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裏通りの酒場【アイゼン】 / 6

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汕砂 2019/10/18 (金) 21:25:10 >> 5

矢継早な男の言葉に今度はじろじろと不躾な視線を浴びせた。
口を開いたが声が紡がれるまで2拍はあっただろう

「御用…か」

へ、と短に笑う。それは皮相に。

「特に決めたものは無いんでね、言う通りさ… 旅は良いもの、だ。
ここは俺の知らない文化もあるし興味は唆られる、冒険者は手っ取り早い"ついで"だよ…けれど
慣れちゃいるがね、体力にゃからっきし。頼もしいなんてもんでもない───が

あんたはどうだい?
若気の至りなおのぼりなんて薄い人生送っちゃいないだろ」

曰く、お前も慣れたものなのだろう と。

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  • 7
    ひとしろ 2019/10/20 (日) 22:26:16 >> 6

     薄い人生? 盃を置いた。テーブルに肘をつき、小首をかしげ、けらけら笑う。

    「青い春は遠い昔、至れる若気もありませんで。
     常世の国はすばらしい。蒼海の国にも道行きで寄りましたけどねえ、まったくあの国の辛気臭いことときたら……ここなら人も十分、仕事もあるうえ、いわゆる『霊素』もたっぷり、『奇跡』すらある。私にとっても、たいへん興味深い国ですよ」

     薄ら笑みを浮かべ、目を細めた。
     しかしそれも数秒のこと、ぱっとまた表情を崩し、

    「まあまあ! ここは同宿の予定もありますし、お互い仲良くしようじゃありませんか。
     私はエスター・ルネ・ガレストと申します。どうぞお見知りおきを。
     ぜひとも坊やの名前もお伺いしておきたいものですねえ」

     一方的に自己紹介をし、いけしゃあしゃあとのたまった。

  • 8
    汕砂 2019/10/29 (火) 19:57:45 >> 6

    男が笑い発する様に目を眇めた。
    つまみを漁ろうと手を伸ばせど空になった皿を虚しく弄るばかりで、小さく舌打ちすると手を引っ込める。

    「食えねぇおっさんだ。
    にしても、霊素や奇跡…ねぇ……、どうやら分野は同じかもな」

    カマをかけたもののあっさりと躱されたようで面白くない、腕を組んで壁へと背を預けるが
    その間にも相手の観察はやめられず、警戒というよりは性分なのだろう。

    「ああ、どうせ顔を合わせるならうまい具合にやっていこうじゃあないか。
    俺は七花汕砂(しちか さんざ)宜しくな、おっさん

    なおも坊やと投げかけられた一種の仕返しなのだろうか、妙に力強く言い締めた。

  • 9
    ひとしろ 2019/11/01 (金) 06:57:19 >> 6

    「シチカ・サンザ君。覚えましたよ、以後よろしく。あはは、おっさんだなんて、親しげに呼ばれると照れますなあ」

    にこにこと頭を掻いた。
    酒杯を干し、二人分の代金をさっさと払うと立ち上がる。

    「では、私はその宿に行ってみることとしますよ。どうぞごゆっくり。酒ばかりではなく、精の付くものを食べた方がよろしいかな? いささかお顔の色が優れないようだ……お若いのに」

    それでは、また。
    男は帽子を被り、会釈して、杖を手に立ち去った。