ちょうど噴水の近くを通りがかったところ、急に飛び立った鳩たちの羽音に驚き、少女はきょとんとして歩を止める。
鳩をびっくりさせた犯人が目の前の少年であることがわかると、「ふふふっ!」と声を出して笑った。
笑いながら少年のそばへと近づいてくる。
「ゴメンゴメン笑っちゃって。
いやぁ急に鳩が飛んだと思ったら、もー、キミのくしゃみなんだもん。おっかしくて。
よっと、隣いいかな?わたしもこれからゴハンでさ。」
少女は大荷物が入りそうな箱を石畳に降ろし、少年の返事を待つ前にとすんとベンチに座る。
その手には屋台で買い求めたらしい、具材を挟んだパン。
「ねぇ、キミも冒険者でしょ~?当たってる?
この噴水みてそんなに目をきらきらさせてるんだもん。あ、きらきらしてるのは噴水もだけど。
町全体が真っ白で真っ青で、ホントにキレイなとこだぁよねぇ。わたしも感動しちゃった。
ちょっと山から吹き降ろしてくる風が冷たいけど。しら、白雪の霊峰だっけ?」
名乗るでもなく名を尋ねるでもなく、滑らかに賑やかに、そして遠慮無しに喋り出す。
その間に鳩たちは少し離れたあたりに降り立ち、再び石畳をつつき回り始めていた。
通報 ...
投稿するにはログインする必要があります。