ」
曰く、お前も慣れたものなのだろう と。
ちょうど噴水の近くを通りがかったところ、急に飛び立った鳩たちの羽音に驚き、少女はきょとんとして歩を止める。
鳩をびっくりさせた犯人が目の前の少年であることがわかると、「ふふふっ!」と声を出して笑った。
笑いながら少年のそばへと近づいてくる。
「ゴメンゴメン笑っちゃって。
いやぁ急に鳩が飛んだと思ったら、もー、キミのくしゃみなんだもん。おっかしくて。
よっと、隣いいかな?わたしもこれからゴハンでさ。」
少女は大荷物が入りそうな箱を石畳に降ろし、少年の返事を待つ前にとすんとベンチに座る。
その手には屋台で買い求めたらしい、具材を挟んだパン。
「ねぇ、キミも冒険者でしょ~?当たってる?
この噴水みてそんなに目をきらきらさせてるんだもん。あ、きらきらしてるのは噴水もだけど。
町全体が真っ白で真っ青で、ホントにキレイなとこだぁよねぇ。わたしも感動しちゃった。
ちょっと山から吹き降ろしてくる風が冷たいけど。しら、白雪の霊峰だっけ?」
名乗るでもなく名を尋ねるでもなく、滑らかに賑やかに、そして遠慮無しに喋り出す。
その間に鳩たちは少し離れたあたりに降り立ち、再び石畳をつつき回り始めていた。
「おやおや、同輩でしたか。うん、うん、旅は良いものです。若いうちならなおのこと。常世の国には何の御用でいらっしゃいましたか。そのお歳でおっかないところにお慣れでいらっしゃるとは、頼もしい限りで……。
『雪割』。佳い名だ、ぜひお伺いしてみるとしましょう。まだ空き部屋があるとよいのですが。――ということは、お宅も冒険者なんです? それともこれからお成りに?」
ぺらぺらとよく回る舌を乳酒で潤し、取ってつけたように、
「いや、根掘り葉掘り聞きすぎましたかな。すみませんね、私、口から先に生まれてきたような性質でして」
付け加え、肩をすくめた。まったく悪びれた様子はない。
クーシア・フレンピスタ
赤白髪に花飾り、左手に武骨なガントレットを身に着けた、旅商人の少女。
商品を仕舞う箱を背負い、ショルダーバッグを下げている。
四季生まれ、甘藍育ち。
故郷を飛び出し、品々を右の町から左の国へ流して生計を立てる日々。
年は20に満たない程。
明朗快活。人の役に立つものを届けるのが信条。
新しいもの・珍しいものが好きで、そういったものを探すのも旅を続ける理由のひとつ。
現在は冒険者の宿【雪割】を拠り所としている。
噴水公園のベンチに腰を下ろし、もっくもっくとパンを頬張る少年がいた。好奇心に満ちた赤い瞳はキラキラと輝く噴水を映し、足元はパンくず目当ての鳩が集まってきている。
「きれいなもんだなぁ~。ナンタラの霊峰…から引いてるんだっけ。……白薔薇?白葡萄?白ヒマワリ?
……うぇぶしっ!!!」
冷えた風に思わずくしゃみをひとつ。驚いた鳩がバサバサと飛び回った。
坊や、と言われればじろりと視線を向けた。が怒るでもなくフンと鼻を鳴らしてつまみを頬張る。
「……別に、わかってて来てるならとやかく言うことじゃないがな。
あと残念ながら俺は常連じゃあない。あんたと同じ旅人だしここへも来たばかりだ。
こういう空気に多少慣れてるってだけのな。」
エスターの笑みとは対象的に皮肉めいた笑みで口角を上げてみせた。
そうしてこめかみを指でコツ、コツ、と叩きそれは記憶を辿るような仕草
「…ここいらで良さそうなのは雪割ってとこだろうな、……冒険者に向いてるかどうか、は知らねぇが
少なくとも、右も左も分からない奴が身を置いてある程度安全は保証されると見るね」
あなたが入って来れば、ちらと視線をやり。
「ん。私ですか」
こちらにもつまみを、と、あなたに便乗して注文した。
「いやあ、これは場違いだったかなとは思ったんですけどね、ははは。そういうところもお伺いしたほうが、今後のためになるでしょう……長い付き合いになりそうな国ですからねえ。そう言う坊やこそ、」
と言ったところで、改めてあなたを見た。二秒ほど逡巡し、
「いや、失敬。坊やってお年頃じゃあない。もしやここの常連さんですか? よければこの国のことを教えていただけませんかねえ。ご覧の通り新参者でして。とりあえず旅人……、 ……あー、えーと、冒険者? そう、冒険者に向いた宿屋だとか。お礼に一杯奢りますよ」
いかにも人の良さそうな笑みを浮かべる。
古い扉が開き、また一人足を踏み入れる。
ジロリとした目つきは元からか…特に臆するでなく男は慣れた風にカウンターへと足を運ぶと注文をする。
「魔術酒か…変わった名前だな…、いや気に入った。それを一つ、それと適当につまみをくれ」
品を受け取ると適当な席へ…と向かいがてら赤毛の男をちらりと見た。
物腰が柔らかそうで風体も悪くない、こんな店には不似合いとも思えるが…
「あんた、こんなところで呑気に食事とはね。店、間違えてんじゃあないか?」
無愛想に投げかけながらも近くの壁際の席を陣取った。
七花 汕砂(しちか さんざ)
金色の目に大きな隈、顔色の悪い青年、年の頃は25.6といったところだろう。
何処にでも居る旅人のように見えるが信仰圏外からの渡航者である。特に必要のない時、彼はこれを明かさない。
呪術に通じている口ぶりで常世の国を渡り歩く彼も呪術や文化と言ったものに興味を示しているようだ。
冒険者の宿【雪割】に部屋を取っている姿が見られる。
酒場の扉が開き、きょろきょろと周りを見回しながら、男がひとり入ってくる。
右手には今しがた脱いだ帽子。左手には細身の杖。気さくそうな笑みを浮かべ、裏通りの先客たちに会釈した。
「やあやあこんにちは。……おっと怪しい者ではありません。はい? 神官? ガサ入れ? とんでもない! 嫌ですねえ、そんな怖い顔しないでくださいよ。丸腰ですよ? 私はただの旅人でしてね。着いたばかりなものですから、まずはこの国の酒でも味わおうかと。」
やれどっこらしょと、適当な椅子に腰を下ろす。
「なにかお勧めあります? ははあ、乳の発酵酒。それいただきましょうか。」
酒が出された。酒坏をちびちび舐めながら、頬杖をつき、のんびりと過ごしている。
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クラウディア
冒険者の宿【雪割】の看板娘。花が好きな溌剌な乙女。
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男は腕利きの冒険者らしかった。腿を縛って止血をし、最低限の治癒を済ませていた。
「人を食う化け物だ」
化け物に襲われた、と静かに主張していたが、その姿かたちとなると途端に口をつぐみ、首を振るのみであった。
しかし獣ではないといい、亜人でもないといい、男は錯乱しているとしか思えない。
女将や娘、酒場で飲んでいた人間たちも、にわかには信じることができない。なにせ、捕食者と言えば伝説の魔物なのである。
やがて神官がやってきた。男は失くした足の蘇生を頼んだ。
しかし何度試そうとも、成功するはずの復元は成せなかった。
そのうち男の魂は硝子のように割れてしまって、二度と目を覚ますことはなかったのだ。
━━信仰圏を歩むものよ、魂を喰らう魔物に気をつけよ。
たとえ、信じるものがいなくとも、それは確かにいるのだ。
ひっ、と、出迎えた娘は悲鳴を上げた。客に出そうとしていたエールがマグごと床に落ちて滲みを作った。
何故ならその酒場に入ってきた男は、片足を食いちぎられていたからだ。
「お、お客さん、困るよ……。大丈夫かい?」
女将とおぼしきふくよかな女性は、顔面蒼白の男を見ると、パニックになりかけていた娘に神官を呼ぶように言った。
「助かる」か細い声だった。
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